2020年秋季アニメの感想(その1):ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅢ/魔女の旅々/トニカクカワイイ

天気はとてもいいけど寒い日曜日。いかにも冬日和ですが、やっぱりいつもより寒い気がします。明日は冬至で、以後は段々と昼が長くなっていきますが、この時期の太陽はすぐに引っ込みたがっているかのように低いですね。

2020年秋季アニメも最終回を迎えつつあります。今季は14本も視聴しているので終わった作品からちゃっちゃと感想を述べていかないと年が明けそうです。まあ明けても特に問題はないんですけどね。まずは「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅢ」。

本作の冒険のメインとなる舞台であり、無数のモンスターが跋扈するダンジョン。モンスターは問答無用に人間に襲いかかる敵であり、討伐の対象でしかありませんでしたが、どういう訳か知性を持ち、人語を解する異端のモンスターが出現。

最初に降臨した神にしてダンジョンからモンスターが地上に出ることを防いでるウラノスは、この知性あるモンスター「異端児」との共生を望み、秘密裏に庇護しつつ、異端児の一人である竜女のウィーネと接触した主人公ベル達ヘスティア・ファミリアに協力を要請することに。しかし人間達にとってモンスターは「悪即斬」な対象であり、モンスターを庇おうとするベルには厳しい敵意が向けられることに。それでもベルは…という展開でした。

本作に神々は多数登場し、地上では能力を大幅に制限されていますが、ダンジョンに関しては神々も全容を解明していないという。じゃあ誰が何のために作ったのかという話しですが、神々の先駆者であるウラノスでも知らないということは、これはもうガイアしかないんじゃないかという。ギリシャ神話の地母神ガイアは世界の始まりから存在する原初神で、子であるウラノス、クロノス(ティターン神族)、ゼウス(オリュンポス神族)へと次々と王権を渡しつつ、そのいずれにも不満を持って打倒しようとしてきました。

ウラノスはクロノスに討たれ、クロノスはゼウスに討たれ、ゼウスには巨人族ギガースやギリシャ神話最強の怪物テュポーンが差し向けられましたが、これらは全てガイアの意思によるとされます。ゼウスはこれらに勝って王権を盤石としましたが、もし負けていたらガイアはさらに次の支配者に刺客を差し向けたのでしょうか。それはともあれ、本作のダンジョンというのは、つまりはギリシャ神話のタルタロスなのではないか。

本作を見ていて主人公ベルがどうにも好きになれなかったのですが、第三期に至って、どうやら「リゼロ」のスバル並に嫌いだということが判りました。これは作品が嫌いというのとは違っていて、主人公が嫌いだとどんなに酷い目に遭っていても平然と見ていられるとか、悪役に共感するというか、悪行を大目に見たくなったりするのです。本作ではエルザのように好きなキャラにまでなる悪役は今のところいませんが、今期の悪役ディックスは傍目にはド外道なんですが、ベルを偽善者と呼んだことで私の中では許されました。死んじゃいましたけど(笑)。

本作終盤は異端児をあくまで庇おうとするベルと「モンスター即斬」のアイズの対峙というのがあって、山場でもあったのですが、幼少期から「怪物は必ず殺す」と自らに誓いを立てるなどモンスターに対して並々ならぬ憎悪があったというアイズが割とあっさり引いてしまったような形でがっかりしました。ベルが何を言おうがその“武”で圧倒して異端児を皆殺しにして、強くなければ何も守れないということを改めてベルに知らしめるなんて展開を期待していたんですが…。基本甘々展開だから。

ベルの祖父(育ての)はゼウスらしく、ゼウスのファミリアはかつては最強を誇っていたらしいで、その出自には色々あるんだろうと思われ、ゼウスの舎弟分だったヘルメスを始め、ベルについて薄々感づいているらしい神々の興味を強く引いていますが、特にフレイヤが執着していてヘスティアが懸念していますが、主要な神々はなんだかんだ言っても事情に通じているようなのに、ヘスティアばかりはいつも蚊帳の外というのがなんとも。ともあれ、いずれは第4期制作なんでしょう。

続いて「魔女の旅々」。なんで「旅」じゃなくて「旅々」なのかは最終回に判明しました。ラストで今後重要な役割を持つらしい人物とちょっとだけ出会っていたので、これは第2期制作への前振りではないかと思います。まあ前振りはしたけどその後いつまで経っても第2期が作られない作品もありますけど(笑)。

15歳という若さで魔法使いの最高位「魔女」となった天才にして、自称「絶世の美少女」イレイナが念願であった世界を巡る旅をする物語です。訪れる各地で様々な出来事に遭遇するという物語の基本構造は「キノの旅」によく似ています。師匠の旅のエピソードが入っているあたりもやはり類似しているような。

この世界では結構魔法が普及しており、魔道士→魔女見習い→魔女の順に偉くなる(実力がある)ことになっています。じゃあ男も魔女になるのか、それとも魔道士より先には行けないのか。そういえば強力な男の魔法使いというのは登場しませんでした。

イレイナは幼い頃に読んだ「ニケの冒険譚」で旅する魔女に憧れましたが、それが師匠の師匠、すなわち自分のママンの作であることはなるべく考えないようにしているようです。途中全然気づいていないかの振る舞いがありましたが、さすがにそこまで鈍くはなかったか。そもそも若き天才が忌避されて誰も師匠になってくれなかった頃、都合良くフランがやって来たあたりで感づきますよね。というか、ママンが師匠になってはいけなかったのでしょうか。

エピソードは基本各話読み切り方式で、順番が入れ替わってもあまり問題はなさそうですが、エピソードにより落差が激しいというか、ほのぼのまったり系とダーク系が混在しているので、視聴者は毎回「今度はどっちだ?」とある種の緊張に包まれます。私はダーク系も嫌いじゃないのですが、人によってはイレイナが問題を放置して去っているように思ったりするかも。個人的には、旅人は基本、火の粉が飛んでこない限りは「あっしには関わりのねえことでござんす」(by木枯らし紋次郎)でいいと思いますが。むしろドラクエとかは旅先でのトラブルに首を突っ込みすぎなんですが、それも勇者の義務なのかも知れません。魔女も強大な力を持っているのでもっと積極的に首を突っ込めと言う人の気持ちもわからなくはないですが。

OP[リテラチュア」がとても良い曲で、歌っている上田麗奈も登場しないかなと思っていたら、非常にヤバイ役で登場していました。でもヤバイ役の方が輝くのがこの人の才能。憑依系声優の面目躍如ですな。


本作で一番ヤバいエピソードは9話の「遡る嘆き」になるんでしょうかね。グロテスクな描写がある旨の注意喚起テロップも出ていたし。イレイナも報酬の金貨を持っていることも忘れるほどの衝撃を受けていたし。でも想像力をかき立てると、一番ダークなのは4話の「民なき国の王女」なんじゃないかと。全てが終わった後のミラロゼの狂気の笑いがコワイ。


あと3話後半の「瓶詰めの幸せ」もなかなかにダークなのと、前半の「花のように可憐な彼女」と同様、イレイナが問題を放置して去っているかのような表現だったので批判もあったようですが、私は嫌いじゃないです。ゲストキャラながら、薄幸の女奴隷ニノを演じる佐藤聡美は非常に良かった。声質的に穏やかな性格のキャラが振られることが多いですが、「俺妹」の地味子こと田村麻奈実がキレた時がとっても恐かったように、「豹変」がしっかり演じられる人なのです。ニノはきっと村長さんにたっぷり可愛がられていますよ(性的な意味で)。

ちなみに登場する魔女達は、それぞれ「○○の魔女」といった二つ名を持っています。例えばイレイナは「灰の魔女」。師匠のフランは「星屑の魔女」。フランの姉妹弟子のシーラは「夜闇の魔女」。なんかそういう二つ名で「まどマギ」を思い出すのは私だけでしょうかね。

最後に「トニカクカワイイ」。先に結婚してそれから恋愛を始めているかのような初々しいカップルの「新婚生活」が描かれる本作。感想は「とにかく可愛い」に尽きますね。あ、お嫁さんの司が、ですが。

だがまあ「だんな様」(司はそう呼ぶ)の由崎星空(なさ)がダメということではなく、この人だから司が嫁さんになったんだろうなということは良く判ります。というかお嫁さん愛に満ち満ちていていいです。某多目的トイレの誤った使い方をした芸人とかは見習った方が良いでしょう。

日常系作品なんですが、司にはいろんな謎があります。基本病気も怪我もしない(本人談)ことや、16歳の容姿のままで1000年以上生きてきたかのような言動。以前住んでいた家の司の部屋にあった「月の石」(莫大な金を払ってNASAから借りてるらしい)。詳細は不明ですが月に還り損ねたかぐや姫とでもいう感じか。それとも異星人で月に壊れた宇宙船でもあるのか。もしかするとクトゥルー系という可能性も…


しかしそれにしては司の感性とか考え方は実に女の子らしくて、クールを装っているけど基本ものすごい照れ屋なのがいいんですよね。テレビ・映画・アニメ・ゲームが好きというオタク的な一面もあり、深夜のサービスエリアでテンションが上がり、なにげに料理が得意。人付き合いができないタイプかと思いきや、星空の両親や知り合いの有栖川家の人々とも打ち解けており、もうこれはお嫁さんにするしかないでしょう。

というか、星空は一見変人なんですが、周囲の人々に愛されていたんですね。有栖川家にとっては銭湯経営立て直しの立役者だから当然かも知れませんが、両親にも有栖川家にも「星空を助けてくれてありがとう」と感謝されています。出会いの際、星空を庇ってトラックに轢かれていたし、庇われた星空にして満身創痍状態だったので、司のダメージたるやいかほどか。でもほぼ無傷だったんで不老不死なのかも知れません。

結婚しているのにお互い初々しいままで見てる方が照れてしまうようなぎこちなさが良かったのですが、終盤に来てやたら星空が積極的になり、やたらキスとかし出すようになっていくのは、そこはそれやはり思春期のオノコだからでしょう。というか、司ちゃんは1000年(それ以上かも)生きてきて処女なんでしょうか?今回初めて好きになれる人と出会ったというのでしょうか。



作画が非常にシンプルで、もしかして作画崩壊してるんじゃと思うような時もあるんですが、そういう作風だからと言われれば丸め込まれてしまうような、そういう絵柄です。原作者畑健二郎が結婚した頃に本作の連載が始まっていますが、嫁さんである声優浅野真澄も星空の母の役で出演。この二人は以前にも一緒に同人サークルを立ち上げていて、作品「それが声優!」はアニメ化されています。

司のCVは今一番売れていると思われる声優鬼頭明里。「安達としまむら」でも主演を務めていますが、作品は置いておいて、キャラ的には司の方が圧倒的に魅力的。といか安達はルックスはともかく内面が陰キャな男そのものなんですよね。その点司は内面がいかにも女の子らしいというか、男が好きな女の子という感じなので、勝負にならないとも言えますが。あ~こういうお嫁さんが欲しい。それにしても絵が上手いな鬼頭さん。

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