ひとり~女性の一人暮らしは危険が一杯。でも女の敵は女だったり……

ひとり
 
 今日は生暖かい春の宵という感じですね。こういう日は、「春宵情歌」なんかがぴったりな気がします。劇場版の「カードキャプターさくら」で使われた歌ですね。中国語版もあるのですが、ここはやはりさくらの中の人、丹下桜バージョンで。

春宵情歌

 http://www.youtube.com/watch?v=bN1fIhspZY4

 さくらが歌うにはやたら大人びた「待ち人」来たらぬを嘆く歌ですが、日本人が想像する中華風春の歌という感じが良く出ていると思います。水蒸気分が多そう。

 さて話はがらりと変わりまして、今日の話題を。本日は新津きよみの「ひとり」です。本書は2009年1月に角川ホラー文庫から出版されました。新津きよみの作品を読むのは「同窓生」に続いて2冊目です。

 例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。

 中学2年の夏、桃子は親友のすみれとバス旅行をしていた。ところがそのバスが事故を起こし、ふたりは崖下に転落してしまう。大怪我をしたすみれとともに救助を待った桃子だが、すみれは「わたしの分まで生きてね」と言い残して桃子の目の前で息を引き取った。その日以来、桃子は「すみれが自分の中で生きているような」不思議な経験をしながら成長した―。生と死で別たれても続くふたりの友情を描く、長編ホラー小説。

帯

 角川ホラー文庫から出版されていますし、内容紹介でも「長編ホラー小説」と銘打っていますが、はっきりいってホラー小説ではありません。

 主人公の桃子は楽器も弾けず、成績もぱっとしない女の子でしたが、すみれはピアノやフルートを操り、成績も優秀な子でした。事故に遭った際、すみれの帽子を被っていたこと、そして事故現場ですみれを下敷きにしていたことから、桃子はすみれに罪悪感を感じています。それどころか、事故で生き残ったのが自分一人であったことにも申し訳ない気持ちを持ったまま生きています。

 桃子はその後成長して30歳を過ぎ、都市防災の研究所で働いています。内容紹介で記されている「すみれが自分の中で生きているような」経験とは、すみれの存在を自分の内側にはっきり感じている訳ではなく、事故後急に頭が冴えて成績が上がったことや、ピアノが弾けるようになったことから間接的に桃子が感じていることです。しかし、仕事や男性の好みについても、自分が選んでいるのかすみれの好みなのかはっきりしなくなっており、付き合っていた男性が海外赴任を機に結婚を申し込んできても、はっきりした返事ができずに破局したりしています。

 そんなおり、29歳の女性が連続して殺害される事件が発生し、現場には「ひとり」と書かれた短冊という謎のメッセージが残されていました。マンションの隣に住んでいた、桃子が親しくなった年配の女性も殺害され、桃子は第一発見者となります。そして現場に残された「ひとり」の紙を見て、本当は自分が殺害されるべきだったのではないかと思いますが…

 すみれは桃子の前に姿を見せることはなく、終盤まで何かのメッセージを伝えてくることもありません。すみれが桃子を恨んでいるとかいうこともないので、心霊ホラーの要素はないのですが、連続殺人事件に巻き込まれるのでサスペンスであるとは言えるかも知れません。

 ただし、すみれの存在を感じているのは桃子だけではないようで、すみれの母もすみれの遺品のフルートを持ってきたりして、桃子の中にすみれを感じている様子です。そして予想通りフルートが吹けてしまう桃子。

 本書のテーマは、現在まで尾を引いている過去の事件からの解放ということになるでしょうか。バスの事故については、被害者の遺族の一人が連続殺人事件を捜査する刑事であり、彼を通して遺族の気持ちが桃子に伝えられることになります。桃子は罪悪感など抱く必要はなく、遺族達にとっては生存者がいたことは救いであったこと、彼女が立派が仕事に就いていることは希望でもあること―など。

 それから、桃子の両親は事故のずっと前に離婚しており、母は行方不明、郷里の父は別の女性と親しくしています。その状況が嫌で桃子は郷里に帰らずにいましたが、父が倒れたことで「愛人」と逢ったり、その気持ちを聞いたりすることで精神的に大きく成長していきます。

 そして行方不明だった母の住所を知ることになり、思わず尋ねてしまう桃子。事故で重傷を負って入院したときも会いに来なかった母は、どうやら妖しげな宗教にはまりまくって家族を捨てたようなのですが、それから20年以上経った今は……。しかしそこには残酷な事実が待っていたのでした。全てが上手くはいかないというところは妙にリアリティーがあります。

 連続殺人事件の方も、犯人の動機は過去の事件にあり、「ひとり」にされたことを深く恨む犯人は桃子にも刃を向けてくることになるのですが、「ひとり」を恐れない桃子は冷静に対峙します。桃子が孤独を恐れないのは、すみれがいつも傍にいたからなのかも知れません。そしてあわやという時、遂にすみれが現れることなりますが、その時でも桃子の目にはすみれは映りません。

 事件後、すみれは桃子の元を去ってしまいますが、最後に事故の真相を桃子に夢の形で伝え、しかも復讐を果たしていきます。なぜ18年も経ってからの復讐なのか?と思いましたが、すみれが桃子の境遇その他を全て把握していたとするならば、時機を待っていたということなのかも知れません。桃子が父やその愛人を受容し、母と完全に決別できるタイミングを計っていたという。

 すみれが去って、桃子はフルートを吹けなくなりましたが、仕事は大丈夫なのでしょうか。すみれの力で進学や就職をしてきたとすると、能力がた落ちになったりして。何よりもすみれの嗜好で仕事を選んでいたとしたら、仕事への情熱を失ってしまう気もします。バツイチの姉や甥を抱える刑事よりも、元カレとよりを戻したほうがいいような気もしますが、元カレもすみれの嗜好だったとしたらやっぱり無理でしょうね。刑事への好意は桃子自身の本当の気持ちに間違いないですが、結ばれても苦労しそうです。

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