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中国美女列伝(その40):潘金蓮~中国四大奇書「水滸伝」と「金瓶梅」に登場する典型的美毒婦

雷雨
 
こんばんは。雷雨が降ってきたり寒くなったり天気が忙しい日でした。現在引っ越しに向けて絶賛準備中なのですが、NTTから悲報が。

フレッツ光

 なんと札幌でのインターネット&光電話の設置工事は5月1日になると。あんまりにも遅いのでびっくりですが、如何ともし難いです。こんなことならさっさとNTTに連絡すれば良かったのですが、新居がなかなか決まらなかったもので。マンションタイプだと料金が安くなるのが救いですが。来週は引っ越しのほか、何かと忙しいので、6日が事実上筑波嶺での最後の更新になるかと思います。可能なら8日にも更新しますが、9日にはPCを引っ越し業者に引き渡します。

大通公園

 そういえば引っ越し先を行っていませんでしたが、北の大地・北海道は札幌市です。遊びでは何度か訪れていますが、仕事をするのは初めてです。知り合いの道産子達は住みやすいと言うのですが、どんなものでしょうか。

潘金蓮その1

 さて一週間空いてしまいましたが中国美女列伝行ってみましょう。本日が40回目にして最終回になります。中国の美女もまだまだ沢山いるのですが、私の能力で紹介できるのはこのあたりまでということで。最後の美女は潘金蓮です。

潘金蓮その2

 潘金蓮は中国四大奇書である「水滸伝」と「金瓶梅」に登場する架空の女性です。それなら「水滸伝」シリーズをやっていた頃に紹介しろと思うでしょう?私もそうしようと思ったのですが、画像検索したらまあ生身のエロい女性ばかりがやたらヒットして、なかなか美人画が出てこなかったので保留していたのです。今回ようやく少しは画像を入手しましたが、それでも「リアル潘金蓮」が沢山入ってきてしまいました。なるべくエロいのは排除しましたのでご了承下さい。

潘金蓮その3

 ちなみに四大奇書には他に「三国志演義」と「西遊記」があります。中国で元代から明代にかけ、俗語体で書かれた長編小説で、「奇書」とは「世に稀なほど卓越した書物」という意味です。もっとも本場中国では清代になってから「金瓶梅」の代わりに「紅楼夢」を加えたものを「四大名著」と呼ぶようになっており、「四大奇書」よりこちらの方が一般的なんだとか。

潘金蓮その4

 「金蓮」とは、当時の美人の基準の一つであった纏足を形容する語です。日本はかつて先進文明国である中国から様々な文化制度を導入しましたが、宦官と纏足は導入しませんでした。宦官については、異民族との幅の広い接触、征服という事実がなく、地形的な理由により騎兵というものもあまり発達せず、馬に去勢を行うという習慣も明治時代までなかったことからもわかるとおり、奴隷や異民族を去勢して使うという発想がそもそもなかったと思われます。

潘金蓮その5

 中国での宦官の存在理由の一つに、「後宮の純潔を守るため」「内廷の運用のため」「刑罰として宮刑があったため」などが挙げられますが、日本に於いては中国とは後宮の概念が異なり、男子禁制ではなく、「貞淑」という概念が希薄でした(「源氏物語」を見よ)。また内廷の運営も規模が違うせいか、女官による運営で足りており、わざわざ宦官を使う必要がありませんでした(江戸時代の将軍の大奥もしかりですね)。また、刑罰としての宮刑は隋の時代に廃止されているので、唐の刑罰制度を輸入しても宮刑=宦官は導入されませんでした。

潘金蓮その6

 纏足については、起源が五代十国時代の南唐期だとの説が有力で、宋代普及したとされますが、すでにその頃には遣唐使も廃止されており、以後の交流は貿易が主体だったため、纏足という習慣が伝われなかったものと思われます。もっとも存在を知っていても導入されたかといえば首をかしげてしまうところですが。

潘金蓮その7

 話がそれましたが、潘金連は「水滸伝」において、蒸し饅頭売りの武大の妻として登場します。武大は後に梁山泊で序列14位となる天傷星の行者・武松の兄にあたります。絶世の美女でありながら、性欲・物欲・向上心が強く、夫の武大を殺して情夫との淫蕩にふける典型的な悪女・淫婦として描かれました。

武松

 「水滸伝」では、武松が主人公を務める第23回から32回までを通称「武十回」と呼びますが、「金瓶梅」はこの間をさらに詳しく描いたスピンアウト作品ということになります。「金瓶梅」での潘金蓮は副主人公として描かれ、彼女の名の頭文字が作品の題名の一文字目として使われています。なお「金瓶梅」のタイトルは、潘金蓮の「金」、李瓶児の「瓶」の、龐春梅の「梅」を組み合わせたもので、それぞれ、「金」「酒」「色事」を指すのだとか。

潘金蓮と武大

 「水滸伝」においては、元々は商家の女中で、美形だったので商家の主人が手を出そうとしたのをはねつけ、夫人に告げ口しました。そのため主人の恨みを買い、最も醜男であると評判の武大に無理矢理嫁がされました。

潘金蓮その8

 そこへ虎退治で名を上げた、武大の弟の武松が現れ、居候となります。武大とは大違いの筋骨隆々たる美男である武松に惚れた潘金蓮は様々に色目を使いますが、兄思いで身持ちの堅い武松からは相手にされませんでした。

西門慶

 そんな時、薬屋で大金持ちの色男・西門慶が家の前を通りかかり、金蓮と互いに一目惚れとなります。二人は逢瀬を重ねますが、遂には夫の武大にも気づかれてしまいます。武大は浮気の現場に踏み込みましたが、武松と違って腕力のほうはからきしだったので、西門慶の逆襲で大怪我をしてしまいます。武大が邪魔になった二人は、武松が公務で留守なのを良いことに、治療薬と称して毒薬を飲ませて武大を殺害してしまいます。こうして障害の消えた二人は、誰憚ることなく不倫を重ねていきます。

潘金蓮その9

 そこへ帰ってきた武松は、兄の死に大いに驚きますが、葬儀役人から、毒殺の疑いある武大の遺骨を渡され、金蓮と西門慶の二人が兄を殺したと確信します。武松は金蓮と西門慶を殺し、兄の仇を討ちます。

潘金蓮その10

 「金瓶梅」では、武大の殺害に至るまでの流れは同じですが、西門慶の第五夫人として嫁ぐことになります。やがて武松が帰ってきますが、「水滸伝」とは異なり金蓮と西門慶は殺されず、武松はおたずね者となってしまいます。

ホウ春梅

 金蓮は侍女の龐春梅と共に西門慶の邸内でトラブルメーカーとなり、他の夫人といがみ合いますが、やがて金蓮と同様、人妻であった李瓶児が西門慶と不倫関係に陥り、夫を死に至らしめたことを知ると、彼女と擬似的協力関係となります。

李瓶児

 その後も様々な紛争を邸内で起こす金蓮ですが、協力関係にあった李瓶児が西門慶の子を生むと、嫉妬に駆られた金蓮は瓶児・官哥母子をいびり倒し、共に死に至らしめてしまいます。さらに西門慶に媚薬を過剰摂取させたことで、結局彼をも死に至らせてしまいます。

潘金蓮その11

 西門慶の死後は、春梅と共に以前から不倫関係にあった西門慶の娘婿の陳経済と乱行にふける金蓮ですが、乱行が正夫人の呉月娘の知るところととなり、激怒した呉月娘から追放され、売りにだされてしまいます。やがて買い手として登場するのが武松です。「やはり武松と結ばれる運命にあった」と喜んで嫁ごうとする金蓮であったが、もちろん武松は復讐するために接近したのであり、婚礼の日に殺害されることになります。

リアル潘金蓮その1

 ちなみに侍女の龐春梅にも西門慶のお手がついていますが、金蓮とともに追放された後、名家に嫁いで一度は他の女たちを見返します。しかし西門慶の娘婿の陳経済との再会で、転落が始まります。陳経済が殺された後、夫も戦死し、春梅の生活は次第に自堕落なものになっていき、最後には使用人と関係している最中に急死してしまうのでした。

リアル潘金蓮その2

 なお架空の人物のはずの潘金蓮には古くから実在説があるそうです。

リアル潘金蓮その3

 ① 宋の西門慶の妾の一人である。「水滸伝」に描かれている悪業は嘘で、西門慶の正室・呉氏の一族が潘金蓮の子孫をあてこするために作ったものであるという説。

リアル潘金蓮その4

 ② 潘金蓮は元末明初に実在した人物であり、清河県の長官武大の妻であった。「水滸伝」での悪業とは反対に、善人であったが、明末の群雄張士誠の部下に潘なにがしという武将が2人おり、潘が寝返ったために張士誠は朱元璋に敗れた。張士誠の参謀だった施耐庵(「水滸伝」の作者)が、それを恨んで同姓の潘金蓮を悪者に仕立て上げたのであるという説。

リアル潘金蓮その5

 いずれも伝説の域を出ませんが、どちらの説でも潘金蓮は本当は悪人ではなかったというのが面白いですね。

リアル潘金蓮その6

 「金瓶梅」の潘金蓮は毒婦としてのキャラクターが一層ふくらませられており、色欲をほしいままにする天性の悪女として描かれています。「金瓶梅」では、先行する「水滸伝」の世界で省かれていた女性、愛欲、金銭、仔細な日常描写といった要素が全面的に展開されています。

リアル潘金蓮その7

 その描写は非常に詳しく、食べ物、飲み物について具体的に列挙されていたり、人物の容姿、着ているものやアクセサリー、その柄やデザイン、色の合わせ方、化粧の様子なども詳細に描写されていたり、会話や金銭の受け渡しなど人々の振る舞いが活写されていますが、あまりに詳しく書いてあるので、読んでいてうっとうしく思われるほどだそうです。

リアル潘金蓮その8

 「金瓶梅」は当初は禁書とされましたが、赤裸々な性描写や痛烈な社会批判の内容ゆえに広く読まれました。「金瓶梅」は、中国文学史上、それまでの「水滸伝」や「三国志演義」などの波乱万丈のストーリーを特徴とする小説からの転換点にあたるものであり、その後の「儒林外史」や「紅楼夢」などの小説に大きな影響を与えました。

リアル潘金蓮その9

 現在では、作品に貫徹する批判精神に富んだリアリズムを以って「中国近代文学のさきがけ」と高く評価されています。また、当時の口語資料・社会資料としても興味深いものとなっています。すなわち、潘金蓮という稀代の淫婦によって、中国文学における小説の世界は、全く新しい時代に入ったといえます。

少女時代の潘金蓮

 ということで、中国美女列伝はひとまずお終いです。長らくお付き合いいただきましてありがとうございました。全く伸びない「海外」カテゴリーを何とかしようという不純な動機から始めたものでしたが、ご愛顧いただけたことは幸いでした。中国絵師には今後も頑張って貰いたいものです。
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