高松旅行記②:私の「屋島作戦」

昨日処暑を過ぎましたが、朝夕はちょっと過ごしやすくなってきた気がします。気候よりも時の移ろいを明確に示しているのは日の入りで、夕方の気配がだんだん早まってきました。早く涼しくならないかなと思いますが、夏が過ぎ去るのを感じるのも寂しいものです。


さて昨日の続きで高松旅行記です。二日目は屋島へ。当初は金刀比羅宮を考えていたのですが、この猛暑の中、800段近い階段を上り下りするのは敗北を知りたい最凶死刑囚くらいだとある人から忠告されまして。

階段は好きな方なんですが、とにかく今年一番クラスの猛暑。無理に挑んでも多分こんな風にディスられるのがオチですね。ということで日和って行き先を変更しました。

屋島はその名のとおりかつては島でしたが、現在は浅い海が埋め立てられて陸続きになっています。屋根のような形状から屋島と名付けられました。周辺は風化に弱い花崗岩ですが、屋島は安山岩に覆われていて大地として残ったようです。

ホテルからは瓦町駅まで歩いて高松琴平電気鉄道(通称ことでん)の志度線に乗って琴電屋島駅へ。駅を出るとすぐそばに屋島山上行きのことでんバス屋島山上線のバスが待っていました。もちろん徒歩で上ることも可能なんですが、屋島は一番高いところで292メートルあり、山上まで登ったら金刀比羅宮行きとあまり変わらない気がしたので、ここは文明の利器を使わせて貰いましょう。

シャトルバスは100円で、屋島スカイウェイを登っていきます。以前は有料道路だったそうですが、2017年7月に無料化されました。

山上でまず向かったのは屋島寺。京都の仁和寺を総本山とする真言宗御室派の寺院で、四国八十八箇所霊場の第八十四番札所でもあります。奈良時代の開創ですが、弘法大師空海が場所の屋島の北嶺から南嶺に移したそうです。国有林を除くと、屋島山上の敷地のほとんどは屋島寺が所有しているそうです。

敷地には「瑠璃宝の池」という池がありますが、別名はなんと「血の池」。源平合戦の武士たちが血の付いた刀を洗ったことからそう呼ばれるようになったそうです。今は全く血の色はありません。

境内には芭蕉の「夏艸やつはものどもの夢の跡」という句碑がありましたが、これって平泉で詠んだ句では…。屋島も古戦場だからということでしょうか。

屋島といえば有名なのが治承・寿永の乱、いわゆる源平合戦の戦いの一つ、屋島の戦いですね。1185年3月、源義経は小勢で四国に渡り、陸側から強襲しました。周辺の民家に火をかけて大軍の襲来と見せかけたこともあり、海上からの攻撃のみを予想していた平氏軍は狼狽し、船で海上へ逃げ出します。その後源氏側が小勢であることを知った平氏側は船上から反撃を行い、激しい矢合戦となりました。

夕刻になり休戦状態となった時、平氏側から美女の乗った小舟が現れ、竿の先の扇の的を射よと挑発してきたのに対し、下野国の武士・那須与一が見事射貫き、両軍が賛嘆したという風流というか悠長というかというエピソードは有名ですね。

ちなみに「新世紀エヴァンゲリオン」第六話「決戦、新第3東京市」で第5使徒ラミエルを撃破するべく行われた「ヤシマ作戦」の名前は、作戦が超長距離狙撃であったことから、屋島の戦いの上記エピソードを由来としています。


屋島の陥落により、平氏は四国における拠点を失い、その頃既に九州は義経の兄・範頼の大軍が制圧していたため、平氏は孤立してしまいます。そして義経は水軍を編成し、最後の決戦である壇ノ浦の戦いに臨むことになります。見事平氏を滅亡させたヒーロー・義経も、数年後には奥州・衣川で没することになりますが、それはまた別のお話。

猛暑にめげつつ、周辺を散策。新屋島水族館がありました。海はすぐそばとはいえ、標高約300mの山上にあるという珍しい水族館です。館内は涼しいかも…とそそられましたが、おっさんが一人で水族館というもどうかと(いや、全然問題ないんですけどNE!)思ってパス。

屋島の戦いの舞台を眼下に望める談古嶺展望台。小豆島、五剣山なども一望できる屋島三大展望台の一つです。明治30(1897)年に源平の武士達を偲んで命名されたというので、そんなに古いものではありません。

ヒャッハーな輩に壊された旅館(ホテル甚五郎)がありました。おそらくヒャッハーが襲撃してこうなったのではなく、つぶれた後にヒャッハーが来たのだと思いますが。後で調べたら2002年倒産ということで、結構年季が入っていました。廃墟ホテルとして結構有名なんだそうです。心霊スポットという噂もありますが、何しろ暑くてヘロヘロだったので何も感じず通り過ぎました。

再びバスに乗って麓にある四国村へ。日本の江戸時代から明治時代の民家を中心とする古建築をテーマとする博物館で、1976年開館。とにかく敷地が広大で、ほぼ全ての建造物が文化財の指定・登録を受けているそうです。料金は千円。

ヘロヘロついでに中を歩きますが、入り口のかずら橋(吊り橋)でめげてしまいました。手すりはあるので下には落ちないにしても、足がずぼっとはまりそうで。7,8歩進んで転進しましたが、迂回路があるので平気です。

いろんな古民家を見て回りますが、スズメバチらしき大型の蜂が威嚇するように飛んできたりしてビビりまくりました。暑さもあって全部は見きれませんでしたが、7,8割方は見ましたかね。

琴電屋島駅と屋島山上を結ぶバスは四国村にも停まるのですが、屋島駅からだと歩いても数分という距離なので、利用者はもっぱら山上から降りてきた人でしょう。敷地が広いせいか、コロナウイルスのせいか、とにかく人気が少ないです。高松が全般的に人気が少なかった気もしますが(笑)。

昼時を過ぎたので昼食。昨日に続いて讃岐うどんでもいいのですが、骨付鳥も高松名物なんだそうです。知人にお勧めされた一鶴という店が琴電屋島駅のすぐそばにあったので入ってみました。本店は丸亀で、創業1952年、以来骨付鳥一筋だそうです。

鶏もも肉をまるごと一本、独自のスパイスで味付けして蒸し焼きにしています。“おやどり”と“ひなどり”が選べますが、ここは大きめなおやどりを選び、炊き込みご飯のとりめしも注文。そして生ビールと、一鶴推奨三点セット。豪快にかぶりつくのが正しい食べ方だということで、やらせていただきました。大変美味しいですが、初々しいカップルの初デートには向かないかも知れません(笑)。骨付鳥にかぶりつく姿を見せ合ってこそ本物なんでしょうけどね。

高松、いいじゃないですか。次に来るときは夏以外にして、今度こそ金刀比羅宮を訪ねたいですが、讃岐うどんと骨付鳥はまた味わいたいですね。
スポンサーサイト