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「秒速5センチメートル」考察(その3):「水野理紗」の謎

花苗と貴樹

 昨日今日と初夏らしくない涼しさですね。皆さん体調管理にはくれぐれもご注意を。

それでは「秒速5センチメートル」の考察その3です。

3.「水野さん」の謎
水野さん
 第三話に突如登場し、断片的な映像とともに視聴者を混乱させる「初見殺し」の水野さん。私も一瞬「仕事モード」の明里さんなのかと思いましたよ。よく見ると全然違うことは判るのですが。彼女について読み取れるところでは、就職後に付き合いだして3年。肉体関係当然あり。優しい貴樹君が好きだけど、3年の間に心の距離が全く近づかなかったことに絶望し、別れを切り出した-というところでしょうか。仕事も彼女も失って、普通ならどん底状態ですが、貴樹君はどちらも一切頓着していないように見えます。仕事の方は、自宅で起業しているようですし(前職を生かしているのかな?)、水野さんからの電話とわかってあえて出ない描写もあるので、彼の方には未練はないようです。
水野さんその2
 ではなぜその気もないのに貴樹君は水野さんと付き合ったのでしょう。貴樹君は昔から優しい子でした。明里さんが転校を告げたさい、優しい言葉をかけられなかったことを悔やむほどの優しさは、異常なほどと言っていいのではないでしょうか。小学生なら当たり前なのに。それに、黒板に書かれた相合傘を消して明里さんの手を取って教室を出ていくシーンがありますが、あれ、普通の小学生の男の子にはできませんよね。好きな子がいて、それを周囲から囃された場合、男の子というのは馬鹿だから、「そんなんじゃねーよ!」とか言って敢えて好きじゃないような素振りを見せたりして、女の子を傷つけてしまうのが関の山でしょう。こんな優しい男の子が女の子たちにモテモテなのはむしろ必然なわけで、明里さんはもとより、中学校の先輩、花苗さんや水野さんに心を寄せらるのは不思議でもなんでもありません。リア充爆発しろ!
貴樹と水野さん
  ただ、誰にでも優しいというところがある意味「罠」で「優しさ」と「恋」は似てるから怖いのです。花苗さんは貴樹君の優しさに惹かれ、ぐんぐん好きになっていきますが、告白寸前にそれに気づいて断念しています。水野さんは、あの時告白していた場合の花苗さんの未来の姿を示唆したものといえると思います。観客が知らない「誰?」的な人を敢えて持ってきたのは、あそこに花苗さんを持ってくると第二話が成立しないからというのは当然として、花苗さん自身がとても健気でキュートに描写されているので、観てるこちらとしては彼女を嫌う要素は全くないわけで、水野さんを花苗さんに置き換えてしまうと、我々の貴樹君へのシンパシーが大きく減衰することになるからでしょう。

 花苗さんは賢明にも告白を回避しましたが、告白していたとしたらどうなったかというと、多分貴樹君は振ったりしなかったと思います。彼はとっても優しいから。付き合いだせば、互いへの想いはどんどん強まっていき、近づいていくというのが普通の恋愛でしょうが、貴樹君の場合は、自分も好きだから付き合うのではなく、傷つけたくないから「いいよ」と言っているだけなので、常に優しく接してはくれるでしょうけど、キスしようが抱かれようが、心の距離は一向に縮まらないわけです。

 5年間もの長い片想いに終止符を打った花苗さん。とても悲しかったことでしょうが、その間の思い出は決してつらいばかりのものではなかったはずです。貴樹君に触発されて勉強していい高校にも入ったわけだし。将来的にはいい思い出として回顧できるようになるのではないでしょうか。何より彼女には素敵なお姉さんもいますしね。ぜひ紹介して。

 そういうわけで、第二話のおかげで我々は花苗さんにはいろいろ感情移入してしまうし、好きになっちゃうのですが、水野さんは人となりが不明なのでどうも感情移入はできかねますね。地味子とでも名付けようか。貴樹君の「過度の優しさ」の犠牲者2号のわけだけど、おそらく大学時代に他にもの犠牲者がいることでしょう。水野地味子さんにはこれから幸せになるよと励ます余地が見いだせない。手首切るか屋上から飛び降りるか…なんとなくそういう不幸の影を背負っているような雰囲気がありますよね。「魔女の口づけ」を受けそう。
電線が分断する月
(コミック版を読んでの追記)
 コミック版ではエピソード大幅追加で、第二巻のヒロインは彼女ではないかというほど。そして水野理紗さん、ホントに可哀相。一番悲惨なのは彼女ではないか。貴樹、岩舟まで連れて行って置き去りってお前……。貴樹なんかさっさと忘れていい恋しろよとしか言いようがないなあ。再会したとき、髪を切ってましたが、コンタクトレンズにするとかして、暁美ほむら位の変貌を遂げてほしかった。貴樹に「逃がした魚は大きかった」と思わしめるためにもね。
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非公開コメント

No title

「水野さんは、あの時告白していた場合の花苗さんの未来の姿を示唆したものといえると思います。」
思わず納得です。
そうですよね。やっぱり良く出来ているなぁ、この話は。

タカキくんは本当に迷惑な奴だ。。。

Re: No title

いらっしゃい、こんばんわ。

水野さん、理紗という可愛い名前であることがコミックで判明しました。また、コミック2巻は彼女のためにあるのではないかというほど大活躍(?)してますが……一番救いのない人は彼女では。

「One more time,one more chance」に「寂しさまぎらすだけなら 誰でもいいはずなのに」というフレーズがありますが、明里を失った寂しさをまぎらすために、片っ端から女の子に手を出している感じなのが大学生以降の貴樹なのでしょうか。しかも悪意なく無意識にやっちゃってる。なまじ優しくてモテるタイプだけに被害は甚大(笑)。

明里の代わりは他の誰にも勤まらないから、彼の餓え、渇きは決して満たされるはずはないのに……

No title

私も水野さんが一番かわいそうだと思います。
三年間も付き合ったのに、一番いい時期を初恋にしがみついてる男なんかにあげちゃって・・・かわいそう。
すごく同情する。もっと早く気づけたら・・・、っていうかその気もないのに交際okした貴樹君が元凶ですけども。

このことで貴樹君のことが本当に嫌いです・・・。
彼は優しさとかなんだかんだ言って何が本当に人を傷つけるのかが全く分かってない。自分のことで精いっぱいの成長できてない子供だと思う。
傷つけたくないんじゃなくて、人の悲しそうな顔を見て自分が悪者になるのが嫌なだけなんじゃないのかって。
貴樹君の女々しさと汚さに常々いらだちを覚えてしまいます^^;

Re: No title

 りなさん初めましてこんばんは。こんな僻地へようこそ。

  ここは男塾でも女人禁制でもないのですが、扱ってる内容のせいか管理人がモテないせいか、女性のコメントは滅多にいただけないので大変嬉しいです。

> 私も水野さんが一番かわいそうだと思います。
> 三年間も付き合ったのに、一番いい時期を初恋にしがみついてる男なんかにあげちゃって・・・かわいそう。
> すごく同情する。もっと早く気づけたら・・・、っていうかその気もないのに交際okした貴樹君が元凶ですけども。

 なにしろ「1000通メールしても心は1センチくらいしか近づけなかった」ですからね。ほんのちょっとしか出てこない本編でもひたすら暗い表情しています。映像版での水野さんの明るい表情ってちょっと想像つきません。

 傍目には「なんでこんな男に?」という選択(「こんな女に?」というケースももちろんあります)をしてしまうということが世間一般にきわめてありがちなのは、まさに「恋は盲目」ということなのでしょうかね。

 ただちょっと貴樹の弁護を試みてみると、彼にはその気がなかったわけではなかったのだと思います。貴樹は貴樹になりに明里を諦めて、新たな一歩を進みたいと思っていたのでしょうが、「理想の恋」の呪縛が許さなかったのだと思います。種子島の海岸沿いをカブで走る貴樹がふと砂浜を見ると、独りぼっちの明里が歩いている幻が見えるというシーンがありましたが、明里との文通が途絶えてしまってからの貴樹は、まさしく「One more time,one more chance」の「いつでも探しているよ どっかに君の欠片を」という状態に、無意識に陥っていたのだと思います。きっと貴樹は水野さんのどこかに「明里の欠片」を見いだしたのでしょう。しかし水野さんは水野さん、決して明里の代わりにはなりえないということで、徐々に齟齬が……

> このことで貴樹君のことが本当に嫌いです・・・。
> 彼は優しさとかなんだかんだ言って何が本当に人を傷つけるのかが全く分かってない。自分のことで精いっぱいの成長できてない子供だと思う。
> 傷つけたくないんじゃなくて、人の悲しそうな顔を見て自分が悪者になるのが嫌なだけなんじゃないのかって。
> 貴樹君の女々しさと汚さに常々いらだちを覚えてしまいます^^;

 そう思う女性がいるのは当然だと思います。「秒速5センチメートル」は、ある種の人に甚大な精神的ダメージを与える反面、「こんな暗い話のどこがいいの?」と思う人々もたくさんいるはずなのです。しかし、貴樹の影ある表情とか優しさとかに惹かれてしまう女性もいる(花苗とか水野さんとか)のも事実で、恋は理屈じゃ割り切れないんだなあと思うしかありません。

 本編ラストの微笑み、あれは明里を吹っ切った諦観ゆえなのだと解釈すれば、今後の貴樹はちゃんとした恋愛ができるのかも知れません。しかし、花苗や水野さんや、その他のこれまで傷つけてきた女性(コミック版では少なくともあと2人います)に対する罪は消えないでしょう。というか、明里の呪縛が消えた反面、彼女達への罪悪感の虜になる可能性もあると思います。

 ただ、花苗にしても水野さんにしても(水野さんについてはコミック版をあてはめた場合ですが)、貴樹から口説いている訳ではなく、自ら貴樹に接近しているんですよね。彼女達自身にも「男を見る目」の欠如という問題はなかったとはいえないので、今後はこの経験を糧にいい女になって欲しいものです。
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