火星のプリンセス:30年以上ぶりに読んだ古典SF

二学期
 
 こんばんは。札幌では今週にも新学期が始まります。大通公園ではビアガーデンが終わって、いよいよ秋モードに突入です。そういえば夜はもう秋の気配ですねえ。

旧創元SF文庫版「火星のプリンセス」

 本日はエドガー・ライス・バローズの「火星のプリンセス」です。バローズの著作を紹介するのは当ブログでは初めてです。

エドガー・ライス・バローズ

 エドガー・ライス・バローズ(Edgar Rice Burroughs, 1875年9月1日-1950年3月19日)はアメリカの小説家です。「ターザン」の産みの親、といえば世界的に有名でしょう。

角川文庫版「火星のプリンセス」

 バローズはイリノイ州シカゴ出身で、元軍人の父の指示で軍人養成学校に入学しますが、ウエスト・ポイント陸軍士官学校へ入学できず、軍人になる事を諦めます。父の会社の事務員、騎兵隊員、会計係などの職を転々とし、1900年の結婚後も鉱山師、鉄道保安官、速記屋、セールスマン、広告代理店などの職を転々としましたが、全て長続きしませんでした。

岩崎書店版「火星のプリンセス」

 1911年にオール・ストーリーズ・マガジン社に送った小説原稿「デジャー・ソリス、火星のプリンセス」(Dejah Thoris, Princess of Mars) の前半部分がトーマス・ニューウェル・メトカーフに気に入られ、採用となり、翌年2月から6月にかけて「オール・ストーリー」に処女作「火星の月の下で」(Under the Moons of Mars)が連載されます。これが後に「火星のプリンセス」と改題されます。

秋元文庫版「火星のプリンセス」

 1912年の「類人猿ターザン」、19123年の「ターザンの復讐」で人気を博し、大衆小説家としての地位を確立して漸く貧困生活から脱出し、以後精力的に創作活動を行います。

集英社版「火星のプリンセス」

 バローズの作品は、「火星のプリンセス」を第一作とする「火星シリーズ」、「金星シリーズ」、「ターザンシリーズ」「地底世界(ペルシダー)シリーズ」など多数ありますが、1950年に死去後は作品のほとんどが絶版になってしまいます。理由は、アシモフ・クラーク・ハインラインら現代SFの祖ともいえる作家の登場により、それ以前のSF作家が顧みられなくなったためとも言われています。

小学館文庫版「火星のプリンセス」

 しかし1960年代になるとバローズの作品は復権し、第二次ブームが起こります。構成力や会話シーンの下手さという問題はあるものの、“目に見えるようなアクションを描く稀有な才能”が再評価されたからとも言われます。

創元SF文庫版「火星のプリンセス」

 日本では1965年に「火星のプリンセス」が店頭に並んだそうですが、その際には「山田風太郎の忍法帖と007シリーズの面白さを併せ持つ」と宣伝されたそうです。

偕成社版「火星のプリンセス」

 「火星のプリンセス」については、私も確か小学生時代に一度読んでいるのですが、今回読んでみて全く覚えてないことに気付きました。

アメリカ版「火星のプリンセス」

 「火星のプリンセス」は各社から刊行されていますが、今回は創元SF文庫版を読みました。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

「ジョン・カーター」版デジャー・ソリス

 南軍騎兵大尉ジョン・カーターはある夜、忽然としてアリゾナから火星に転移する。時まさに火星は乱世戦国、四本腕の獰猛な緑色人や、高度な科学力を持つ地球人そっくりの赤色人が戦争に明け暮れていた。その渦中に飛びこんだ快男子カーターは絶世の美女デジャー・ソリスと結ばれるべく、剣を片手に縦横無尽の大活躍を見せる…。スペースオペラの原点ともいうべき不朽の傑作。

タルス・タルカス・フィギュア

 ジョン・カーターは友人とアリゾナで金鉱を発見しましたがインディアンに襲撃されて命からがら洞窟に逃げ込みます。そこで意識を失った彼は、なぜか幽体離脱して火星(バルスーム)に瞬間移動します。地球よりも重力が小さい火星においては、彼の敏捷性や跳躍力は傑出しており、それらを武器に剣で火星生物や火星人と対決し、恋と冒険に生きていきます。

ディズニーの映画「ジョン・カーター」

 SF性よりもヒロイック・ファンタジー性が強い作品ですが、ヒロイック・ファンタジーの特徴である「剣と魔法」のうち、剣は出てきますが「魔法」はなく、それに代わって科学技術の産物が登場します。

映画の緑色人

 火星は地球より発達した科学を持っていますが、惑星としては滅びの道を歩んでおり、海は干上がり水は乏しく、火星人は戦乱の中にいます。火星人には大別して二種の火星人おり、カーターが最初に出会った緑色人は4本腕で、部族間や他人種への略奪に明け暮れ、愛や友情とは無縁の種族でした。

映画版のウーラ

 もう一つの所属であり、デジャー・ソリスの属する赤色人も、見かけは地球人にそっくりですが各王国毎に戦争に明け暮れています。

映画版のデジャー・ソリスとカーター

 カーターは、緑色人のサーク族に捕らえられましたが、愛や友情はなくとも公正さを重視し、強者を尊敬する彼らの中で、カーターは驚異的な身体能力によって一定の地位を得るていきます。特にサーク族の副首領であるタルス・タルカスとは友情に近いものを築いていきます。

可愛くないデジャー・ソリス・フィギュア

 ある日サーク族は赤色人の科学調査船団を攻撃し、赤色人王国ヘリウムのプリンセスにして絶世の美女であるデジャー・ソリスが捕虜となります。一目で恋に落ちたカーターは、デジャー・ソリスの信頼を勝ち得て脱脂津、ヘリウムに向かいます。

 しかし途中で別の緑色人部族のワフーン族の襲撃を受け、カーターはソリスと離ればなれになってしまいます。ソリスの行方を捜すカーターは、紆余曲折の末にヘリウムの隣国にして敵対国の赤色人王国・ゾダンガにたどり着きますが、そこで目撃したのは、愛するデジャー・ソリスが、ゾダンガの王子サブ・サンと結婚の約束をする姿でした。

火星の美女たち

 ジョン・カーターの恋と冒険の物語は、カーターの遺言により埋葬と遺産を管理することになっった甥のバローズが入手した叔父の手記という形を取っています。終盤、火星の危機の行く末を見届けることなく、カーターは再び地球に戻り、金鉱採掘で金持ちになりますが、バローズの知っているカーターは常に火星への思慕は募らせる姿でした。

 今回カーターは死にますが、それは本当の死なのか?それは火星シリーズが続いていることを考えれば、カーターの死は死ではなく、2度目の火星への旅だったのでしょう。

火星のプリンセスPOP

 火星の生物は多脚のものが多く、馬や象や犬に相当する生物が存在していますが、愛情をもって接するということがなかったため、初めてカーターが地球の犬や馬に接するような態度を取ったことで、一気に懐いていきます。火星のムツゴロウさんとはカーターのこと。

 赤色人は地球人そっくりで、緑色人は4本腕で上半身はサタンクロス、下半身はアシュラマンといった感じですが、遼種族は不倶戴天の宿敵という訳ではなく、終盤にカーターの協力によってサーク族の皇帝となったタルス・タルカスはヘリウムと同盟を組み、ゾダンガ王国と戦います。赤色人と緑色人の同盟は極めて珍しいことで、それによってジョン・カーターは両種族の間で重きをなすことになるのでした。その源泉が先進の火星では失われて後進の地球にはあった愛と友情であるというのが面白いところです。

襲いかかる大白猿

 2012年にディズニーが本書を原作としたSFアクション映画「ジョン・カーター」を製作しています。ただし興行は新記録を作ったロシアを始めとする国際市場では成功したものの、北米では不振で、また批評家のレビューも賛否両論となったそうです。

 「火星シリーズ」は11作あり、「火星のプリンセス」「火星の女神イサス」「火星の大元帥カーター」の三部作がジョン・カーターを主人公としたものであり、「ジョン・カーター」も三部作の第一作なのだそうです。

武部本一郎

 デジャー・ソリスは絶世の美女という設定なのですが、フィギュアはあんまり……。やはり武部本一郎の表紙絵が一番ですね。
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No title

『火星のジョン・カーター』というタイトルのジュブナイル版は小学生の時に読んだなあ。どこの児童SFシリーズだったか。やたら厚手のハードカバーだったこと、版画調の挿絵だったことは憶えてますな。

当時、合衆国はカーター大統領だったので、てっきりそのカーターさんが火星で大暴れするのかと。

Re: No title

 望郷士さんこんばんは、いらっしゃい。お久しぶりです。

> 『火星のジョン・カーター』というタイトルのジュブナイル版は小学生の時に読んだなあ。どこの児童SFシリーズだったか。やたら厚手のハードカバーだったこと、版画調の挿絵だったことは憶えてますな。

そのタイトルは岩崎書店<SF世界の名作8>のようです。Wikipediaによると1966年刊行ですね。翻訳は亀山龍樹、画は鈴木康行・沢田重隆なんだそうですが、特に知らない人ばかり…

> 当時、合衆国はカーター大統領だったので、てっきりそのカーターさんが火星で大暴れするのかと。

 ジミーちゃんですね。「なぜベストを尽くさないのか」という自伝本を出していましたが、今なら「お前ガナー」と突っ込まれてしまいそうです。大統領をやめてからの方が元気ですね、この人は。「史上最強の元大統領」とか「最初から『元大統領』ならよかったのに」とか言われています。
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