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イブの憂鬱:バブル後のアラサー女性の人生の転機とは

札幌の水辺

 暑い。札幌のアパートは暑い。川沿いの13階ともなれば風が吹き抜けていく、そういう気がしていましたが、甘かった。なぜ先住者が部屋にエアコンを取り付けていたのか、その答えを身をもって思い知りましたよ。

 内地のように風が抜けていかない構造なのです。玄関側が密閉型になっている(つまり各戸を結ぶ廊下も建物の内側となっている)ので、風が入ってきません。これは冬には必要不可欠なんでしょうが、夏の札幌では仇となります。

徒然草 第五十五段

 吉田兼好は「徒然草」の第55段で“家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き頃わろき住居は、堪へ難き事なり。”と言っています。現代語に訳せば“住まいの建築は、夏を考えて造りなさい。冬は、住もうと思えばどこにでも住める。猛暑の欠陥住宅は我慢ならない。 ”というところですが、こと北海道においては“家の作りやうは、冬をむねとすべし”なのでしょう。暑い夏は札幌ではほんの一時なのかな。そうだといいな。

徒然草

 本日は唯川恵の「イブの憂鬱」です。

 唯川恵の作品は、以前「刹那に似てせつなく」を紹介しましたが、本書は「29's―イブの憂鬱」というタイトルで1996年12月に集英社から刊行されたものです。2001年に「肩ごしの恋人」で直木賞を受賞しますが、受賞後の2002年2月に「イブの憂鬱」に改題されて集英社文庫から文庫版が刊行されました。解説では「直木賞受賞後初の文庫化作品」と書かれていて、それは間違いではないのですが、「直木賞受賞後第一作」と混同してしまいそうです。実際には「肩ごしの恋人」より5年前の作品です。

イブの憂鬱

 例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。

 29歳を迎えた真緒の日々は、ブルー一色。年下の男との恋は遊びに終わり、結婚に逃げ道を求め見合いをしても見事に失敗。その上、会社ではリストラの対象にされて。恋も仕事も、すべてが中途半端。そんな真緒の背中を押すのが3度の離婚を乗り越え今また新たな恋に燃える母と、シングルマザーの道を選ぶ大学時代の友人さつき。30の大台を目前に、自分の足で一歩を踏み出そうとする真緒の一年。

バブルの頃

 バブル期にわりと簡単に就職して正社員として不動産会社で働く真緒は29歳の誕生媚を迎えて情緒不安定になります。遊びも仕事も適度にこなしてきましたが、気がつけば恋人もいない29歳。同僚は年下が増え、「いい先輩」を装っていましたが、実は「ああはなりたくない」と陰口を叩かれていたり(そしてそれを漏れ聞いても怒れないのが悲しい)、バブルもはじけて傾きだした会社からはリストラ要員と見なされたりして、急に逆風が強く感じられるようになります。

 結婚を逃げ道にしようとお見合いをしてみたら相手から断られて大ショック。年下の同僚と酔った勢いで一線を越えても、相手からはセフレ扱い。なにもかも中途半端な真緒と引き替え、その母は学生結婚で真緒を産み、3度の結婚-離婚を越えてさらなる恋愛に燃えています。会社では重役となり、30歳年下の妹か弟を産もうという勢いのパワフルな母と、不倫の挙げ句にシングルマザーとして生きる道を選んださつきに影響を受けて、真緒も大きな一歩を踏み出すことになります。

三十にして立つ

 「論語」に「三十にして立つ」というフレーズがありますが、まさに真緒は30前にして本当に自分の意志で歩き始めます。会社には自ら辞表を叩き付け(いや、表面上は円満退社ですが)、さつきがフリーで始めた編集プロダクションを手伝ううち、今まで自分でも気付かなかった才能ややり甲斐に目覚めていく真緒。

 そうなると不思議なもので、女友達に横取りされた元彼や、お見合い相手と再会して熱視線を受けるように。モテ期到来です。

 さつきの不倫相手が子供を引き取りたいと申し出てきたり、真緒の母の妊娠騒ぎ→実は閉経、元彼の妻である女友達の凸撃など、様々なハプニングに見舞われながらも、真緒の新生活は今までにない新鮮さに満ちています。 

 さつきの出産は思わぬ難産となり、子癇となります。妊婦または褥婦が異常な高血圧と共に痙攣または意識喪失、視野障害を起こした状態のことで、発展途上国においては死亡率の高い症状です。閉経のショックで鬱状態になっていた真緒の母ですが、さつきの危機を知らせた真緒の電話で一気に立ち直り、病院に駆けつけると不倫相手と勘当されたさつきの両親を呼ぶように指示します。

唯川唯

 実は真緒の母も真緒を産むとき同じ子癇になったのだそうです。不倫相手にさつきの姿を見せ、これでも子供を取り上げられるのかと問う母。そしてさつきと両親の仲の修復まで取り持ちます。そして、その様子を間近に見た真緒は…

 途中ドン底に墜ちてその後立ち直っていく。ベタといえばベタな展開ですが、30歳を前にした女性の漠然とした不安感・焦燥感というものが良く描けていると思います。20年近く前の作品ということで今以上に「30越え」のショックが大きく描かれているような気がしますが、確かに30歳になるということは「青春の終わり」という気持ちになったことを自分でも覚えています。

 これから30歳になろうとしている人は一読すると勇気を貰えるかも知れません。ラストは真緒が30歳の誕生日を迎える朝の場面ですが、一年前とは大違いの真緒がそこにいます。正直29歳の真緒は嫁にしたくありませんが、30歳の真緒はぜひ嫁にしたいタイプです。

たった3年で人生は変わる

 docomoのCMで「たった3年で人は大きく変わる」と言っていますが、人間、変わるときは1年でも変わるのです。変わりたい人、変わる勇気を持ちたい人はご一読下さい。
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