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シン・ウルトラマン(その2):個性的な宇宙人と最終兵器ゼットン

冬の雨

 クリスマス前の寒さが嘘のように最近は暖かく、コートなしでも平気なほど。今日なんかは春が来そうな気配すらします。さすがにまだ春にならなくてもいいのですが、この後寒さがぶり返したら辛くなりますね。布団が干せないから休みの日の雨はヤメれと言いたいのですが、空気が乾燥していたからありがたいと言えばありがたいのでちょっと複雑。

シン・ウルトラマン映画

 さて年末に見た「シン・ウルトラマン」の感想二回目です。かつての怪獣好きとしてはどうしてもオリジナルとの比較などで話が長くなってしまいますが、これで終わりにしましょう。かのマリーアントワネットが「怪獣がいなければ宇宙人と戦えばいいじゃない」言ったように(言ってません)、後半は宇宙人の話です。毎回のように地球侵略を目論む宇宙人が登場した「ウルトラセブン」と違い、「ウルトラマン」は基本地球産の怪獣との戦いがメインでしたが、もちろん宇宙人も登場しました。「シン・ウルトラマン」ではザラブ星人とメフィラス星人が登場。

バルタン星人

 ただ、「ウルトラマン」シリーズの宇宙人と言えば真っ先に名前が出てくるであろうバルタン星人は登場しませんでした。庵野秀明は「諸般の事情から本作に登場させるのが非常に難しく、残念ながら最初から選択枠に入れることが出来ませんでした。」と語っているとのことで、尺の都合の他、バルタン星人の生みの親に当たる人への配慮とか諸説あるようです。

バルタン星人の円盤

 個人的にはウルトラマンが攻撃してきたバルタン星人を倒しただけでなく、ミクロ化したバルタン星人20億3,000万人が乗った宇宙船をスペシウム光線で爆破するという“大量虐殺”を行ってしまった“黒歴史”にも理由があるような。僅かに生き延びたバルタン星人はその後も繰り返し地球に襲来しますが、デザイン的に人気があるからというメタな理由はさておき、同胞を殺したウルトラマンやその一族への復讐に燃えてのことだったようも思われます。

エンダーのゲーム
バガーの女王

 そもそもバルタン星人は侵略目的で地球に来たのではなく、宇宙船の修理と補給のために偶然立ち寄っただけだったんですよね。その後地球が居住可能だとして移住を強行しようとしたのは罪といえば罪ですが、交渉役のバルタン星人の独断だったのか宇宙船内の指導者層の指示だったのかは不明です。地球人が持つ生命の概念を理解できなかったとか、昆虫(特に蝉)に似た顔からして、バルタン星人はオースン・スコット・カードの「エンダーのゲーム」に登場した昆虫型異星人バガーのように女王を中心とする群体が集団知性(Hive Mind)を持っている異星人だったのかも知れません。

宇宙忍者バルタン星人

 だから一見、ウルトラマンは20億3,000万人ものバルタン星人を殺戮したように思われますが、実は一個の群体生物を殺しただけなのかも知れません。群体であれば、戦ったバルタン星人の意思=群体の意思なので、群体を全滅させないと駆逐したことにならないし。そして案の定生き残りが出て復讐のために繰り返し襲来するようになったと。多分女王(の後継者)も取り逃がしたんでしょう。

三面怪人ダダ
ゼットン星人

 まあ上記は単なる私の個人的妄想なのですが、とにかく超有名なバルタン星人は登場しませんでした。「ウルトラマン」には他に三面怪人ダダ(なぜか“星人”が付かない)がいましたが、こいつは弱かったので登場させる必要もありませんでした。後はゼットンを操るケムール人に似たゼットン星人がいましたが、ウルトラマンと戦っていないのと、後述の理由で登場するとはありませんでした。

ミラレコならぬザラブです
ミラレコ

 で、登場したザラブ星人ですが、「シン・ウルトラマン」では「外星人第2号ザラブ」として登場します。ちなみに外星人第1号はウルトラマンです。やたらにイケボで、「こう見えてドライブレコーダーです」とか言い出しそうですが、それもそのはずでCVはミラレコと同じ津田健次郎。

ザラブ星人

 高度な科学力を見せつけて日本との友好条約締結を迫ってきますが、その真意は国家同士を争わせて人類を殲滅させるというもの。さらに変身前のウルトラマン=神永を拉致監禁し、ウルトラマンに化けて破壊行為を行ってウルトラマンの抹殺を提案します。

オリジナルザラブ星人

 「ウルトラマン」では18話「遊星から来た兄弟」に登場。二つ名は「凶悪宇宙人」。ザラブという名前は“ブラザー(brother)”を逆に読んだというものです。やはり一見友好的な素振りで登場しますが、その実地球を滅ぼす事を目的としており、にせウルトラマンに化けて暴れるのも一緒。

にせウルトラマン

 にせウルトラマンは目が赤みを帯びて吊り上がっており、単に外見を真似ただけなので光線技が出せず、力も本物には及ばなかったため、本物登場で逃亡を図りますが、スペシウム光線を撃ち込まれて変身が解け、ザラブ星人としても格闘の末にスペシウム光線で倒されてしまいます。

令和のにせウルトラマン

 外星人第2号ザラブが化けたにせウルトラマンは光学偽装でしたが、なぜか眼の形状だけは六角形に変わっていました。ご自慢の科学力でそっくりに化けろよ(笑)。ただ、ザラブとしての戦闘力はオリジナルより高く、自身の光線でスペシウム光線を凌いだりと激しい空中戦を展開しました。

伝説のQBK

 最後はウルトラマンが不意に放った八つ裂き光輪(ウルトラスラッシュ)によって真っ二つにされてしまいました。後に「急に光輪が来たので」(QKK)と言い訳して宇宙人界隈で非難囂々だったとか(嘘)。でもオリジナルよりは強かった印象です。

ブリタイ
キュウべえ

 なお、ザラブ星人は他の星の文明や人々の命を滅ぼすことを目的として活動しており、地球以外にも工作員が送り込まれていると思われます。光の国とかメフィラス星といった明らかに自分より強そうな星にも行っている(そして返り討ちに遭う)のかは不明ですが、単なる侵略ではなく滅亡させるのが目的というのは非常にユニークです。思うに他星の文明を脅威に感じていたある異星人が作った攻撃用の人工生命なんではないかと。「マクロス」シリーズに登場する、「プロトカルチャー」が戦闘を行わせるべく遺伝子操作で造り出した戦闘用バイオノイド・ゼントラーディ人のような。或いは目的は異なりますが、「魔法少女まどか☆マギカ」のキュゥべえみたいな。

山本メフィラス

 そしてメフィラス星人。「シン・ウルトラマン」では外星人第1号であるウルトラマンよりも先に地球に降り立っていたと言う、自称外星人第0号。正体は山本耕史(笑)。いや好演でしたよ山本さん。さすが堀北真希の旦那さんだ。

メフィラス星人

 彼によれば、それまでに登場した禍威獣は地球に放置されていた生体兵器を目覚めさせたもので、ザラブも現地調達したとか言っているので、近傍を通りかかったザラブをさりげなく地球に誘導したのかも。

巨大浅見弘子
巨大フジ隊員

 禍特対の浅見弘子を巨大化して操ったのは「ウルトラマン」でフジ隊員を巨大化させて暴れさせたエピソードのオマージュですね。

メフィラスバルタン
メフィラスザラブ
メフィラスケムール

 「ウルトラマン」ではさらに巨大バルタン星人、ザラブ星人、ケムール人を出現させ、自分の配下であり、「その気になれば地球征服など簡単」と力を誇示していました。ただ、彼らは出現しただけで暴れたりせずにすぐ消えているので、光学偽装などによる虚像だったのではないかという気もします。そもそもケムール人の登場は「ウルトラQ」であり、「ウルトラマン」には登場していないという。

メフィラス星人との対話
居酒屋で一杯

 人間体のままで神永とブランコを漕いで話したり、居酒屋で飲食したりとかなり平和的。ただし割り勘で奢ってくれない(笑)。交際費で落とせよそれくらい。実はメフィラス星の財政事情は厳しいのかも知れません。

メフィラスの名刺

 人類は巨大化させると強力な兵器とすることが可能で、さらに高い増殖率があるので有望な資源であるとして独占管理を狙っています。しかし人類は過去にウルトラマンの母星である光の星が作った生物兵器(その後政策が変わったのか放置状態)らしいので、光の星が黙っていない。なのでウルトラマンを抱きこもうとしましたが失敗。

オリジナルメフィラス星人

 戦闘モードになったウルトラマンにやむを得ず巨大化して対峙するメフィラス星人。オリジナルのメフィラス星人は一見紳士的ながら子供を相手に顔真っ赤状態で乱暴になるという粗暴な面もありました。CV加藤精三(「巨人の星」の星一徹役で有名)だったので、卓袱台ひっくり返しを連想してしまいしたが、山本メフィラスは最後の最後まで紳士面のままでした。

メフィラス全身図

 オリジナルと比べると無駄のないすっきりしたデザインで、格闘家の体型を意識したもののようです。やたら語彙が豊富で、諺や四字熟語などを引用し、「私の好きな言葉です」とか「私の苦手な言葉です」と付け加える、いわゆる“メフィラス構文”は一時期流行しました。

メフィラス対ウルトラマン

 神永との融合により戦闘力が低下し、活動時間に制限があるとはいえ、ウルトラマンと互角以上に渡り合い、八つ裂き光輪を易々と弾き、スペシウム光線もグリップビームで押し返し、むしろ勝利目前と言った感じでしたが…

ゾーフィ

 ウルトラマンの背後にもう一人のウルトラマン・ゾーフィを見たメフィラス星人は急に戦闘を止めます。光の星の本格介入を知り、地球の命運は尽きたと悟ったメフィラスはあっさり撤退。

ゼットンの卵
最終兵器ゼットン

 そしてゾーフィはウルトラマン(リピアー)が神永と一体化するという禁忌を破ったことで人類が生物兵器に転用できることが宇宙中に知れ渡ったとし、人類の殲滅を決定。光の星の天体制圧用最終兵器ゼットンを出現させます。

ゾフィー兄さん

 「ウルトラマン」ではゼットンに敗れたウルトラマンの下に救援に駆けつけた光の国の宇宙警備隊長でしたが、本作ではゼットンの使用者に。しかしこれも元ネタがあります。ゼットンを操るゼットン星人は、元々名称不詳で、円谷プロが放送直後に配布した文字資料ではゾフィーを「ゼットンを操る宇宙人」と記載していたため、60年代の書籍・雑誌ではゼットン星人と混同され、「謎の宇宙人ゾーフィ」と表記されり、「ゼットンを操っている悪の宇宙人」と記述されていたのでした。いや本編見ろよ編集者(笑)。

ヤバい記述

 ゾフィーは「ウルトラマンA」以降しばしば登場するようになったので、今ではウルトラ兄弟の長兄として認知されていますが、かつてはゼットン星人と混同されていたという黒歴史が。しかしそこを上手く使ったのが本作と言えるでしょう。

ゼットン

 ということでゼットンは光の星の最終兵器として登場。もはや禍威獣のスケールを超えた生物兵器で、有名な1兆度の熱球を発射します。その熱球らしきものは「ウルトラマン」でも発射していますが、科特隊本部ビルに穴を開ける程度の威力でした。空想科学うんたらの人がツッコんだとおり、そんなもの発射したら地球消滅では済まない威力ですが、本作では太陽系ごと滅却するとしています。

ゼットンファイナルビーム

 ま、オリジナルのゼットンの場合、一兆度の熱球というのは白髪三千丈的表現だったのかも知れません。ゼットン星人は中華系異星人だったとか。そもそもウルトラマンを倒すのには使われていません。一兆度かどうは知りませんが、白い光弾はかわされました。ゼットンはバリヤー(ゼットンシャッター)で八つ裂き光輪を弾き、スペシウム光線も受け止め、波状光線を撃ち返してウルトラマンを倒しました。空想科学うんたらの人によれば一兆度の熱球を放てばゼットンも消滅するそうなので、ゼットンに本当にその武器があったとしても滅多には使えないかも。勝ち目のない相手にだけ使う相打ち覚悟の最後の武器なのかも知れませんね。

ゼットンシャッター

 個人的にはゼットンの二つ名「宇宙恐竜」にシビれました。他の怪獣の二つ名は大体「○○怪獣」なんですが、ただ一人「恐竜」。まさしく“恐るべき竜”という意味のネーミングなんでしょう。モチーフはカミキリムシ(ゴマダラカミキリ)と「顔のない甲冑」だそうです。

ゼットン対ウルトラマン

 本作のゼットンは強力なだけに展開に時間がかかり、展開途中にウルトラマンが攻撃を試みますが、電磁光波防壁(ゼットンシャッターだ)で攻撃を阻み、防衛システムがウルトラマンを撃墜していました。

ゼットンの防衛システム

 圧倒的なゼットンを前にウルトラマンと人類はどうなるのか?それはぜひ本編をご覧頂きたいと思います。全39話の「ウルトラマン」を2時間弱に圧縮した感のある本作ですが、まあよくここまで作り上げたなと感心しました。海外では「シン・ゴジラ」の方が評価が高いようですが、それは「ウルトラマン」を知らないからでしょう。「ウルトラマン」を見て知っている側からすると、よくぞここまでリブートしてくれたと思います。今度は是非「シン・ウルトラセブン」を。

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