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石原豪人-「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター:少年時代の記憶に息づく作品達

新装版 石原豪人---「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター
 
 春分の日ですね。これからは昼の長い日が半年続いていくのですね。それにしても暖かすぎですよ。暖春というやつでしょうか。ちょっと散歩してきたのですが、桜のつぼみがほころび始めています。筑波嶺周辺もこの週末にはお花見日和かも。せめて31日あたりに満開になって欲しいのですが、それまでもつかどうか。日曜日くらいしか見に行けないのですが、春の一週間の変化はあまりに早いですね。

スクリーミング・ア・ゴーゴー

 本日はこの前かってようやく読み終わった(というか見終わった)「新装版 石原豪人「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター 」(中村圭子編)です。

世界妖怪図鑑

 私が子供の頃、怪奇系児童書というのがたくさん出版され、児童館の図書室とかクラスの学級文庫(今もあるんですかねえ)には、立風書房の「ジャガーバックス」とか、小学館の「なぜなに学習百科」とか、学研の「ジュニアチャンピオンコース」とか、講談社の「ドラゴンブックス」なんてキワモノの本が並んでおりました。

ドラゴンブックス
世界の大怪獣

 現在の児童書とか児童向け図鑑とは似ても似つかぬ内容で、多分現代のお父さんお母さんは「こんな本を子供に見せるなんて!」と目を剥くかも知れません。個人的には悪と毒にまみれた現実社会に出る前に、免疫をつけるという意味では有効だったと思うのですけどね。例えば私は子供の頃に心霊とかUFOとかいうオカルトにずっぽりとはまっていたのですが、その結果大人になってどうなったかというと、極めて懐疑的(スケプティック)になりました。絶対ない!と否定するのではなく、「あるというのならはっきりした証拠を見せてよ」という立場です。残念ながらオカルト系では、「有無を言わせぬ証拠」というものを出してくることが出来ないか、ほとんど不可能な場合が大半なんですよね……。

マンボウ情報局扉絵

 大人になっていきなりオカルトと接触すると、あるタイプの人達はずっぽりとはまってしまうようです。新興宗教とかもそういう傾向があるかも知れません。もちろん「信教の自由」は承知していますが、子供の頃にある程度耐性をつけておけば、はまってしまう前に何か気付くこともあるのではないか、と。そういう意味では宗教サイドから見ると私あたりはさしずめ信仰心のない「救いがたき衆生」になってしまっているのかも知れませんが、むしろそうなって良かったなって思ってたりして。

悪魔サタンの登場

 それはさており、娯楽の少なかった私の子供時代を楽しませてくれたこれらのキワモノ児童書にたびたび迫力のあるイラストを掲載していたのが石原豪人という人なのです。メカや未来を精密に描いた小松崎茂と、迫力と色気のある妖怪・怪物を描いた石原豪人は昭和のイラスト界の双璧といっていい存在だと思います。今回の画像はそういう訳でなるべく大きめにしました。

ライオン丸対フラワンダー

 まずは、本書に関するAmazonの内容紹介です。

河童

「怪奇現象」「妖怪」「怪獣」「怪人」…ありとあらゆる「怪」の世界を描いて、石原豪人は戦後の挿絵界に大きな足跡を残しました。昭和30年(1955)頃から挿絵画家として活動を始めた豪人は、たちまち人気を得て、以後50年間にわたり精力的に描き続けました。天才にして、さらにたゆまぬ努力を続けた挿絵画家・石原豪人の全貌を紹介する初めての本です。

石原豪人

 石原豪人(「ごうじん」と読みます:1923年3月15日-1998年6月19日)の本名は石原徹。島根県出身で、日本大学芸術学部中退です。18歳で満州に渡り、映画看板などを描いていましたが、体調を崩したため、1955年頃(昭和30年)から比較的体力を使わなくて済む挿絵画家としての仕事を始め、以後40年間にわたって精力的に描き続けました。

ガンバスターまで描いていた

 テレビがなかった時代の映画の看板から始まり、江戸川乱歩シリーズの挿絵、立風書房のジャガーバックスシリーズを始めとする怪奇系児童書、各社の学年誌・少年雑誌・少女雑誌の怪獣・怪人・幽霊・妖怪・怪奇現象などのイラストを手がけ、平成に入ってからもサブカルチャー雑誌やトレンド雑誌、家庭用ゲーム誌の挿絵までカバーしていました。

吸血こうもり博士

 「好き嫌いがなくてこそ高級な人間」をモットーとしていて、注文を受ければ分野を問わず何でも描いたそうです。手がけた分野は、紙芝居・映画看板・カストリ雑誌・学習雑誌・少年雑誌・少女雑誌・芸能雑誌・新聞小説・劇画・広告・アメリカンコミックに至り、その作品点数の多さゆえに、「日本のノーマン・ロックウェル」(多作で有名なアメリカのイラストレーター。生涯に2000を超える作品を描き、アメリカでは幅広い大衆的人気を得ました)、「現代の浮世絵師」とも呼ばれたとか。自宅の床が抜けたというエピソードもあります。

赤い目の怪物

 そしてもう一つの名義「林月光」ではゲイ雑誌やSM雑誌において濃厚な挿絵も手がけていますが、ぱっと見ただけで思いっきりアダルト路線なので当ブログでは掲載を差し控えたいと思います。見たい人は「林月光」でググれば簡単に見られると思います。

東洋の悪魔

 ここでは私が昔見ていたキワモノ児童書で見た石原豪人のイラストを中心に語りたいのですが、そこに描かれた怪獣・怪人・幽霊・妖怪・怪奇現象などのイラストは、本当に我々の心を、恐ろしくもエキサイティングな「この世の果て」や「あの世」へと導いてくれたものです。

二首女

 特徴的なのは、登場する人物や人外の迫力のある生き生きとした表情と、とりわけ女性キャラの何とも言えない色気でしょう。恐ろしい妖怪であっても女性系の妖怪には色気があるんですよね。それが故にアダルト系イラストでも大きな需要があったのでしょうが。

夜の義姉

 ギリギリセーフなイラストを一点。官能小説「夜の義姉」(山路薫)の表紙です。「作り酒屋に嫁いだ美しい京女と義弟の禁じられた夜の営み」だそうですよ、奥様!

幽霊

 少女雑誌でのイラストでは、「女の子の色気をおさえてくれ」という注文ばかりが来たそうです。編集者にも色気肯定派と否定派がいて、否定派は振り袖姿にも文句を言ったそうです。石原豪人は「だいたい僕から色気を取ったら何が残るんですか」と後にこぼしています。

妖怪ぬれ女

 本書において編集文筆家の竹熊健太郎はインタビューでこう言っています。

吸血鬼ドラキュラ

 「『北斎って、きっとこんな感じの人だったんだろうな』という……まさに現代の浮世絵絵師だと感じました。」

羅生門の鬼

 「先生は何でも描くし、また何でも描けることを誇りにしていました。もともと頭のいい人だから、私の依頼以上に、自分のアイデアで笑える画面を工夫されたりされました。私はいつもパロディで古めかしさを狙い、それで豪人先生に頼んだのですが、そんな注文って頑固な人なら怒っちゃったかもしれないですよね。でも先生はむしろ喜んでやってくれました。」

嵐を呼ぶ魔女の妖術

 「アナーキーでしたね。政治的ではなく、心根としてのアナキスト。(中略)団体を作るとか、徒党を組むとかいうタイプではない、日本的な村社会があまり好きじゃなかったみたい。あまり日本人っぽくない人でしたね。」

大焦熱地獄
 
 編集者の赤田祐一はインタビューでこう言っています。

九尾のきつね

 「石原先生をひとことで表現すれば『怪紳士』というところでしょうか……『怪しい紳士』。おしゃれだし、人あたりがソフトで紳士なんですよ……でもなんだか怪しい感じがするんだなあ……」

スーパーマリオブラザーズ

 「『妄想力』の凄い人でしたね。(中略)妄想力があれだけ強烈だから、あんな絵が描けたんだと思います。」

妖怪画集

 小学館の常務取締役の五十嵐光俊はインタビューでこう言っています。

妖怪女郎蜘蛛

 「いい意味で編集者の期待を裏切る名人でした。きっと編集者を超えてやろう、もっとすごいものを描いてやろうという気迫が溢れていたんだろうと思います。」

原始人の野球

 「人物画は映画ポスターを描いていた経験が豊富で、構図といい、表情といい、一目見てわかる独特の『豪人臭』があったように思います。人物の特徴をつかむ力は天才的に上手かった。」

魔女狩り
 
 ぜひ生前に一度話を聞いてみたかったなと思う人柄ですね。でも石原豪人のイラストは既に多数がインターネットに流布しており、必ずや後世に伝えられていくことでしょうね。

旧版
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