魔法少女まどか☆マギカ考察:魔法の使者・キュゥべえ(その1)

昨日に続いて「魔法少女まどか☆マギカ」を取り上げます。一丁、私の好きな考察を始めたいと思うのですが、「秒速5センチメートル」みたいなストックがないので、不定期連載ということで。すいませんがご了承下さい。
第一回目は、この作品を特徴付ける最たるキャラの一人、敏腕営業マンこと「キュゥべえ」です。
1.キュゥべえは何者か?
キュゥべえ自身は9話で
「僕たちの文明は、知的生命体の感情を、エネルギーに変換するテクノロジーを発明した」
「ところが生憎、当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった」
「そこで、この宇宙の様々な異種族を調査し、君たち人類を見出したんだ」
と発言しています。この発言からすると、異星の知的生命体、いわゆる「宇宙人」(いまさらこの言い回しはないか。異星人でいいですかね)ということになると思います。
しかし、キュゥべえ自身が異星人なのか、異星人が使役するロボットであるとか、インターフェース(「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門ユキのような存在)のような存在であるのかははっきりとは分かりません。
11話ではこんなことを言っています。
「僕たちはね、有史以前から君たちの文明に干渉してきた」
「僕たちの文明では、感情という現象は、極めて稀な精神疾患でしかなかった」
これらの言い方を聞く限りは、キュゥべえ=文明の担い手=異星人という気がしますが…。しかし危険な未開の惑星での勤務、しかも数万年にも亘るミッションに、異星人そのものが就任するのでしょうか?そもそも成り手がいるのか?
また、8話では鹿目まどかに対して巧妙な営業をかけ、もう一歩で契約というところで暁美ほむらに撃たれてますが、すぐに別のキュゥべえが出てきます。ここから地球で活動するキュゥべえは多数いて、しかも記憶を共有していることが判ります。

まるでエヴァンゲリオンの綾波レイみたいですが、綾波は一体ずつしか活動しないのに対し、どうもキュゥべえは世界各地で同時に多数展開で活動している気配があります。この作品世界では、魔法少女はそれほど特別な存在ではなく、各市町村に1人はいるというほどにポピュラーな存在(とは少し言い過ぎでしょうか)なので、敏腕営業マンも各地で活動していないと維持は無理でしょう。

ということで、私の結論としては、キュゥべえは宇宙延命のためのエネルギー回収を目的として地球に派遣されたシステム(インキュベーター・システムとでも名付けましょうか)の端末なのではないかと思います。どこかにターミナルがあって、全てのキュゥべえを操作し、入手した情報を共有させているのかも知れません。
2.キュゥべえはなぜ笑うのか?

感情を持ち合わせないといいながら、初期のキュゥべえはいかにも可愛いマスコットキャラを演じていますし、笑いもしています。
これは、彼の言葉とは裏腹に実際には感情を有しているということなのでしょうか?
私にはそうは思えません。これは、数万年に亘って第二次性徴期の少女を相手に悪辣な営業を展開してきたキュゥべえが、その過程で効果的だということで取得した、感情表現に似せた形態反射なのではないでしょうか。
まだその胡散くさい正体がまどか達にも視聴者にも(キュゥべえ役の加藤英美里にさえ)知られていない1~3話において、キュゥべえは後から見れば張り倒したくなるほどの媚へつらいぶりを見せています。お弁当のおかずを貰ったり、風呂にはいったり。これは、セーラームーンのルナとか、CCさくらのケルベロスといった、いわゆる「魔法少女もの」につきもののお伴のマスコットキャラのアクションを模倣したものといえるでしょう。
そもそもキュゥべえの形態自体が、女の子に取り入りやすい形と模索した果てのデザインではないかという思われます。数万年前、地球にやってきた頃のキュゥべえは今とは違う形をしていたのかも知れません。第二次性徴期の少女への接触を念頭に、経験の蓄積により現在のデザインに「進化」していったのではないでしょうか。案外魔法少女もののアニメを見て研究してたりして。
3.キュゥべえは常に真実を語るのか?
キュゥべえが明確に虚偽を語っているというシーンは本編にはありません。しかし、本来まどか達が知っておくべきことでも、それがキュゥべえにとって不利になる(契約が困難になるなど)場合、キュゥべえは質問されないことには一切答えないという態度を取る場合があります。
契約に関するキュゥべえの言動には次のようなものがあります。
「君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」(6話)
「僕は魔法少女になってくれって、きちんとお願いしたはずだよ?実際の姿がどういうものか、説 明を省略したけれど」(7話)
「訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね。事実、あのマ ミでさえ最後まで気づかなかった」(7話)
「僕たちはあくまで君たちの合意を前提に契約しているんだよ?それだけでも充分に良心的なはずなんだが」(9話)
「騙すという行為自体、僕たちには理解できない。認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は、他者を憎悪するんだよね」(9話)
「君たち人類の価値基準こそ、僕らは理解に苦しむなあ」(9話)
ここから見えてくるのは、
① キュゥべえは積極的に嘘をつくことはない。
② 訊ねられたことについては真実を答える
③ 契約上不利になることについては、訊かれない限り自発的には語らない。その反面、契約に有利になる場合、訊かれなくても語る場合もある
④ 相手が誤解をしている場合も、それが有利なら解消はしない。嘘はつかなくても、誤解を助長する可能性のあるような言い回しをすることはある
ということで、冷静かつ聡明な人物を相手にした場合、キュゥべえはその目的や意図を余すところなく答えてしまう可能性が高いと言えます。そしてそれは契約上極めて不利であることもキュゥべえ自身は痛感していると思われます。おそらく長い歴史の中で散々痛い目にあってきたことでしょう。
以下明日に続きます。

スポンサーサイト