2021年春季アニメの感想(その1):異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω/戦闘員、派遣します!/転スラ日記/聖女の魔力は万能です

Cygamesの「ウマ娘」の大躍進とは裏腹の「サクラ革命」の大コケで、やばいと囁かれているディライトワークス。唯一と言っていいドル箱タイトル「FGO」は死守していかなければならないところ、ようやくストーリークエストの新章(2部6章)が公開され、再び盛り返しているようです。ちょうど石が30個ばかりあったのでピックアップガチャを引いてみたら、なんと☆5のモルガンが2枚も出ました。

☆4の妖精騎士ガウェインか妖精騎士トリスタンの1枚も当たればラッキーだと思っていたのになんという誤算。「艦これ」で宗谷を入手できず、「プリコネR」で水着サレンを出すのに天井になってしまったという不運の“揺り返し”がここで出たのでしょうか。「アーサー王物語」では、アーサー王には異父姉が3人いて、モルゴース、エレインとモルガン(モルガン・ル・フェイ)。なんでこんなに異父姉がいるのかと言えば、アーサーのパパンのウーサー・ペンドラゴンがコーンウォール公ゴルロイスの妻であるイグレインに一目惚れし、マーリンに頼んでゴルロイスに化けてNTRしたからです。

ジョン・ブアマン監督の1981年作品「エクスカリバー」では、ウーサーは鎧を着たままイグレインをNTRしていました。また快楽の中でアーサーを身籠もるイグレインと、今まさに死を迎えようとしている断末魔のゴルロイスを交互に描くことで、生と死の端境を描いていました。

ゴルロイスはウーサーとの戦いで戦死したので、モルガン達からすればアーサーは弟だけど父の敵の息子ということにもなります。アーサー自身には罪はないけど、異父姉達がアーサーを敵視する気持ちもわからんでもありません。3姉妹のうちエレインは特に活躍しませんが、モルゴースは円卓の騎士ガウェイン、アグラヴェイン、ガヘリス、ガレスらの母なので間接的にアーサーに貢献している反面、モルゴースを姉とは知らなかったアーサーとの間に不義の子モードレッドを生んでおり、このモードレッドが後に反乱を起こしてカムランの戦いでアーサー王と相打ちとなることになります。

モルガンは魔女として知られ、最強の敵としてアーサーの前に立ちはだかります。ランスロットを誘惑したり、聖剣エクスカリバーの鞘(傷を癒やす力と持ち主を不死にする力があり、ある意味剣本体より重要)を盗んだり。これによってアーサーはモードレッドと相打ちになってしまうので、間接的に殺害したと言っても良いかもしれません。三姉妹は多すぎるし、モルガンとモルゴース名前が似ているので同一視されることもあり、前述の「エクスカリバー」ではモーガナがモルガンとモルゴースの役を兼ね、ついでにマーリンを封印する女妖精の役も担っていました。このように多少の脚色や変更はよくあることだし、FGOでアーサー王伝説が日本の若者に広まること自体は結構なことなんですが、オリジナルを歪め過ぎてしまうようなことにならないといいですね。

☆5モルガンを2枚も引いた喜びから話が長くなってしまいましたが、これから本題です。すでに続々と終了している春季アニメの感想をさくっと述べていききましょう。まずは「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω」。2018年夏季アニメの2期となります。

1期は「なろう」系チックなテンプレ異世界ものだろうとあまり期待していなかったら思いのほか面白かったという、良い意味で予想を外してきた作品だったので2期にも期待したのですが…今度は悪い意味で予想を外してきましたね。いわゆる“大人の事情”があるんでしょうが、監督以下の多くのスタッフやアニメーション制作会社も変更されていたんですね。そのせいか、原作やメインキャストは同じはずなのに1期に比べて盛り上がりがないままに終了してしまいました。10話で終了というのもなんだかなあという感じです。

教会の腐敗という話があって、教会の最高権力者である「大主神官」なのに命を狙われるルマキーナをディアブロが助けるという展開でしたが、この教会が駄目すぎ。上層部は腐敗しているのはいいとして、傀儡であっても信仰のシンボルである大主神官をひたすら殺そうとするのはまずいでしょう。捕らえて魔法なり薬なりで洗脳して生かして使っていかなきゃ。教会上層部は一部が腐敗どころか、一部を除いて腐敗しているという状態なので、どうしてそこまで堕ちたのかも謎ですが、それならそれで看板の聖少女は大事にこき使っていかないと。

作画も良くない、バトルもつまらない。お色気も1期に比べて控えめと、正直良いところがありませんでした。人気VTuberの兎田ぺこらみたいなキャラがモブで登場していたのが話題になっていましたが、話題になったのはその程度というのも寂しいですね。ルマキーナはCVが私が今注目している伊藤美来ということもあったので、せめて新たなお色気要員としてもっとセクシーな演出が欲しかったですね。最初は良い感じだったんですが…

1期のサドラーとかアリシアはその悪辣さとか闇の深さがそれなりにしっかり描かれていましたが、2期のビジョスとかバドゥタについては軽すぎましたね。それだけの権力や強さを持ちながらなぜ堕落したのかについて、もうちょっと説得力がある描き方が出来ていれば良かったのに。

続いて「戦闘員、派遣します!」。原作は傑作異世界コメディー「この素晴らしい世界に祝福を!」の暁なつめ。「このすば」より前に「小説家になろう」で連載していたもので、キャラクターも「このすば」のプロトタイプじゃないかと思える者がたくさんいました。

こちらは異世界ではなく他の惑星に転送されているのですが、そこはファンタジー世界そのままだったので、事実上異世界もので問題ないでしょう。主人公戦闘員6号はその名のとおり秘密結社キサラギの下っ端戦闘員ですが、本当は現在の最高幹部3人とともにキサラギを立ち上げた結成メンバーの一人です。なのに卑屈で捻くれた性格が災いしてか、今も末端戦闘員のまま。立ち位置は「このすば」のカズマですが、カズマほど面白いキャラではなく、6号をブラッシュアップしてカズマが出来たんだろうなという感じです。

他のキャラも、それぞれ「このすば」キャラのプロトタイプと言った雰囲気がありますが、やはり「このすば」ほど突き抜けていませんでした。傑作駄女神アクアもこういう試行錯誤の末に生まれたのねということでしょうかね。

伊藤美来が歌うOP「No.6」は非常に良い曲で、なぜ彼女は登場しないのかと思っていたら、終盤に敵である魔族四天王として登場していました。美少年キャラより美少女キャラを演じて欲しかった。しかし、伊藤美来は「好きな声優さん」に取り上げたいと思っていたのですが、見たことのある出演作が少なくて困っていたところ、これで数は揃ったかも知れません。

お次は「転スラ日記」。正式名称は「転生したらスライムだった件 転スラ日記」で、本編のスピンオフ作品です。第2部が分割2クールとなり、前半と後半の狭間で放映されました。つまり9ヶ月連続放映なわけで、制作会社も同じなので、時間稼ぎとしての意味があったのかどうか。

これまでの展開の中でのリムルが作った魔国連邦テンペストでの日常がコミカルに描かれているほか、本編であまり触れられないサブキャラも深く掘り下げられていました。本編では大事件ばかり発生していますが、実際には何もない平和な日々もあったということですね。

特に山があるわけでもない日常系なので、本編だけ見たいという人には冗長かも知れませんが、ファンは面白く見たのだろうと思います。スライムになっても元の世界の年中行事を持ち込もうとするリムルには、もっと異世界に転生したという認識を持って欲しいところです(笑)。生前はおっさんだったので、リムルとしての声は今のまま(CV岡咲美保)でいいとして、モノローグとか回想は「異世界転生」のようにおっさんの声だったらいいのにと思います。そうであれば元の世界への執着も理解できるないではないのですが、転生したスライムの声のままで元の世界を回顧するのはちょっと違和感が。

最後に「聖女の魔力は万能です」。原作は「なろう」系ですが、見て判ったことは、これは女性向けの作品だったんだということ。主人公小鳥遊聖の周囲はイケメンで固められています。本編では聖の思い人は第三騎士団長アルベルト・ホーク一人ですが、乙女ゲーム化させたら、お相手候補はたくさんですね。


魔物の大量発生に悩む王国が打開策である聖女召喚を行ったことで、問答無用で異世界に召喚された聖ですが、なぜか同時に美少女JK御園愛良も召喚されていて、儀式を主宰していた第一王子カイルはなぜか愛良を聖女と決めつけて聖は放置。しかし実際は聖が聖女だったという展開です。


この王子はもの凄い馬鹿なんですが、元々は断罪されて愛良と共に国外追放される予定だったのだそうです。しかし読者に「愛良がかわいそう」という声が多かったため方針を変更したということで、アニメも何とか王子をフォローしようとする描写がありました。…が、それでもまだキッツイですね。聖女扱いをするなら、まずは能力を見定めてからにするべきで、ルックスで判断するなと。アイドルとかモデルのオーディションじゃあるまし。

そんな馬鹿王子に重要な仕事を任せている王国も王国なんで、もっと機構改革した方がいいですね。“君臨すれど統治せず”路線にするとか。それに王様が後になって聖に無礼を謝っていましたが、王国の存亡を左右するような重要な儀式を馬鹿王子に任せている時点でお前もお前だ(笑)。

それはそれとしてホーク団長に恋をして彼を思うと聖の聖女としての能力が発揮されることが発揮されることが判明し、「聖女の魔力は愛です」となったところでアニメは終了。まあいいんですが、どうして魔物が増えるのかとかという問題については原因が究明されませんでした。聖女というのは言ってみれば対症療法なので、元を絶たなければダメだろうと思うのですが。聖女を呼べばその都度危機は回避できるからそれでいいんじゃという考え方もあるかも知れませんが、召喚は不可逆的で問題解決後に帰らせることができないというのが大問題。ブラック企業勤務でお疲れ気味だった聖はともかく、楽しく暮らしていた愛良なんか可哀想の一言でしょう。しかも聖女じゃないとか。なぜ召喚したし。その理由とか原因も全く解明されていません。

この王国は、①魔物が定期的に増える原因をちゃんと究明し、抜本的解決法の有無をはっきりさせる ②聖女召喚について、問題解決後に元の世界に戻る方法を開発する ③そもそも聖女の資質がない人間がなぜ召喚されたかについてちゃんと原因を究明して対策を立てる-といったことをしなければならないと思います。その上で聖女の処遇(待遇だけでなく、異世界知識の付与とかということもちゃんと考えましょう。

異世界転生ものではないですが、やはり女性漫画家が原作の「赤髪の白雪姫」でも思ったのですが、女性作家・漫画家は創造した王国の機構とか軍制といったことにはあまり関心がないらしく、そのせいで抜本的な問題が見過ごされたりします。例えば「ベルサイユのばら」(これに限らない話ですが有名作なので)のような女流作家の漫画では、衣装・髪型・アクセサリーなどは実に絢爛豪華に描かれている反面、武器などの描写はかなりいい加減(画像参照)で、こんな適当な剣や銃を持った軍人にまともな戦闘ができるかとかツッコみたくなったりしたものですが、多分男と女では興味の焦点が違うのでしょうね。SF漫画家としてはアイディアもセンスも超一流の萩尾望都でも、メカ類の描写についてはずいぶんとしょぼくなるんですよね。
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