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今さらの宇宙戦艦ヤマト考察(その1):冥王星沖会戦の謎

宇宙戦艦ヤマト
 
 本日はバレンタインデーですね。旧知の某マダムからゴディバのチョコをいただいてしまいました。ありがたく賞味させていただきますが、このお礼はちゃんとするつもりですので心配はご無用。

 さて、本日から不定期に宇宙戦艦ヤマトの考察をやっていこうかと思います。取り上げるのは第一作、1974年に日本テレビ系列で放送された「宇宙戦艦ヤマト」です。4月から「宇宙戦艦ヤマト2199」というリメイク版が放送されるそうで、旧作の不備を補ってくる可能性がありますが、ここではあくまで第一作に関して考察していきたいと思います。

 といっても第一作、エポックメーキングな作品ではあったのですが、あんまり軍事や論理でゴリゴリやってしまうとすぐに破綻してしまうという脆弱さがあるので、なるべく優しく、そしておかしな点もこのように解釈すればうなずける、あるいはこういう裏事情があったのだなどと、ディスるのでなく建設的な方向で考察したいと思います。

 第一回の本日は、「冥王星沖会戦」の謎についてです。

 「宇宙戦艦ヤマト」第一話、「SOS地球!!甦れ宇宙戦艦ヤマト」には宇宙戦艦ヤマトは登場しません。ラストに干上がった海底に沈む赤茶けたスクラップのような戦艦大和の姿が現れるのみです。そして「冥王星沖会戦」は、この回の前半に描かれています。

 後にヤマトの艦長となる沖田十三率いる地球防衛軍艦隊は、冥王星付近でガミラス艦隊と交戦します。この戦いは「冥王星沖海戦」とも表記され、宇宙を海と考えれば「海戦」でも差し支えないのですが、両艦隊とも真っ向からぶつかっていて奇襲的要素がないことから、私はあえて「会戦」と呼びたいと思います。

 この時沖田が座乗していたのはM-21741式宇宙戦艦で、司令船225号とも呼ばれる通称「沖田艦」です。

沖田艦

 地球防衛艦隊は、10数隻から構成され、戦艦は沖田艦のみ。他は巡洋艦(レーザー艦と言っているのがそうではないかと)数隻と駆逐艦(ミサイル艦とも呼称されています)から構成されていました。対するガミラス艦隊は、冥王星前線基地守備艦隊とみられ、沖田艦のオペレーターが「超弩級宇宙戦艦6、巡洋艦8、護衛艦多数高速接近中!」と言っています。ガミラス艦隊は、戦艦と巡洋艦の数だけでも地球防衛艦隊の数を上回っていますが、戦闘描写になると、地球艦隊と戦っているのは通称「ガミラス艦」と呼ばれる最もポピュラーな駆逐型デストロイヤー艦ばかりで、戦艦や巡洋艦らしい姿は見られません。

駆逐型デストロイヤー艦

 これについては、ガミラス側が地球艦隊の数を見て楽勝と考えたせいかと思われ、おそらくシュルツが座乗していたであろう旗艦の宇宙戦艦とその護衛部隊(戦艦・巡洋艦から構成)は後方に待機していたのでしょう。また、駆逐型デストロイヤー艦は、地球の基準でいえば駆逐艦に相当する小型戦闘艦のように見えますが、ガミラスにおいては補助艦艇ではなく、中心戦力であり主力艦であったと思われます。それが証拠にガミラス帝国のみならず、その後身であるガルマン・ガミラス帝国においても多数が使用され続けており、さながら地球側の宇宙戦闘攻撃機コスモタイガーⅡ(宇宙戦艦ヤマト 完結編まで使用され続けた)並の運用が行われていたのでしょう。

シュルツの戦艦

 そして、戦艦・巡洋艦群を後方に下げたガミラスの戦術は決して間違ってはいませんでした。駆逐艦クラスの大きさに過ぎない駆逐型デストロイヤー艦ですが、その装甲は沖田艦の主砲を弾き、その火力は沖田艦の装甲を貫通してしまうほどでした。ここで沖田の「この船ではやつらには勝てない!」というセリフが出てくる訳です。

 この「駆逐艦と撃ち合ってに負ける戦艦」というシュールかつ屈辱的なシーンは、地球とガミラスのテクノロジーの圧倒的格差を我々に示してくる訳ですが、そうした中、「宇宙戦艦ヤマト」の主人公的存在である古代進の兄・古代守の指揮する駆逐艦「ゆきかぜ」はミサイルで駆逐型デストロイヤー艦を一隻撃沈します。このシーン、ガミラス艦はミサイルを回避するべく艦船とは思えない機動をするのですが、三発のミサイルも高機動で追尾し、全弾命中しています。

敵艦を撃沈したゆきかぜ

 つまり、地球側の光線兵器はガミラス艦にほぼ無力(戦艦の主砲で効果がないのだからその他の艦船の砲の効果は推して知るべし、です)ですが、実体弾は当たりさえすれば撃沈可能であることが判ります。その後「ゆきかぜ」は、沖田艦の退却の盾となって十字砲火を受けて轟沈しますが、その際にも一隻撃沈しているので、会戦の間に少なくとも二隻を撃沈していることになります。

 なぜ「ゆきかぜ」が退却命令に従わなかったかについては、後に真田四郎の供述で、「ゆきかぜ」地球発進の時点で整備不足により帰れる見込みがなかったことが明らかになっていますので、劇中の沖田と古代守の戦士としての生き様をめぐる論争は主たる原因ではないことになります。

 さて、ここまでで既に疑問は一杯ですね。日本人しか出てこないという点については言及しない(笑)としても、

(1) 沖田はなぜ量的にも質的にも劣勢なのに冥王星にまで出向いて艦隊決戦を挑んだのか

(2) なぜ効果がない光線式の主砲を使用し続けたのか

(3) 後にヤマトの艦載機となって大活躍するブラックタイガーなどの艦載機はなぜ登場しないのか

などの謎が浮かんできます。順に考察してみたいと思います。

(1) 沖田はなぜ量的にも質的にも劣勢なのに冥王星にまで出向いて艦隊決戦を挑んだのか

遊星爆弾

 冥王星にはガミラスの前線基地がありました。地球は、6~7年前から大量破壊兵器にして環境改変兵器である遊星爆弾の爆撃を受けていました。遊星爆弾が冥王星前線基地で製造・発射されているのか、それとも他の場所で製造・発射された遊星爆弾を地球に落着させるためのターミナル誘導を行っているのかは定かではありません。冥王星前線基地は、超大型ミサイルこそ発射していますが、遊星爆弾を発射している描写はなく、遊星爆弾の製造法はさだかではないものの、環境を改変する大型兵器である以上、製造にはかなりのコストと資源が必要とみられるところ、前線基地にそこまでさせるというのもいささか無理がありそうなので、私としては冥王星前線基地は遊星爆弾の誘導を担っていたのではないかと思います。

超大型ミサイル

 「宇宙戦艦ヤマト」本編では、ヤマトの攻撃による冥王星前線基地の消失により、遊星爆弾が地球に命中することはなくなったと考えられるので、地球防衛艦隊の目的も冥王星前線基地攻撃にあったと考えるのが自然でしょう。劣勢にも関わらず強襲に打って出た理由としては

① 当時(イスカンダルとの接触前)、地球脱出と他の星系への移民が計画されていたところ、これ以上遊星爆弾が命中するとタイムリミットが短く成り過ぎて脱出計画に支障が出るので、是が非でも冥王線前線基地を破壊したかった。

② 実は沖田の艦隊は陽動部隊で、守備艦隊を引きつけているうちに別の艦隊が冥王星前線基地に突撃する手はずになっていた(レイテ海戦!)。

③ 敗北続きの地球連邦政府に対する世論は沸騰寸前であり、連邦政府(或いは当時の政府のトップ)としてはスケープゴートを必要としていた(沖田艦隊は犠牲になったのだ…)

犠牲になったのだ

などが考えられます。どれか一つというより、複合的である可能性が強いかなとも思います。

 ヤマトはそもそもは他星系移住用の「ノアの箱舟」として建造されていたところ、イスカンダルからもたらされた波動エンジンの設計図入手により、地球脱出からイスカンダル訪問へと航海目的が変更されました。戦艦に似合わぬ艦内工場、多数の艦載機、福利厚生施設は脱出用だった頃の名残ともいえ、艦隊単位で運用する戦艦には不要な設備とも言えます。

 脱出するにしても誰を乗せるかというのは大問題ですね。ヤマトの乗組員は脱出の際の乗員候補でもあったかも知れません。その場合は女性がもっと必要となりますが、イスカンダル訪問に変更した際に男性乗務員を増やしたのかも知れません。金持ちだろうと権力者だろうと、老人を乗せるわけには行かなかったと思いますが、砲術長を務めていた南部康雄は、ヤマトの主砲やコスモガンを製造している南部重工業公社の御曹司のようです。ヤマトの乗組員は、本編では明確にされていませんが、もしかすると全員が身体的・知的エリートであるというだけではなく、「いいとこ」の坊ちゃん嬢ちゃんである可能性もあるのでは…

南部康雄

 ということで、①と③が主たる理由であるという可能性があるかな、という他に、②の可能性については、かなり低いとは思うのですが、(3)とも絡めて、「実は沖田艦隊を囮として、空母を主軸とした機動部隊が突入する予定であったが、ガミラスの空母機動部隊と遭遇し、両者は激突によりほぼ全滅した」という解釈も可能かと思われます。

 もしそういうことなら、戦闘中に沖田が「別働隊、接敵!」みたいな情報に接して「失敗か…!」と唸るようなシーンがなくてはいけないと思うのですが、この解釈が可能であれば、沖田艦隊に艦載機がなかった理由は説明できます。つまりありったけの艦載機を別動艦隊に付随させていたということです。

ガミラス高速空母

 それから、七色星団決戦などを見ても、ガミラスが空母機動部隊の運用を行っていたことは明らかなのですが、それ以前、すなわち冥王線前線基地壊滅までに登場したガミラスの空母は、地球に飛来してきてヤマトの主砲で轟沈した高速空母だけです。確認できるのは主砲の直撃で轟沈した空母と、ヤマトにミサイルを放った(空母なのに)ものの、ワープ試験で躱された空母の二隻だけ。ガミラスに空母運用の発想がなかったわけではない以上、なぜ冥王星前線基地に空母が二隻しか確認できないのかはかなり大きな謎です。戦艦は6隻もあるらしいっていうのに。

多段空母を基幹としたドメル機動艦隊

 可能な解釈としては、ヤマト発進以前に冥王星前線基地の空母は大半が破壊され、もはや二隻しか残っていなかったのではないかということです。そして空母がなくなっていた理由は、これまで地球側が優先的に攻撃してきたからか、あるいは先の妄想的発想である「地球艦隊別働隊との空母決戦」による喪失によるものではないかと。むろんシュルツ司令は喪失空母の補充を要請していたのではないかと思いますが、何しろ本星は遥か遠く、増援が到着前に冥王星前線基地は壊滅してしまった……なんて。

 (3) 後にヤマトの艦載機となって大活躍するブラックタイガーなどの艦載機はなぜ登場しないのか

 (2)の前に恐縮ですが、この謎についも上記妄想でいいのではないかと思います。或いは、艦載機がいくらガミラスに有効といっても、それはパイロットの腕次第であり、優秀なパイロットは一朝一夕では養成できません。その養成期間を稼ぐためにも(そしてパイロットを温存するためにも)沖田艦隊には艦載機を搭載できなかったとも考えられます。

 (2) なぜ効果がない光線式の主砲を使用し続けたのか

 これについては実に謎ですね。既にガミラスと交戦して6~7年経過しており、光線兵器が効かないことくらい十分承知していたはずなんですが……。一つ思うのは、実は沖田艦艦首の砲口らしき穴はヤマトの主砲であるショックカノンないしその前身にあたる兵器で、これはガミラスにも有効であったものの、ガミラス側もそれは既に承知しており、地球艦隊の正面には絶対出てこなかったという解釈はどうでしょうか。つまり沖田が射った旋回式の光線砲塔は実は副砲に過ぎず、主砲はヤマトでいう波動砲部分にあって強力なのですが、ガミラスに警戒されて発射のタイミングがなかったと。

戦艦トリオ。波動砲装備は当然

 地球側には波動砲登場以前から既に艦首に大口径の決戦兵器を装備し運用するという思想があったのではないでしょうか。ヤマトの艦首にも最初から大口径砲の設置が考えられていたところ、それが波動エンジンの導入により波動砲という超兵器にアップグレードしたと考えれば、波動エンジンの採用により急いで艦首に孔を開けたと考えるより自然な気がしますね。そしてガミラス戦役後に再建された地球防衛艦隊が、こぞって艦首に波動砲を搭載していた理由も、波動砲の威力に目が眩んだということもあるかも知れませんが、そもそも艦首砲搭載は地球防衛艦隊の長年の伝統だったせいであるということも考えられるのではないでしょうか。

パトロール艦(左)と巡洋艦(右)にも波動砲
駆逐艦クラスの護衛艦にすら波動砲

 それにしても全然効かない副砲など取っ払って、ミサイル思いっきり積んどけやという主張には対抗仕切れないなあ。前線ではミサイルの有効性を熟知していたのでミサイル戦艦への改装を強く要望していたにも関わらず、軍需産業側の事情で光線砲を生産し続けなければ(そして搭載し続けなければ)ならないといった「大人の事情」があったのかも知れませんが。

 あるいはガミラス艦は高機動なので、ミサイルを命中させるのは至難の業で、雷撃戦の名手・古代守にして初めて有効な兵器とすることができたのであって、他艦ではミサイルを撃っても命中させることができず、光線砲同様無力であったという可能性もありますね。まあそれでも当てても効果がない光線砲よりは、当てれば撃破できるミサイルの方がまだましだと思いますが。

白色彗星帝国のミサイル艦

 「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」に登場した白色彗星帝国には、ミサイル艦というのが登場していました。これが地球艦隊にあったなら。あるいはショックカノンの実用化・量産化が進んでいれば、もっと善戦できていたのかも知れませんが。実はショックカノンは南部重工業オリジナルの開発で、他社の横やりが激しかったとかね。地球防衛艦隊壊滅という悲報に接するに至ってようやくショックカノンがヤマトに採用されたとか。この辺、フォッケウルフが高性能なのにメッサーシュミットにこだわったドイツ第三帝国的な要因があったのかも知れません。

 こうした妄想の展開を今後も時々やっていきたいなと思います。ますます訪問者が少なくなりそうですが……でもやりたいからやる!(笑)
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No title

こんばんは♪
おお、ここでもやってる(笑)
何故、艦隊戦をやったのかについては、2119の方で(後出しですが(笑))理由らしきもものが語られています。2119が始まったら、また考察をしてください。
それにしましても、宇宙戦艦ヤマトの話をすると、当時の血が騒ぎますね(笑)

No title

こんにちは。
前の方も書いてますけど、2199では可能な限り
旧作の無理/矛盾の解消や新解釈をやってます。
(それがすべて妥当かどうか、評価は人それぞれですけど)
私はけっこう感心してたりします。
ファンの解釈やファン設定なんてのも一部取り入れたりしてて
面白いと思いますよ。「えー」って思うのもありますけど。
もちろん、全部のフォローはできないし、してませんけどね。
(旧作のままのところも残ってます)
2199をご覧になって、ブログ主さんの考察と
比べてみるのも一興かと。

Re: No title

 shobunoさんこんばんは、いらっしゃい。

 やっぱり見ないとダメですかね、2199。取りあえずWikipediaの記事は読んでみたんですが、色々理論武装するみたいですね。それはいいけど、新たなツッコミどころを提供しなければいいですが。

 ヤマトは萌え、いや燃えますね。今だから皆笑うけど、当時ああいうSFマインドに満ちた作品は他になかったんで夢中で見てましたよ。親はハイジを続けて見せたかったらしいですが。

Re: No title

 mojoさんこんばんは、いらっしゃい。初めまして…でよろしいですか(間違っていたらごめんなさい)。

 そうですか、2199は頑張っているんですね。それもこれもN崎プロデューサーがいなくなったお陰なのでしょうか…。

 評価は個人差があって当たり前だと思います。正直完全なフォローは無理でしょうけど、意欲的でいいですね。私も4月の放映前に勝手な考察(妄想とも言いますが)を行って、比較してみたいです。

 私はヤマトそのものよりも、ヤマト以前の地球VSガミラスとか、ガミラスの地球以外での戦いぶりなどに興味があるので、そっちを中心にやりたいと思います。
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