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愛のひだりがわ:美少女は「盾」に事欠かない?

愛のひだりがわ

 今日はまたずいぶん涼しい一日でした。猛暑日の後ではひときわありがたいですね。私は夏が非常に苦手なので、もうあとはこの気候でいいのですが、これから夏休みの少年少女諸君は納得しないでしょうね。

 ということで(?)、本日はジュブナイル小説を紹介しようと思います。「愛のひだりがわ」、筆者は筒井康隆です。

 見ての通り、本書の文庫版のオビには「永遠の名作『時をかける少女』をついに超えた最高傑作!」の文字が躍っています。これは「時かけ」ファンとしては見逃せませんな。もっとも、「時をかける少女」は名作には違いありませんが、それを「永遠の名作」たらしめているのは、原田知世主演の映画だと思いますので、本書もぜひ素晴らしい美少女に主演させて映画化して欲しいものです。え?アニメ版?なにそれおいしいの?

 もっともこの本、出版は10年前の2002年なんです。例によって図書館で借りてきて読んでいるということで、まあ勘弁して下さい。みんなビンボが悪いんや。

 内容ですが、
 幼いとき犬にかまれ、左腕が不自由な小学六年生の少女・月岡愛。母を亡くして居場所を失った彼女は、仲良しの大型犬デンを連れて行方不明の父を探す旅に出た。暴力が支配する無法の世界で次々と事件に巻き込まれながら、不思議なご隠居さんや出会った仲間に助けられて危機を乗り越えていく愛。近未来の日本を舞台に、勇気と希望を失わずに生きる少女の成長を描く傑作ジュヴナイル。

 と紹介されています。主人公の名前が愛なんです。魔法少女ではないけど。愛の小学6年生から中学3年生までの旅と成長が描かれています。愛には特殊能力があって、イヌと会話ができます。というか、他の生物の意思も読み取れるようで、本書でもハマグリの「歌」を聞く場面が描かれています。

 父親が失踪して母親が過労死し、雇用主一家からは母親が苦労して貯めた金を全て横取りされ、一時は学校さえ行かせずにこき使われる愛。しかし学校に行けばいったでいじめっ子にさんざんいじめられる日々。愛は美少女で優等生なので、頭の悪い女の子や頭が良くて美人だけど、どちらも愛には一歩及ばない女の子にいじめられるのです。美少年のサトル(なんと髪の毛が空色)だけはさりげなく助けてくれますが。サトルに言わせると、愛と仲良くするのは「愛がいちばんきれいだから」で、女の子たちが愛をいじめるのは「きれいな子が見すぼらしい服を着ていると、すごくみじめに見えてしまうんだ。ブスがきたない服を着ているのは、あたりまえに見えるけど、それよりもずっと見すぼらしく見えてしまうんだ。だから愛はいじめられるんだよ」サトル先輩、批評がパネエですね(笑)。

 そして、雑誌の取材を受けたことを知った雇用主一家がその謝礼をも奪い取ろうとしたことをきっかけに、愛は父を探す旅にでることになります。愛は左腕が全く効かないというハンディキャップを背負っていますが、旅の途中、愛の左側には必ず誰かがいて守ってくれます。グレートデンだったり、金持ちの「ご隠居 」だったり、サトルだったり。父がいたらしい東京まで徒歩でたどり着くのです。

 旅の過程で愛は思慮深くなり、大人の階段を上っていきますが、おそらく近未来と思われる彼女を取り巻く環境は現在と比べても相当に過酷です。警察が機能せず、自警団や暴走族が幅をきかせていますし、愛自身、自警団に襲われたり、ロリコンにさらわれそうになったり、強盗に遭って有り金全部奪われたりと何度も危険な目に遭遇しています。まあ捨てる神あれば拾う神ありで、愛を助けてくれる人達もたくさんいて、世の中まだまだ捨てたもんじゃないなと思わせたりするのですが。

 東京に着いた愛は、父親と会うことはできませんでしたが、20数匹の犬を引き連れた「犬姫様」となって一世を風靡し、雑誌の取材を受けたり飲食店の警備を引き受けたりして、私立のいい中学校にも通うことができるようになります。そして、旅の間に出会った仲間達と共に、愛の金(本当はご隠居の金ですが)を奪った強盗達が経営する会社の乗っ取りを謀るのです。

 ラストは結構ビターです。会社乗っ取りは大成功し、愛もお金には困らなくなりますが、遂に見つけた父はどうしようもない状態に墜ちていました。愛は決別の言葉を静かに、しかし蕩々と述べて去りますが、その瞬間、愛は少女から大人になったのです。大人になるということは、子供時代の何かを失うことでもあります。愛は、イヌと会話ができなくったことに気付いて愕然とします。またサトルも空中浮遊ができたと言っていましたが、やはりそういう力は失い、また空色の髪の紺色になり、次第に黒髪に近づいています。

 でもまあ、賢く思慮深くなった愛の周囲にはいい仲間が集まっているので、美しくもたくましく成長していくことが予想されます。ただ、サトルと恋仲になるのかと思ったら、サトルは別の子と恋愛関係になっていました。つまり愛は失恋したわけですが、この辺、「秒速5センチメートル」に例えるならば、貴樹は花苗と出来て明里が振られるという逆バージョンになりますね。花苗大勝利。でも私はもちろん明里ファンなので、愛のひだりがわは私が守る!
花苗ついに勝つ!

 「マルドゥック・スクランブル」といい「愛のひだりがわ」といい、最近美少女成長譚に当たっています。幸い愛は誰の毒牙にかかるとこともありませんでしたが、もし旅に出なければ、ルーン=バロットのような目に遭っていた可能性が高いので、いいタイミングで旅に出たなという感じです。

 「時をかける少女」もそうですが、筒井康隆は女の子を描くのが上手いですね。でも原田知世が演じた芳本和子は特に美少女とは表現されていないのに対し、愛は登場人物が軒並み美少女だと言っている(みすぼらしい服装なのでよく見ないと気付かないようです)ので、きっと火田七瀬のような美人に成長することでしょうが、実写で映画化するなら、よほどの美少女を当ててくれないと困りますよ。せめて私が左翼を守りたくなるような子、久方ぶりに「天位」を与えたくなるような美少女女優をぜひお願いします。文庫の絵も、もっと可愛くはならんかったんかい(笑)。
愛のひだりがわ:単行本


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