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アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子:美しくも獰猛な新型女刑事像の誕生!

アウトバーン

 遅くなって帰宅したら自室にGが出ました。ええ、堂々たる黒いやつが。今年初出没です。誰にも言っていませんでしたが、私の部屋に侵入したGはどんな理由があれ生かして帰しはしないというマイルールが敷かれているのです。餌もないこんな僻地にようこそ。

殺らないか

 私「よかったのか、ホイホイ入ってきて。俺はチャバネだってかまわないで殺っちまう人間なんだぜ。」
 G「こんなこと初めてだけどいいんです……僕…ユースフさんみたいな人好きですから…」
 私「うれしいこと言ってくれるじゃないの。それじゃあとことん殺虫剤をかけてやるからな」

…という会話が私とGの間にあったとかなかっとか。まあGに好かれてもいいことは何一つありませんが。死して屍拾う者なしといきたかったのですが、拾わないといつまでもGの死骸が部屋に転がっていることになるので仕方なく拾いました。いつのまにか片づけてくれる小さな妖精さんでもいればいいんですがね。もっとも妖精さんだってGの始末は嫌がるでしょうけど。

深町秋生

 さて気を取り直して本日の本題に。今日は深町秋生の「アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子」です。深町秋生の作品は初めて読みました。

 深町秋生は1975年11月19日生まれ。山形県南陽市出身で、専修大学経済学部卒業です。製薬メーカーに勤務する傍らで小説の投稿を行い、2004年に「果てしなき渇き」で第3回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、本格的に作家デビューしました。2008年には製薬メーカーを退職し、専業作家となっています。

果てしなき渇き

 新進気鋭のミステリー作家の現在唯一のシリーズものが「組織犯罪対策課 八神瑛子」シリーズです。現在まで2冊が刊行されており、第一弾が本書、第二弾が「アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子2」になります。

 本書は2011年7月に幻冬舎文庫から刊行され、発売からわずかで10万部を突破して大型書店ランキングの上位にランクインしたそうです。例によって図書館で借りるまで全く知らずに過ごしていましたが。今回あまり期待しないで借りたのですが、思わぬ広いものをした気分です。

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 文庫本裏表紙よりAmazonの内容紹介の方が詳しいので今回はこちらを。

 躊躇なく被疑者を殴り、同僚に低利で金を貸し付けて飼いならし、暴力団や中国マフィアとも平気で手を結ぶ――。警視庁上野署組織犯罪対策課の美人刑事・八神瑛子は夫を亡くして以来、その美貌からは想像もつかない手法で数々の事件を解決し、警視総監賞や方面本部賞を何度も受けている。そんな瑛子が管轄する区域で広域指定暴力団・印旗会の組長の娘が刺殺された。瑛子は、悪徳刑事の排除を目論む上野警察署署長・富永昌弘から監視される中で、独自に捜査を始める。だが、その矢先、手口が同じで、被害者の容姿も似た刺殺事件が、富永らキャリア警官から不審の眼で睨まれながらも、なりふり構わず連続殺人事件の真相に迫ろうとする瑛子。その胸中には、夫の死を自殺と断定した警察組織への激しい憎悪が渦巻いていた。孤独で冷徹な女刑事の魂が躍動する、新・警察小説シリーズ第1弾!!

 これだけプロに紹介して貰うともう言うことがありませんが、目的の為には手段を選ばない美貌の女刑事の孤独な戦いぶりがジェットコースターのようにアクションたっぷりに描かれています。中国マフィアや暴力団とも密接な接触があり、マスコミや警察内部にも多数の協力者を持つ瑛子ですが、不良刑事ではあっても悪徳刑事とはいえません。というのは事件解決能力が卓越しているからです。

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 そして彼女を突き動かしているものは、上記内容紹介でも触れられている、夫の死とそれに伴う自身の流産らしいのですが、その詳細については本書では明らかにされていません。ただ、捜査一課が自殺と断定した夫の死亡事件について、瑛子は全く同意しておらず、それだけでなく事件の真相究明が強迫観念となっており、睡眠薬を使っても2,3時間した眠れないワーカホリック体質となっています。彼女を駆り立てるものは何なのか?はおそらくシリーズの核なのだろうと思いますが、まるで流星のように一瞬で消えてしまうような生き様をしています。

 瑛子は会う人が皆驚くような美人らしいのですが、瑛子自身はその美貌を一切利用しようとしていません。そのスタイルはかるたをするときの千早のようで、非常に好感が持てるのですが、ちょっと切れ者すぎる感じがします。警察署長の監視を承知で動き回った上でここ一番は監視を切ったり、暴力団の大物幹部との接触でもその背景の意図に薄々気付いていたり。元々は融通の利かない生真面目な警察官だった彼女をそこまでにした事件の真相とは何なのでしょうか。

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 また、警察が取り扱っている事件については当然警察官として捜査に従事していますが、表立っていない事件、本書でいえば中国マフィアから依頼されているタチの悪い人身売買を行っている中国人の発見などについては、一切上司や同僚などに語らずに探索を行っています。そんな時間がどこから…と普通は言いたいところなのですが、2,3時間寝たら後は猟犬の如く表の裏の仕事に当たっている状態なので、瑛子に限ってはできるのです。いつまで持つのが心配ですが。

 美貌で戦闘力も高くてと来ると格闘ゲームの女性キャラのようですが、やはりピンチには陥ります。車に轢かれたり拉致されて薬漬けの性奴隷にされそうになったり。満身創痍になってなお真相の究明を止めない瑛子の生き様は、不良刑事であるが故にやたらとカッコイイです。例えは良くないかも知れませんが、「スケバン刑事」麻宮サキを彷彿とさせるような。イメージでいえば、斉藤由貴より南野陽子かな。

二代目スケバン刑事

 敵も多い瑛子ですが、助けられて恩に着ている警官や、ギブアンドテイクの関係にある中国マフィアの女ボス、女子プロレスラー崩れなど、様々な協力者もいます。しかし、彼らを必要以上に深入りさせることはなく、あくまで瑛子の真意は彼女しか知りません。故に孤独な戦いぶりと表現させて貰いました。続編の「アウトクラッシュ」も早く読みたいです。

 瑛子の行く手は破滅とか死しかないような気がするのですが、現在は対立している警察署長とかもいずれは味方になっていくような気がしないでもなかったり。
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