宇宙戦艦ヤマト:思い出のシーン②

七色星団とドメル艦隊
毎週土曜日はヤマト考察の日、という訳ではありませんが、先週冥王星沖海戦を取り上げたのに続き、今回はもう一つ私の好きなバトルシーンである、七色星団決戦を考察したいと思います。
この戦いはドメル艦隊対ヤマトの航空決戦となりました。ガミラスはナチスドイツのイメージを濃厚に有する帝国ですが、「宇宙の狼」ドメル将軍は「砂漠の狐」ロンメル将軍のイメージを持っていると思われます。敵ですが、武人らしく、卑怯なふるまいをしません。友達になればいい酒を飲めそうな感じがします。
ドメル将軍は銀河系方面軍作戦司令長官に任命され、バラン星の基地を囮に人工太陽を落下させるという奇策により、ヤマト相手に勝利を掴みかけるのですが、副官ゲールの裏切りによりデスラー総統から作戦遂行に待ったがかかってしまい、結果的に敗北。軍法会議で死刑判決が下されます。
しかしデスラーはドメル以外にヤマト撃破は不可能と考え、死刑執行命令を破棄してドメルに汚名返上の機会を与えます。ドメルは、勇躍各戦線から信頼できる昔の部下を結集して空母機動艦隊を編成し、七色星団でヤマトに決戦を挑みます。
ここまでが決戦に至る過程なのですが、既にツッコミどころがいくつかあります。

ドメル(左)とゲール
まずドメルを裏切ったゲールですが、いかにも悪役そうな面構えはさておき、ドメルの前任の銀河系方面作戦司令長官でした。成績不振により更迭するのはよしとして、後任の副官にするという人事はいかがなものでしょう。だいたい副官というのは副司令長官ではありません。高級役職者の組織運営、事務を助ける士官の役職のことです。ドメルは将軍と呼称されるだけで大将なのか中将なのかわかりませんが、将官クラスの副官なら、どんなに地位が高くても佐官級でしょう。ゲールはドメルの前任者である以上当然将官クラスなので、この人事はあんまりです。ゲールでなくてもひねくれてしまうというものです。
次にデスラーの態度です。ドメル以外にヤマトを倒せる者がいないと考える、それは正しいと思いますが、それならばどうして人工太陽落下作戦を中止させたのでしょう。確かにバラン星の基地は壊滅してしまいますが、艦隊や人員の退避は完了していたので被害は最小限度に抑えられており、ヤマトさえ倒せば後は何とでもなるではないですか。またそんなんせんでもヤマトごとき倒せる、と舐めているのならば、ドメルは死刑にして誰か別の将軍でも呼んだっていいでしょうに。ガミラス軍にはドメル以外に人材がいない、と言っているが如き態度は軍の将官達の士気に悪影響があると思われます。
こうした疑問はそのままに、ストーリーは展開されていってしまいます。ドメルは円盤型旗艦(ドメラーズ2世)に瞬間物質移送機を搭載し、3隻の空母と1席の戦闘空母で機動部隊を構成し、七色星団で決戦を挑みます。七色星団は、それぞれ異なる性質を持つ6つの星とガス状の暗黒星雲、黒色矮星からなる混成星団で、機動部隊が隠れやすいということから決戦の地に選ばれました。

ドメル艦隊セット
ここでのドメルの戦法は、

ガミラス艦載機。戦闘機(手前)、急降下爆撃機(右)、雷撃機(左)
① 第一空母が戦闘機を出撃させてヤマト艦載機を誘引
② 第二空母から急降下爆撃機が発艦。瞬間物質移送機でヤマト上空に移送。急降下爆撃開始
③ ヤマト艦載機が戻ってくると、爆撃を終えた爆撃機が逃げながら誘引
④ 第三空母から雷撃機が発艦。瞬間物質移送機でヤマトの横腹に移送。全方位から雷撃開始
⑤ ガミラス艦載機迎撃に大わらわだったヤマト艦載機が補給のために帰還
⑥ 戦闘空母から超大型爆撃機が発艦。瞬間物質移送でヤマト正面に移送。ドリルミサイル発射
⑦ ドリルミサイルが波動砲発射口に命中。ドリルが回転してエンジンに向け進行
⑧ ドメル艦隊密集隊形でヤマト正面に登場。砲撃戦を挑む
という形で進行しました。この間、ヤマトの「真の最終兵器」である真田さんとアナライザーがドリルミサイルに侵入し、回路を逆転させてドリルミサイルを逆進させることに成功。ヤマトから離れたドリルミサイルは密集隊形のドメル艦隊に一直線に……ドメル艦隊あぼーん。

ドリルミサイル命中!
ということで、その後ドメル旗艦の自爆攻撃で第三艦橋を失うなど、多大な被害を受けながらもヤマトは辛くも勝利しました。
ここでドメル戦法の評価です。①~⑦はまあよしとしましょう。ヤマトは純然たる宇宙戦艦ではなく、航空戦艦と言ってよいほどの艦載機を積んでおり、しかもその艦載機はガミラス機に比べて全く遜色のない性能・技能を持っているので、空母がもう少し欲しい気もしますが、瞬間物質移送機の利用もあってよく翻弄しています。恐るべきはこれだけの攻撃を受けても沈まないヤマトの防御力。波動エンジンのエネルギーを転換する装甲でも持っているのでしょうか(いかん、それはマクロスだ)。真田さんなら暇な時にそれくらいの改造はしてそうですけどね。
問題は⑧です。空母機動部隊がどうして戦艦の正面に出てくるのでしょうか。しかも密集体験で。第一~第三空母はろくな対艦兵装を持っていません。ヤマト主砲の射程外から第二次攻撃隊を発進させるべきでしょう。どうしても接近させるなら、甲板をひっくり返して対艦戦闘モードになった戦闘空母だけで十分です。
なにより、本当に空母機動部隊だけしか率いていないというのがマイッチングです。後詰に戦艦部隊あたりを置くのはセオリーではないでしょうか。冥王星にも配備していた普通の戦艦でいいんです。ドリルミサイルも、エンジンまで侵入して爆発させるなんて考えず、命中と同時に爆発で良かったのではないでしょうか。波動砲が撃てなくなれば、充分使命を果たしたといえるでしょうし。
ドメルの旗艦も妙です。瞬間物質移送機を搭載するのはいいとして、どうして前に乗っていたドメラーズ3世を持ってこなかったのでしょうか。この艦にさえ乗っていれば、機動部隊が壊滅した後も砲撃でヤマトを沈められた可能性は十分にあります。なにか、必要最低限度の戦力でエレガントに勝つということにこだわりでもあったかのように感じますが、バラン星の基地ごとヤマトを葬ろうとした男がどうしてここにきてケチくさくなったのでしょう。

しょぼいドメラーズ2世
これらの謎を勘案すると、やはりドメルはヤマトを舐めていたと断定せざるを得ません。艦隊全てがヤマトの正面に現れたのは、「お前を倒したのは俺達だ!」ということを誇示したからだったのでしょうし、砲戦部隊を率いていなかったのはやはり艦載機だけでヤマトを倒せるという意識、おそらくドリルミサイルへの過度な信頼感のなせる業だったのでしょう。ドメラーズ3世は、各戦線から一線級の空母を抽出したことへの物的補償として引き渡してしまったのかも知れません。そういえば異次元空間でヤマトと遭遇した際、ドメル将軍は三千隻ものガミラス艦隊を率いていたはずです。母さん、あの艦隊、どこに行ったのでしょうね。やはり物的補償で各戦線に…。ドメル、捨てきれなかった慢心ゆえに敗れる。

超ド級戦艦ドメラーズ3世
それにしてもガミラスの多段空母や戦闘空母はロマンにあふれていますね。宇宙に滑走路がいるのかということはさておき(ヤマトは滑走路なしに艦載機を発進させてますな)、そのデザインは素晴らしい。地球に来たガミラス高速空母(第二話)とはまったくかけ離れたデザインですが、多段空母の方が新型なのでしょうかね。戦闘空母はその後デスラーが座乗し、デスラー砲を載っけたりしてますが、デスラーはもはや空母としての運用は考えていなかった模様。超重爆撃機が露天繋止してありましたが、あの大きさではそれしかないとして、ドリルミサイル発射後はどこに行ったのか?その後は甲板上にありませんでした。爆装さえ外せば速やかに分解・格納できるような機体だったのでしょうか。

対艦戦闘モードの戦闘空母
最後に直接七色星団決戦とは関係のない話ですが、ドメルの元部下達が各地の戦線から帰還してきた際に、ルビー戦線、サファイア戦線、ダイヤ戦線、オメガ戦線と名乗っていましたが、それらの戦線でガミラスは一体どのような勢力と戦っていたのでしょうか?移住先を地球と決めていたにしては、戦線広げすぎと違いますかデスラー総統。実は各戦線で白色彗星帝国や暗黒星団帝国、ディンギルやボラー連邦と戦っていたりなんかして(笑)。
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