記憶に残る一言(その140):宿屋の親父のセリフ(ドラゴンクエストⅠ)

11月の日差しは気持ちいいですね。これぐらいの角度の日射が長時間続くといいのですが、すぐに沈んでしまうことだけが残念です。

そういえば南アメリカにアルゼンチンという国があります。サッカーなんかが強いので結構有名だと思いますが、国旗は横に青白青の三層で中央に顔の付いた太陽のシンボルがあります。

この太陽、「5月の太陽」と呼ばれており、アルゼンチン独立の契機となった5月革命を記念しているそうです。顔があるのは、インカ帝国の太陽神インティを表しているのだそうです。これまで私、日本の季節の印象で、「5月の太陽」というとこれからどんどん強くなっていく初夏の明るく元気なイメージを持っていたのですが、よく考えてみればアルゼンチンは南半球の国なので季節は正反対なんですよね。つまりアルゼンチンの5月は日本の11月相当。つまり今の日本に射す太陽のような、緩やかで穏やかな太陽こそアルゼンチンの「5月の太陽」なのでしょう。

本日は「記憶に残る一言」ですが、なんと35年前というレトロなゲームからです。その名は「ドラゴンクエスト」。今では「ドラゴンクエストI」とも呼ばれますが、もともとはナンバリングはありませんでした。1986年5月27日にファミコン用ソフトとして発売されましたが、この時は発売日に秋葉原のゲーム店で余裕で変えました。

実は「ドラゴンクエスト」については6年も前の2015年8月9日付の記事(https://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-1080.html)で紹介しており、その際に今回の「記憶に残る一言」にも触れているですが、ごくあっさりとしか触れていなかったので、今回改めて。

冒険の舞台であるアレフガルド。ラルフ16世が統治する王都はラダトーム。この世界には城といえばラダトームの城と竜王の城しかありません。王にはローラ姫という一人娘がいましたが、プレイヤーキャラクターであるロトの血を引く勇者が登場する半年ほど前に竜王の手先によって攫われてしまいました。

ローラ姫は「沼地の洞窟」に閉じ込められており、竜王討滅という最終目標の前に、ローラ姫を救出するということが中間目標としてあります。魔王などのラスボスが姫をさらうのは定番のような話ですが、ラスボスの下に姫がいるということだと、ラスボス打倒と姫の救出がセットとなります。ドラクエも当初はそういう路線だったそうですが、ゲームデザイナーの堀井雄二は「お姫様を救うゲームは他にもたくさんあるから、救った後も冒険が続くストーリーにしよう」と発想を転換したのだとか。

実はローラ姫を救出しなくてもゲームクリアは可能で、その場合は最後まで存在を忘れられたまま終わることとなります。そもそも王様、竜王打倒は依頼してきますが、攫われたローラ姫のことはおくびにも出さないので。城の兵士らの話を聞けば、ローラ姫が攫われたことや、王が心を痛めていることなどを知ることができるのですが、公私混同しない立派な姿勢というべきか。それにしては世界を救わんとする勇者に非常にしょぼい支援しかしてくれないのですが、すでに王家の財力には余力がなくなっていたのか、はたまた「自称勇者」が沢山現れていて、主人公もその手の連中の一人と思われていたのか。

普通にプレイしていればローラ姫の存在については当然知り得、勇者たるもの当然助けに行くわけですが、もしローラ姫を助けずにクリアした場合、次作が成立しなくなる可能性が。というのはローラ姫は「ドラゴンクエストⅡ」で主人公を務めるロトの子孫達の祖先と設定されているからです。まあ竜王打倒後、一人旅立った勇者が旅先で知り合った女性と結ばれたということでも話はつながらないことはないのですが。

門番であるドラゴンを倒し、首尾良くローラ姫を救出すると、主人公のグラフィックが変わり、ローラ姫を抱きかかえる姿(まさにお姫様抱っこ)になります。城に連れ帰るまでこのグラフィックなので、生真面目な私は、これじゃ戦闘もままならないと思ったのと、王様が首を長くしてローラ姫の生還を待ち望んでいるとすれば一刻も早く元気な姿を見せてやりたいとの思いから、洞窟を出るやキメラの翼を使って一気に城に戻ったのですが…

ローラ姫を抱きかかえたまま宿屋に泊まると、翌朝宿屋の親父が意味深なセリフを言うのです。今回の記憶に残る一言はこれ。「ゆうべは おたのしみでしたね」。はて、“おたのしみ”とは一体…(すっとぼけ)。

一人で宿屋に泊まった場合、翌朝「おはよう ございます。ゆうべは よく おやすみ でしたね。」と言われるのですが、ローラ姫お姫様抱っこモードだと「おはよう ございます。ゆうべは おたのしみでしたね。」と。きっと親父は下卑た笑いを浮かべているに違いありません。

子供達はイマイチピンとこなかったセリフかも知れませんが、年長のプレイヤー達はにやりとしてしまったことでしょう。このセリフについては、①覗いていた ②覗いていないが、それとわかるほどの音とか声がした ③若い男と女が密室に二人きり。何も起きないはずがなく…(邪推)の三つの説があります。

①だとするとこんな出歯亀が経営している宿屋はイヤですね。きっとすぐ寂れるぞ。②だとすると、出会ったばかりなのになんとまあ…と、若さの暴走にとあきれてしまいます。王様もお嘆きだ。なのでおそらく③なんじゃないかと思います。「何をして」楽しんだのかについては何ら言及していないので、「きさま!見ているなッ!」といった抗議に対しても言い抜けは可能でしょう。

実はエニックスの雑誌広告には、セリフを楽しむアドバイスの一つとして「ローラ姫を助けたなら、そのまま、宿屋に泊まってみよう。」と書かれていたそうです。徳間書店の「ファミリーコンピュータMagazine」のウルテクコーナーでは、「ローラ姫とファミコンでもやって遊んでたのかな。」とすっとぼけ、同社の攻略本ではわざわざ囲み記事で取り上げたうえで「え? ボクたち楽しいことなんかしてない(?)よ。」と締めているそうです。

ドラクエシリーズの思わせぶりなセリフとしては「ぱふぱふ」もありますが、これと双璧といったところでしょうか。画像の「ぱふぱふ」はとんだ肩透かしですがね。

なお、リメイク版では、話しかけると付いてくる町娘を連れて宿に泊まることもできるそうです。自由にしている町娘に「もしやローラ姫ですか?」とか尋ねたのか?別の意味で勇者だなあ。新手のナンパ術なのかも知れませんね。

リメイク版では宿屋の主人は女性に変わっていますが、全くうろたえる様子もなく「ゆうべは お楽しみでしたね。」(漢字が入ったけど)と言う辺り、宿屋の女将と言うべきでしょう。そしてローラ姫ならぬ町娘と泊まっても同じセリフを言うという。

恐ろしいことに、ローラ姫を抱きかかえた状態で町娘に話しかけると3人で泊まることも可能なのだとか。宿代は変わらないそうです(いや、そういう問題じゃない)が、やはり「ゆうべは お楽しみでしたね。」言い放つとか。

さらに恐ろしいことに、マイラの村のの宿屋だと、部屋が一つしかない上にベッドも二つしかなく、さらに一つは先客のおっさんが占拠しているという状態。それでも「ゆうべは お楽しみでしたね。」と言われるのですが…

なお寝ている先客のおっさんに話かけると、なぜかこんなことを。まさかローラ姫、隣のベッドのおっさんともぱふぱふ(意味深)を!?

思わず主人公もこうなってしまいますね。しかし勇者が町娘も加えての3Pをしていたのだとしたら、おっさんを加えての3Pにも文句は言えない…はず…。ここに町娘を入れて4人ならバランス的にちょうどいい(何の?)。

最終目標である竜王打倒ですが、ローラ姫を助けずにクリアすることも可能な反面、ローラ姫を抱きかかえたまま(つまりラダトーム城に戻らず)クリアすることも可能だそうです。ドラクエ1では復活の呪文は王様から聞くので、これはつまりゲーム中盤から中断せずにプレイすることになるのですが、やりこみプレイとしては面白いかも知れませんね。この場合、「ほほう 姫を わしの所まで連れてきてくれたのか?ごくろうであったな。」とか言われるようです。

「ドラクエⅤ」ではまさに結婚したばかりの新婚さんとして主人公と新妻(ビアンカなりフローラなりデボラ)が宿屋に泊まるし、双子の子供達はこの旅程で身籠もったはずなのですが、なぜか宿屋は「ゆうべは…」とは言わず、「おはようございます。では いってらっしゃいませ。」と軽く流すのでした。まあ夫婦にこのセリフを言うのは野暮の極みってものですよね。

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