夢にも思わない:こうして少年はほろ苦く、一歩大人の階段を昇るのでした

はいこんばんは、早速昨日の続きです。
娘に「明里」と名付けた「秒速5センチメートル」重傷患者の知り合いに対し、私は以下の「明里パパ5つの誓い」を提示しました。
一つ、風俗には行かないこと
一つ、明里に見せられないゲームはしないこと
一つ、中二病的言動はしないこと
一つ、深夜アニメは見ないこと
一つ、12年後に岩舟に引っ越すこと
これに対する、知人の返事とは、
一つ、風俗には行かないこと→OK
一つ、明里に見せられないゲームはしないこと→OK
一つ、中二病的言動はしないこと→心の中のみに留める
でしたが、残りの
一つ、深夜アニメは見ないこと
一つ、12年後に岩舟に引っ越すこと

については「無理」とのこと。岩舟引っ越しは仕事の都合で不可能だとか。そんなもん愛する明里のために始発終電で定年まで通えやと思うのですが。
それから、深夜アニメについてもプリキュアだけじゃ満足できないとのたまうので、そうかそれならと、私からの新たな提案をしてみました。それはですね……以下、明日に続きます。なんと3日に渡って引っ張るのでした(笑)。
さてそれでは今日の本題行きましょう。本日は宮部みゆきの「夢にも思わない」です。

「夢にも思わない」は1995年5月に中央公論社から刊行され、1999年5月に中公文庫、2002年11月に角川文庫から文庫版が刊行されています。私が読んだのは中公版です。
「夢にも思わない」は、「今夜は眠れない」 と共にいわゆる「親友『島崎君』シリーズ」を構成しており、「夢にも思わない」の数ヶ月後の話です。が、実は私、「今夜は眠れない」を未読でして…。先に読んだ方がいいという書評はもっともで、「夢にも思わない」にも「今夜は眠れない」の話に関連するらしいモノローグなどがちりばめられているのですが、スルーするしかないのが残念でした。しかし、図書館に「今夜は眠れない」がなかったのだから仕方がありません。お願いします、シリーズは全部揃えて下さい。でも先に借りられてたら仕方ないですけどね。
Amazonの内容紹介です。

毎年、九月末になると「白河庭園」で行われる、虫聞きの会。もう二十年近くも続いているという、そんな風流な催しに、僕が行く気になったのは、一にも二にもクドウさんのためだった。毎年家族で訪れているというクドウさんと偶然を装って会うはずだった。それなのに…。―殺されたのはクドウさんの従姉だった。事件は思いがけない方向に進んでいき無責任な噂があとを絶たない。僕は親友の島崎と真相究明にのりだした。大好きな彼女は僕が守る。
ということで、殺人事件に巻き込まれたクドウさん(工藤久美子)のため、中学一年生の「僕」(緒方君)は親友の島崎君らと共に独自の調査を開始することになるのですが…この人達、本当に中一?どう考えても思考や行動が高校生レベルなんですが。中一じゃ好きな女の子にそうそう話しかけられないんじゃないかなあ。ましてや緒方は平凡な中学生という設定なんですから。
探偵役の島崎は切れ者です。彼は探偵の素養があるだけではなく、クールで全般的に頭が良いので、どうして緒方とつるんでいるのかわからないくらいです。

白川庭園(モデルは清澄庭園でしょう)での殺人事件、緒方は最初クドウさんが殺されたものだと勘違いします。それくらい被害者はクドウさんに似ていたのですが、それもそのはず、被害者は従姉妹の亜紀子だったのです。そして次々に明らかになる亜紀子の黒い事実。高校を中退した彼女は少女売春組織に加わっており、しかも客を取るばかりではなく、スタッフとして女の子の勧誘まで行っていたらしい。そしてその魔の手はクドウさんにも伸びようとしてた…
当初は根も葉もないウワサでクドウさんが傷つくのを防ごうと真相究明を図る緒方でしたが、出てくる話は真っ黒け。実は本書のキモは殺人者が誰かということではなく、外見からは想像できない人の「悪意」とか「狡猾さ」が明らかになるところでしょう。亜紀子はとんでもないビッチなんですが、なにゆえにビッチに堕ちていったかが明らかになると、一概に彼女を責められないとも思います。家に居場所がないって辛いよねえ。引きこもりにもなれなければ、飛び出していくしかない訳で。
実は登場人物、誰も彼もが緒方に多かれ少なかれウソをついています。というか、真実を明かしていないというべきか。警察はまあ仕方ないですね。捜査上の秘密はみだりに漏らせませんから。また緒方の方も、なぜ伏せていたのかまで理解すれば怒る道理がないことも承知するのです……ただ一人を除いては。それこそがまさに「夢にも思わない」というタイトルに重なる訳ですが。

緒方はそれが許せなかったみたいですが…それは若さ故というものでもなく、「人倫」故ということなのかも知れません。子供ならかなり強く批判しても不思議ではないのに、それをしない緒方はやっぱり中一としては平凡ではないですね。思考が大人そのものです。
宮部みゆきは女性だからか、女性の心理の描き方が非常に上手いですね。しかし女性に夢も希望も抱けなくなるというか、心の奥底に秘めた恐るべき打算とか情念に戦慄するというか(笑)。反面、少年には甘いというか、美化しすぎなきらいがあるような気がします。そんな綺麗事ばっかじゃないよ、とツッコミたくなる場面多々有り。宮部さんが少年に夢や希望を抱いているのかも知れないですが、「ねえよ、そんなものは!」と女性に夢も希望も見いだせなくなった私は叫ぶのでした。
このシリーズは高一くらいでやればなおリアリティがあったと思います。大人ならたった3年の違いなんて大差ありませんが、子供の3年は大きいです。中一と高一では天と地の差でしょう。警察も中一ではまともに相手しないと思うのですが…。

そういえば話は全然違いますが、数年前に外人の知り合いを連れて清澄公園に行きました。実はここが目当てではなく、その近所にある深川江戸資料館が目的地だったのです。ここは面白いですよ。吹き抜けの館内に江戸の街の一角が再現されていて、長屋や商店に入っていって、引き出しをあけたり商品に触ったりできるんです。外人も大喜びでした。アナ、元気にしてる?
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