地球へ…(Coming Home To Terra):竹宮恵子の傑作SFアニメ映画の主題歌

こんばんは。今日3月10日は、70年前に東京大空襲のあった日ですね。都市部を標的とした無差別爆撃で、空襲としては史上最大規模の大量虐殺とされます。空襲は何度も繰り返し行われていましたが、この日の空襲は超低高度・夜間・焼夷弾攻撃という新戦術が初めて本格的に導入されたもので、木造家屋が多数密集する東京下町の市街地を、散在する町工場もろとも焼き払うことを目的としていました。

死者約8万-10万、負傷4万-11万名ともいわれます。第一次世界大戦後の1922年、ハーグ空戦規則が採択され、軍事目標以外の民間人の損傷を目的とした無差別空爆は禁止されていたため、無差別爆撃によって多数の民間人が犠牲になったこの爆撃は戦争犯罪ではないかとの指摘が強くあります。以前に取り上げたカート・ヴォネガットの小説「スローターハウス5」で描かれたドレスデン爆撃とともに第二次世界大戦中の空襲による二大殺戮劇といえましょう。

言いたいことはいろいろありますが、当ブログは極力固い話題には踏み込まないことをモットーとしている(そんなことは現実世界だけで充分だ)ので、例によって柔らかい話題です。存実はナツアニソンで劇場用アニメ映画「地球へ…」の主題歌「地球へ…(Coming Home To Terra)」を紹介しましょう。

「地球へ…」は竹宮恵子の漫画作品で、1977(昭和52)年から1980(昭和55)年まで朝日ソノラマ社の月刊誌「マンガ少年」に連載されました。

マンガ少年は1976(昭和51)年9月号が創刊号で、1981年5月号で休刊となりました。元々は手塚治虫の「火の鳥」の掲載誌として企画されたそうで、石ノ森章太郎の「サイボーグ009」や松本零士の「ミライザーバン」などSF作品が多数掲載されていました。が…私、この雑誌は全く記憶にありません。「ミライザーバン」は単行本を読んだ記憶はあるんですが、当時はSF大好きだったはずなんですがどうしたことか。

竹宮恵子は17才にしてマンガ家デビューを果たし、「週刊少女コミック」などで活躍していましたが、1976(昭和51)年の「風と木の詩」は少年同士の耽美的ウホッマンガとして業界に衝撃を与えました。そしてその傍らで翌1977年には、「月刊マンガ少年」で「地球へ…」の連載を開始します。少女漫画家が少年漫画誌で連載を持つことは当時としては画期的でした。同時期に竹宮恵子と並び少女漫画家の双璧といえる萩尾望都も「少年チャンピオン」で「百億の昼と千億の夜」を連載しており、これは全連載を読みました。

1978(昭和53)年、「地球へ…」は第9回星雲賞コミック部門受賞し、1980(昭和55)年には「風と木の詩」と「地球へ…」で第25回小学館漫画賞を受賞しています。萩尾望都は 1976年に「ポーの一族」「11人いる!」で第21回小学館漫画賞を受賞し、1980年に「スター・レッド」で星雲賞コミック部門受賞しており、やはり当時はライバルというか好対照の二人ですね。ちなみに二人とも紫綬褒章(萩尾望都が2012年、竹宮恵子が2014年)を受賞しています。

大ヒットとなった「地球へ…」は、1980年4月26日に東映によりアニメ映画化されました。当時はSFブームで、前年には「銀河鉄道999」が大ヒットしており、これに続く人気コミックの映画化として期待されました。作品の出来については賛否が分かれましたが、竹宮恵子は「私の作品で『地球へ…』が最も有名になったのはアニメ化された為かもしれない」と語っており、竹宮恵子作品の最初の映像化作品となっています。

映画版はロードショー時に私も当時所属していた放送部の有志と見に行った記憶があります。原作を読んだことがなかったので、映画のオリジナル要素についてはよく分かりませんでしたが、原作とは大分雰囲気が違っていたようです。このことについて竹宮恵子は「映画化を許諾した時点で全く別の作品と思っているので、全く気にしていない」という趣旨のコメントをしています。

恩地日出夫というアニメ制作の経験のない映画監督が監督に就任したこと、主要なキャラを有名俳優が演じたことなど、さらに主要キャラクターはコスプレをしながらアフレコを行なうなど、本作の異色ぶりは当時から色々と目立っていました。もしやこれに宮崎駿は影響を受けたのかな?彼も実写映画の監督でもしてみたらいいのに。

ちなみに主人公のジョミー・マーキス・シンは井上純一(戸田恵子の元夫)、ライバルキャラのキース・アニアンは沖雅也(涅槃で待つ)、ソルジャー・ブルーは志垣太郎(ベルばらではアンドレもやっていました)、フィシスは秋吉久美子、ジョナ・マツカは薬師丸ひろ子といった具合です。

あらすじは…スーパーコンピュータによる完全な管理下にある遙かな未来、地球から遠く離れた植民惑星で育った少年ジョミー・マーキス・シンは14才の誕生日を前に不思議な夢をしばしば見ていましたた。14才の誕生日は「目覚めの日」と呼ばれ、成人検査が行われるのですが、実は成人検査とは、社会人としての適性を検査し、過去の記憶を消して洗脳すると同時に、超能力を持つ新人類「ミュウ」を発見し、社会から排除するためのものだったのです。

ミュウと診断されたジョミーは不適格者として抹殺されそうになりますが、ミュウが救援に入り、混乱の中ミュウの船に迎えられることとなりました。ミュウの長ソルジャー・ブルーは、長年にわたりミュウの人権を訴え、仲間を増やしつつ統治機構がある地球を目指していましたが、もはや寿命が尽きようとしていました。新しいソルジャー(ミュウの長の称号)となるようブルーに請われたジョミーは、彼の記憶と精神を受け継ぎ“ソルジャー・シン”となります。

一方、統治者となるべく養育を受けたエリート青年キース・アニアンは、成人検査を受けた記憶も幼い頃の記憶も一切持たず、出世コースをひた走りますが、様々な出来事の中で、徐々に自身の正体に気づいていきます。ジョミーとキース、この2人の接触は様々な事件を引き起こすこととなります。果たしてジョミー達ミュウは地球(テラ)へたどり着くことができるのでしょうか…?

原作ではSFによくあるメカニックな意匠だった主人公達の宇宙船や兵器が生物(貝類)を想起させるデザインに変更されています。女性漫画家の泣き所はメカなので、これは良い判断だったと思います。


主題歌「地球へ…(Coming Home To Terra)」は作詞:竜真知子、作曲:小田裕一郎、編曲:川上了で、ダ・カーポが歌いました。ダ・カーポは1971(昭和46)年に結成された男女のデュオで、誰にでも親しめるメロディーと歌唱力で人気を博し、1970年代から1980年代を中心にヒット曲を飛ばし、現在でも活躍しています。

1974(昭和49)年の「結婚するって本当ですか」が有名ですが、オリジナル曲もさることながら、唱歌・童謡・フォークソングなども手広くカバーしていることでも知られています。グループ名は演奏記号のダ・カーポ(最初に戻る)に由来し、いつまでも「初心を忘れずに」という思いがこめられています。最近では娘の榊原麻理子も加わって3人組になったりもしていました。


ちなみに「ダ・カーポ」で画像検索するとやたらに女の子達がヒットするんですが…どうやら「D.C. 〜ダ・カーポ〜」というエロゲーのようです。私はプレイしたことはないのですが、アニメ化されるなど人気シリーズのようですね。

そういえばこんな画像も。やはり「テラへ…」と読むんでしょうね。花咲き乱れる春の寺院は確かに行きたい場所ではありますが。

ただひとつの 夢のために
ただ一度の 生命賭けた
それは 果てしない 憧れ
輝け みどりの故郷
ああ 孤独な 胸を包む
ああ まぶしい 愛の記憶
今は もう遠い あなたに
見せたい はるかな故郷
Coming home to Terra
Coming home to Terra
愛の星 その名は 地球(テラ)
Coming home to Terra
Coming home to Terra
美しい その名は 地球(テラ)地球(テラ)

もう誰にも 止められない
もう誰にも さえぎれない
深い悲しみの 淵から
めざそう 心の故郷
Coming home to Terra
Coming home to Terra
愛の星 その名は 地球(テラ)
Coming home to Terra
Coming home to Terra
美しい その名は 地球(テラ)地球(テラ)
それでは聴いてみて下さい。まずはフルバージョン。映画のチラシが一枚絵の画像となっています。
こちらは2007年に放映されたテレビアニメのOP映像を使用しています。テレビサイズのせいか途中の歌詞が抜けているのが残念。
地球や宇宙の画像が入ったバージョンです。
この歌詞を東日本大震災に仮託する人もいるそうです。“今はもう遠いあなた”は震災で亡くなった愛する人、“みせたいはるかな故郷”は被災地ということでしょう。そう考えると“深い悲しみの淵からめざそう心の故郷”ってほんとはまっていますね。被災地の復興が一日も早く進みますように。


スポンサーサイト