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I Love you, SAYONARA:チェッカーズ中期の名作

I Love you, SAYONARA
 
 こんばんは。何か風邪の引き始めという感じで喉が痛いです。葛根湯系の風邪薬を買ってきて飲んだのですが、早めに休んだ方がいいようです。昨日は拍手を一気に3つも貰ってハッピーだったのですが…。

 ということで早速本題に。年に数回地獄絵図と化すカラオケに一緒に行くK君は、いつも必ずチェッカーズといえば「ギザギザハートの子守歌」を歌います。中高生時代荒れた雰囲気はみじんもなかったので、なぜこの歌を熱唱するのか謎です。もちろん何を歌おうが個人の自由なので文句があるわけではありません。きっと何か強い思い入れがこの歌にあるのでしょう。

 それはさておき、チェッカーズといえば80年代前半から90年代前半までの約10年間を大人気ロックバンドとして駆け抜けたグループで、ヒット曲も多数あります。もちろん私も沢山聞いています。「ギザギザハートの子守歌」はデビュー曲であり、アイドル色の強かった前期の代表曲の一つですが、私がカラオケで歌うとすれば、チェッカーズ中期の代表曲の一つである「I Love you, SAYONARA」でしょう。

 この曲は1987年3月5日にリリースされたもので、作詞藤井郁弥 作曲大土井裕二 編曲THE CHECKERS FAM.ということで、完全にチェッカーズの中で完結している作品でもあります。SEIKOの腕時計「アベニュー」のCMソングになったほか、同年の紅白でも歌われています。

 さて、この歌詞に基づきシチュエーションを脳内妄想していきたいと思います。

 主人公「俺」は売れない芸術家か歌手でしょう。ミュージシャンという可能性もありますが、多分ソロで活動しているんじゃないかと思います。そんな「俺」の才能に惚れ込み、きっと売れると信じているのが「おまえ」です。おそらく二人はあらゆるしがらみを振り切って、手に手を取って逃避行したのでしょう。見知らぬ都会の片隅で結婚し、ひっそりと暮らしています。

 何年が過ぎたことでしょう。「俺」の才能を信じている彼女は、「俺」が芸に没頭することを望み、「俺」に代わって生計を担います。もちろん若い女の細腕で二人分の生活を支えるとなると容易なことではありません。彼女は手っ取り早く稼げそうな水商売に手を染めます。キャバクラ嬢あたりでしょうかね。もちろん結婚していることは隠し、毎夕セクシーで派手な服に着替えてネオン街に向かうのです。

 慣れない酒や男達のあしらいで、純情可憐だった彼女は次第にやつれていきます。心配する「俺」に、彼女は「私が自分で決めたことだから」と微笑んで、才能の磨くよう頼むのです。息抜きも必要だからと酒や博打も容認して、「俺」の着古した革ジャンにはいつも金がなくならないようにそっと紙幣を押し込んで。

 しかし「俺」はもう気付いていました。「俺」には世に出るほどの才能はないのだと。あんなにも彼女を感動させ、魅了したもの、それは一瞬の蜃気楼だったのです。「俺」はこの街に流れ着いた頃を思い出します。何もなかった、けど夢と希望に満ちていた頃の二人の姿。それはもう遙かに遠ざかって二度と戻りません。

 「俺」は知っています。彼女が店の得意客に惚れ込まれていることを。実りのない努力へのいらだちから夜の街を徘徊し、彼女の勤める店を覗いてみたことがあるのです。男はかなりの年上ですが、裕福で紳士でもあります。ほどほどのセクハラが日常茶飯事である彼女の勤めるにあっては上客中の上客といえるでしょう。男は心底彼女に魅了されていて、様々に口説きかけていますが、決して不埒なまねはしません。

 もちろん彼女は決してよろめいてはいません。しかし男の真情は伝わるのです。決して体は赦しませんが、反面ノルマを消化するために同伴やら指名やらを頼むことだってしょっちゅうです。男はいつも快諾してくれ、決して不満は漏らしません。彼女の心は次第に男に対してのすまなさで一杯になっていきます。

 「俺」は思います。悔しいがあの男は彼女にお似合いだ。ヒモのような「俺」がいなくなれば彼女は幸せになれる。だが彼女は意地でも自分からは別れようとしないだろう。それなら……「俺」から別れを切り出すしかない。

 「俺」は自分の左手の結婚指輪を見つめます。すさんだ生活の中でもうすっかり傷だらけです。なのに、それなのにどうして別れを決心した今になってこんなにも輝くのだろう。

I Love you, SAYONARA

 もう俺のために 笑うなよ Baby
 馬鹿だね女って
 
 嫌いと言うしかなかったよ Baby
 馬鹿だね男って

 辛いと涙を見せなよ Baby
 馬鹿だね女って

 嫌いと言うしかなかったよ Baby
 馬鹿だね男って

 I love you だけど I love you I love you
SAYONARA
 

YouTubeの動画です。

http://www.youtube.com/watch?v=w2rtB7ukUy0

メッセージ

 ……いや~切ないですね。女の幸せのためにあえて嫌われ者を演じて去って行く男の背中が見えるようです。それを全てわかっていながら涙で見送る女。

 ただ、本当に好きな人のためにする苦労は、その人にとって単なる苦労なのでしょうか?彼女はやつれたかも知れません。疲労困憊していたかも知れません。しかし、彼女は不幸だったかといえば一概にはそうとは断定できないでしょう。第三者には不幸に見えたかも知れませんが、本当の答えは彼女しか持っていないでしょう。

 ところが、彼女を愛する「俺」からすれば、ふがいない自分のためにどんどんやつれていく彼女の姿を見ることは、愛していれば愛しているほど辛かったといえるでしょう。いっそヒモという名の寄生虫に堕していればまだしも、「俺」の精神はそこまで落ちぶれてはいないのです。「俺」のために頑張る彼女の姿を見る「俺」は、最初の頃はともかく、才能の限界を思い知るほどにどんどん幸せから遠ざかっていたことでしょう。別れは、彼女のためのみならず、「俺」を救済して再スタートさせるためにも必要だったのかも知れません。

大和物語抄

 この歌を聴くと、なんとなく二人の将来が「蘆刈」のようになる気がしてなりません。能となった「蘆刈」ではなく、「大和物語」の方の「蘆刈」です。以下は口語訳の要旨です。お時間がある方はどうぞ。

 摂津の国の難波のあたりに夫婦がいて長年共に暮らしていたが、ここ数年暮らし向きが思わしくなくなって、どうにも苦しくなった。男は「自分はどのようにしてでも生きることぐらい出来るでしょう。でも女のあなたがこんなに若いうちにみすぼらしい暮らしをしているのは見ていられません。京に上って宮仕えをして、今よりもましな状態にでもなったら、私を訪ねてください。私も人並みの暮らしが出来るようになったら、必ずあなたを訪ねて行きましょう」と約束して泣く泣く別れた。

 京に上った女はある身分の高い人に宮仕えした。生活の不安がなくなったので、顔かたちもたいそう美しくなった。そうこうするうちに、この家の細君が亡くなり、女は主人に格別思いをかけられていたのでとうとう妻となってしまった。

 傍目には結構そうな様子で暮らしていたが、人知れず思うことは「あの人はどうしているだろう。暮らしはどうなっているだろうか。」ということだったので、ある日女は「津の国という所がとても景色がよいそうなので、行ってみたいと思います」と言って出かけていった。

 以前家のあったあたりを見ると、家もなく人もいない。女が車を停めて悲しくもの思いにふけっていると、蘆をになっている男で乞食のような姿をした者が、女の車の前を通り過ぎた。その男の顔を見ると、自分の前の夫に似ていた。

蘆刈

 この男を呼んでその顔をよく見ると、まぎれもなく夫であった。男も女を見つめると、自分の妻に似ている。顔も声も間違いなく妻だと分かると、自分の姿がどうしようもなくみすぼらしいことにいたたまれなくて、蘆もうち捨てて走り去ってしまった。

 女が供の者に男を連れてくるよう命じると、男は硯を所望して手紙を書いた。それには、

 君なくてあしかりけりと思ふにもいとど難波の浦ぞ住みうき
  (あなたがいなくなってから、暮らしは思うにまかせず、蘆刈りまでして苦しい日々を過ごしてきたと思うにつけても、いよいよ難波の浦は住みづらいことです)

と書いあった。女はこれを見て泣き、着ていた着物を脱いでその包みに手紙など書き添えて男にやって、京へ帰っていった。

 あしからじとてこそ人の別れけめなにか難波の浦も住みうき
  (別れることで悪くはなるまい、と言ってあなたは私とお別れになったのでしょうに、どうして今になって難波の浦が住みづらいのでしょうか)

 ※ 能の「蘆刈」はストーリーが変わって女は貴族の妻になっておらず、ハッピーエンドとなるのですが、原作のほうが悲しくてリアルでちょっと「秒速5センチメートル」っぽくていいなあと思います。
 
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