まちカドまぞく:遅れて見た2019年夏季アニメの傑作

ようやく秋になりましたが、台風が過ぎて突如秋になったという感じで、布団は出すわ長袖は出すわで一人で大騒ぎでした。すっかり日暮れは早くなっているのですが、暑い間はそんなことにさえ気づかずにいたような気がします。

さて本日は2019年夏季アニメだった「まちカドまぞく」を紹介したいと思います。視聴予定にも入っていなかった作品ですが、ネットでの噂を聞きつけて先日の三連休で一気見したところ、やはり私の鑑識眼は海のリハク並みだなあと改めて痛感しましたよ。

「まちカドまぞく」は芳文社の「まんがタイムきららキャラット」で2014年から連載中の伊藤いづもの四コマ漫画が原作です。同社の“萌え四コマ”というべき「きらら」系は、長女格の「きらら」を筆頭に、「きららキャラット」「きららMAX」「きららフォワード」「きららミラク」と五姉妹で隆盛を極めていますが、アニメ化作品も多数あります。「きららキャラット」からは「ひだまりスケッチ」「けいおん!」「キルミーベイベー」などがアニメ化されています。

アニメ化作品が多いので、アニメの分類として「きらら系」という言い方があります。基本的にゆるい少女たちの日常を描いた作品の総称のようになっており、異世界転生ネアが多い「小説家になろう」投稿作品のアニメ化が「なろう系」と言われているのと双璧みたいになっています。上記「ひだまりスケッチ」「けいおん!」の他、「ご注文はうさぎですか?」や「ゆるキャン△」も「きらら系」で、結構人気の高い作品が多いですね。流石に萌え系四コマ誌はおっさんには敷居が高くて、「きらら系」五姉妹は買ったことがないのですが、アニメは結構見ていますね。

「まちカドまぞく」は、多摩市ならぬ「多魔市」を舞台に、突然まぞく(魔族)の力に目覚めてしまった闇の一族の末裔である吉田優子が、光の一族の末裔である魔法少女を倒すために奮闘する物語です。いわゆる魔法少女ものとしては、敵方である魔族サイドから描いているという点が異色です。「魔法少女まどか☆マギカ」、多種多様な魔法少女ものが制作されており、ダークな作品も多くなっています。本作も設定自体はダークになりかねないのですが、そこは「きらら系」なのでファンタジー系日常コメディ作品となっています。

母子家庭の吉田家で、貧しいながらも平凡に暮らしていた優子は、ある日魔族に覚醒し、目覚めたら角と尻尾が生えていました。吉田家が貧しいのは、永きに渡る光の勢力との戦いに敗れ続けた結果かけられた多重の呪いのせいであり、そこから脱却するには、宿敵である光の一族の巫女=魔法少女を倒さなければならないということで、早速魔法少女を探しに行くことになります。魔族としての活動名は「シャドウミストレス優子」(笑)。

さて魔法少女はあっさり見つかります。なんと同じ高校の同学年に千代田桃という魔法少女がいたのです。桃は世界を救ったことがあり、ダンプカーを片手で止めるほどのパワーを持つ魔法少女ですが、一方優子は生まれつき病弱で、魔族に覚醒しても人並み以下の戦闘能力しかありませんでした。それでも戦いを挑む優子ですが、勝負の体裁すら整えることができず、桃に戦うための特訓を受けたり、いろんな借りを作り続ける日々が続きます。そんなこんなで次第に親しくなっていく二人ですが…

優子改めシャドウミストレス優子は、長すぎるということで周囲からは「シャミ子」と呼ばれており、学校の先生は「シャドウミストレスさん」と呼んでいます。どうやら多魔市では魔族も魔法少女もちょっと変わった格好しているという程度で普通に受け入れられている様子です。

ドジで空回りばかりしていますが、心優しく真面目で努力家で、普段は丁寧語を使っているなど、見かけ意外に魔族らしさが全くありません。一応魔族として振る舞おうとする時は断定口調になりますが、基本「これで勝ったと思うなよ」という捨て台詞ばかりのような。

シャミ子はへっぽこ魔族ですが、覚醒前は運動を禁止されていたほど虚弱だったそうなので、一応は強化されているようです。夢の中に入る力があるので、魔族としては夢魔になるようです。男性ならインキュバスですが、女性だからサキュバスですね。

サキュバスといえば「ヴァンパイア」シリーズのモリガンのように妖艶な女性として描かれることが多いですし、最近だと「このすば!」に登場したサキュバス達がイメージどおりといった感じでしたが、シャミ子は可愛いし体はそこそこなんですが色気はほぼゼロ。あとコウモリ風の羽も欲しいところですが、残念ながらありません。

中盤以降危機管理フォームという戦闘コスに変身できるようになり、変身すると身体能力が向上しますが、露出が高くてお腹が冷える上、目撃した人を気まずくさせてしまうため、シャミ子は露出狂と間違われることを恐れています。それに向上するといっても五十歩百歩で桃と戦えるというレベルには全然至りません。

一方魔法少女千代田桃は変身後の姿は白とピンクのひらひらしたコスチュームのフレッシュピーチ。そんな可憐な姿とは裏腹にクールでわりと寡黙です。趣味は筋トレのパワー系魔法少女ですが、桃自身に言わせると魔法少女としては弱い方なんだそうです。大きな一軒家に一人で住んでおり、料理は苦手。

シャミ子に勝負を挑まれる桃ですが、桃自身は急激に魔族に覚醒したシャミ子が闇に飲まれて暴走することを心配し、また善良そのもののシャミ子が魔族に非寛容な他の魔法少女に討伐されてしまうことを防ぐために、シャミ子を適度にあしらいながら、彼女を鍛えようとしていました。その一方で図らずも桃自身は弱体化していくことに。

シャミ子は行方不明のパパンが魔族で、ママンの清子は人間でしたがパパンと結婚して闇の眷属になってから老化が止まったということで、やたら若々しい姿です。しゃみ子は姿はパパン似、性格はママン似と思われ、天然でドジな面はそっくり。シャミ子は清子さんが丁寧語で話す影響を大いに受けているようで、親の教育ってやはり大事なんだな~と思ってしまいます。CV大原さやかの素敵ボイスがドはまりしています。こういうママンがいたら最高ですね。

ママンそっくりの妹の良子(揃いも揃って闇の眷属とは思えない名前だ)は9才の小学生ですが、勉強が得意で常にシャミ子や家庭のことを案じている純真で心優しい性格をしています。シャミ子が闇の軍勢を率いて光の勢力に立ち向かう未来を大真面目に信じていて、兵法を学んで姉の参謀役となりたいという目標を持っています。

シャミ子を含めてこの家族が非常に魅力的なのですが、光の一族にかけられた多重呪いのせいで窮乏生活を強いられており、「ぱんだ荘」というボロアパートに住んでいます。アニメに出てくる貧乏一家というと、最近では「ヤマノススメ」の青羽ここなを思い出しますが、吉田家は多分それ以上に貧乏です。なにしろ使える生活費は月4万円までで、この上限を超えて稼いでも、紛失や予定外の出費などにより運命レベルで強制的に4万円になってしまうそうです。それじゃシャミ子や良子の医療費や教育費が非常に危ういわけですが、それは幸い別枠設定になっているとか。

シャミ子の友人には同じクラスの佐田杏里がいて、桃とは同じ中学校に通っていました。ノリの軽い性格で、シャミ子に突如尻尾や角が生えても全く動じず(そういや学校や近所の誰も動じてませんな)、普段通りの付き合いを続けてます。

もう一人、杏里の友人(つまりシャミ子からすると友達の友達)の小倉しおんという人がいますが、これは物語の鍵を握る重要人物な気がします。学年トップの優等生ですが、一人で「黒魔術研究部」を立ち上げており、魔族となったシャミ子に大いに興味を示しており、自作の「魔力がゴリゴリに上がりそうな漢方」を無理矢理食べさせています。これによってシャミ子の魔力は向上して危機管理フォームに変身可能になっているので助けになっているといえばそうなんですが。

常にシャミ子で実験しようと狙っており、杏里が言うにはしおんと会話するときは2メートル離れて武器を構えろとのことですが、本当に友達ですか?学校の部屋や機材を勝手に使用していますが、成績優秀ということで黙認されており、その成績もなぜか倫理だけは点数が良くないそうで、サイコパスなのかも知れません。この人も実は魔族とか何か秘密の正体がありそうですが、本編では最後まで明かされませんでした。二期制作の際にはぜひもっと掘り下げて欲しいですね。

シャミ子には魔族に覚醒して以降、ご先祖様であるリリスがアドバイザーとなっています。闇の一族の始祖で、数千年前に光の一族との苦戦の末に邪神像に魂を封印されていました。桃からは初対面の際に「シャミ子の祖先」を略して「シャミ先」と呼ばれ、それが定着してしまった模様です。

リリスが封じられている邪神像は埴輪そっくりで、吉田家ではそれまで玄関のドアストッパーとされていました。覚醒後のシャミ子はそれなりに大事にしていますが、よく桃に投げ捨てられています。リリスはシャミ子の体に憑依して顕現したこともありましたが、身体能力や魔力はシャミ子のままで変わらなかったため、全く戦力にはなりませんでした。

さらにもう一人魔法少女が。魔法少女としての力が弱まったため、桃が助っ人として呼んだ陽夏木ミカンです。桃同様穏健派の魔法少女で、面倒見が良くて親切ですが、昔巻き込まれた事件の後遺症で、動揺すると「関わった人にささやかな困難が降り注ぐ呪い」が発動してしまいます。もっぱら呪いの直撃を受けるのはシャミ子か桃。なぜ呼んだし。

終盤、清子ママンの告白により物語の真相が明らかになります。シャミ子は強めに魔族の血を受け継いでいた分、呪いの作用が強く出ていたようで、パパンが多魔市を仕切っていた千代田桜(桃の義理の姉)に相談して呪いに干渉して貰った結果、一族の金運を優子の健康運に変換してシャミ子が生きていけるようにし、反面生活費1ヶ月4万円の呪いがかかることになったという。

そして多重にかけられた古代の封印に抗った代償で桜の魔力は減少し、パパンはミカン箱に封印されてしまうことになりました。その段ボール箱、吉田家ではテーブル代わりに鉄板とか土鍋を乗せたり、高いところの者を取るときの踏み台にされてきました。事情を知らなかったシャミ子や良子はともかく、ママンまで…。

ちなみにパパンの名前はヨシュアで、吉田という姓はそれをもじったとか。この告白以前はシャミ子はパパンは原子力潜水空母でイカ釣り漁をしているとか、宇宙戦艦に乗って空気清浄機の買い付けに行っているとか聞かされ、それを疑いもせずに信じていました。良子は頭がいいので刑務所で長いお勤めをしているのではと思っていたそうで、小学生以下のシャミ子の純真ぶりが何とも(笑)。それにしてもパパン…年齢的には相当上なはずですが、見た目完全に「おねショタ」ですな。

なお多魔市はかつて今より殺伐としており、桜が作った結界で魔族を守った結果、光と闇の勢力争いの中立地帯となり、しがらみから逃れた両勢力の人々がゆるやかに共存するようになったそうです。そこがこの物語の舞台となっている聖蹟桜ヶ丘もとい「せいいき桜ヶ丘」。そうか、だから住民達は魔族や魔法少女を見ても動じなかったんだ。

桜が謎の失踪を遂げたので、この町を守る役目を引き継いだのが桃でしたが、自分は上手くやれていないと思っていました。桜はミカンの師匠筋でもありました。桜の姿は本編では出てきませんが、桃の夢の中に出てきた番人(メタトロンの36万5000の目がひとつ)はシャミ子に桜の気配を感じると言っていました。もしやシャミ子の中に眠っているとか?

一期はシャミ子と桃が一緒に街を守っていこうということで終わりましたが、早く二期を制作して欲しいですね。「きらら系」なのでハード展開とかダーク展開はないか、あっても緩いと思いますが、監督とか脚本が交代していきなりオリジナル展開とかは勘弁して欲しいです。でも虚淵玄が入るならちょっとそれは見てみたい気も。「街角魔族/ZERO」とか「まちカドまぞくシャミ子☆マギカ」とかになるんでしょうか。

シャミ子を好演したのは小原好美(こはら このみ)。1992年6月28日生まれで神奈川県出身。、自分の声にコンプレックスを抱えていたが、洋画の吹き替えをきっかけに声の仕事に興味を持ち、当初は女優としてテレビや映画に出演していましたが、2016年に声優に転進しました。

愛称は苗字と名前の頭文字を取って「ここちゃん」。名前を読み間違えられ易いですが、この愛称を覚えていれば大丈夫。2017年以降アニメ出演が増えており、それに伴いメインキャラの役を多くなっています。今年はプリキュアシリーズの「スター☆トゥインクルプリキュア」にも羽衣ララ/キュアミルキーとして出演しています。プリキュア声優には錚々たる顔ぶれが揃っているので一躍人気声優の仲間入りでしょうかね。

私が知ってる役としては「あそびあそばせ」の野村香純ですね。真面目で礼儀正しく、常に敬語で話すあたりはシャミ子にも似ていますが、怒ると顔つきが豹変し、暴力的な一面を見せたり、BL小説を執筆していたりと負ならぬ腐の側面を見せたりもしていました。シャミ子は百合はいいけど腐はやめて欲しい。

シャミ子は脇役が好きになりがちな私としては珍しく、主役なのに大好きになったキャラです。ぜひ「好きなアニメキャラ」でも紹介したいです。吉田家は清子ママンも良子も好きなので、パパン以外家族全員出してもいいくらいです。あ、実はナレーションがパパンだったらしいですが、露出が写真一枚なので流石に好きになるもなにもないですね。

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