好きなアニメキャラ(その31):キュゥべえ(魔法少女まどか☆マギカ)

どうやら風邪をひいてしまった様子です。冬はなんとか乗り切ったのに春になってからひいてしまうとは情けない話です。喉が痛いのでヴィックス買ってきました。でも鼻・喉以外はあまり大した症状はありません。
さて本日の好きなアニメキャラは「お前は本当に好きなのか?」と小一時間問い詰められそうな問題キャラ・キュゥべえです。でも「まどマギ」の物語性の奥深さはこの人(?)あってのものなので、助演男優賞くらいはあげたいところです。他にろくな男性キャラはいないので、主演男優賞でもいいかも。もっとも性別は不明…というか性別があるのかどうかすらもわからないのですが、一人称が「僕」なのでとりあえず。
キュゥべえは「魔法少女まどか☆マギカ」に登場するキャラクターで、「魔法の使者」を名乗るマスコットのような外見の四足歩行動物であり、その正体はインキュベーターと呼ばれる、地球外生命体の端末です。インターネット上での略称は「QB」で、絵文字表記では(◕‿‿◕)もしくは/人◕ ‿‿ ◕人\とあらわされます。
キュゥべえはキュゥべえ自身が選んだ人間にしかその姿は視認できないようです。あるいはキュゥべえが見える=魔法少女ないし魔法少女の素質がある少女ということかも。会話はテレパシーで行っており、任意に相手の選択が可能なようです。
少女の願いを何でも1つ叶える代わりに魂をソウルジェム化し、魔法少女へと変化させる「契約」を交わし、魔法少女は魔女と戦う使命を課せられます。ソウルジェムの浄化に用いて穢れが溜まったグリーフシードを取り込んで処分したり、他の魔法少女のテレパシーを中継したりといった形で魔法少女に協力しているところは他の魔法少女アニメのマスコットに類似していますが…。
実際、物語序盤では魔法少女や同候補たちに友好的な態度で接し、笑顔を見せたり可愛い仕草を見せたりして油断を誘っています。また様々な助言を与えてもいます。しかし3話以降次第に明らかになっていく真のキュゥべえの姿は、あまりにも少女達の意表を突くものでした。
本名はインキュベーター。孵卵器という意味ですね。エントロピー増大による宇宙の熱的死を回避すべく、代替エネルギーとして感情をエネルギーに転換する技術を開発し、感情の発生源を求めて地球に飛来した異星生命体です。
キュゥべえの本当の目的は「数ある人間の感情の中でも特に強大な、第二次性徴期の少女が幸福から絶望に転じた際の感情エネルギーを採取し、宇宙の熱的死を防ぐこと」。つまり「願いを叶える」という奇跡をエサにした契約で魔法少女という「卵」を造り、彼女たちを絶望により魔女へと「孵化」させて、その際に発生する爆発的なエネルギーを回収し宇宙を延命させることを使命としています。
その過程で魔法少女達がどのような悲劇や絶望を背負って魔女になるか、魔女によって人類が害を受けたり、場合によっては地球規模の災害まで起こしたりことに対しては一切頓着せず、ひたすら契約とエネルギー回収にいそしんでいます。
というより、キュゥべえに言わせれば「僕たちの文明では、感情という現象は、極めて稀な精神疾患でしかなかった」ということなので、まどかが涙を流して訴える言葉は全くキュゥべえの心には届いていないようです。キュゥべえは人間とコミュニケーションを取るためのインターフェイスではあっても、本来は異星の生命体ですから人間の価値観が通用しないのも当然といえば当然かも知れません。
キュゥべえサイドから見れば、「極めて希な精神疾患」をこじらせまくっている思春期の少女達との交流というのは、「精神病院の鉄格子付きの病室で重度の患者と共同生活するような物」といってもいいのかも知れません。卑近な例を取ればとんでもない中二病の集団の中に紛れ込んで一緒に暮らさないといけないとか。そんな生活を長い間続けていると、それはもう契約にしか興味がなくなっても仕方ないかも知れません。
ただ、宇宙の延命は宇宙に生きる生命全てにとって必要かつ重要な崇高な使命にも関わらず、人間に対しては、犠牲に見合った報償を与えようとしないどころか、搾取後の地球の運命に配慮する素振りがありません。10話でまどかが最悪の魔女になって地球を壊滅させようとしている際にも、「後は君たち人類の問題だ」とほざいてさっさと撤収しようとしていましたし。人類とはウィン-ウィンの関係を築くつもりが無かったということが、後の少女達の反撃に繋がっているとも言えましょう。
テレビ本編では魔法少女として途方もない資質を秘めた鹿目まどかを魔女化させ、莫大なエネルギーを得ることを目論んで執拗に契約を迫りましたが、最終的にその思惑はまどか自身の願いによって覆されることとなりました。まどかによって再構成された世界では魔女は出現した瞬間に消滅してしまうため、魔女誕生によるエネルギー回収は行えず、魔女に変わって出現する魔獣が生み出す小粒のグリーフシードを回収することでエネルギーを採取するようになっています。
改変後の世界では詐欺のような手を使って魔法処女を生み出すことに大した益はなく、敵対する理由もないため、暁美ほむらと共闘する形で魔獣との戦いに参加しており、他の魔法少女たちとも希望を叶えた対価について説明したうえで契約を交わしているようです。
キュゥべえは、少女達が抱く夢や希望、理想と対になる現実の象徴であり、完全に否定したり拒絶することは出来ない存在としても位置付けられており、テレビ本編を見る限り、最終回では「相容れない相手との共存」という形での決着がつけられたように見えましたが……
しかし異星生命体のキュゥべえさんは決して舐めてはいけなかったのです。テレビ本編最終回では、ほむらが語る改変前の世界や「円環の理」の話を、所詮は絵空事だと聞き流しているように見せかけていましたが、内心では魔法少女の魔女化と、相転移による莫大なエネルギーの発生を「魔獣を倒して得られる小粒のグリーフシードを回収するより、ずっと効率の良い感情エネルギーの回収方法」だとして強い興味を持ったようです。
ということで[新編]叛逆の物語では、ほむらの疲弊したソウルジェムを実験の材料として、インキュベーターたちが作った観測所「マユの塔」内の空間遮断フィールドを駆使するなどして「円環の理」がほむらに接触しようとする際の観測を続け、最終的には「円環の理」の効率的な利用・すなわち「“まどか”の支配」を目論んでいました。今のキュゥべえの長広舌をご覧下さい。
真実なんて知りたくもない筈なのに、それでも追い求めずにはいられないなんて、つくづく人間の好奇心というものは理不尽だね。まあ君ならいずれはきっと、答えにたどり着くだろうとは思っていたよ、暁美ほむら。僕達の作り出した干渉遮断フィールドは君のソウルジェムを包んでる。既に限界まで濁りきっていたソウルジェムを、外からの影響力が一切及ばない環境に閉じ込めたとき何が起こるのか?魔法少女を浄化し、消滅させる力、君達が「円環の理」と呼んでいる現象から隔離されたとき、ソウルジェムはどうなるのか?確かに興味深い結果を観察させてもらったよ。
独自の法則に支配された閉鎖空間の形成と、外部の犠牲者の誘導、捕獲。これこそまさしく、いつか君が説明してくれた魔女とやらの能力そのものだよね。遮断フィールドに保護されたソウルジェムがまだ砕けていない以上、君は完全な形で魔女に変化できたわけでもない。卵を割ることができなかった雛が殻の中で成長してしまったようなものだね。だから君は、自らの内側に結界を作り出すことになった。まさか町一つを丸ごと模倣して再現できるとは、驚きだ。ここはね、君のソウルジェムの中にある世界なんだよ。フィールドの遮断力はあくまで一方通行だ外からの干渉は弾くけれど、内側からの誘導で、犠牲者を連れ込むことはできる。魔女としての君が、無意識のうちに求めた標的だけが、この世界に入り込めるんだ。
ここまで条件を限定した上で、尚も「円環の理」なる存在が、あくまで暁美ほむらに接触しようとするならば、その時は君の結界に招き入れられた犠牲者という形でこの世界に具現化するしかない。そうなれば、僕達インキュベーターはこれまで謎だった魔法少女消滅の原因をようやく特定し、観測することができる。実際、君が作った結界には現実世界には既に存在しないキャラクターが奇妙な形で参加している。とりわけ興味深いのは、過去の記憶にも未来の可能性にも存在しない一人の少女だ。この宇宙と一切の因果関系がない存在なのに、彼女は何の違和感もなく君の世界に紛れ込んできた。まあ、そもそも最初から探す必要さえなかったんだ。手間を省いてくれたのは、君自身なんだよ、暁美ほむら。君は以前から、「円環の理」のことを「鹿目まどか」という名前で呼んでいたからね。
唯一厄介だったのは、鹿目まどかは未知の力を発揮する素振りを全くみせなかったことだ。結界の主である君の記憶操作はまどかに対しても作用してしまったみたいだね。彼女は君を救済するという目的だけでなく自分自身の力と正体さえ見失っていたようだ。これでは手の出しようがない。鹿目まどかは神であることを忘れ、暁美ほむらは魔女であることを忘れ、おかげで僕らはこんな無意味な堂々巡りに付き合わされることになった。まあ、気長に待つつもりでいたけれど、君が真相にたどり着いたことで、ようやく均衡も崩れるだろう。さあ暁美ほむら、まどかに助けを求めるといい。それで彼女は思い出す、自分が何者なのか、何のためにここに来たのか。
最終的な目的については否定しないよ。まあ道のりは困難だろう。この現象は僕達にとって全くの謎だった。存在すら確認できないものは、手の出しようがないからね。観測さえできれば干渉できる。干渉できるなら、制御もできる。いずれ僕達の研究は円環の理を完全に克服するだろう。そうなれば、魔法少女は魔女となり、更なるエネルギーの回収が期待できるようになる。希望と絶望の相転移、その感情から変換されるエネルギーの総量は、予想以上のものだったよ。やっぱり魔法少女は無限の可能性を秘めている。君たちは魔女へと変化することで、その存在を全うするべきだ。
「叛逆の物語」では序盤全然しゃべらなかったキュゥべえが、被っていたネコを脱いだらご覧の有様だよ!しかし、ほむらの異変に気付いたまどか達「円環の理」サイドの計画により、まどかの持つ「記憶」と「力」をさやかとなぎさに分散して預けていたため、インキュベーターは「まどかはほむらの結界の影響で記憶喪失になっている」と誤認してしまったため策に嵌まり、後に5人の魔法少女らの活躍によってこの計画は失敗に終わります。キュゥべえを舐めてはいけないけれど、形而上的存在(ほぼ神様)になったまどかを舐めてもいけなかったと言うことですね。
そして今度はほむらが「叛逆」によって「円環の理」の力の一部を奪って因果律を再改変していく際、ほむらのまどかに対する「人間の根源的感情」=「愛」を知ると、以下のやりとりがありました。
キュゥべえ「世界が書き換えられてゆく…!暁美ほむら、君は何に干渉しているんだ、何を改竄してしまったんだ!」
ほむら「今日まで何度も繰り返して、傷つき苦しんできた全てが、まどかを思ってのことだった!だからもう今では痛みさえ愛おしい…!これこそが人間の感情の極み…希望よりも熱く、絶望よりも深いもの…!愛よ!」
ほむら「あの神にも等しく聖なるものを蝕んでしまったんだもの。そんな真似ができる存在があるとしたらそれはもう悪魔としか呼ぶしかないんじゃないかしら?」
キュゥべえ「これではっきりした。君たち人類の感情は利用するには危険すぎる。こんな途方も無い結末は、僕たちでは制御しきれない」
キュゥべえは人間の感情は自分たちが利用するにはあまりに危険すぎると判断し、地球への干渉を止めて撤収しようとしましたが、どっこい神と同等の力を得た悪魔ほむらからは逃れられず、「宇宙に蔓延する穢れの浄化役」となる事を強要さ
れ、ボロ雑巾のようにこき使われることになりました。
れ、ボロ雑巾のようにこき使われることになりました。
キュゥべえは異星体、すなわち人間にとって計り知れない存在ということで、私はクトゥルー神話でいうところの旧支配者「グレート・オールド・ワンズ」的な存在であろうと思うのです。あえて非暴力に徹して弁舌で少女達を破滅に追い込もうとするあたりは、ナイアーラトテップ(今となってはニャルラトホテプの呼称の方がポピュラーですが)のようなトリックスター的な役割を担っているのかも知れません。
ナイアーラトテップは千もの異なる顕現を持ち、特定の眷属を持たず、狂気と混乱をもたらすために自ら暗躍し、彼が与える様々な魔術や秘法、機械などを受け取った人間は大概自滅する。また旧支配者の中で唯一幽閉を免れており、他の旧支配者と違い自ら人間と接触する……クトゥルー神話において特異な地位を占める神性であるナイアーラトテップはキュゥべえとも共通項が多いような気がします。
キュゥべえがナイアーラトテップなのだとしたら、テレビ本編でのまどかの勝利、そして「叛逆の物語」でのほむらの勝利も真の勝利と言えるかどうかはなはだ疑問です。一つだけ言えることは、「キュゥべえ相手にイキって、何でもかんでも説明してしまうことは極めて危険」ということです。もし続編が作られるなら、キュゥべえの反転攻勢がありえるかも知れません。
キュゥべえは人間とは全く価値観の異なる地球外生命体で、人の情を理解せず正論ばかりを語るキャラクターとして描かれています。基本的には無表情で、口は食物摂取時にしか開きません。キュゥべえの異質性は際立っており、キュゥべえが人間を理解できないように、主人公のまどかや視聴者もキュゥべえは理解できない存在なのだといえるでしょう。
同じ姿の別個体が複数存在し、それぞれが個々に個体の観念を備えておらず、彼らを地球へと送り込んだ存在を含めた種族全体が1つの意識を共有しており、各場面に登場するキュゥべえが全て同じ個体であるか否かすら定かではありません。別個体に対しては家族や同胞の情を持たず、種族全体が存続するためなら常に合理的な判断を下しますが、彼らなりの倫理観は存在しているらしく、契約を強制することはなく、虚偽を語ることもありません。ただし、明確はウソはつかないものの、聞かれない限りは真実を伏せようとしたり、誤解を招いた場合でもそれが有利に働くならばあえて正そうとしないなどの手練手管は使っています。
CVは加藤英美里。幼女から大人の女性まで様々なキャラクターを演じ、時には少年役もこなしますが、異星体キュゥべえは画期的な役柄だったのではないかと思います。
制作スタッフからは「ただ可愛く演じてほしい」と求められて演じたそうですが、第3話で徐々に腹黒い一面が表に出てくるようになり、「あれ、おかしいぞ」と思うようになり、スタッフに真意を問いただしてからは、「真のキュゥべえ」の心で演じる様になったと言っていました。
魔法少女もののマスコットキャラ役と悪役は以前からやってみたいと思っていたそうですが、図らずもその2つのポジションを兼ね揃えたキュゥべえを演じることになりました。ただ、正体をわかってからも悪役とは考えず、キュゥべえなりの使命を果たすつもりで演じようと思ったということです。確かに理解できない=悪とはいえませんからね。
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