さびしんぼう:「尾道三部作」最高傑作のテーマ曲はショパン作曲

今日も今日とてけっこう雪が降りしきる札幌からこんばんは。そういえば北海道では公立高校の入試日でした。ローカルテレビの北海道放送(HBC)では夕方に解答速報を放映してたりして、東京とはひと味違うなあと思いました。

三月と言えば卒業シーズン。別れの季節ですね。そういうわけでふと思い出したのがショパンの「別れの曲」です。正式名称は練習曲作品10第3番ホ長調。「別れの曲」の愛称は、1934(昭和9)年のショパンの伝記映画であるドイツ映画“Abschiedswalzer”、邦題「別れの曲」でこの曲が主題曲となって物語が展開していったとことに因みます。

実はドイツ語版の他にキャストを入れ替えたフランス語版が制作されており、日本で上映されて大ヒットしたのはフランス語版の方でした。映画はNHKで何度か放映されましたが、オリジナル版(ドイツ語版)だったため、劇場で見たものと違うと抗議が殺到したとか。フランス語版のタイトルは“La chanson de l'adieu”で直訳すると「別れの歌」、ドイツ語版のタイトル“Abschiedswalzer”は直訳すると「別れのワルツ」になり、邦題はほぼ直訳といっていい感じですね。

ショパンはこの曲について「一生のうち二度とこんなに美しい旋律を見つけることはできないだろう」と言ったそうです。とりあえず聴いて下さい。ブラジルのピアニスト「アルトゥール・モレイラ=リマ」の演奏です。
さてこの曲をモチーフとした映画としては、大林宣彦監督のいわゆる尾道三部作の掉尾を飾る傑作「さびしんぼう」があります。1985(昭和60)年公開と30年も前の映画ですが、ノスタルジックで実に良かったですね。この映画については別途取り上げたいですが、何しろ30年前に見たきりなのでその前にもう一度見たいです。

一つだけ言えることは、「秒速病」患者ないし「秒速病」患者になる資質のある人にはたまらない映画ですよということです。違うのは、秒速的に終わってしまうのかと思いきや、どんでん返しでハッピーエンドであることで、むしろ私は「さびしんぼう」を見ていたので、どんでん返しを期待していたのにそれがなかった秒速にまずあっけにとられ、次ぎに不治の病に罹ってしまったという。

主役は尾道三部作全てに登場する尾美としのりで、ヒロイン役は富田靖子でした。今では演技派というかベテラン脇役というか、そういう位置での演技が多いですが、デビュー当初は薬師丸ひろ子や原田知世路線に近い美少女女優だったんです。しかし、その後テレビドラマで期待されたほどの視聴率を取れなかったりし、路線を変更していくことになります。

余談ですが、中嶋朋子も「ふたり」の頃は美少女でしたが、その後はちょっと…。在野の美人鑑定士である私のお眼鏡にはかなわなくなりました。「時をかける少女」の原田知世は実に素晴らしかったですが、この人は今なお当時の面影を濃厚に残していて奇跡のような人です。

今となっては「さびしんぼう」までは美少女の皮を被っていたんだなあこの人はと思うのですが、とりあえず「さびしんぼう」での富田靖子は素晴らしかったんです。橘百合子最高!富田靖子はその他に謎の少女“さびしんぼう”など四役をこなしていましたが、私は百合子が好きだったんですが、富田靖子の本領は“さびしんぼう”の方だったということでしょう。

「別れの曲」は「さびしんぼう」全編にわたって使用されています。尾美としのり演じるお寺の息子井上ヒロキが密かに憧れる女子校のマドンナ橘百合子が学校で弾いているのがこの曲ですが、その一方でなぜかヒロキのママンのタツ子(藤田弓子)も別れの曲を弾くことをヒロキにせがみます。その理由とか“さびしんぼう”の正体がわかると、この母子の間に横たわる「闇」に気づいてしまったりしますが、その辺りはあまり深く触れないほうがいいでしょう。とりあえず破局あるのみと思われたヒロキと百合子が奇跡的に結ばれたことだけでよしとしましょう。

ラストシーンの大人になったヒロキの後ろに座る女性は百合子に激似(富田靖子なんだから当然ですが)で、ナレーションもつとめているヒロキは「百合子さんにそっくりの女性」と言っているので、素直に取れば百合子とは別れて彼女そっくりな別の女性と巡り合ったのかも知れません。そのシーンで別れの曲を弾いているヒロキの娘も富田靖子が演じているので、合わせて四役と言われるのですが、あれはやはり百合子その人だ(つまり富田靖子の四役とはさびしんぼう、少女百合子、大人百合子、ヒロキと百合子の娘)と信じたいです。だって秒速病患者の皆さんは、貴樹が明里と別れて明里そっくりな別の女性と結ばれたとしても納得しないでしょ?可哀想な百合子を救わずして何のための男だタツキ。

そして最後、エンディングクレジットで、軽快に編曲された「別れの曲」が富田靖子によって歌われ、映画をしめくくります。タイトルは映画と同じ「さびしんぼう」です。作詞は売野雅勇、作曲はいわずとしれたフレデリック・ショパン。

サヨナラ…
あなたに出逢えて 嬉しかった
どこかでもう一度 逢えるって約束して

淋しさ あなたと
分け合えたらいいのに…
私の中で眠り続ける
未知(とお)い人よ
セピアに(色褪せた)
写真で(あなたに)
哀しく(ああ)微笑いながら

輝く(さざ波)
時の波間を滑りあなたに
逢いに行く私を
優しく(優しく)手のひらで(もういちど)
受けとめて 星屑のように

涙が静かに
白鍵(ピアノ)を叩く夜は
見えないカレンダーをめくるわ
星座たちが
未来が(手のひらで)
昨日に(変わるわ)
あなたに(ああ)見つめられて

サヨナラ…(サヨナラ)
あなたいないと 淋しくなるね
忘れないで私
恋して(いたこと)
告げないで(密かに)
想い出の 写真に帰るわ
さびしんぼう さびしんぼう

それでは聴いて下さい。映画のシーンをちりばめた画像とともに。
ついでなんで映画の予告編も。
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