2022年春季アニメの感想(その4):カッコウの許嫁/処刑少女の生きる道/SPY×FAMILY/サマータイムレンダ

暑い日が続いています。毎日暑いことは暑いのですが、昔に比べて暑さが苦でなくなったような気がします。もちろん汗はかきますが、引くのも早くなったような。これが本当に暑さに強くなったのならいいのですが、おそらく“老化”で暑さを感じにくくなっているのではないかという気がしてなりません。本当の高齢者には真夏でも汗をかかない人もいるみたいですね。汗をかかないというとなんて素晴らしいとか思ってしまいますが、体温調節ができなくなっていて、自覚症状なく熱中症になってしまう恐れもあるようです。とにかく水分補給は怠らないようにしましょう。

さて7月も中旬に入るという時期なので、春季アニメの感想を終わらせましょう。まずは視聴打ち切り作品から。「カッコウの許嫁」は、6月一杯10話まで視聴しましたが、7月からはもう視聴しません。1クール分に達していないのは、本作の放映開始が遅かったからですが、これが結構大問題だったような。

前評判では春季の覇権候補なんて呼び声も高かったのですが、実際に放映が始まった頃には「SPY×FAMILY」とか「パリピ孔明」などが話題をさらってしまっていたという。内容は特に駄目とは思いませんでしたが、新生児の取り違えとかって、確かにそういう作品はありますが(ぱっと思い出すのは巨匠楳図かずお先生の「黒いねこ面」)、大抵取り違えは同性の新生児で起きるんですよね。

本作のように性別の異なる新生児を取り違えるってことがあり得るのでしょうが?そこには何らかの“故意”が介在しており、それがタイトルにある托卵で有名なカッコウに掛かってくる…なんてこともあるのかも知れませんが(「黒いねこ面」も故意でした)。なんとなくこの先見続けてもそれほど面白いことにならないような気がしてしまいました。

ヒロイン候補が3人しかおらず、まあ勝負は最初から見えているように思えます。血は繋がっていないとはいえ、妹はまずないでしょうし、もう一人のCVは“負けヒロイン”に定評がある東山奈央だし。

内容的にちょっと前に放映した「ぼくたちは勉強ができない」に近いので比較してみると、「ぼく勉」の方がヒロイン候補が多く(「ぼく勉」5、「カッコウ」3)、「ぼく勉」の妹はお兄ちゃん(主人公)大好きだけど実妹ということもあり最初からヒロイン候補ではなく、なにより個人的には美人教師・桐須真冬がヒロイン候補に入っているあたりで、断然本作より「ぼく勉」の方が上に感じました。

それでは視聴終了した作品の感想です。まずは百合系「処刑少女の生きる道」。「生きる道」と書いて“バージンロード”と読みます。原作は「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」以来のGA文庫大賞受賞作だそうです。

「なろう」系のせいで当たり前になってしまった異世界転生譚ですが、それを逆手に取って、日本人ばかりが転移してくる異世界を舞台に、転移者のおかげで大きく発展してきたものの、転移者の暴走により何度も大災害も経験することとなり、結果的に“転移者死すべし慈悲はない”という状況になっている状況で、殺したくても殺せない異能を持つ転移者と処刑人の珍道中を描きます。


主人公の処刑人メノウのCVが「ウマ娘」キングヘイローを演じている佐伯伊織。また後半登場する敵役マノンのCVは「ウマ娘」ライスシャワーを演じている石見舞菜香です。短距離の「高松宮記念」でGⅠを獲ったキングと長距離が得意なステイヤーのライスではなかなか対決が成立しないような気も(笑)。ま、間を取って中距離で戦って貰いましょうか。

あんまり「ウマ娘」に絡めてばかりいてはいけないのですが、「ウマ娘」声優達が活躍の場を広げているのはいい傾向だなと思ってしまいますね。メノウが本来処刑すべきはアカリという日本から来た転移者なんですが、死ぬと時間を巻き戻すという異能を持っているので、どうすれば殺せるのか、その手段を見つけないといけません。一緒に過ごすことでアカリに情が移って苦悩するメノウというシーンがある反面、アカリには人格が二つあり、無邪気な表の人格は純粋無垢な反面、色々知っているらしい裏の人格はアカリに殺されたがっている様子があります。

個人的には、メノウもアカリも日本人からの転移者で、メノウの方は記憶や人格を漂白されてしまったので自他共に異世界人そのものであると認識しているが、アカリはそのことに罪悪感をのようなものを持っているように窺われました。

最終回ラストでメノウの師である凄腕の処刑人フレアが弟子殺し云々と言って動き出しているので、二期があればメノウとアカリの謎やメノウとフレアの対決などが見られるかも知れません。

金元寿子が演じるモモがメノウの後輩処刑人として活躍し、アカリに嫉妬しつつ隙あらばメノウとの百合展開を目論む面白いキャラとなっています。こんなに強いのであれば単独で処刑人が出来そうな気がするので、人的資源の無駄づかいにも見えますが、アカリの処刑はそれだけ重大な問題とも言えるのでしょう。

あとM・A・Oが演じる戦闘狂の王女アーシュナというキャラがいますが、なんで処刑人でもない王女がこんなに強いのか(笑)。ともあれ、M・A・Oという人の演技の幅の広さには驚かされます。女優・俳優が声優に挑戦すると、アニメファンからはシビアな評価を受けることが多いですが、女優・市道真央に限っては誰も文句の付けようがないでしょう。もちろん本人の才能と努力あってのことだと思いますが。彼女の出世作である「海賊戦隊ゴーカイジャー」のルカ・ミルフィ / ゴーカイイエロー的には、アーシュナ王女はかなりルーツに近いキャラとも言えますね。


二期を制作するようなら見たいのですが、世間の評価はどうかなあ…。私は悪くなかった思いましたが、インパクトには欠けていたかも。また、1話の“出オチ”が完全に「無能なナナ」と被っていたのは痛かったかも知れません。あ、「無能なナナ」も二期が見たいです。

続いて春季の覇権と呼ばれた「SPY×FAMILY」。スパイと殺し屋と超能力者が仮初めの家族となって、日々のトラブルと格闘するコメディです。舞台は冷戦時代の東独といったところでしょうか。西側から来た凄腕スパイ“黄昏”が、東側の政治家と接触するための任務“オペレーション梟(ストリクス)”を実行するにあたって、孤児の少女と市役所務めの女性と仮初めの家族となりますが、実は彼女達にも重大な秘密があって…という展開です。


“黄昏”は精神科医ロイドを名乗り、孤児の少女アーニャをエリート校に入学させ、政治家の息子と仲良くさせて接触の機会を窺うというかなり迂遠な作戦を命じられていますが、アーニャは実はある組織から逃げ出した実験体で人の心が読めるテレパスでした。片親ではエリート校受験に支障があるということで偽装結婚した市役所勤務のヨルは、これもある組織の凄腕の殺し屋でした。三者三様の思惑から一つになった偽造家族の行方は、そして“オペレーション梟(ストリクス)”の成否は…というところで分割2クールの前半が終了。後半は秋季のようです。




本作はアーニャを演じる種崎敦美の熱演でほぼ出来上がっているように思われます。いやロイド役の江口拓也やヨル役の早見沙織が悪いと言うことはないのですが、この二人についてはだいたいいつも通りという感じなのに対し、種崎敦美の演じるキャラの幅広さに驚きます。それじゃM・A・Oと同じじゃねーかとツッコまれそうですが、M・A・Oが演じるキャラの性格の幅が広いと感じるのに対し、種崎敦美は年齢とか性別という観点で幅が広いと感じます。本作はアーニャあってのもので、アーニャは種崎敦美の演技あってのものだなと思います。

ロイドはスパイとしてとにかく優秀ですが、アーニャのテレパス能力はともかく、ヨルの殺し屋としての側面に全く気付かないのはどうしたことか。ヨルの弟ユーリが“同業者”であることはすぐに見抜いたのに。


ロイドのスパイとしての活躍は前編に亘って描かれているのに対し、ヨルの殺し屋稼業の描写は一回だけ。その後も殺しは続けているようですが、なぜに気付かないロイド(笑)。また、ヨルが所属する“ガーデン”という組織が政治には関わらないのか、依頼によってはロイドとぶつかったりしないのかが気になります。早見沙織は清楚な若妻とファナティックな殺し屋の落差を演じ分けられる人だと思うので、ぜひ残虐な殺し屋活動ももっともっと描いて欲しいですね。そしてテレパスでそれを知ってショックを受けるアーニャ(笑)。

基本コメディなのでそこまでダークになる必要はないのですが、最近は表向きはのほほんとした作品ながら、実は結構重い背景があるという作品も多い(例えば「まちカドまぞく」とか「RPG不動産」とか)ので、本作もダークな背景とかを描いた場面がもっと多くてもいいような。

最後に「サマータイムレンダ」。連続2クールで引き続き2クール目を放映中。13話まで視聴しました。当初は春季の“超豪華なリザーバー”でしたが、春季一番の作品だと思います。やはり節穴ぶりが海のリハク。しかし一応リザーバーに入れていたのでまだしもでしょうか。

いわゆる「死に戻り」で、13話までに主人公網代慎平は5回死んでいますが、その能力がどこから来たのかとか、次第に明らかになってきているので、2クールの間に様々な謎が全て明らかになることに期待しています。

和歌山沖に浮かぶ日都ヶ島で昔から伝えられる「影」の伝説。自分そっくりの影を見た者は近いうちに死ぬという、ドッペルゲンガーのような伝説ですが、慎平にとっては義理の家族でおそらく恋をしていた小舟潮が海難事故で亡くなり、訃報を聞いて島を出ていた慎平が島に戻ってきたところから物語がスタート。潮が影を見ていたと言う話を聞いたことから、伝説が現実になってきます。

心霊オカルト系かと思われた影は、むしろSFとかクトゥルフ系の様相ですね。人間の姿だけでなく、記憶や能力までコピーする影は、完全に対象とすり替わることが可能です。人間と寸分変わらず、どちらが本物か見分けるのは困難ですが、実体は影の方。

「新世紀エヴァンゲリオン」に登場した第12使徒レリエルに似ていますね。白黒まだらな球体のように見える本体が実は影で、真下の影に見えるものが本体という。

影の人間体は、本来なら死んでもおかしくないほどの重打撃を受けてもすぐに復活するので、序盤は打つ手がないかのように思われましたが、本体が影の方であることや影を攻撃すれば殺せることや、3カ所縫い付けられれば動けなくなること(まるで忍法「影縫い」)など、次第に特徴とか弱点が明らかになっていきます。

おまけに慎平には切り札の「死に戻り」があるので、どういうことになるのかをギリギリまで見極めた上で死ぬとリセットされてやり直せるので、トライアンドエラーを重ねれば圧倒的不利な状況でも打開できるように思えますが、それがどんなに厳しい道のりかは「リゼロ」を見れば周知の事実。おまけに「死に戻り」による記憶の継承を影側も可能にしてきたので、敵の圧倒的強さは相変わらずのまま。今後どうやって打ち破っていくのかが注目されます。

序盤は潮の妹である澪の影が強敵として立ち塞がり、慎平は2回殺されています。本体も影も声優は同じなので、明るく純情可憐な澪と冷徹で残忍な澪の影の落差にはビックリしました。姿形だけでなく、記憶や性格もコピーしているはずなので、影自身の持っている性格なのか、それとも澪の隠された性格なのか。

ヒロインの潮は物語開始時既に故人となっていますが、それでも依然としてヒロイン。潮のパーソナリティーを完全に引き継いだ潮の影がヒロインを継承しています。澪の影のように、人間の記憶や性格をコピーしても、影としての任務などやはっきり持ち続けるはずなのですが、なぜか潮の影にはそれがなく、他の影からは欠陥品と呼ばれていますが、実は新種の可能性が。

潮の影は水着姿の潮をコピーしたので、デフォルトが水着という非常に嬉しい(笑)姿で登場しますが、まあ健康的というかエロい感じはなくていいですね。むしろ妹の澪の方が水着の日焼け跡とかパンモロシーンとかでエロの方では頑張っていたような。

影サイドには人間の協力者もいるようで、誰が敵で味方なのかなど、「ひぐらしのなく頃に」的な面白さもありますが、とりあえず潮そのものである潮の影の活躍とか性格が楽しいのがいいですね。

後は影についてやたら詳しい小説家南方ひづる。この先明らかになるであろう彼女の過去や影との関わりが物語に大きな影響を与えそうです。CV日笠陽子は実にいいキャスティングですね。今回はギャグ抜きのシリアスモードですが、クールで凜々しいひよっちもいいものです。


それとJSの小早川しおり。CV釘宮理恵で、なぜにこんな大物を?と思ったら驚くような活躍ぶりで。ビッグネームをキャスティングするにはそれなりの理由があるということですね。可愛さ、不気味さ、怖さを体現できるくぎゅはやはり凄い。

作画が非常に良く、毎回あっという間に時間が経ってしまう没入感も素晴らしい。そして毎回毎回、この先どうなるのかと思わせる引きの強さ。この調子でいけば2022年を代表する作品になるのではないかと期待しています。潮と澪の姉妹を演じる声優(永瀬アンナと白砂紗帆)は若手のようですが、素晴らしい演技なので、これからの活躍が期待されます。
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