記憶に残る一言(その126):菊川仁義のセリフ(男坂)

今日もちょっぴり秋の気配。筑波嶺の原野にはヤマゴボウ(ヨウシュヤマゴボウ)が色づき始めています。

私はかつてこれをヤマブドウ(上の画像)だと思い込んでいたんですが、全然別種でした。ちゃんと比較すれば確かに違いますね。そりゃヤマブドウが道ばたにはねーよな(笑)。それどころか、ヤマブドウの偽物というだけでなく、有毒だし果汁は肌や衣服に付くとなかなか落ちないし、いいところがない帰化植物でした。なるべく近寄らないようにしましょう。

本日は記憶に残る一言です。車田正美の「男坂」から主人公菊川仁義のセリフを紹介しましょう。作中最後のセリフでもあります。

車田正美は今も執筆活動を続けている現役の漫画家ですが、若い頃は大ヒット漫画家でした。20代で「リングにかけろ」が大ヒットし、その後も「風魔の小次郎」「聖闘士星矢」と黄金期のジャンプの看板漫画家の一人として活躍していました。

「リングにかけろ」は序盤は地味で現実的なボクシング漫画でしたが、途中から路線を大きく変更し、現実のボクシングとはかけ離れた必殺技を撃ち合う技荒唐無稽な超人ボクシング漫画になってしまいました。「しまいました」なんて言ったらしくじったみたいに聞こえますが、実際には大成功で、ジャンプの看板漫画になり、車田自身が「集英社ビルが改装出来たのも『ジャンプ』が300万部突破出来たのも『リンかけ』人気のおかげ」とネタで言い放つほどでした。

私はジャンプのバトル路線の嚆矢は「アストロ球団」だと思っていますが、必殺技の応酬という展開を確立したのは「リングにかけろ」だと思います。大ゴマや見開きが多いせいで、20ページ近くあってもすぐに読み終わるとか、最初の頃は一応原理を説明しようとしていた必殺技(スーパーブロー)も、そのうち技名を叫ぶだけで問答無用で相手を吹き飛ばすようになったりと、当時からネタとしていましたが、嫌いだったかといえばそんなことはなく、大好きでした。

「男坂」は1984年から85年まで連載されました。前作は「風魔の小次郎」、後作は「聖闘士星矢」というビッグネームに挟まれています。単行本は全3巻。それってつまり…と言いたくなる気持ちは判ります。そう、はっきり言って打ち切りでした。

連載にあたって車田は「構想10年」「この作品を描くために漫画屋になった」と言い切るほどの意気込みを見せていましたが、わずか半年ほどで打ち切り。学ラン忍者が超人的忍術や聖剣で戦う「風魔の小次郎」、聖闘士が超人的奥義を繰り出す「聖闘士星矢」に比べ、本宮ひろ志の「男一匹ガキ大将」に近い喧嘩バトルの本作は、非常に地味に映りました。やはり車田漫画にはファンタジーが必要なんですよ。

少年達が世界中で軍団を作っていて、トップをドンと呼び、世界各国のジュニアのドンがジュニア・ワールド・コネクション(JWC)というのを結成していたりと、荒唐無稽さは他作に劣らないのですが、「男一匹ガキ大将」的世界はやはり80年代では古くさくなっていたということでしょうか。

仁義のライバル、西日本最大の勢力を持つ武島将という「リングにかけろ」の剣崎順っぽいキャラも登場しましたが、最終的な決着を見ることなく終了。

当時車田作品のパロディ漫画(「リングにまねろ」とか「風魔のセ小次郎」とか)を伝説のアニパロ雑誌「ファンロード」で書いていた島村春菜という人がいたのですが、同姓同名のキャラが仁義の幼なじみのヒロインとして登場していました。ジャンプ読者の9割以上は知らなかったでしょうけど、こういう公私混同がいけなかったのか(笑)。

西日本を手中にしている武島将に対抗すべく、勢力がまとまっていない東日本統一を図る仁義でしたが、関東、会津と押さえて東北・北海道のドン神威に会いに行くというところで物語は終わるのですが、最終回最後の見開きに書かれたセリフが今回の記憶に残る一言です。「オレはまだのぼりはじめたばかりだからな。このはてしなく遠い男坂をよ…」。そして傍らには「未完」の文字。

その後ファンタジー色満点で連載した「聖闘士星矢」が大ヒットした車田御大ですが、その次の「SILENT KNIGHT翔」は13週で打ち切りということになり、以後車田御大はジャンプとの専属契約を解消し、他社各誌で連載するようになりました。


「SILENT KNIGHT翔」はあまりにも「聖闘士星矢」の二番煎じ色が強かったからなあ…

なお「未完」から30年が経過した2014年、ウェブコミックでまさかの連載再開となっています。連載当時の時代設定は踏襲されているので、相変わらず冷戦体制下の世界で男坂を登りまくっている模様。

それではパロディを。まずは「魔法少女まどか☆マギカ」編。2011年の本放送当時、東日本大震災により、終盤の11話と12話が放送延期となりましたが、もし10話で打ち切られていたらこうなったんじゃないかという。確かにほむらのまどか坂も果てしなく遠かった…


便秘改善に苦労している人の漫画のラスト。嫌な坂だなあ…

Fateシリーズの大ヒットですっかりビッグネームになったTYPE-MOONが同人サークル時代に制作した「月姫」の脇役・弓塚さつきらが、正ヒロインの座を巡って下剋上を起こす「路地裏さつき ヒロイン十二宮編」というアドベンチャーゲームのオチ。「真月譚 月姫」でTYPE-MOONの存在を知ったなあ…(遠い目)。

アニメでは生存していましたが、ゲームでは殺害されて吸血鬼化しました。専用ルートが用意されるはずが、諸般の事情でカットされてしまった不幸キャラで、不遇キャラとしてたびたびネタにされています。良いキャラなんですけどねえ…
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