2021年夏季アニメの感想(その1):ピーチボーイリバーサイド/乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X/小林さんちのメイドラゴンS/かげきしょうじょ!!

中秋の名月を過ぎて彼岸を過ぎて季節は秋真っ盛り。まだまだ暑くて半袖生活ですが、季節的には仲秋真っ盛り。10月7日の寒露以降は晩秋になってしまいますが、我々が本格的な秋を感じるのはまさにこの辺りからなんですよね。これは月刊誌が9月に10月号を発行する的な先取りなんでしょうかね。しみじみ「秋だなあ…」と思う頃には立冬を過ぎてたりして。

さてそういう時候ということで、夏季アニメが続々と終了していますので本日は感想をば。まずはなぜか“クール教信者祭り”だった今季アニメから第一弾「ピーチボーイリバーサイド」。率直に言って大失敗作品でしたが、それは全てアニメ監督のせいです。

「桃太郎」を下敷きに、魔物・亜人などが存在し、剣と魔法の世界でもある異世界を舞台に、本能的に人を憎悪し、最も恐れられている人間の天敵たる鬼と、これに対抗できる“桃の目”を持ったミコトとサリーの物語です。

物語も作画も、もちろん声優も問題ないのになぜ大失敗と断じるのかというと、監督が意味不明の時系列シャッフルをしてストーリーをぐちゃぐちゃにしてしまったためです。その理由について何やら語っているようですが、視聴を終えて感じるのは大失敗ということだけ。有料のビデオ・オン・デマンドサービスであるdアニメストアではシャッフルしていない「時系列版」を配信しているので、シャッフルした方が良いという言い訳はそもそも成り立たない気がします。有料なのに無料放送より低質な作品なんて放映できるわけないでしょうから。

確かに時系列シャッフルしても成功している作品はあります。例えば「涼宮ハルヒの憂鬱」(第1期)なんかそうですが、これは基本一話完結型だったので、シャッフルによる混乱が起きにくいということがあったのと、やはり制作サイドの手腕ということだったのだろうと思います。

「ピーチボーイ」の監督は、これまで作画崩壊で有名な「メルヘン・メドヘン」(2018年冬季アニメでしたが、私はストーリーもダメだったので3話で視聴打ち切り)、なぜか制作されてから5年間寝かされていた「ゲキドル」(本年冬季アニメですが私は未視聴)を手掛けていますが、どちらも評判は芳しくなく、はっきり言えば大した器量もないのに人と違うことをやりたがるヤバい人という印象です。

日本の芸道には「守破離」という言葉があり、まずは師匠から教わった型を徹底的に「守る」ところから始まり、十分な修業・鍛錬を積んで、自分に合ったより良いと思われる型を模索し試すことで既存の型を「破る」ことができ、さらに精進を重ねた末に既存の型に囚われることなく、型から「離れ」て新たな流派を生むことになるのだそうです。これをアニメ制作に重ねるならば、まずは王道展開というもので定評を得てから新機軸を打ち出し、いずれでも評判を得ることで「○○流」という世間に受け入れられた独自の作風を生みだしていくということになるのではないでしょうか。まともな王道展開もできないのにいたずらに新機軸なるものに執着しても結果はこういうことになるということでしょう。普段のアニメチョイスにはあまり誰が監督かとかに拘らないのですが、今後はこの人が監督だったら避けるようにしようと思います。

続いて「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X」。「なろう」系に「悪役令嬢もの」を流行させるに至った名作「はめふら」の第2期です。第1期で破滅フラグの回避に成功したカタリナですが、てっきり魔法学園を卒業して魔法省に就職するのかと思っていましたが、魔法学園の残りの日々が描かれていました。魔法学園は2年制で、第1期で描かれたのは1年目だったんですね。

「なろう」系の主人公にありがちなのが、チートレベルの能力を発揮して周囲の人々を驚愕させながら、なぜかすさまじく鈍感で「またオレ何かやっちゃいました?」と呟くという無自覚イキリキャラ。主人公カタリナにはチート能力は何もありませんが、アクシデントで転生前の記憶を思い出したことで当時の性格(恋愛感情には鈍感ながら優しく気さくで朗らかな性格)も取り戻し、これが良い意味で貴族らしからぬ立ち振るまいにつながって周囲の人々を魅了しまくるので、この点だけはチートかも知れません。




第2期でも相変わらずモテモテなのに無自覚なカタリナですが、流石にジオルドやキースにキスされるという「わからせ」を受けて少しは理解した模様。しかし相変わらず無自覚な人タラシは発揮し続けており、新たなファンを増やしています。この世界の人からすると「女子高生の無駄づかい」でバカが言っていた「おもしれー女」なのかも知れません。

つまらないということはないのですが、一応「闇の魔力」を扱う存在という敵らしきキャラはいるものの、“破滅フラグ”から離れたせいか、全体的にはパワーダウンしたという印象は否めなかったですね。新キャラばかり大事にして旧キャラをないがしろにすると、それはそれで良くないのですが、新キャラがちょっと弱かった印象。特に魔法学校の後輩であるジンジャーとフレイとはもっと絡んで良かったと思います。特にフレイは私の好みでした。カタリナさえいなければ、ニコル×フレイは十分ありえたんじゃないでしょうか。


第1期は乙女ゲーム「FORTUNE・LOVER」の世界で、魔法学校卒業後の魔法省時代はその続編「FORTUNE・LOVERⅡ〜魔法省での恋〜」の世界になるようです。その狭間が第2期ということもパワーダウンの原因なのか?劇場アニメの制作が発表されているので、魔法省時代はそこで描かれるのかも知れません。Amazonプライムで見られるようになったら見てみようかな。

次は「小林さんちのメイドラゴンS」。今季の“クール教信者祭り”第2弾です。言わずと知れた「メイドラゴン」第2期で、第1期は2017年冬アニメでした。第1期から人気があったので、本来であればもっと早く第2期が制作されてもおかしくなかったのですが…あの惨劇のせいで。犯人は無間地獄のような異世界に転生したらいいと思いますが、地獄も一種の異世界なのだろうか。

京アニとしては事件後初の元請制作のテレビアニメであり、第1期の監督も事件で亡くなっていますが、演出などは第1期を踏襲しています。展開も原作があるので当然ですが、第1期の流れからの続編で、安定しています。もう放映してくれただけでありがたや。


トールの名前の由来は北欧神話の雷神ではなく、「指輪物語」のトールキンだったことが判明。基本ファンタジーコメディながら、折々異種間交流の難しさとか異世界での過去といった重い話をぶっこんできます。だがそれがいい。深刻になりすぎない程度の所で流すのがメイドラゴンクオリティ。

混沌勢と調和勢という相容れぬイデオロギーのせいで根っから仲が悪いと思われていたトールとエルマですが、実は異世界で行動を共にしていた時期があったんですね。本当は仲がいいのにわざと仲悪そうにしているあたり、二人ともツンデレだったんですね。「ウマ娘」でのウオッカとダイワスカーレットか。

新キャラはイルルのみ。トールと同じ混沌勢ですが、人間との争いによって両親が亡くなったことで人間は敵だと刷り込まれて最過激派となり、盲目的に破壊や殺戮を繰り返してきたドラゴンです。トールとの戦闘でも一時は圧倒しましたが、これはトールが街を庇って全力を出せなかったからで、実際にはトールやエルマほど強くはない模様です。

最終回での腕相撲対決ではエルマとのライバル対決を制し、ルコアをも破って優勝したトールですが、エルマ戦はともかく、ルコア戦は翔太をだしに使うという謀略の結果なので、ドラゴンとしての強さはルコア>ファフニール≧トール≧エルマ>イルル>カンナといったところでしょうか。ルコアはケツァルコアトル、つまり龍神と言うべき存在なので別格でしょう。

トール達残りのドラゴンはメガテン分類だと龍王あたりに相当するのかなと思ったりもしますが、イルルの元ネタがヒッタイト神話のイルルヤンカシュだとすると、メガテン分類では龍神にカテゴライズされているほか、カンナの本名カンナカムイもアイヌ神話で雷を司る神なので、皆まとめて龍神にカテゴライズせざるを得ないかも。なおファフニールだけはメガテン分類でしっかり邪龍とされているので龍神には出来ない(笑)。ま、邪龍の中でも最強クラスなのでカンナやイルルでは勝てないでしょう。龍神も邪龍も属性はChaosなので、調和勢のエルマ的には属性Neutralの龍王の方がましかもですが。

最後に「かげきしょうじょ!!」。宝塚音楽学校をモデルにしたと思われる紅華歌劇音楽学校に、高倍率の難関を突破して入学した100期生の奮闘を描きます。これはとても面白い作品でした。「マリア様がみえる」とか、“女の園”の話は未知の世界なんで基本好きなんですよね。


しかし当初はちょっと…という感じもありました。主人公のさらさはKY感が目立つし相方になる元アイドル奈良田愛は男嫌い(まあこれはいいとして)でかつ人間不信で常に不機嫌だし。愛がどうしてこうなったかが描かれて人となりが理解できるようになり、さらさと仲良くなった4話以降は非常に面白くなりました。

年頃の少女達ばかりなので上級生のいじわるとか過食嘔吐とか嫉妬、同期でも年齢差(受験のチャンスが中卒から高卒までの4回なので、つまり15才から18才までが混在)とか色々ありますが、それもまたよし。

さらさは人間国宝の歌舞伎役者の隠し子らしいのですが、そのせいで一門に出入りして日舞を習ったりしていましたが、歌舞伎役者になって助六になりたいと無邪気に語っていたのを聞いた人間国宝の妻に「歌舞伎役者にはなれない」と叱りつけられて大ショックを受けました。それで次はオスカルになりたいということで紅華歌劇団を志望することになりました。子供に罪はないとはいえ、妻からするとさらさは夫の浮気相手の子(本気だったらもっとヤバい)なので、ついつい感情が発露されてしまったんでしょうが…


他にも祖母・母と三代続けての紅華入りしたサラブレッドとか、生粋の紅華オタクとか、双子とか(松田姉妹が演じている。やはりか!)いろんなキャラがいますが、同期は40人はいるはずなのでごく一部しかちゃんと描かれなかったのは残念。モブにもモブの人生があるはずなんですが。嫉妬とか鞘当てとか、美しい容姿とは裏腹のドロドロした醜い感情を目一杯発露させて、自ら天使ではないことを証明してしまうような姿をおじさんに見せておくれ(笑)。そういえば本家の宝塚音楽学校でも、かつていじめに端を発した退学問題が訴訟沙汰に発展していましたっけ。結果、学校側はほぼ完全に敗訴していましたね。


紅華歌劇音楽学校は宝塚音楽学校と同じく予科1年、本科1年の2年制で卒業後は歌劇団に入団することになりますが、予科が終わりきる前にアニメが終了してしまいました。今後1月末の文化祭があり、その後は本科生になって後輩を迎えることになると思われ、ぜひその辺りを描いた第2期をなるべく早く制作して貰いたいです。

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