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恋縫:江戸時代の女達を描く短編集

冬の雨
 
 こんばんは。関東地方、結構いい降りしていますね。これが雪だったらかなりの降雪になったはずですが、雨で良かった。寒さも緩んだし、湿気があるとインフルエンザが流行りにくいらしいですし、いいことづくめのような気がしますが、週末は寒いらしいです。

 さて本日は諸田玲子の「恋縫」です。諸田玲子の作品は初めて読みました。

諸田玲子

 諸田玲子は1954年3月7日生まれで静岡県出身。上智大学文学部英文科を卒業し、フリーアナウンサーや化粧品会社勤務を経て、向田邦子、橋田壽賀子、山田洋次らのテレビドラマの台本のノベライズや翻訳を手がけた後、1996年に「眩惑」で作家としてデビューしました。

其の一日

 2003年に「其の一日」で第24回吉川英治文学新人賞を受賞し、2007年に「奸婦にあらず」で第25回新田次郎文学賞を受賞しています。山本周五郎賞や直木賞にも候補となっていますが、まだ受賞はありません。

奸婦にあらず

 「恋縫」は表題作「恋縫」のほか、「路地の奥」、「竹藪をぬけて」「花火」の4編から構成される短編集ですが、「竹藪をぬけて」は140ページ以上ある中編となっているほか、「花火」とともにデビュー作「眩惑」に入っていた最初期の作品となっています。

 例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。

 娘ざかりのおいとは、江戸入船町の裏店で古着屋をいとなむ父と二人暮らし。隣に住む幼なじみの龍次を恋慕っていたが、上方へ年季奉公に行ってしまった。それから三年、待ちこがれた龍次が、突然帰ってきた。だが、女が一緒で…。町娘の熱い想いを綴る表題作ほか、武家の若妻が官能の目覚めに懊悩する「路地の奥」など全四篇を収録。男を惑わす江戸の女たちを鮮やかに描く傑作時代小説集。

 「恋縫」は上記内容紹介で書かれたとおりですが、年季奉公に行った男が身を持ち崩して転落し、悪の道に入り込もうとするところを必死に止める娘の物語です。おいとよりも、父の治助が影でグッジョブなのですが、その理由が認めたくない「自分自身の若さ故の過ち」であったところが皮肉といえば皮肉です。おいとは母と自分と二代に亘ってそういうタイプの男を夫にすることになるのかもしれませんが、転落寸前で止めることができたところが母よりはまだましかも知れません。おいとは龍次を留めるためにあっと驚く手段に出ますが、いくら好きでもそこまでやるかと思います。

 「路地の奥」は下級武士の若妻・、静江の話です。夫の師匠が重病で伏せっているのでしばしばお見舞いに行くのですが、まさかのNTR展開。多分弄ばれているだけで本番には至っていないようなのですが、老練なテクニック(笑)に翻弄されて官能に目覚め色香が深くなっていく静江に夫が欲情していくあたりがなんともはや。関係を断つために思い切った手段に出た静江ですが、切羽詰まると女性は怖いですね。本番はやられていないだろうと推測するのはラストで妊娠して子供が生まれてもそのことに何にも苦悩していないからですが、実は師匠の子供でそれでも平然としているのだったら怖すぎます。

 「竹藪をぬけて」は小田原の部屋住みの侍・新吾が、年の近い甥の松之助の急死を知ってその真相を究明するために辻村という鄙びた村に出かけていく話です。松之助は江戸に修行のために出かけたのですが、重職の息子で家老の娘との縁談も進んでいたのに、なぜか途中の辻村に長期滞在していたのでした。女にひっかかったらしいことは判っていましたが、父の死を知って小田原に帰ろうとしたところを後ろから殺害されたのでした。

 新吾も部屋住みなのですが、実は養子に行く話もあったりして、将来の展望は暗くはないのですが、辻村で松之助が滞在していた家に滞在すると、そこは若後家のおさえと口のきけない女中のおときの二人暮らしで、松之助はおさえの色香に迷っていたことが判明します。そして新吾自身もまたおさえの色香にあっさり陥落します(笑)。松之助を殺害したのは一体誰なのか?

 この作品は「眩惑」に収録されていたものとは内容が大きく変わっているようです。改変前は不条理劇で不幸な結末だったようですが、改変後はハッピーエンドになっています。作中に浮上した謎もすべて明らかになっていて、解説でも作者の技量の向上を指摘していますが、時代劇ミステリーとなった改変後の方がもやもやがなくていいのかも知れません。

 「花火」は弱視故にいつも潤んだ黒い大きな瞳のお佐和の物語です。まだ若いのに運命に翻弄され続けてきたお佐和ですが、今は大店の後妻となって結構な暮らしです。花火の喧噪の中で、江戸からやってきた安二郎と出会いますが、この安二郎は江戸で女を食い物にして生きてきたとんでもないヤツで、江戸にいられなくなって上方に逃げる途中なのでした。

 こう書くとお佐和危うしなのですが、実際は安二郎はお佐和に魅了されて真人間になろうなんて決意を固めてしまいます。更生を誓ってお佐和と生きることを決心する安二郎。だがそれはお佐和の巧妙な罠だった…。なんと江戸時代なのにクリムゾンコミック的展開が始まります。くやしい!でも唐丸籠で江戸に運ばれちゃう!ビクンビクンッな安二郎。悪人なので同情はしませんが、お佐和は確かに魔性の女ですね。

恋縫
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