鹿児島紀行(その2):指宿枕崎線乗車記

早春真っ盛り(?)ということで、この週末は高松の特別名勝・栗林公園では梅まつりが開催されています。3月下旬には桜の開花に合わせて夜間ライトアップも行われ、いよいよ春本番ということになるのでしょう。相変わらず寒さは続いていますが、日はどんどん延びていますね。

さて前回の続きで鹿児島紀行です。サントリーローヤルで作ったハイボールを飲んで明けた翌日、ローカル線の指宿枕崎線に乗って枕崎に向かいました。鹿児島市内には繁華街・歓楽街の天文館という場所があり、ドーミーインのすぐそばだったのですが、目もくれずとっとと鹿児島中央駅へ。

枕崎市は鹿児島市の南西にあり、国道225線が両市をほぼ一直線に結んでいます。これが最短ルートになると思いますが、指宿枕崎線は鹿児島湾に沿って南下し、指宿から西に向かう形で枕崎に向かっています。駅数は36で路線距離は87.8㎞。JRで最も南を走る路線です。

列車は古い車両の2両編成でいかにもザ・ローカル線という風情。全線単線でかつ全線非電化。ICカード乗車券は途中の駅までしか使えないので、枕崎まで行く人は使ってはいけません。その旨しきりに鹿児島中央駅でアナウンスされていました。四国でもよくある話です。

2両編成のローカル線というと、車内はガラガラだろうと思うでしょ?私もそう思っていました。しかし鹿児島中央駅で待っている人は結構いて、いざ乗車してみると満席どころか、立っている人もいっぱい。こんなに乗るならもっと車両を増設した方がいいのではと思いましたが、確か4つめの停車駅である谷山駅あたりでどどっと降りてローカル線らしく。谷山は鹿児島市内でも大きい住宅街で、通勤・通学の需要が大きいそうな。


その後は全員座った状態でのんびりローカル線気分で南下していき、中間地点指宿駅へ。砂むし温泉で有名な所ですね。私もここで降りたいところですが、JR最南端の駅に行くという使命(笑)のため、涙を呑んで通過。残っていた乗客も半分以上がここで降りてしまい、車内は一気に過疎化してしまいました。

指宿を過ぎると、列車は薩摩半島南端を西進し始めます。この先は百名山の一つ開聞岳や、UMA「イッシー」で有名な池田湖などがあります。開聞岳は列車からも見られますが、池田湖は見えませんでした。

イッシーの正体は池田湖に棲む2メートル級のオオウナギではないかとの説は有力ですが、湖畔のイッシー像は明らかに首長竜風ですね。そうえいばプレシオサウルスなどの首長竜や、イクチオサウルスなどの魚竜は、「竜」という名は付いていますが正確に言えば恐竜ではなく、水性爬虫類とされます。首長竜はトカゲやヘビに近く、魚竜は恐竜より先に出現し、恐竜より先に絶滅しており、恐竜や首長竜よりも古い系統の爬虫類ではないかと言われています。

そんなうんちくはさておき、西大山駅に到着。ここです。ここがJR最南端の駅。JR九州も心得ていて、ここで2分ほど停車してくれ、発車前にはベルを鳴らしてくれるというサービスぶり。これは降りてみねばなりますまい。

西大山駅は長らく日本最南端の駅でしたが、沖縄にゆいレールが開業したことで「日本最南端の駅」から「本土最南端の駅」になりましたが、「沖縄は本土ではないのか」との意見が寄せられ、表記を「JR日本最南端の駅」へ変えたとか。

これまで最北端の稚内駅、最東端の東根室駅(停車サービスがないので通過のみ)はクリアしていたので、残すは最西端のみ。やはりゆいレールが最西端の座も奪っていますが、普通鉄道としては松浦鉄道(M西九州線の「たびら平戸口駅」だそうです。長崎に行ったとき、これが最西端ではないかと思っていましたが違っていました。いつかは行ってみたいですが、果たしていつになるやら。

西大山駅からは開聞岳がくっきり。開聞岳は標高924メートルで、百名山としては筑波山(877メートル)と共に千メートル未満の山です。「日本百名山」の著者深田久弥は原則標高1500メートル以上の山としながら、併せて①山の品格 ②山の歴史 ③個性のある山--という三つを選定基準にしていました。そして別に深田自身が登ったことのある山というのが絶対条件だったとか。

筑波山は江戸時代に「西の富士、東の筑波」と並び称された美しさ(富士山が白嶺なら筑波山は紫峰ですね)、「万葉集」など古典への登場ぶり、関東平野に独立峰のように立っていることなどから外せなかったのでしょう。

一方開聞岳は、海から見事にせり上がった円錐形の山容が美しく、「薩摩富士」の別名も納得です。1000メートルないとはいえ、海抜0メートルからの登山なので、登山の際の標高差は900m以上あります。9世紀末の大噴火で今のような山容になった、比較的若い山です。

3時間近くの鉄路の旅の末、辿り着いた枕崎駅。駅舎は結構立派に見えます。格好いいなあと思ったら、2013年にグッドデザイン賞を受賞しているそうです。綺麗な駅舎してるだろ。ウソみたいだろ。無人駅なんだぜ、それで…

最北端、最南端との縁で、稚内市とは友好都市になっているそうです。「北と南の始発・終着駅」の看板。確かに鉄路で結ばれていますが、枕崎から稚内に向かう旅は乗り換え頻繁でしょうね。新幹線を使えばかなり楽ですが、普通列車だけで行ってみるなんてのは煩雑そう。あえてやってみるなんて、なんちゃって乗り鉄的にはなかなかそそるものがありますが…腰が死にそうな気もします。

駅近くにあった灯台型モニュメント。枕崎市はカツオの水揚げ全国有数規模の枕崎漁港を持ち、気候は温暖ですが、夏から秋にかけては台風の通過が多く、台風銀座の異名を持っています。観光すれば面白そうなところなんですが、休暇は短くこの日のうちに帰らなければなりません。

帰りもJRだとまた2時間近く掛かってしまうので、特急バスで鹿児島中央駅に戻ります。国道225線を使って1時間半ぐらいで到着。時間も料金もバスの方がお得ですが、なんちゃって乗り鉄的にはやはり片道だけでも鉄路を使いたい訳です。

鹿児島中央駅にある薩摩蒸気屋でお土産「かすたどん」「銅鑼殿」を買って高松に帰還しました。お店の名前がイカしていますね。「かすたどん」は鹿児島県産の卵を使ったカスタードクリームをスポンジ生地で包んだお菓子で、「銅鑼殿」は北海道産の小豆を使ったどら焼きです。鹿児島といえばかるかん、なのかも知れませんが、名物がウケるとは限らないのでここはウケ狙いに徹しました。

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