fc2ブログ

コミック版「ほしのこえ」を読む(その1)~彼女は遥か火星の空に

ほしのこえ
 
 今日も雨模様と聞いたので傘を持って出たのですが、雨は日中だけで夜にはやんでいました。二日続けて傘空振りです。よーし次は雨の予報でも傘は持っていかないぞと決めたらきっと大雨に当たることでしょう。

氷点(上巻)

 先日三浦綾子の「氷点」を読んだんです。取りあえず上巻を。面白かった本はこのブログで取り上げていますし、つまらなかったら黙殺するというマイルールを決めているので、ディスることはまずしないつもりなのですが、この本は本当に嫌になりました。人間にとって原罪とは何かを追求した不朽の名作だなんて言われていますし、何度もドラマ・映画化されていることも承知していますが、私には全く合いませんでした。

 原罪云々を言う前に、そもそも医者夫婦(ヒロインの養父母)が実に人間的にどうしようもなく嫌な連中で、しかもそのことに全く自覚がないと来ているので救い難いです。しばしば「汝の敵を愛せよ」という言葉が出てくるのですが、ヒロインを「敵」と認識している時点で既にアウトです。きちんとした決意も覚悟もなく、浮ついた一時の感情で適当なことをして、しかも秘密保持に全く無頓着な医者は逝って良し。その妻もほとんど何かの精神病じゃないかという気質の人なので、同じく逝って良し。ヒロインは私が育てるでOK。

 ということで下巻は多分一生読まないと思いますが、全然寂しくありません。ウィキペディアによれば、「作風が通俗的であるということで文壇での評価は低く、また信仰が基礎にあるということで大衆文学界でも評価を受けることが難しかった」そうですが、まさしく俗の極みだと思います。私は俗っぽい話は嫌いではないのですが、この作品は、あまりに通俗的であるのにその自覚がないように感じます。本気で作者や登場人物に腹が立つのは個人的には非常に珍しいです。この作品に限って言えば、少なくとも「原罪」とかいうシロモノはヒロインにはありませんから。もしあると主張するのなら、それは単なる差別ですよ。

DVDBOOK.jpg

 さてお口直しにコミック版「ほしのこえ」の精読をいよいよ始めたいと思います。まずはチャプター1から。

トレーサーに腰掛けるミカコ

 カラーの扉絵。巨大なロボットに腰かけている少女の姿があります。夏服なのでしょうか、半袖のブラウスにネクタイがすっかり緩んでます。ページをめくると彼女がコクピットに座っている姿が。全天周モニターのようです。そこで彼女はちょっと古くさい携帯でメールを打っています。どうやら彼女は地球外にいるようです。時に2046年。

 一方地球では、彼女のメールを受信する少年の姿が。ノボルという名前のようです。「ワタシは昨日から火星に来ています」と言っているので、彼女-ミカコは火星に滞在中のようです。明日から演習が始まるという彼女のメールに、「すげーな」と一言のノボル。二人はこの間まで「わりと仲の良かったクラスメイト」だったようです。

 受験を控えて面談だので騒がしい中学三年生。ノボルの友人は「長峰はいいよなー」なんて脳天気なことを言っています。彼女は人型探査機「トレーサー」というロボットの操縦者に選ばれていたのです。友人は「先の見えない受験生活続けているより宇宙人と戦争したほうがマシだよ」と脳天気なことを言っています。受験戦争では向こうから弾は飛んでこないんだぜ。自転車をこいで一人帰るノボル。空に大きな宇宙船を見ます。そして思い出すミカコと一緒だった日々。

リシテアを指さすミカコ

 「宇宙船がいるよ」と空を指さすミカコ。国連宇宙軍のリシテア号です。「どんな奴が乗るんだろう」という素朴なノボルの疑問に微妙な表情のミカコ。コンビニに寄り道した二人はにわか雨にあたってしまいます。バス停の待合室に避難する二人。スカートの裾を絞っているミカコの細い足や、雫の落ちる髪をかき上げるミカコの顔に見入ったりするノボル。コンビニで買ったジュースやお菓子を食べながら、スケッチブックでタルシアン(火星に遺跡を築いていた異星体。オーバーテクノロジーをもたらしましたが、調査隊を全滅させている謎の存在です)の想像図を書いて見せ合ったりして笑っています。二人の絵のセンスはいかがなものか(笑)。

 雨が上がって、ノボルの自転車に二人乗りして帰ります。荷台がないのでミカコは後ろで立ってノボルの肩に手を置いています。空を駆ける飛行機雲。トレーサーが何機も飛んでいます。思わず「キレイ」と呟くミカコ。そしてノボルの耳元で衝撃の告白。

アレにのるんだ……

 「ノボルくん あのね あたし……あたしね……アレに乗るんだ……」

 回想が終わって二者面談の席上。ノボルは城北高校を志望しています。東京に実際にそういう高校ありますけど、コミックの常北高校は共学みたいです。長峰(ミカコ)が行きたがっていたと言うノボル。国連軍も早く言ってやればあんなに勉強しなくて良かったのにというノボルですが、先生は意外なことを言います。ミカコはずいぶん前から告知されていたのにギリギリまで残っていたらしいのです。大抵のパイロット候補生は興味や虚栄心が先行してとっとと軍に入ってしまうというのに、です。ノボルやミカコは幼児期に適性テストを受けていたらしいのですが、ひょっとするとその頃からミカコは知っていたのかも。

 「決められた人生を生きるってどんなだろう…」ノボルの脳裏に浮かぶミカコの笑顔。ノボルはミカコにメールを打ち始めます。

 そのころミカコは火星で演習のまっただ中。トレーサーに乗って標的を捕捉・攻撃します。射ったミサイルの群れを回避する標的に対し、ライフルを乱射するミカコ。命中・爆発する標的。しかし作画の佐原ミズ、人物はともかくメカ描写はかなりやばいです。女性漫画家にメカは無理なのでしょうか?

チャプター1ラスト

 演習終了。「長峰も行こうな。一緒の高校」というノボルのメールに「うん……」と呟くミカコ。しかし翌年の春、長峰は戻らず、ノボルは一人高校生になるのでした。

 というところでチャプター1は終わりです。チャプター2はまた来週の金曜日に。相変わらず5年オチのオンボロ携帯の写真で恐縮です。

巻頭のメッセージ
 
  
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

No title

高校の恩師の一押しで「氷点」上下巻読む羽目になりましたが・・・なんか名作感よりも、大映ドラマ臭を感じ取った高校生当時のオレ、でした。

しかしあの当時から「血縁のない妹属性」って存在したんだな、と。(笑

ちなみに高校生当時、『塩狩峠』と『大菩薩峠』を混同していたのはナイショだ!
(三浦綾子の大菩薩峠ってどんな話になるんだ・・・・?)

Re: No title

 ヤクトさんこんにちは、いらっしゃい。

 大映ドラマ!まさにそれです。今でいえば韓流ドラマか。「不朽の名作」とかいうインチキキャッチコピーにまどわされず、「少女に何が起こったか」とか「スチュワーデス物語」を見るつもりで読めばいいんですね。

 そういうレベルですよ、三浦綾子は。三浦綾子の「大菩薩峠」は、きっと机竜之助が人を斬って斬って斬りまくった挙げ句に原罪に気がついてキリスト教に帰依する物語でしょう(笑)。
プロフィール

ユースフ

Author:ユースフ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
カテゴリ
リンク
ブロとも一覧

秒速5センチメートル・・・桜花抄の軌跡を追ってみた

心理兵器:秒速5センチメートル
カレンダー
05 | 2023/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
FC2カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
日記
43位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
会社員・OL
11位
アクセスランキングを見る>>
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

最新トラックバック
検索フォーム
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ