記憶に残る一言(その127):サラリーマンとフリーターのモノローグ(白○屋コピペ)

秋の彼岸に入りました。暑さ寒さも彼岸までと言います。確かに今日は暑さも収まって過ごしやすいのですが、昨日はやたら暑かったですね。もう冷房は使いたくないんじゃ~とぼやきながらエアコンのおやすみタイマーを入れましたよ。あれが冷房の使い納めならいいんですが。

本日は「記憶に残る一言」ですが、ネットでよく見かけるコピペを紹介したいと思います。2000年初頭のフリーター全盛期に誕生した通称「白○屋コピペ」です。本来は実在の居酒屋の名前が入りますが、問題なのは居酒屋ではないので、多分バレバレでしょうけどあえて伏せ字にしました。それにしても今回は全然「一言」じゃないですね。

バブル景気の頃は、高度成長期のようなガムシャラに働くサラリーマンにはなりたくないと、自由を求めてフリーターになった人が沢山いました。メディアも有名俳優を起用してフリーターのドラマを作ったりして、当時は「カッコイイ、オシャレな生き方」としてもてはやされたりしていたのです。何しろ景気がいいので職探しに困ることがなく、バイトで金を貯めてある程度貯まったら海外を放浪し、金が無くなったらまたバイトして稼げというようなことも余裕で出来たようです。

しかし、その後バブル景気はあっけなく崩壊し、その後は想像以上に社会が不景気に陥り、正社員になりたくてもなれないという就職氷河期が到来します。このコピペが登場したのは、“バブル景気から10年”といった時代です。もう青春が終わろうかというサラリーマンとフリーターの話ということになります。まずはサラリーマン視点。

なあ、お前と飲むときはいつも白○屋だな。
一番最初、お前と飲んだときからそうだったよな。
俺が貧乏浪人生で、お前が月20万稼ぐフリーターだったとき、おごってもらったのが白○屋だったな。
「俺は、毎晩こういうところで飲み歩いてるぜ。
金が余ってしょーがねーから」
お前はそういって笑ってたっけな。
俺が大学出て入社して初任給22万だったとき、
お前は月30万稼ぐんだって胸を張っていたよな。
「毎晩残業で休みもないけど、金がすごいんだ」
「バイトの後輩どもにこうして奢ってやって、言うこと聞かせるんだ」
「社長の息子も、バイトまとめている俺に頭上がらないんだぜ」
そういうことを目を輝かせて語っていたのも、白○屋だったな。
あれから十年たって今、こうして、たまにお前と飲むときも
やっぱり白○屋だ。

ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。
別に安い店が悪いというわけじゃないが、
ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。
油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない。
なあ、別に女が居る店でなくたっていい。
もう少し金を出せば、こんな残飯でなくって、本物の酒と食べ物を出す店をいくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺たちは?
でも、今のお前を見ると、
お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの千円札三枚を見ると、俺はどうしても「もっといい店行こうぜ」って言えなくなるんだ。
お前が前のバイトクビになったの聞いたよ。お前が体壊したのも知ってたよ。
新しく入ったバイト先で、一回りも歳の違う、
20代の若いフリーターの中に混じって、 使えない粗大ゴミ扱いされて、それでも必死に卑屈になってバイト続けているのもわかってる。
だけど、もういいだろ。
十年前と同じ白○屋で、十年前と同じ、努力もしない夢を語らないでくれ。
そんなのは、隣の席で浮かれているガキどもだけに許されるなぐさめなんだよ

20年近く前の古いコピペなんですが、今なお破壊力抜群という噂です。正直白○屋に対する熱い風評被害という感じもしないではないです。“ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ”“油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない”なんてあたりはちょっと表現が酷すぎる気がします。というかこのサラリーマン、10年でずいぶん変わったんですね。

私も白○屋ではありませんが、昔「天狗」というやはりチェーン居酒屋が大好きで、「10年経ったら入って5万、座って10万の銀座の高級クラブとかで飲んでるのかなあ」なって夢想したりしたものですが、10年経ってもやはり「天狗」で飲んでました。が、別にイヤじゃなかったし、出てくる酒や料理を「色付きの汚水」とか「油の悪い不衛生な料理」とか思ったこともありませんでした。これは10年経っても生活水準が変わらなかったということなんでしょうかね(涙)。安西先生に言われてしまう。

有名なのはここまでなんですが、最近フリーター視点からのコピペがあることを知りました。以下のようなものです。
なあ、お前と飲むときはいつも白○屋だな。
一番最初、お前と飲んだときからそうだった
あの頃は浪人生でバイトもロクにできないお前に良くおごってやったっけ。
良い大学出て良い会社入る事だけが幸せか?
俺は目の前で得れる金しか興味ないって言うと、苦笑いしながら哀れんでたな、おごって貰ってる身分で。
お前が入社した頃はまだ景気も良くてバイトの俺のが稼いでたな。
あれから十年たった時も、たまにお前と飲むときもやっぱり白○屋だった。
ここ何年か、こういう安い居酒屋に来るのは俺と一緒のときだけだとお前言っていた。
俺が頼んだ安いツマミには一切手を付けず、ジョキのビールさえ飲まずお前は瓶ビールだけを飲んでたな。
何が入ってるか判らない、これは本物の酒と食べ物じゃないと訳の判らないことを言っていた。
一流企業に入社して残業が大変なのかノルマが厳しいのか知らんがちょっと神経質、いや精神病気味に見えて心配したもんだ。

確かにサラリーマンの白○屋をディスっている部分は病的な感じがあって、フリーターの言うことももっとものような気もします。それにかつてはフリーターに奢って貰っているんですよね。浪人時代はきっと「色付きの汚水」や「油の悪い不衛生な料理」を美味い美味いとむさぼっていたはずです。それを考えたら、こんな安い居酒屋イヤだというのなら、強いて割り勘にしないで高級店連れていって奢ってやれよと思ってしまいます。
まあこのコピペのキモはそこではなく、末尾の「十年前と同じ白○屋で、十年前と同じ、努力もしない夢を語らないでくれ」という部分なんだろうと思います。そして、ここが現在のフリーターにも刺さるのだろうと思います。

もちろん一口にフリーターといっても何種類か類型があって、大まかには「モラトリアム型」「夢追求型」「やむを得ず型」の3タイプとなるそうです。「モラトリアム型」は最も多いタイプで、「フリーターとなった当初に明確な職業展望を持っていなかったもの」を指します。春アニメ「イエスタデイをうたって」の主人公リクオなんかがこれですね。フリーターになる直前に所属していたのが教育機関であったか、職場であったかによって、さらに「離学」と「離職」に分けられます。ならリクオは離学モラトリアム型フリーターだ。なんか格好いいぞ(笑)。

「夢追求型」は、「芸能関係の職業、もしくは職人・フリーランス型の職業につきたい」という、明確な目標を持っているタイプで、やはり「イエスタデイをうたって」でいえばバンドをやっている木ノしたさんが該当すると思います。目指す職業のタイプでさらに「芸能志向型」と「職人・フリーランス志向型」に分けられます。木ノ下さんは芸能指向型ですね。

最後の「やむを得ず型」は、「本人の意欲とは別の、労働市場の悪化や家庭の経済事情、トラブルなどの事情からフリーターを選択」したタイプです。「イエスタデイをうたって」でいうとヒロインのハルがこれに近いでしょうかね。フリーターになった事情から「正規雇用志向型」「期間限定型」「プライベート・トラブル型」に分けられるということで、ハルはまさに「プライベート・トラブル型」。

2016年の調査では一番多いのがモラトリアム型で5割近く、次がやむを得ず型で4割強、一番少ないのが夢追求型で1割弱となっています。夢追求型は2000年の調査では3割近くを占めまいたらしいので、激減しているんですね。日本には夢がなくなったのか…。コピペのフリーターはどのタイプだったんでしょうか。「努力もしない夢を語らないでくれ」というセリフから、夢追求型だったのかな、なんて感じますが、いつしか夢を追う努力を忘れてしまったのか。

なんとさらに続編があって、前出のコピペからまた10年が経過した後のサラリーマン視点です。
仕事帰り、信号待ちでふと目をやると若者ふたりが騒いでいる。
どうやら後ろに見える白○屋から出てきた友人同士のようだ。
ふたりとも、顔を赤くして悩みのなさそうな笑顔を浮かべている。
そんな光景が俺を10年前の白○屋に連れ戻す。
向かいに座った友人は30代にしてフリーターを続け、
先の見えない人生を送っていた。
思えば、彼は俺が貧乏学生の頃にメシをよくおごってくれた。
それは彼にとって自己顕示欲を満たすためのものだったかも知れないが、それでも
貧しかった当時の俺には本当にありがたかった。
だが俺はその頃仕事が軌道に乗り、ちょっとした「勝ち組」気分に浮かれ、目の前で現実に打ちのめされたような友人を見下し、侮辱し、突き放してしまった。
彼はヨレヨレの千円札3枚をテーブルに置くと「はは、そういえば仕事があった…」
と呟くように言い、恥じるような、堪えるような表情で席を立った。

それから彼には会っていない。もっていた携帯も解約されたようだ。
若者コンビがこちらを指さしながら変わらぬ笑顔で騒いでいる。
これからの人生はきっと平坦ではないだろうけど、
それでも今を楽しむことに罪はない。
俺はきっと10年前のあの日を後悔している…
信号が青になり、我に返った俺はアクセルを踏み込む。
ガヤルドのエンジンから強いトラクションを感じつつ鋭く加速する。
白○屋の看板と若者コンビはあっと言う間に遠ざかる。
目の端に映るミラーの中で点になったのはあの頃の俺達だった。

ガヤルドってランボルギーニ…。どんだけ成功したんだサラリーマン。いや、独立して成功した青年実業家といった感じでしょうかね。しかし乗れないから僻んで言うわけではありませんが、40過ぎて乗りたい車でしょうかね。ベンツとかアウディ、BMWあたりの高級セダンならともかく。なおガヤルドは2013年で製造終了となって、後継車種はウラカンになっているので、2013年頃までに作られたコピペなのかも知れません。

「10年前のあの日を後悔している」ということですが、「目の端に映るミラーの中で点になったのはあの頃の俺達だった」の「あの頃の俺達」は、20年前の貧乏浪人生時代のことでしょうね。

フリーターでも一人扶持くらいはなんとか稼げるんでしょうが、生涯賃金とか福利厚生とかがサラリーマン(まあブラック企業とかもありますから一概には言えないんでしょうが)とだいぶ違うし、大体フリーターだと結婚とか家族を養うとかがかなり苦しそうです。岩田剛典が「一緒に暮らそう。俺、正社員になる!」と叫んじゃう訳です。前もツッコみましたが、「なる」じゃなく「なって」から言えよと思いますが。
スポンサーサイト