記憶に残る一言(その23):ヨヨ王女のセリフ(バハムートラグーン)

今日は良い天気の札幌でした。三月ともなると陽射しの強さをはっきりと感じますね。雪もどんどん溶けて結構なことです。大地を踏みしめるって喜びだったんですねえ。雪に埋もれた河川敷を我らの手に取り戻す日もきっと近い…。
本日は記憶に残る一言です。まだエロゲーに手を出していなかった頃の私に、ある意味ゲーム界におけるNTRを初めて教えてくれた記念碑的作品「バハムートラグーン」からヨヨ王女のセリフです。
「バハムートラグーン」は、1996(平成8)年2月9日にスクウェア(現・スクウェア・エニックス)から発売されたスーパーファミコン用のシミュレーションRPGです。当時のスクウェアにはファイナルファンタジーというビッグネームがあり、販売本数は圧倒的でしたが、本作も販売本数約53万本でなかなかに健闘しました。
空に島(ラグーン)が浮かぶ世界「オレルス」を舞台とし、各チャプターごとに自由行動と出撃を繰り返し、グランベロス帝国と戦っていく物語です。ユニットとドラゴンを組ませる戦闘や、ドラゴンに餌をあげて成長・変身させていくシステムがユニークでした。難易度はシミュレーションRPGとしては易しく、詰まることはありませんでしたが、個性的な脇役が多くネタも豊富でした。
主人公は「オルレス」のラグーンの一つ、カーナの戦竜隊長ビュウです。JR東日本の旅のブランドみたいな名前ですが、多分関係ありません。無口で無表情なのに老若男女を問わない人気者ですが、特にドラゴンに懐かれています。
そんな彼には幼馴染みで友だち以上恋人未満な関係の物語のヒロイン・ヨヨがいます。カーナ王の一人娘で、要するに王女様です。善戦虚しくカーナが陥落した時にグランベロス帝国に囚われてしまいます。かろうじて落ち延びたビュウは各ラグーンの残党を糾合して反乱軍を結成し、解放戦争を戦っていきます。もちろん当面の目標はヨヨ奪還です。囚われの王女といえば18禁的妄想ではあんなことやこんなことをされてしまう存在。まあスーファミソフトだから無茶なことはないだろうと思っていましたが……
ヨヨは序盤に名称変更可能で、ヒロインだしということで好きな女の子の名前をつけた人も沢山いたとか。だがそれはスクゥエアの巧妙な罠だった…。ストーリー中にはビュウとヨヨの過去の回想シーンが入っているのですが、その中でまだ幼かったビュウとヨヨはドラゴン(サラマンダー)に乗って教会へ向かいます。この教会は、2人きりで訪れた男女は将来かならず結ばれるといわれる伝説の樹みたいな言い伝えのある教会なのです。
ヨヨは「サラマンダー……とっても、はやいね!!」 と感激します。教会前に降りたものの、ヨヨは中には入らず「大人になっても今と同じ気持ちで、教会に誘ったら一緒に来てくれる?」と再来の約束をしていたのでした。なんとなく「秒速5センチメートル」を思い出すような展開ですが、もう結ばれることにリーチがかかったと思わざるを得ない状況です。
その後グランベロス帝国に拉致・軟禁されることとなったヨヨですが、ひどい虐待やいじめ(性的な意味も含めて)を受けているかと思いきや、実は扱いはそうひどいものではありませんでした。世話役が、皇帝の身辺警護を任とする親衛隊長パルパレオスだったのです。ヨヨはパルパレオスと会話するうちに、あろうことか心惹かれていってしまうのでした。そして一度だけ皇帝から飛行許可が出たときに、ヨヨが選んだ行き先はビュウとの思い出の教会でした。
パルパレオスの駆るレンダーバッフェ(帝国軍の竜)に乗った時のヨヨの感想がこれです。
かの教会に到着した後、ヨヨはパルパレオスに「ここが思い出の場所なのか?」と聞かれます。すると「ううん…思い出の場所なんかじゃない。だって…私たち…これからはじまるんですもの。」と答え、例の言い伝えは知らせずに2人で教会に入っていきます。
その後ヨヨは解放軍に救出され、パルパレオスも皇帝サウザー(愛などいらぬ!と言ったあの聖帝と同じ名前ですが、たぶん別人です)の命により、解放軍に加入します。囚われの王女が敵国の将軍に厚遇を受けて恋に落ちるという話は、ファイアーエムブレム第一作「暗黒竜と光の剣」に登場するアカネイア王国のニーナ王女とグルニア王国黒騎士カミュを連想させます。ニーナとカミュの恋愛はプラトニック(多分)で、カミュは祖国に対する忠義とニーナへの愛の間で苦悩した末、結局祖国を裏切ることが出来ずに壮絶な戦いの末、行方不明になりました。
カミュの場合はその潔さや悲恋ぶりがプレイヤーから好感を持たれて「退場」を惜しまれたので、シリーズの他の作品に間違いなく同一人物であろうと推測される仮面の騎士が登場しています。その後黄金聖闘士となって「水と氷の魔術師」と呼ばれるように…
(嘘)。
が、バハムートラグーンは全く違う展開を見せます。戦闘終了後にビュウ・ヨヨ・パルパレオスの3人は例の教会に入ることになるのですが、そこでヨヨはビュウにこんなことを話し始めるのです。長いのではしょりますので完全に正しくはありませんが、意味は同じです。
「ビュウ……今までありがとう。でも私……もう戻れないの。楽しかったあの頃に……。でも…きっとそれはいいことなの。ビュウにとっても……私にとっても……」
「ねぇ……ビュウ。大人になるって悲しいことなの……。誰かを傷付け…何かを失い…いつかそんなことに気づかなくなってしまう…だんだんと…慣れていってしまう…」
「本当に見えないのは自分のこと…。見えるようになるのは…人の気持ち…思い…。だから…優しくなれる…。誰かのために…優しくなれる……」
ヨヨとパルパレオスを背にその場を後にするビュウ。そしてヨヨとパルパレオスは教会の祭壇に行き、愛を誓い合うのです。まさかの目の前でのNTRッッ!!
パルパレオスが解放軍に加入した後は、ヨヨは見違えるかのように元気になります。祐一さんに駆け寄る明里の笑顔を連想して下さい。それだけならまだいいのです。その後仲間の女性キャラから「ヨヨさまの部屋から苦しそうな声が聞こえる」という噂話が聞かれます。そしてその後も相変わらず聞こえると。
心配して(笑)ビュウがヨヨの部屋に入ると、なぜか奥の寝室から慌てて走ってくるパルパレオスと遭遇し、寝室ではベッドで寝ているヨヨがいます。苦しそうな声って…そうか、そういうことかヨヨ。
お・ま・え・ら!!!戦争中になにやってけつかるねん。そんなNTRカップルを目の前にして戦い続けなければならないビュウの心境たるやいかに。まあ危機的状況に陥ると種族維持本能が強く働くそうですが……
冷静にみればパルパレオスは特別悪い奴ではないのですが、上記のように人の心の機微に疎いところがあり、不用意な言動を繰り返すことでビュウ以外にも方々で軋轢を生んでいきます。戦争終結後は、荒廃した祖国グランベロスを見捨てる事が出来ず、ヨヨと別れる事を決意し、祖国を立て直す為に帰還します。
しかし国民は既に暴徒と化しており、彼の居場所は失われていました。「おめーの席ねぇから!!」(あ、これはインパクトあるから別途取り上げましょう)そして敗戦の責任を問う暴徒の凶刃に抵抗しないまま命を散らします。プレイヤーの誰もが「ざまぁ!!」と快哉を挙げた瞬間です。まさにバハムートラグーン界の伊藤誠。
ヨヨはその後どうしたんでしょうね。まさかビュウとよりを戻そうとしたりはしないでしょうね。あれだけのタンカを切っておいて今さら。しかし、エンディングでは実際にキープ発言のようなことを言っているのですよ。もしそんな恥知らずであればサラマンダー以下のドラゴン達で城を火の海にしたりましょう。
なお、のスクウェア(現・スクウェア・エニックス)のRPGに登場する悪名高いヒロインたちを指し「スクウェア3大悪女」という言葉があります。「旧スクウェア」RPGにおいて、主人公を裏切る、性格がうざいなどの理由で叩かれることの多い3大女性キャラクターのことで、ここでいう「悪女」とは、わざわざゲームの世界でも不快感を与えてくれる「単なる嫌な女」という意味も含まれています。作品内の登場人物に害をなすというだけでなく、プレイヤーの憎悪を買うという面もあります。
多くの「3大○○」では、二つはほぼ鉄板で、最期の三つ目については諸説ある場合が多いですが、スクウェア3大悪女についても同様で、「バハムートラグーン」のヨヨと「ライブ・ア・ライブ」のアリシアは鉄板で、三人目には「魔界塔士Sa・Ga」のミレイユか「ファイナルファンタジーⅧ」のリノアで意見が分かれるようです。これは魔界塔士Sa・Gaが比較的マイナーで知らない人が多いこともありますが、「どちらが正しいか」よりも「ヨヨとアリシアのインパクトが強すぎて、他はわりとどうでもいい」という論調になっているようです。じゃあ「スクウェア悪女四天王」でいいんじゃ…。
ヨヨについては上記のとおりビュウ視点であるプレイヤーの心を傷つけるような発言を行い、ヨヨのベッドからは「12個入りのタンスのアレ」が出てくるなど、結構露骨な描写も多々あるのでもうどうにも逃れようのないところです。
ちなみにアリシアは、といえば主人公に求婚されて快諾し「誰よりもあなたを信じます」と誓うのですが、直後に現れた魔王に攫われてしまいます。当然主人公はアリシア救出のために禁断の地に赴くのですが、仲間と共に魔王を討ったものの、アリシアを見つけることはできず、仲間は死に、主人公は魔王の幻影に惑わされ国王を殺してしまいます。真実を確かめるべく再び禁断の地へ赴いた主人公は、死んだはずのパーティーメンバーの一人である親友に遭遇します。
彼は密かに抱き続けてきた主人公への劣等感を爆発させ、死を偽装して主人公を国王殺しの罠に嵌めたのでした。親友を倒すと、ずっと探していたアリシアがようやく登場しますが、何故かアリシアは主人公を非難し親友を擁護し、そのあげく親友の後を追い自決してしまうのです。帰るべき場所を失い、親友と愛する者に裏切られた主人公は絶望の果てに世界を憎み、魔王になってしまいます。何が彼女をそこまで変えてしまったのかが全く描写されていないため、プレイヤーとしては彼女に全く感情移入できないという点も大きいと思われます。
ミレイユについては敵ボスに掠われたふりをして実は寝返っていたということで、「強者にひれ伏す口だけ女」と揶揄されますが、登場シーンが短いこと、裏切りがわりとありがちなものであることを、後に反省している事などから、悪女枠として入れるのは微妙とも言われています。
松たか子激似のリノアについては「私のことが、好きにな~る、好きにな~る」「ハグハグ」「おハロー」といったFFヒロインらしからぬ軽薄な言動や、パーティーから度々抜けるてゲーム的に不便という理由から不快と感じるユーザーが多かったのが要因のようです。変わったところはありますが、普段はポジティブでいい子なので、他の3人に比べると悪女というには程遠いのではないかと思われます。
話を戻してヨヨのセリフについてです。実際にレンダーバッフェがサラマンダーよりも速いのは事実でしょう(その後ビュウもサラマンダーも成長しているので、現時点で比べたらわかりませんが)。だからその速さに感激するのは別にいいのですが、なぜ過去の想い出であるサラマンダーと比べなければならないのか。そして何故にそれを声に出して言うのか。そんな過去のイベントをパルパレオスが知っている訳でもないし。この点を捉えてはヨヨの性格の悪さが滲み出ていると指摘する向きもあります。少なくともビュウ視点のプレイヤーの気持ちを傷付ける以外の効果はないセリフです。
その性格の悪さゆえが、このセリフは混同ないし改変され、「サラマンダーよりはやーい」→「さらまんだーより、はっやーい!」→「サラマンダーなんかよりはやい!」
などと(故意に?)間違われる場合があります。
などと(故意に?)間違われる場合があります。
こんなパロディが。「電波女と青春男」8話より。CVは野中藍。
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こちらは「さよなら絶望放送」第89回より。新谷良子が杉田智和に言わされています。
「機巧少女~メインキャストは傷つかない」第9回より。原田ひとみがクイズの解答として脈絡なく突如言っています。
「ノーゲーム・ノーライフ」第9話より。CVは井口裕香。一番正しいセリフを言っています。ついでに「大人になるって悲しい」までも。
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