コミック版秒速5センチメートル(その5):映像版第3話「秒速5センチメートル」相当部分を読む②

年末年始バブルが弾けてとうとうランキングは99位。懐かしの三桁は目前。明日辺りは「ソロモンよ!私は帰ってきた!!」と叫んでいることでしょう。

さていきなりですが、実は私、年賀状廃止主義者です。海外から帰って以来、自発的に出さなくなっています。来たら返事は出しますが、ずっとスタンプ押しただけのいい加減なやつです。そろそろ空気を読んで貰ってゼロにならないかと思うのですが、いまだに頂いてしまっています。どうせなら葉書よりメールがいいのですが、年賀状はいらないとか言っておいてメールくれなんてとても言えないです。
こんな私も昔は何枚来るかとか、どんなの書くかで頭を悩ませていたい時期がありました。銀河鉄道999の機関室(真っ暗な中に例の松本メーターぎっしり)を書いたときもありましたが、正月から真っ黒い年賀状を貰った担任の先生は参ったかもしれませんね。

こんなのです。これをオールモノクロで。当時は一所懸命に書いていたのですが、今考えると元旦から縁起でも無いですねえ(笑)。
さて、細々とやってきました「コミック版秒速5センチメートルを読む」シリーズですが、ここへきて反響をいただいてしまいました。拍手にコメントまで。これはやらねばならないと奮起しましたので、「その5」行ってみましょう。しかしこのコミック版、買ったのは2年前で、去年6月に集中連載した秒速の考察の際にも「コミック版を読んでの付記」をつけたくらいに「使用済」なのですが、改めてじっくり読むとまたしみじみと破壊力抜群ですね。「秒速」の半減期はどれくらいなんでしょうか。灰になるまで?
それでは第8話「END THEME_2」です。まず扉絵。大きな木の根元にもたれるように座る水野さん。両手で携帯持っています。表情がとっても物憂げ。まあ前回の展開から笑顔はありえませんが。この絵で初めて気付いたんですが、水野さんすごくグラマーですね。こればっかりは明里も花苗も敵いそうにありません。胸的には、理紗>明里>(超えられない壁)>花苗といった感じでしょうか。
一緒に電車に乗る二人。隣り合わせに座っています。謝ろうとする水野さんを遮って「忙しさを理由にしてうやむやにしようとしてたんだ」と自らの“卑怯”を吐露する貴樹。一番連れて行きたくない場所に連れて行くと言います。場所はもちろん、栃木の岩舟です。
会話を続けようとしますが、隣に座ったガキ共がうるさい。つと立った水野さん、貴樹に背中を向けてメール送信を開始します。これで誰かに似ているなあと思ったら…そうです!「Steins;Gate」の桐生萌郁じゃないですか。

眼鏡掛けてるし巨乳だし。「閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)」だったのか水野さん!こうして隣にいるのに顔を合わせずメールでやりとりをする奇妙な二人。まあガキの隣でやれる会話ではないですが。
SEの仕事は向いていたし好きだった。だから休みがなくても毎日残業でもその気持ちを保てていれば辞めようとは思わなかったと思う、と貴樹は告白します。しかし「敗戦処理」のプロジェクトに回されてリーダーと対立して達成感のない作業を全て自分一人でやるようになってしまい、充実感とか感動とかいった感情が次第になくなってしまった、と。
この辺り、映像版第三話冒頭の貴樹のモノローグである
この数年間 とにかく前に進みたくて
届かないものに手を触れたくて
それが具体的に何を指すのかも
ほとんど脅迫的とも言えるようなその思いが
どこから湧いてくるのかもわからずに僕はただ働き続け
気づけば 日々弾力を失っていく心が ひたすら辛かった
そしてある朝
かつてあれほどまでに真剣で切実だった思いが
綺麗に失われていることに僕は気付き
もう限界だと知ったとき 会社を辞めた
の部分なんでしょうね。
さらに、自分の本当の気持ちを他人に言うなんていままでほとんどしたことがないんだという貴樹。その文面を見て哀しげな表情を浮かべる水野さん。「誰にも本当の心を見せないで こちらが気持ちをぶつけても優しい言葉だけが返ってくるのって虚しいよ 感情を抑えつける必要なんてないのに」と訴えます。そう、第二話で花苗が「もう 私に 優しくしないで」と泣いた理由がこれです。そして前回、同窓会で寄った女子の同窓生が「遠野君の女の扱いには一回行ってやりたかったんだよね!」と叫んだ理由もこれでしょう。「Steins;Gate」の岡部倫太郎風に貴樹に中二病的ニックネームを付けるならば“優しさドS級”とでもいいましょうか。
すると、お許しが出たならばといきなり本音を吐露する貴樹。「理紗は早く結論を出せと迫る推しの強さが怖いときがある。会社まで来たのはかなり怖かった」……今までほとんどしたことがなかった割にいきなり袈裟斬りですよ(笑)。さすがに赤面して口頭で謝る水野さん。可愛いんだけどなあ。よろしかったら私がお引き受けしますよ?
貴樹を理解しようとする努力が足りなかったという水野さんに対し、「心が見えない」「やさしくしないでほしい」と何度も言われてきて自覚がある自分が悪いという貴樹。日常に流される自分、一見順調な生活を送っている自分を本当の自分じゃないと思っているもう一人の自分がいるといいます。
「前に進めているのか監視しているような 大事なことから目をそむけているのを責めているような」という貴樹の文面が理解できない水野さん。思わず「どういうこと?」と再び口頭で質問してしまいます。桐生萌郁ならもの凄い勢いで携帯を叩くとこですが。そして何かに気付く貴樹。甦るあの手紙の一節。『どこかで偶然君に会ったとしても 恥ずかしくないような 人間になっていたいと…』

そうか、そういうことか、
四人がけのボックスシートに向かい合って座る二人。退職するから水野さんの両親に合わせる顔がないというのは一因でしかないという貴樹。かつて持っていた「かつては持っていた真剣な思い。切実な誠実な想い」を保てなかった自分が許せなかったと言います。それは何かと問う水野さんに、遂に貴樹は明里への想いを口に出して告げます。
彼女が待ってるとか そんなことは思っていない
でも それでも 他の誰かと未来を誓うなんて
他の誰かと…ここに来るなんて
岩舟に到着。そのアナウンスに怯えた表情をする貴樹。水野さんはそっと貴樹の手に触れて「行こう」と言います。
「何かが貴樹君の心に蓋をしていて それがここにあるなら 私は貴樹君とお終いになんてなりたくないから」
なんと水野さん、まだ貴樹のことを諦めていません。先に岩舟駅のホームに降り立ちます。振り返って貴樹を待つ水野さん。しかし……ドアの前に立った貴樹を迎えたのは

出たァーッッ!「雪の一夜」の明里の幻影!!。まるでディオのスタンド「ワールド21」の如き強さで貴樹を行く手を遮ります。

これは動けません!「ごめん…っ」と顔を背けうずくまる貴樹。無情にもドアは閉まり、貴樹を乗せたまま列車は動き出します。水野さんはホームに置き去り。さらに「ごめん…」と言い続ける貴樹。この「ごめん」は、置き去りにした水野さんへの謝罪ではありません。あの日の明里に恥じない自分になれなかったことへの謝罪、つまり明里への謝罪なのです。

呆然と貴樹の列車を見送る水野さん。一人駅を出て周辺を見て回ります。携帯に電話してみるも留守電モード。涙ながらにメッセージを残します。
「ようやく受け入れられた 私…貴樹くんのこと 最初から 全然わかっていなかったんだって」
「たぶん私は 貴樹くんの言う真剣な思いが足りなかったんだね」
「ごめんね そんなくせして ずっと一緒にいたいななんて思ってたの」
道にくずおれて慟哭する水野さん。そんなに自分を責める必要なんてないのに。貴樹の呪縛は水野さんが原因ではないのです。むしろ水野さんといい花苗といい、呪縛の被害者ではないですか。今の貴樹に寄り添えるのはあの日の明里だけなんです。
さて列車内。貴樹ははっとして、いつの間にかボックスシートに一人で座っている自分に気付きます。「なにやってんだ…!」
それはこっちのセリフだ!!慌てて水野さんに携帯で電話するも、電波が届かないか電源が入っていないためにかかりませんというメッセージを繰り返すのみ。暗くなった岩舟駅に戻って周辺を駆け回るも、どこにも水野さんの姿はありませんでした……。
最後に余ったページに水野さんのイラスト。コーヒーカップを持ってこちらを見て微笑んでいます。ちょっとほっとする絵……と言いたいところなのですが、読者はそういう訳にいきません。この絵どころではないものが隣のページ、つまり次回の扉絵として描かれているからです。

この扉絵の威力の前には人類は全くの無力なんだよ!!

さあ、それは一体何か!?待て次回!!コミックを持っている人は改めて見て再び悶絶するも激鬱に沈むもまたよしッ!!
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