記憶に残る一言(その130):吉備真備のセリフ(ツギハギ漂流作家)

先週はそろそろストーブ出さないとな、なんて思っていたのですが、今週はやたら暖かかったですね。というよりもむしろ少し暑うくらいだったり。小春日和ならこの時期にふさわしいのですが、小夏日和といいたくなります。それなのにコートを着て汗をぬぐっている人達、天気予報はちゃんと見ましょうよ。

さて前回の記事で「ジャンプ打ち切り四天王」という話題が出たので、その流れで今回も記憶に残る一言です。四天王の一角「ツギハギ漂流作家」から、主人公吉備真備のセリフを紹介したいと思います。

「ツギハギ四天王」は「週刊少年ジャンプ」に2006年10号から30号まで連載された西公平の漫画です。ジャンル的にはバトルものになるそうです。最近は知りませんが、昔ジャンプには10週ルールというのがあって、人気が出ないと10週で打ち切られるという厳しい掟がありましたが、20週連載されたのならそこまでではないようにも思えますが…

全出版物の95パーセントを「漂流録」という冒険譚が占める世界で、漂流作家編集者と共に世界中を旅し、未開の地の冒険を「漂流録」として書き著しています。本作は、「漂流録」の神様と言われるフジワラ・ノ・フヒトの弟子を自称する漂流作家・吉備真備が、秘境を旅する冒険活劇です。
フジワラ・ノ・フヒト(=藤原不比等)、吉備真備って、日本史かよ。それ以外にも橘諸兄、物部守屋、大伴継人など、漂流作家や編集者は日本史の登場人物の名前を冠していることが多いようです。

史実の吉備真備は遣唐使留学生として18年間も唐で学び、帰国後は異例の昇進で従八位下から正二位右大臣にまで駆け上がるという、奈良時代の豊臣秀吉のような人物です。玄宗がその才を惜しんで帰国させなかったために唐に18年にいたとか、帰って来るときに九尾の狐も同船していたとか、兵法や陰陽道の祖であるとか、様々な伝説を持っています。

本作の吉備真備は名前以外は特に史実と関わりがなく、ツギハギだらけの服を着ており(だからツギハギ漂流作家なのか)、武器は傘。漂流録にかけては雄弁で自身の考えを持っていますが、空気が読めない上に口が悪く、しばしば不謹慎な発言をする人物です。

「どこかの海賊漫画みたいなキャラで、どこかの未開のものを追い求める漫画みたいな展開」「主人公を始め登場人物が不愉快」「不条理さと理不尽さが漫画全体を覆う」「キャラがパクり」などと評されるなど、評判は良くなく、単行本な全3巻ということなので堂々たる打ち切り作品です。

ですが、最終話で吉備真備が放ったこのセリフだけは本作唯一にして最大の名台詞として評価されています。

これの前にはこういうことを言っています。

不愉快な主人公という評判とは裏腹に、良いこと言っているじゃないかと思いますが、実はこれ、どういうシチュエーションで放たれたセリフなのかと言えば、猫嫌いと犬嫌いに分かれて本気で殺しあってる村人を止めるための叫びなのだそうです。なんだこれは…たまげたなぁ。どういう村だよ(笑)。

この吉備真備というキャラ、「ONE PIECE」の主人公モンキー・D・ルフィに似ているとかパクリとか言われてきました。容姿はそこまで似てないように思えますが、これを言い放ったコマの部分だけ切り取ると確かに似ていますね。

そのためこのセリフをルフィに言わせるコラ画像が作られて流布し、本作の知名度の低さと相まって、本当にルフィが言った台詞と勘違いする人達が増えていきました。実は私もてっきりルフィが言ったセリフだと思っていました。いかにも言いそうな雰囲気ありますしね。

2014年に発売されたPS3用アクションゲーム「ジェイスターズ ビクトリーバーサス」は、歴代のジャンプヒーローが登場して闘いますが、当然ルフィも登場。

それはいいのですが、このゲーム中でなんとルフィがこのセリフを発してしまうという事態が。コラだと知っていてわざとやったのか、コラ画像を本物と勘違いしたものか。
その後のアップデートで即刻削除されたそうですが、証拠はこのとおり残っています。CV田中真弓は妙だと思ったりしなかったんでしょうかね。やはりルフィなら言いそうと思って流したとか。

さらにコラは拡大しており、こちらはフリーザ編。ぶち切れてるフリーザ様ですが、フリーザはこんなこと言わないでしょう。

こちらは遊戯王編。闇遊戯なら相手をディスりながら言いそうな気も。

ルフィのセリフと誤解したまま、こんな文章を書く人も。このセリフが好きでも嫌いでもどっちでもいいのですが、出展はしっかり確認しておきましょう。「ONE PIECE」作者にとっては熱い風評被害だ(笑)。

河出書房新社の「レンタルなんもしない人」というペンネームの人が書いた「〈レンタルなんもしない人〉というサービスをはじめます。」という新書の一節だそうですが、Amazonのレビューでもしっかり指摘されています。そりゃそうだ。

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