またあした:一見可愛らしい、しかし実は悲しい「まどマギ」詐欺ED

風邪、なかなか治りません。年のせいかな…。でもいろいろあって会社を休めないので年末年始はマイッチングですなあ。

というわけで本日も省力運転で失礼します。本日はまだまだあるぞまどマギ名曲集ということで、鹿目まどか(CV悠木碧)の「またあした」です。

テレビ本編だけを見ていた人は、「聞いたことないぞ」と思われるかもしれません。BD/DVD版の第1話・第2話(つまり1巻)のエンディングテーマとして作られた曲です。テレビ版のEDといえばいわずと知れたKalafinaの「Magia」なのですが、実は第1話と第2話では「Magia」は流れず、EDなしで本編中にキャスト・スタッフのテロップが表示されていました。

「まどマギ」のBD/DVDをリリースする際にあたり、EDなしではいかんだろうということで、蒼樹うめの書き下ろしイラストに合わせて、この曲が挿入される構成に変更されました。第1話第2話というのは、「まどマギ」が猫を被っていた時代で、すでに魔女空間など異形の部分は垣間見せていたものの、まだまだ「よくある魔法少女もの」アニメを偽装しており、リアルタイムで見ていた視聴者もすっかり騙されていた頃です。

この「猫被り」は3話の終盤まで続きますが、度肝を抜く驚異のラストで一気に本性を露わにします。そして呆然とする視聴者の前に流れるのがおどろおどろしい雰囲気の中緊迫感のある「Magia」なのです。これは第1話第2話ではとても流せない曲なので、新に創作されたのが「またあした」ということになります

OP曲「コネクト」を背景に展開されるOP映像も、後に「OP詐欺」と呼ばれる欺瞞に満ちたもの(褒めてます)でしたが、実は「コネクト」は単なる詐欺曲ではなく、第10話まで見ると誰の想いを歌ったものかが改めて理解できて視聴者の涙を誘うことになります。

「また あした」は歌っているのが鹿目まどかということもあり、背景がまどかと美樹さやか、志筑仁美が仲良く登校するシーンであることもあり、ED詐欺なのかと思われるところですが、単なるED詐欺ではないのです。
「それじゃ またね」って手を振って
無理に笑って さみしくなって…
歩道橋 自転車抱えて登る人
コンピニ 誰かのウワサ話
交差点 信号 遠くのクラクション
知らない誰かの笑い合う声
今日は独りで歩く 通い慣れた街
でもいつもよりもなんだか
自分がちょっと小さく思えるよ
「それじゃ またね」って手を振って
笑顔作って さみしくなって
ホントはまだ話し足りないけど
「それじゃ またね」って言葉で
また会えるってウソをついて
いつも通りの笑顔で言うよ
「また あした」
ここまでがBD/DVDのED版です。キュゥべえと出会う前のまだ平穏だった日常をまどかが可愛らしく歌っているように感じられますね。しかしラストの“「それじゃ またね」って言葉で また会えるってウソをついて”に要ご注目ですよ。まどかはもう会えないことを知っていてあえて言っているのです。

第10話を見たひとは、いわゆる「1週目の世界」のまどかを連想するのではないでしょうか。内気で初々しい眼鏡ほむらが魔法少女となっていたマミとまどかと初めて出会ったあの世界です。二人はワルプルギスの夜との戦いに身を投じます。

まどか「じゃ、いってくるね」
ほむら「えっ…そんな……巴さん、死んじゃっ、たのに…」
まどか「だからだよ。もうワルプルギスの夜を止められるのは、私だけしかいないから」
ほむら「無理よ!一人だけであんなのに勝てっこない!鹿目さんまで死んじゃうよ?」
まどか「それでも、私は魔法少女だから。みんなのこと、守らなきゃいけないから」
ほむら「ねぇ…逃げようよ……だって、仕方ないよ…誰も、鹿目さんを恨んだりしないよ…」
まどか「ほむらちゃん。私ね、あなたと友達になれて嬉しかった。あなたが魔女に襲われた時、間に合って。今でもそれが自慢なの」
まどか「だから、魔法少女になって、本当によかったって。そう思うんだ」
ほむら「鹿目さん…」
まどか「さよなら。ほむらちゃん。元気でね」
ほむら「いや!行かないで…鹿目さぁぁぁん!!」

マミが倒れ、ただ一人となったまどかからの、大好きなほむらに向けた悲しい別れの言葉とも取れるでしょう?というか、表面的な意味だけを追っていてはいけないのが「まどマギ」ワールドですから、深読みをしていかなければなりません。

独りには慣れてる フリをしてるけど
ホントはそんなに強くないし
いつもと同じ景色 いつもと同じ街
なにも変わらないハズなのに
自分だけが小さく思えるよ
「それじゃ またね」じゃなくって
「あと少し」って言えば良かった
気が付いて欲しくて期待していたけど
「それじゃ またね」って言葉で
また自分に ウソをついて
いつも通りの笑顔で隠すこの気持ち
「それじゃ またね」って手を振って
笑顔作って さみしくなって
ホントはまだ話し足りないけど
「それじゃ またね」って声さえ
届かないほど 近くて遠い
いつも通りに あと1度だけ言わせて
「また あした…。」

その他の解釈としては、まどかからさやかに向けてのメッセージとも取れるかもしれません。劇中、魔法少女となって転がる石のようにどんどん日常からかけ離れていくさやかを引き留め、少しでも長くいたいというまどかの心の叫び。ED絵が日常風景なので一層そんな気配があるような気がします。

あるいは第12話。魔女の生まれない世界を構築する代償として、キュゥべえに言わせれば「まどか――これで君の人生は――始まりも、終わりもなくなった。この世界に生きた証も、その記憶も、もう何処にも残されていない。君という存在は、一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果ててしまった。もう誰も君を認識できないし、君もまた、誰にも干渉できない。君はこの宇宙の一員では、なくなった。」という状態になるまどかのほむらへの想い。
ほむら「まどか、行かないで!!」
まどか「ごめんね。私、みんなを迎えに行かないと」
まどか「いつかまた、もう一度ほむらちゃんとも会えるから。それまでは、ほんのちょっとだけお別れだね」
ほむら「まどかあぁぁぁッ!!」
本編では健気に上記のように言っているまどかですが、本心では辛くて寂しくて仕方がなかったということが「叛逆の物語」で語られています。概念となって消えていくまどかの悲しい想いを歌った曲だと知ると徳光さんばりに涙が滂沱ですよ。

はたまた「叛逆の物語」ラスト。何かとても大事なことを忘れてしまっているという違和感を持ちながらほむらやさやか達と穏やかな日常を過ごしているまどかが、ごく近くにいながら遠い存在のようにも思えるほむらに対して呟いているような…

ということで曲だけ聞いた場合と、本編を全て見た場合で印象ががらりと変わる曲なのでした。まどマギにはそういう曲が多いですね。「コネクト」「Magia」「カラフル」「君の銀の庭」……。「またあした」も、物語を全て知った人にとってはただただ悲しい。
それでは聞いてみて下さい。ブルーレイ・DVD版のエンディング版です。フルHDを越えた4Kバージョンです。

http://www.youtube.com/watch?v=9B0kkHy9jds
フルバージョンです。HDですが一枚絵です。

http://www.youtube.com/watch?v=fUxgijxwgQQ
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