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姫は、三十一:和歌を習い始めた31歳静湖姫の事件帖

12月11日
  

 こんばんは。先日羽布団を買ったのですが、その軽さと暖かさに驚きの一言です。これまでも羽布団を使っていたのですが何しろ十数年前のもので、温みが少なくて他の布団や毛布を重ねていました。今は綿毛布一枚だけで、心細いくらい軽いのですが、とても暖かいのですぐ慣れることでしょう。

  さてもう日付が変わってしまいましたが今日の本題へ。本日は風野真知雄の「姫は、三十一」です。

姫は、三十一 

 「姫は、三十一」はNHKでドラマ化された「妻は、くノ一」シリーズのスピンオフ作品ともいうべきもので、「妻は、くノ一」を読んでいた方が絶対面白いのだろうと思いますが、あいにく図書館になかったので、スピンオフの方から読むこととなりました。"So it goes."(そういうものだ)。タイトルも韻を踏んでいますね。

妻は、くノ一 

 例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。 
 平戸藩の江戸屋敷に住む静湖姫は、微妙なお年頃のお姫さま。大晦日の夜、おかまの店で飲んだくれていると「来年はもの凄いモテ年になる」と占われる。年が明け、三十一歳になるのを機に習い始める三十一文字の和歌の会に参加すると、なんと屋根の上に死体が。謎を解こうと奮闘する姫の前に、素敵な男性が次々と現れて…。恋に事件に、花のお江戸を駆け巡る!大人気著者が放つ「姫は、三十一」シリーズ第1弾。

 ということで、こちらもシリーズ化されており、既に4冊が既刊となっています。第一弾の本作は2011年12月に角川文庫から刊行されています。

妻は、くノ一 ドラマ版 

 主人公は松浦静湖(まつら せいこ)です。平戸藩の第9代藩主だった松浦静山の娘です。
 
 松浦静山は財政窮乏する平戸藩の藩政改革に意を注ぎ、経費節減や行政組織の簡素化や効率化、農具・牛馬の貸与制度、身分にとらわれない有能な人材の登用などに務め、藩政改革の多くに成功を収めています。いわゆる一つの名君ですね。

松浦静山 

 安永3(1775)年から文化3(1806)年まで藩主を務めた後に隠居しますが、隠居後に執筆した「甲子(かっし)夜話」は、江戸時代後期を代表する随筆集として有名です。内容は、田沼意次政権や松平定信が主導した寛政の改革の時期に関すること、シーボルト事件や大塩平八郎の乱などについての記述を始め、社会風俗、他藩や旗本に関する逸話、人物評、海外事情、果ては魑魅魍魎に関することまでの広い範囲に及んでいて、文学作品としてのみならず、江戸時代後期の田沼時代から文化文政期にかけての政治・経済・文化・風俗などを知る文献としても重視されています。

 また静山は、大名ながら心形刀流剣術の達人であったことでも知られており、心形刀流についても「伊庭氏剣法家伝略記」や「心形刀流目録序弁解」を著しています。

甲子夜話 

 静山は17男16女に恵まれましたが、そのうちの十一女・愛子は公家の中山忠能と結婚して慶子を産み、この慶子が孝明天皇の典侍となって宮中に入って孝明天皇と結婚し、明治天皇を産んでいます。つまり静山は明治天皇の曾祖父にあたることになり、現在の天皇家には、静山の血も少なからず受け継がれていることになります。

  本編の主人公、松浦静湖は正月で数え31歳となりましたがなお未婚です。現在31歳で未婚の女性がいても、別に何の問題もありませんし、私もとやかくいうつもりは一切ありません。が、時代が違えば常識も違うということで、江戸時代に31歳で未婚というのはかなりまずい状況だったと言わざるを得ません。ほんのちょっと前の昭和時代にだってクリスマスケーキが云々と言われていたのですから当然ですね。死別して未亡人とかなら格好も付いたのでしょうけど。

摩多羅神 

 では静湖はダメダメな姫なのかといえばさにあらず。美貌と快活さと聡明さを兼ね備えたなかなかに素敵な姫です。酒も強いし、行動的ですし、現代にいたら惚れちゃいそうですね。当然その美貌はかつて江戸城中にも知れ渡り、縁談が引きも切らなかったそうなのですが、最初の縁談の相手が帰り道で堀に落ちて溺れ死んだのを皮切りに、その後も縁談相手に事故や急病が相次ぐようになり、「あの姫と縁談が起きると、男の方に凶事が訪れる」と噂されるようになり、24歳を最後に縁談が来なくなったそうです。それは静山が「甲子夜話」に記述するレベルの奇談ではないか。

  江戸時代にも新宿二丁目みたいなところがあったんかいと突っ込みたくなるようなオカマバーで大晦日に飲んだくれていた静湖は、来年は38万4千年に一度という超モテ期だと言われます。何という長周期だと言いたくなりますが、そのせいで大半の人間はこの超モテ期に遭遇せずに死んでいくのだとか。

  和歌を習いに行った大身旗本の家の屋根に妙な格好で死んでいた男がいたことから、静湖は好奇心一杯に探索に取りかかります。その過程で遭遇する、今光源氏と噂される美男や、八丁堀の粋な同心、一代で財を築いた大商人、いなせな瓦版売り、戯作者(乙斗怒津恋)、空を飛ぶことに憧れる年少の鳥類学者などが次々に静湖に恋をします。何しろ38万4千年に一度の超モテ期なので、こんなもんじゃ済まないでしょうね。それにいくらモテても、身分とかしがらみがあるせいで、結ばれるには色々と問題もありますし。

  静湖は護衛役の岡田博之助(見た目は頼りなさそうですが、佐々木小次郎が考案したという未完の剣技「燕渡り」を習得した剣豪)を連れて謎解きを行いますが、その理由は推理が好きとかということよりも、自分自身でお金を稼ぎたいという気持ちが強いのですね。姫という身分に安住しないところに好感が持てます。

  ちなみに静湖が読んだ和歌がまた凄いです。

  嫁に行けと 三年前から 言われない 三十一に なりにけるかも

  兄嫁は あやまるみたく そっと言う 後妻の口なら たくさんあると
  後妻とは 悪事でもした 人ですか 声をひそめる 言い方が嫌 
 占いに 驚くような 予測あり 来年こそは 引く手あまたと 
 もてなくて ずっと過ごした人生は 急にもてても とまどうばかり 
 めずらしく 甘い言葉を 言われても 胸に兆すは 哀れな末路 

 姫、あなたは江戸時代の俵万智か!「サラダ記念日」ならぬ「青菜記念日」でも出版するといいぞ。こんなのをあと二十首も作ったらしいですが、いっそ全部読みたかったです(笑)。とっても肩の力の抜けた時代小説なので、お気軽にどうぞ。
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