FC2ブログ

私の奴隷になりなさい:生き方の相違について考えさせられる

私の奴隷になりなさい
 
あと半年後に買いたかったパソコンが届きました。ブログを更新したら早速データ移送とセットアップだ!明日のブログは新型機で…になっているといいのですが。

 それでは今日の記事です。まどマギ考察はちょっとお休み。最近読んだ本が、私にインパクトを与えたので。その内容がというより、「魂の形」とか「生き方の相違」というものをつくづく考えさせられたのですよ。

 その本、「私の奴隷になりなさい」は覆面作家サタミシュウの2005年4月発表の作品です。本名では多数の作品を発表済みだということで、一説には直木賞作家重松清という噂も(真偽のほどはさだかではありませんが)。

 あらすじは、というと
 「出版社に転職した僕は、先輩の香奈に一目惚れし、『落とそう』と決意する。だが、まったく振り向いてくれずに困惑していたところ、突然彼女から『今夜、セックスしましょう』と誘われ、一夜を過ごす。その後も奇妙な関係が続いていたある日、僕は彼女の自宅で不審なビデオを発見してしまう。そこには衝撃の秘密が映し出されていた―。男と女の新たな関係性を説いたSM青春小説の誕生」

ということなんですが、この作品、途中までと全部読んだ時とで印象ががらりと変わります。冒頭から120頁位までは、「僕」(氏名不詳)が香奈(結婚して1年たたないが、夫は大阪に単身赴任している美人妻)を口説こうとして、飲食に誘いつつも相手にされないで悶々としているところから、なぜか香奈の態度が一変して関係を持ち(それも極めて不可解な形で)、「僕」のアパートに香奈が来てくれたり、香奈のマンションに招かりした末に、香奈が夫の元に行っている間に「僕」は“禁断のビデオ”を見てしまう…という流れになっています。

 基本ここまでは「官能小説かよ?」と思うような描写が延々と続きます。ここまでで辟易して読むのを中断してしまう人もいるかも知れません。特にビデオの内容は、完全に「ご主人様」(氏名不詳)と香奈のハードなSMプレイなので。もちろん「ご主人様」は夫ではありません。

 しかし、その後、香奈が「ご主人様」に宛てたメール(パソコンに残っている)を読みだすと、そこに至る香奈の心境が事細かに描かれていて、ビデオだけを見ると、弱みでも握られた香奈が「ご主人様」に無理やりに色々なことをさせられているかのように見えますが、実際にはそうではなく、自ら進んで奴隷を志願していたことが明らかになってきます。

 そして、「僕」への香奈の態度の変化、「僕」と香奈の関係、「僕」がビデオやメールを見ることも、全て「ご主人様」の想定通りだったことが判明します。

 「僕」は香奈と相思相愛になれるかと思っていましたが、実際には香奈の心は完全に「ご主人様」のものになっていて、入り込む隙もないことを思い知らされ、なんとか香奈から離れよう、諦めようとしますが、それでもどうしても好きで好きで仕方がない。そんな折に香奈から連絡があり、指定された店に行くと、「ご主人様」と香奈が待っていた…

 そこで「ご主人様」は「僕」に「ご主人様と奴隷」の道について語り聞かせてくれるのです。まああまり詳細を書いては(もうかなり書いてしまっていますが)面白みを減らしてしまうので、ここははしょりますが、要するに香奈と「ご主人様」の関係は、一見不倫でSMなんですが、そうではない。香奈は自らの意志で奴隷になり、「ご主人様」の調教を受けることで一層いい女になり、夫との関係や職場での人間関係も良好になった―と「ご主人様」は言うのです。もちろん「ご主人様」も香奈を堪能しているのですが、それよりも、夫や職場の人間にばれないように、しかしいい方向に変わっていけるように細心の注意を払い、様々な言い訳を考えてこれを伝えて―という風に、大いに苦労しているらしいのです。

 要するに、不倫っちゃあ不倫だけど、これはいい不倫なんだ。なぜなら香奈は以前より幸せになり、夫もその恩恵を受けて幸せになっている。不倫だと気付かなければ不倫はないも同然である。そのための努力は完璧にしてきた、ということです。

 そして「ご主人様」は最後のセックスの後、一年に及んだ香奈との主従関係を清算し、(これも最初から想定済み)あっさりと去っていきます。きっとまた新たな奴隷を探すのでしょう。残された香奈と「僕」―奴隷だった香奈は「僕」にこう言います。「私の奴隷になりなさい」

 「僕」は香奈の奴隷となり、また1年経って捨てられ…ということで、冒頭の別れて6年後の思いもかけない再会にループする訳です。ラストまで読むと、解説でリリー・フランキーが言っているように、“爽やかな匂いのするSM小説”という感想を抱けるようになります。途中で読むのをやめると“いやらしいドSM小説”なのでこの差は大きいです。そして奴隷→ご主人様という連鎖も興味深いものがあります。「僕」は奴隷をした後、「ご主人様」にはなっていないかのようなニュアンスですが…

 こういう男女の関係性というのもあり、なんでしょうね。そういう属性を持った者同士であれば。作中、「ご主人様」は「奴隷になるということは自由を奪われるということではない。隷属というのは、他のものに対して寛容になれるということなのだよ」と言っており、この言葉は本作品のエピグラフとしても使用されています。多分古代から近代まで存在した奴隷制度の中で「奴隷」とされた人々が聞いたらただではすまないセリフですが、ここでの奴隷はSMプレイの中での奴隷限定なのでしょう。

 それを踏まえたうえで、あえて言いたいのですが、ご主人様―奴隷という関係性に安住できる人々がいるのだ、それは一面の真理として理解することが可能ですが、その一方で支配―被支配という関係自体を受け付けない人々もいるのだ、ということも真理なのです。

 これはもうどちらがいい悪いの問題ではなく、魂の形が違うとか、属性が違うという問題なのですが、私自身は「ご主人様」も「奴隷」も不要なので、この人たちの関係性には入っていけないなあという感慨を持ちました。それはまさに魚が陸に上がって陸の世界を垣間見ることは可能でも、永住することはできないように、鳥が水に潜って水中の世界を覗くことは可能でも、滞在し続けることはできなように、です。

 中島みゆきが「狼になりたい」という歌を歌っていますが、私も狼になりたい。実際にはなれないけどなってみたいと願う人たちというのは、この主従関係には入っていけない人たちではないかな、と思います。重ねて言いますが、どちらがいい悪いということでなしに(実際、歌詞の内容は全然かっこよくないというか、むしろ全く恰好良くない市井の人々を描いています)。

http://www.youtube.com/watch?v=1Qsq7EBlRB4

 じゃあどういう魂の形なんだということについては、近日中に別途書かせてもらおうとして、もう一つこの作品に、というよりは、この作品に登場する「ご主人様」に言いたいのは、「いい不倫」なんてただの詭弁じゃないのか、ということです。まあ後継者たる「僕」に言って聞かせている場面なので、ある程度は仕方ないのかも知れませんが。

 不倫をするな、SMプレイをするな―そんなことを言いたいわけではありません。両者合意の上ならどうとでもすればいいのですが、「俺のやっているのはいい不倫」という言い訳はいらないと思うのです。不幸になろうがどん底に堕ちようが、とにかくやりたいからやりました、と言う方が潔くていい。

 話が唐突に変わるようで申し訳ありませんが、関連はあるのでご容赦願います。昔―1980年代からバブル前の頃でしょうか―ど外道マンガ「THEレイプマン」というのがありました。興味がある人はググってもらえばいろいろ概要が判ると思いますが、要するにこの作品世界において、主人公がやっているのは「いいレイプ」だということになっています。例えば―
あまり載せたくないけど…
例1:将来を嘱望される女子マラソンランナーが標的。彼女は恋愛をして、トレーニングをさぼりがちに。事態を憂慮したコーチはレイプマンにレイプを依頼。「奮起を促すための、起死回生のカンフル・レイプ」をして欲しいと。そこでレイプマン、レース中の彼女を拉致し、いきなりレイプします。散々蹂躙したその上、「おまえはランナーじゃない!! さかりのついたメスだ!!」と言葉責め。これで彼女はカーッとなり(そらなるわ)、脱兎のごとくレースに復帰。「メスじゃないわよ!!ランナーよ!!」と怒りの激走を見せます。そしてそんな彼女の雄姿を見守るコーチ。人知れず教え子の復活を喜ぶ彼の目には光るものが。

例2:某企業の優秀なキャリアウーマンが標的。会社の幹部は彼女を海外に行かせて更なる修行を積ませたいが、彼女は結婚を希望。会社幹部、レイプマンにレイプを依頼。「彼女(あれ)にはもっと大きくなってもらいたい!男と対等に勝負するために女を捨ててもらった!」空を飛ぶジャンボを背景に、腰に手をあてての仁王立ちの会社幹部。いかにも「いいことした」って感じで御満悦。

 この作品、レイプの依頼は様々ですが、原則的に「あの女を滅茶苦茶にしてくれ」といった犯罪依頼はありません。ストーリー中に描かれる様々な問題を、レイプによってポジティブに解決していくというのを身上にしています。つまりレイプで幸せになるのです。

 この漫画が傍から見ればトンデモであることは一目瞭然ですが…私は本作の「ご主人様」に言いたい。さあ「ご主人様」、あなたのやっている不倫とかSMがポジティブな結果をもたらすものだというのならば、レイプマンのやってるレイプだってポジティブな結果をもたらしているんだから当然認めるんだろうな、と。あなたは様々な努力をしていると言うが、レイプマンだって努力しているぞ。

 さらに言いたい。そんな「おためごかし」は不要なんじゃないですか。美人な若妻を誘惑して、不倫とSMを楽しみました。そしていい加減なところで、後くされないように別れて、今度また別な女を見つけますよ、でいいじゃないですか、と。

 この「ご主人様」、どうもこういう反社会的活動の傍らで、通常の結婚生活も社会生活も維持しているようなのです。公序良俗に反することをしながら、社会秩序は守るというその姿勢―まさに
範馬勇次郎さんの名言
 ダークサイドに行くなら徹底して行きましょうよ。行くとこまで行って燃え尽きましょうよ。「愛の流刑地」の主人公の方が潔くないですかね。きっとこの「ご主人様」からすれば破滅主義は噴飯ものなんでしょうけど。そんな中途半端な態度で偉そうに御託を並べるなと言いたいです。

 太陽なんか眩しくって 闇のほうが無限です
 太陽なんか眩しくって 闇のほうがす・て・き

 (_゚∀゚)o彡°ケイオス!ケイオス!アイワナケイオス!
 燃えよ混沌 無敵です

 さあ全てをぶち壊して闇に沈んでいきましょうよ。出来ないのなら、いっぱしにダークぶるんじゃねえよ!!

 はあはあ…まあ、「ご主人様」は40歳程度ということで、25歳前の「僕」相手には結構押し出しが効いたようなんですが、私にはというところでした。まあ対象の読者が若いんでしょうね、きっと。
き…きかぬ きかぬのだ!!
 いささか筆が走り過ぎたような気もします。別にこの作品をけなしている訳ではないので悪しからず。生き方の違いというものが歴然としてあるんだ、ということがはっきりわかって良かったとも思います。どうしてこの本を読んだのか……それは……いずれわかるわ(byメーテル)
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

押井だなあ。(笑

>私も狼になりたい。

「・・・主人を望まぬ犬!?」(犬狼伝説)
とか
「我々は犬の皮を被った人間じゃない。人の皮を被った、狼なのさ」(人狼)
とか。
押井監督がしばしば用いるモチーフですな。

もっともイヌと生活して思うんですが、洋猟犬は隷属的ですけど、和猟犬はあくまで猟師と対等な相棒、てな感じです。自立行動して、命令は尊重するけれど納得いかなければ無視もするという。

ファンネルとゴーストとくらい違うというか。暴走の度合いも似たような感じかも(汗

しかしまあ、隷属するモノを持っている人って一見、地位が高そうに感じますが、よほど無責任でもない限り、背負い込む義務で疲れ果てそうですな。

No title

「善も悪も等価値なんだよ」
とカオルくんも言っていたとか言っていないとか。。。
(あ、言ってなかった ^^;)
人間社会で生きていく為には、その価値観に縛られることも有効なのでしょうけれども、出来れば意識した上で縛られたいものだなぁと思いました。
(感想になっていなかったらゴメンなさい)

Re: 押井だなあ。(笑

こんにちわ、いらっしゃい。

隷属は支配を望み、支配は隷属することを望むのか…
オオカミは犬とは違うぜということは、平井和正がウルフガイシリーズでよく強調してました。

猫なんか支配も隷属もなくていい感じ。しかし何気に人間をコントロールしているという話も。

良き君主は大変ですが、暴君というのもいるしなあ…

メガテンシリーズでいえば、私はカオス-ライトが好き。破壊神とか鬼神とか龍神が所属。「ご主人様」はロウ-ダークなら格好いいんだけど、しょせんロウ-ニュートラルでダークまでいってないんですよね。ロウ-ダークまでいけば邪神になれるのに。私はカオス-ダークの魔王でも構わんッ!

Re: No title

いらっしゃい、こんにちわ。

> 人間社会で生きていく為には、その価値観に縛られることも有効なのでしょうけれども、出来れば意識した上で縛られたいものだなぁと思いました。

「踊っているのでないのなら、踊らされているのだろうさ」(神林長平「狐と踊れ」より)

反社会的資質を持ちながら社会生活を送っているのと、社会的資質を持ちながら反社会行動を取っているのと、どちらが生きづらいんでしょうね。

半村良の「妖星伝」に登場する鬼道衆なんかははっきりしていて良かったなあ…
プロフィール

ユースフ

Author:ユースフ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
カテゴリ
リンク
ブロとも一覧

秒速5センチメートル・・・桜花抄の軌跡を追ってみた

心理兵器:秒速5センチメートル
カレンダー
07 | 2020/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
FC2カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
日記
69位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
会社員・OL
15位
アクセスランキングを見る>>
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

最新トラックバック
検索フォーム
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ