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「秒速5センチメートル」二次創作“トゥルー・エンド”:「距離に負けない想い」(第1回)

桜のタイトル
 

 一応このブログは「日記」のカテゴリーなのですが、あんまり身辺雑記は書くつもりがありません。格別面白いことがないということと、「表」と「裏」は区別したいなあという気持ちで。

 ただ、今夜は聞いて下さい。今年初めて「G]を見たんです。よりによって特大のヤツを。洗面台にいたので、覆わずシンクに落として水責めにしてみましたが、平然としていたので、プッシュすると泡が出る液体せっけんを試してみたところ、絶大な効果があり、「G」のせん滅に成功しました。泡で倒されるなんて、お前はヴリトラか!
ヴリトラ

 あと、特にランキングで上位に入って人気ブロガーになろうとか、アフィリエイト広告で儲けてみようとかは今のところ考えていないのですが、「秒速」の考察を続けていたところランキングが上がっていました。マイナーだから人気ないかなあ、でもこれがやりたくてブログ始めたんだしなあなどと思っていたのですが、皆さん実は結構お好きなんですね(笑)。

 さあ、「秒速5センチメートル」の結末にどうしても納得が行かないという同志諸君、私のゴーストがそうしろと囁くのでSSを書いてみましたよ。宜しかったら読んでみてはくださいませんかな?(全3回)

桜のタイトル

「距離に負けない想い」(貴樹・明里トゥルー・エンド)第1回


 粉雪の舞い散る岩舟町。寒い2月の夕暮れ。帰宅した明里を一通の手紙が待っていた。「篠原明里様」と書かれた懐かしい文字。明里は鞄を玄関に放り出すと、手紙を両手で胸に抱き、自室への階段を駆け上った。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

『前略 明里、お元気ですか?ずいぶんご無沙汰しています。今日は折り入ってお願いがあります。実は……』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

Part1 Seeing The Cherry Blossoms Together (IWAHUNE)
岩舟駅の明里

 4月の初め。来週は始業式。もうすぐ2年生だ。昼前の土曜日の岩船駅はうららかな日差しにつつまれていた。風はまだ冷たい。明里はセーラー服で人気のない待合室に座っていた。ストーブに乗った小さい盥から湯気が昇っている。

「3年ぶり…」

 思わず洩れる独り言。時刻表を見つめる。もうすぐ小山からの列車が到着する。

(私のこと…わかるかしら?)

 読んでいた文庫本を閉じる。カポーティの「草の竪琴」。顔を上げ、軽く頭を振って肩にかかった髪を払う。そこには、優しい目をした、聡明そうな娘がいた。

(彼も…変ったかな。背、また伸びたかな。)

 小学生の頃はあまり変わらない背丈だった。中学生になって再会した時は、彼の方が高かった。さらに3年…。少年と少女が変貌するには十分な時間。

「間もなく3番線に両毛線上り高崎行きの列車が到着します。ご乗車のお客様は…」

 駅のアナウンスが彼の電車の到着を告げる。明里は傍らのバスケットはそのままに、ホームに向かう。

「明里!」

「貴樹君!」

 列車のドアが開き、貴樹が降りた瞬間、同時に叫ぶ2人。明里と貴樹はホームを駆け寄る。

「明里、久しぶり。綺麗になったね。」

「貴樹君こそ。背が伸びて、大人っぽくなったわ。」

 見つめあう二人。視線が絡み合う。こみ上げる甘酸っぱい記憶。雪の夜の出来事。明里はそっと貴樹の胸にもたれかかる。意外なほど熱い胸板に頬が触れる。両腕にそっと背中が包み込まれる。壊れ物を扱うような優しさ。
水溜りの桜の花びら

「私って、すぐわかった?」

「もちろん。」

 しばしの沈黙の抱擁の後、はっと分別を取り戻して、二人は照れながらぎこちなく離れる。

「……私しかいないものね。」

 愚問だと、ちらっと舌を出し、くすっと笑う明里。

「ううん。きっと女の子が百人いてもすぐに判ったよ。」

 真顔で反論する貴樹。二人はホームから改札を出る。待合室に置いたままのバスケットはさりげなく貴樹が持ち、駅舎を出る。

「どうして?」

「うん…笑われるかもしれないけど…」

 頬を掻きながら貴樹が言い淀む。降り注ぐ日差しの明るさに目を細める。

「笑わないよ。言って。」

 貴樹の顔を覗き込む明里。

「あのさ…向こうで、明里の夢を見たんだ。その明里にそっくりだったから。」

「夢に私が…。不思議ね。」

「うん、なぜか女の子と二人で草原で夜明けを待っているんだ。何度も見るんだけど、女の子は影になってずっと顔が見えなかったんだ。何となく明里じゃないかって気はしてたんだけど。でも、この前明里から返事を貰ったでしょう?その後見た夢では顔がはっきり見えるようになって。それが本当に明里にそっくりなんだよ。」

「そう……本当は、夢の私の方が綺麗で、がっかりしたんじゃない?」

 悪戯っぽい表情を浮かべた明里が貴樹をからかう。

「そんなことないよ。本当にそっくりなんだって。」

 からかいを真に受けて、貴樹は少し口をとがらせる。

「それより、僕のこともすぐに判った?」

「うん。一人しか降りなかったから。」

 こいつ、と手を軽く振り上げて見せる貴樹に、きゃっと悲鳴を上げて腕で頭をかばう明里。

「貴樹君は背も伸びて、ずいぶん逞しくなったね。けど、優しい瞳は昔のままだもの。すぐに判ったよ。」

 明里に真顔で言われて、照れる貴樹。

「そ、そうかな…あはは。まだまだ大人っぽくなってないのかもね。」

「貴樹君は大人になってもきっとその瞳のままだよ。ずっと変わらないで欲しいな。」

(私を守ってくれたあの頃の瞳のままで…)

 明里は祈るような気持ちで貴樹の瞳を見つめた。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 『……僕は今度の春休みにまた岩舟町に行こうと思っています。この前は桜の花が見られなかったから、今度はぜひ見れるといいな。明里、また逢ってくれますか?』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
kiss.jpg

 3年前に雪を被った桜の木の前で初めての口づけを交わした。貴樹と明里は、寄り添って思い出の桜の木に向かう。バスケット中にはお弁当とほうじ茶。

「明里。制服ってことは、今日は学校なの?」

「ううん。来週から。貴樹君に、高校生になった私を見せたかったから。」

 くるりと一回転して見せる明里。短いスカートが軽やかに翻る。

「どうかな。セーラー服なんて、ちょっと古めかしい?」

 ぽーと見とれていた貴樹が首を激しく振る。

「そ、そんなことないよ。素敵だと思う。僕の高校の制服とは全然違うし、新鮮だよ。その…明里に良く似合ってるし。」

「あ…ありがとう。お上手ね。貴樹君はいつも優しいね。種子島でモテモテでしょう?彼女とかできた?」

 貴樹の言葉に上気した頬。照れ隠しに冷やかす明里。

「そ、そんな訳ないよ。明里こそ…どうなの?好きな人とか…」

「わ、私は…他の男の子には…その…興味ないから。」

 ほっとため息をつく二人。あまりのタイミングの一致にお互いに噴き出してしまう。

「それにしても種子島から栃木はずいぶん遠いでしょう?」

「うん。昨日は東京の叔母さんの家に泊めてもらって。朝イチで来たんだ。」

「それに…お金だってずいぶん…」

 貴樹を案じる明里。少し不安げに表情を曇らせる。

「うん。正直中学生の僕じゃどうにもならなかったな。でも…」

 貴樹は空を見上げる。強いまなざし。

「僕は…僕は、どうしても明里に逢いたかった。お年玉も小遣いも節約して…高校に入ってからは休暇中にバイトしたり。それでも少し足りなくて、叔母さんに助けてもらっちゃった。『出世払いでいいわよ。』だって。参っちゃうよね。」

「うふふ、素敵な叔母様ね。しっかり出世しないと。」

 歩む先に桜の木が見えてくる。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

『……どうしても明里に言わなくちゃいけないことがあります。直接逢って言わなきゃいけないことが。明里も忙しいかもしれないけど、もし逢ってくれるなら……』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「やっぱりまだ早かったね。」

 蕾も硬いままの桜の木の前で貴樹が残念そうに首をかしげる。

「うん…なるべく遅めにって今日にして貰ったんだけど。ごめんね。今年はいつもより少し寒くて。」

 明里が申し訳なさそうに言う。二人で桜の木を巡って花を探す。

「仕方ないよね。東京もまだ咲き始めだったし。」

「種子島は?もう咲いた?」

「うん、3月半ばにね。あっちの桜は卒業式も待ってくれないよ。」

「ふーん…少し寂しいね。……あっ見て!」

 明里が腕を伸ばす。細く綺麗な指の示す先の小枝に、小さな花が二つ寄り添うように咲いている。

「……僕たちみたいだね。」

「……私たちみたいじゃない?」

 同時に言って、顔を見合わせ、微笑む二人。
桜の木の前の二人

「ねえ、手紙のことだけど…」

 両手を後ろに組んで、くるりと身体を回転。少し顔を近づけて、おねだりするように明里が言う。

「ああ、明里に言いたいことだね。聞いてくれる?」

 改まった表情になる貴樹。その思いがけなく深刻な表情にどきりとする。なぜか頬が熱く染まる。

「う…うん。聞かせて。」

 桜の木の傍にあるベンチに腰掛ける。少し冷たい春風の中、見つめあう。

「あの日ね…。僕、明里に手紙を書いてたんだ。短い手紙だけど。でも、小山駅で風に飛ばされてしまって。」

「まあ。」

「列車は遅れるし、手紙はなくすし、本当に泣きたくなった。涙をこらえるのに苦労したよ。」

「大変だったね。あの時の貴樹君を慰めてあげられたらいいのに。私、全然気づかなくて。ごめんね。」

「いや、当然だよ。あんな時間まで明里が待っててくれて本当に嬉しかった。でもさ、列車の中ではもう帰ってて欲しいって思ってた。」

「どうして?」

「明里は身体が弱かったし、あんな夜遅くまで寒いところにいたら大変だと思って。」

 貴樹の想いやりに明里は満面の笑みを浮かべる。

「優しいね、貴樹君は。うん、貴樹君は昔から本当に私に優しかったよね。」

(だから好きになったんだ。いつのまにか…)

 明里は心の中で呟く。

「いや、そんなこと……。転校するって電話のとき、泣いてる明里に何も言ってあげられなくて。」

 あの日、悲しむ明里にもっと優しくできたら…。取り返しのつかない後悔が今も貴樹の胸を突き刺している。

「…でさ、手紙は本当に短かったし、言えばよかったんだ、直接。でも…言えなかった。」

「どうして?」

「……」

 貴樹は明里から目をそらし、桜の木を見上げる。遠い視線。しばしの沈黙。

「あの夜、この桜の木の前でさ、明里と、その…」

「あ、うん…。そうね…。」
 
 二人で顔を赤らめ、うつむき、口ごもる。もう3年経ったのに、あの口づけを思い出すと胸が高鳴る。

「あの時さ……生まれて初めての強い喜びと、深い哀しみを感じたんだ。ああ、明里は今僕だけのものだっていう喜びと、ああ、この瞬間が過ぎたら明里とは二度と逢えなくなるっていう哀しみと。」

 顔を真っ赤にしながらも、意を決した貴樹が語り続ける。

「あの時、僕は明里にお別れを言うべきだった。手紙もそういう内容だったんだ。『明里に恥じない人間になりたい。好きでした。』って。」

 はっとした表情で顔を上げる明里。顔色が少し青ざめる。

「じゃ、じゃあ…貴樹君が言いたいことって…その…」

「待って明里!そうじゃない。あの日、確かにお別れを言いにここに来た。でも言わなかった。いや、言えなくなったんだ。僕の中に、全然違う気持ちが湧きあがったから。僕が言いたいのはその新しい気持ちなんだよ。」

 顔の前で両手をぶんぶんと振って貴樹はまくしたてた。

「じゃ…じゃあ、言って。貴樹君の新しい気持ちを。」

 少し落ち着きを取り戻した明里。顔を俯きかせながら促す。不思議な予感。胸のときめきが止まらない。

「うん…恥ずかしいけど。あの時は恥ずかしくて言えなかったけど、今度こそ言わなきゃ。」

 貴樹がつっと両手を突き出して明里の両手を握る。暖かい血潮がかようのを感じる。

「明里……好きだ。絶対離したくない。」

 ベンチで明里のお弁当を食べ、灯ともし頃に駅に戻る。それからの二人は俯きがち加減であまり会話もなく、穏やかな沈黙の中にいた。つながれたままの熱い二人の指は、貴樹が列車に乗るまで離れなかった。

「明里。その…返事を…くれないかな?」
新宿の桜

 ホームに列車が滑り込んできたとき、貴樹がぽつりと言った。覚悟はできているという声で。

「うん…手紙、書くね。」

 にっこり笑ってはぐらかす明里。

「明里……」

「私だって、貴樹君に言いたいことがあるの。でも、また今度、ね。」

「今度って…明里…」

 ベルが鳴る。思わず下車しようとする貴樹を明里が制する。

「私、貴樹君に逢いに行くの。その時に…ね?」

 重たげなドアが閉まる。もの問いたげな貴樹の瞳に、明里は謎めいた、だが最高の笑顔を見せて手を
振った。がたんとひと揺れして列車が動き出す。

(第1回終了)


※ 余白の独り言
 
 明里には「葛飾の叔母さん」がいるようですが、貴樹の「叔母さん」は私の創作です。イメージとしては「魔法少女まどか☆マギカ」のまどかママ(鹿目詢子)。
鹿目詢子

 「直に告るだけの根性もねぇ男はダメだ」と厳しいことを言う人ですが、きっと告る勇気を出した甥っ子には優しいんじゃないかと思います。まどかもタツヤも優しい従兄弟の貴樹がきっと大好きなことでしょう。

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