真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒:「まよパン」シリーズ第二弾

こんばんは。朝霜の白さが寝ぼけ眼に眩しいですね。朝夕の気温の差が大ききと体調を崩しがちです。皆さん気をつけましょう(オマエモナー)。
本日は大沼紀子の「真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒」です。まよパンシリーズ第二弾ですね。

前回の「午前0時のレシピ」から1時間進んでいます。未読ですが第三弾は「午前2時の転校生」、第四弾は「午前3時の眠り姫」となっています。ブランジェリー・クレバヤシの営業時間は午前5時までなので、この調子だと第六弾で終わるのではないかと思われますが…
それでは例によってAmazonの内容紹介です。
★☆☆★ 『真夜中のパン屋さん』シリーズ化決定!★☆☆★
「読むとお腹がすいてくる!」と発売直後から、大反響となった美味しい物語“まよパン”シリーズ第2弾!
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真夜中にだけ開く不思議なパン屋さん「ブランジェリークレバヤシ」。謎多き笑顔のオーナー・暮林と、口の悪いイケメンパン職人・弘基が働くこの店には、パンの香りに誘われて、なぜか珍客ばかりが訪れる。家庭の事情により親元を離れ、パン屋さんの2階に居候することになった女子高生の希実は困った人たちが引き起こす事件に、またまた巻き込まれていく……。
今回のお客様は、美人で妖しい“恋泥棒”。彼女がもたらすチョコレートのように甘くてほろ苦い事件は、バレンタインの大騒動に発展!不器用な人たちの、切なく愛おしい恋愛模様を描き出す物語。
??あたたかい食卓がなくても、パンは誰にでも平等に美味しい??

…なんか、内容紹介のわりに凝ってますね。前作の季節は春から初夏にかけてでしたが、本作では秋になっています。希実の居候も半年になって、板についてきましたが、本作では同居人が出来ます。
突如現れた弘基の元カノ、由井佳乃が自分と弘基の署名の入った婚姻届を出して、ここに置いて欲しいと頼みます。あっさり了解した陽介と弘基のせいで、希実は住んでいた部屋(物置)を出て、陽介の亡き妻・美和子の部屋に移ります。
佳乃はその美貌と愛想の良さでたちまち店の常連客を虜にし、売り上げ増大に貢献しますが、手荷物には大量の札束が入っていたり、周囲には不審な男達の影が。三人の男達が店を訪れた際、佳乃は姿を消してしまいます。

弘基の調査では、佳乃は結婚詐欺を働いており、裏社会の人間まで騙してしまったことで危険な状況に陥っているらしいです。すっかり佳乃にのぼせ上がっていた変態脚本家の斑目は何者かに襲撃されて重傷を負って入院してしまいます。
情報による佳乃の悪女ぶりと、実際の佳乃の姿にギャップを感じる希実達。接触してくる弘基の昔の仲間で、裏社会のエリート多賀田。真相は…?まるでミステリーみたいですが、タネはすぐに明らかになります。が、ここでは一応読む楽しみを妨害しないよう伏せておきましょう。
佳乃はかつて家庭環境の悪化によりぐれた弘基を救おうとした女性でしたが、所詮は中学生同士でそれは叶わず、弘基は大人の女性である美和子と出会って救われ、非行から足を洗って一流のパン職人になりました。しかしお金持ちのお嬢様だった佳乃も、その後家業が没落して一家は離散するという過酷な状況に置かれていました。

弘基はかつての周囲の人々から希望の星のように見られていて、何かにつけて期待されたり頼られたりするのですが、本人はそれが嫌でたまらないようです。陽介→美和子→弘基という「救済の流れ」を弘基はつないでいくことができるのか。
それにしてもブランジェリー・クレバヤシの周辺人物は皆不幸な過去を持った人ばかりですね。特に弘基のかつて住んでいた所は、地域一帯が不況により没落したらしいですが、一体どこに住んでいたのか。鬼の哭く街かしらん。
連作短編だった前作に対し、本作は長編となっています。それはいいのですが、今回、佳乃の過去に関して、宮部みゆきの「火車」そっくりのシーンがあってびっくりしました。佳乃が相手の気持ちを冷めさせてしまうというかなり重要なシーンなのですが、これはトレス疑惑。ちなみに火車のヒロインの境遇に較べれば佳乃の不幸なんかどうということはないレベルです。まああそこまで重いと一介のパン屋では救いようがないでしょうが。

ラストに登場する佳乃のストーカーをあっさり撃退した弘基ですが、そんなに簡単に諦められるのなら、そもそも最初からストーカーにならないんじゃないかと思います。人間の業を描くのであれば、もっとリアリティが必要な気がします。
もっとも、人助けをしている陽介や弘基にしても、結果的には自分自身の心の傷を癒すことになっているようです。陽介は風邪をひいた希実の見舞いで、それまで入れなかった美和子の部屋に入れるようになりましたし。「誰かを救うことは自分自身を救うこと」というのがシリーズのテーマなんでしょうか。

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