魔法少女まどか☆マギカ考察:美樹さやか(その2)

来ましたね、猛暑。夏だから当然とはいえ、節電が叫ばれる昨今、エアコンの使用がためらわれてしまいます。そんな訳で冒頭、凍り付くようなさやかの視線で少しでも涼を取っていただければと(笑)。
それでは美樹さやかの考察の後編、行ってみましょう。
3.なぜ魔法少女になったりならなかったりするのか?

10話を見ると、一周目(ほむら未契約時)ではマミとまどかが魔法少女で、二周目はマミ・まどか・ほむらが魔法少女となっていて、さやかと杏子の姿はありません。3周目(マミ狂乱時)でようやく5人が魔法少女として登場してきますが、4周目(ほむらが一人で戦う決意を固める)では契約したかどうかの描写がありません。
さやかには、上条恭介の怪我を治したいという願いがあり、それは各周回においても変わらないと思われるのですが、なぜさやかは魔法少女になったりならなかっったりするのでしょうか。
11話で、暁美ほむらが時間遡行を行っていることに気付いたキュゥべえはこう言っています。
「同じ理由と目的で、何度も時間を遡るうちに、君は幾つもの並行世界を、螺旋状に束ねてしまったんだろう――鹿目まどかの存在を中心軸にしてね。その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら、彼女の、あの途方もない魔力係数にも納得がいく。君が繰り返してきた時間――その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がってしまったんだ。あらゆる出来事の元凶としてね。お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

このキュゥべえ仮説により、平凡な少女のはずのまどかが異様に強力な潜在能力を持っていたり、その敵であるワルプルギスの夜がも強力になっていった理由が明確になるのですが、「まどかの存在が中心軸」となっている以上、その影響は彼女の周辺人物にも及んでいるとみていいでしょう。
本編では、魔法少女になりうる資質は、キュゥべえが見えるかどうかで判明します。キュゥべえのテレパシーが聞こえるかどうかも
基準の一つかも知れませんが、1話ではさやかとまどかにキュゥべえは見えていますが、キュゥべえのテレパシーが聞こえたのはまどかだけでした。キュゥべえは二人に魔法少女の資質があると言っているので、テレパシーを察知するのは、十分条件ではあっても必要条件ではないのかも知れません。あるいはさやかとまどかの資質の差とも解釈できるかもしれません。

さやかは、当初は魔法少女の資質を持たない少女だった可能性があります。それにもかかわらず、ほむらが時間遡行を行って、平行世界の因果線がまどかに連結され、まどかがより強力な資質を有するに至る過程で、親友としてその周辺にいたさやかも影響を被ったことが考えられます。つまりさやかは、10話3周目にして初めて魔法少女としての資質を有し、契約に至った可能性があるのです。
一方、まどかのもう一人の友達である志築仁美は、最低5周目である本編においても魔法少女の資質がありません。キュゥべえも完全に無視しています。彼女については、さやかと比較するとややまどかとの距離が遠い感じがしますし、魔法少女としての資質がそもそも小さい可能性がありますが、仮にほむらが時間遡行を繰り返し続ければ、いずれはその影響を受けて魔法少女としての資質を得る二至ったかもしれません。魔法少女仁美の願いは、やはり上条恭介なのでしょうか?
4.最後まで救いがないのはなぜか?

魔法少女になれば必ず魔女になってしまうさやか。まさに「どうあがいても絶望」な訳ですが、そういうシステムをそもそも破壊して更新してしまったまどかの築き上げた「新世界」においてはどうかといえば、12話で
杏子「ん…さやかは?オイ、さやかはどうした?」
マミ「行ってしまったわ…円環の理に導かれて。美樹さん…さっきのあの一撃に、全ての力を使ってしまったのね」
杏子「バカ野郎…惚れた男のためだからって、自分が消えちまってどうするんだよ…。バカ…やっと友達になれたのに」
マミ「それが魔法少女の運命よ。この力を手に入れた時からわかっていたはずでしょう。希望を求めた因果が、この世に呪いをもたらす前に、私達はああやって、消え去るしかないのよ」
ということで、魔女にはならないものの、世界から消滅してしまっています。これについてまどかは、さやかと一緒に上条恭介の演奏を聴きながら、こう言っています。

まどか「さやかちゃんを救うには、何もかもなかったことにするしかなくて。そしたら、この未来も消えてなくなっちゃうの。でも、それはたぶん、さやかちゃんが望む形じゃないんだろうなって。さやかちゃんが祈ったことも、そのためにがんばってきたことも、とっても大切で、絶対、無意味じゃなかったと思うの。だから」
さやか「…うん。これでいいよ。そうだよ。私はただ、もう一度、アイツの演奏が聴きたかっただけなんだ。あのヴァイオリンを、もっともっと大勢の人に聴いてほしかった。それを思い出せただけで、十分だよ。もう何の後悔もない。まあ、そりゃ…ちょっぴり悔しいけどさ。仁美じゃ仕方ないや。恭介にはもったいないくらいいい子だし…幸せになって…くれるよね」
…つまり、「神のごとき存在になった」まどかをして、さやかの運命は手の施しようのないものであったといえます。他人のために祈るという行為自体が極めてリスキーなのか、さやかの願いだけが特殊なのかは判然としませんが。

このシーンを救いがないと解釈するべきかどうかにはやや疑問があります。アンデルセンの童話の人魚姫は王子を殺すことができず、泡となって消えますが、その後空気の精となって天国へ昇っていったとされています。さやかもまどかに導かれて行く以上、その先に絶望しかないということはないでしょう。天国に行くなり、まどかが管轄する別の世界(別の時間軸)に転生するなりしていると考えるのが適当と思われます。上条恭介が事故に遭わない世界にでも連れて行って、平凡でも幸せに暮らしているといいですね。
ところでキュゥべえは12話で
「まどか。これで君の人生は――始まりも、終わりもなくなった。この世界に生きた証も、その記憶も、もう何処にも残されていない。君という存在は、一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果ててしまった。もう誰も君を認識できないし、君もまた、誰にも干渉できない。君はこの宇宙の一員では、なくなった」
と言っていますが、ほむらに赤いリボンを渡したり、さやかを導いたり、戦い続けるほむらに「がんばって」と囁いたり、結構いろいろとしていますね、まどかは。
5.余談
魔法少女の家族は本編ではほとんで描かれていません。マミとほむらの家族は一切登場しませんし、杏子の家族は「人形劇」です。さやかの両親についても、葬式まで描かれているのに登場してきません。このあたりは、家族との交流がしっかり描かれているまどかと対照的で、魔法少女になることの孤独を示したものとも解釈できますが、実はさやかがヴァイオリンを演奏する恭介を初めて見た、そして一目惚れしたというシーンで、さやかの両側に両親らしい姿があります。

なかなかすてきなご両親のようです。こんな二人を残して死んでしまうなんて、親不孝者め。ちなみにゲーム版だと、杏子の父親や妹も登場しています。またマミの両親も事故に遭う前の車に同乗していることが判明していますが、その姿はほとんど見ることができません。ただ、マミは何かというと「パパ、ママ…」と呼びかけているので、きっとマミにとって良い両親だったのでしょう。
最後にさやかの「進化」イラストです。

肩の装甲が強そうですね。ファイヤーエムブレムで傭兵がクラスチェンジして勇者になったみたいです。
というところで、美樹さやかの考察もこの辺でお開きとしたいと思います。きっとまどかに導かれた別の世界でも剣を振るって凜々しく戦っていることでしょう。
そして力尽きては再び「円環の理」により…

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