2019年春季アニメの感想(その3):盾の勇者の成り上がり/機動戦士ガンダム THE ORIGIN

七夕の本日、世間一般ではどうでもいい話ですが個人的には衝撃的な事実に気づいてしまいました。当ブログ、最多記事カテゴリはほぼ一貫して「本」だったのですが、昨日ついに「アニメ」が「本」を抜いて一位になってしまったのです。始めた当初は読書感想ブログでいいとさえ思っていたのですが…やはり大阪に転勤してから全然本を読まなくなったのが大きかったようです。というのも私にとって通勤時間=読書タイムだったので。札幌でも通勤時間が短かったのであまり本を読まなかったのですが、ここまで読まなくなることになるとは思いませんでした。これが諸行無常というヤツか…

気を取り直して本日も「アニメ」カテゴリを伸ばしていくことにしましょう。2019年春季アニメの感想も最終回です。まずは冬季から2クール続いた「盾の勇者の成り上がり」。「盾三郎」とか言われることもある「なろう系」作品ですが、主人公の苦労っぷりは系列作品の中でも屈指かも知れません。ただ、その苦労っぷりが理不尽過ぎるというかチートで苦労しているかのようというか。

例によって異世界に召喚された大学生岩谷尚文。他に召喚された3人の大学生・高校生と共に四聖勇者と呼ばれ、次元の亀裂から魔物が大量に湧き出すという「波」から世界を守ることを求められます。実はこの召喚された4人、それぞれ別の世界から来ていることと、後にまた別の世界からの来訪者も出現しているので、少なくとも6つ以上の平行世界があるようです。

剣、槍、弓と攻撃的な勇者が揃う中、尚文は攻撃力のない盾の勇者でした。セイバー、ランサー、アーチャーといえばFateシリーズでも強豪サーヴァントですが、シールダーは異色かつ極めて稀なサーヴァントです。まあゲームでもタンクと呼ばれる守りに特化したキャラがパーティー内に一人いることは大変ありがたい訳ですが、なぜか尚文とパーティーを組んでくれる人は皆無。当初から国王以下異世界の人々に嫌われている雰囲気があり、挙げ句に罠にかけられて冤罪を着せられて勇者としての名声・信用、金銭すら失って、ほとんど追放されるように孤独に旅立つことを余儀なくされます。

人間不信になって異世界に絶望した尚文ですが、とにかく元の世界に戻りたければ「波」を乗り越えなければならないということで、奴隷商人から亜人の少女を買ったり、魔物の卵くじ(まるでガチャ)で買った卵から孵った鳥型の魔物を育てたりして戦力化していきます。


25話中20話はほぼ苦労エピソード。他の勇者の不始末の尻拭いまでしていてすっかり苦労人が板についた尚文ですが、終盤近くまでなぜこんなに尚文が虐待されるのか理由がわからず、見ていてフラストレーションが貯まりました。どうなら昔召喚された盾の勇者が亜人に肩入れしたせいで、亜人からは神の如く崇拝される反面、亜人嫌いの人間の中には嫌う人々がいて、特に国王がそうだったことが大きかったようです。


また四聖勇者から盾の勇者を除いた3人を神格化する「三勇教」という宗教もあり、これが国王と結託して尚文迫害を行っていたようです。三勇教の教皇はそれに飽き足らず、信仰対象であるはずの残りの三勇者に対しても思い通りに動かないというだけで偽勇者呼ばわりして手にかけようとしていました。勇者を一掃したら「波」はどうするのかとう問題がありますが…信仰の前には世界滅亡も些細な問題なんでしょうか。これだから狂信者という奴は。

で、一番訳が判らないのがマインことマルティ。第一王女にして槍の勇者のパーティーの一員なんですが、積極的に尚文を迫害してきます。一時期はこの人が出てくるだけで気分が悪くなるくらいでした。パパンである国王には過去になにやら因縁があって盾の勇者を嫌っているらしいことが示されていますが、この人が尚文を迫害する明確な理由が全くありませんでした。


第一王女のくせに王位継承順位は妹のメルティより下なので、メルティが尚文一行に加わってからは、自分が女王になるために邪魔なメルティとそれを助ける尚文を一緒に亡き者にしてやろうという明確な動機が生まれたので、その是非はともかく(悪いに決まってますが)行動理由は納得がいくようになるのですが、こいつの場合は冒頭から理由もなく尚文を罠にはめて貶めていたので、“パパンがあいつを嫌っているから何をやっても大丈夫そう”→“よーし、やっちゃえ♥”と思ったとしか考えられません。おそらくものすごいサイコパスなんでしょう。

女王からは全く信頼されておらず、故に長女なのに関わらず王位継承権が妹のメルティより下にされています。そうなるまでには「北斗の拳」のジャギのように過去に色々あったんじゃないかと思われますが、そうした中で「姉より優れた妹など存在しねえ!」と精神を歪ませたのかも知れません。

明快すぎる悪役なので、CVブリドカットセーラ恵美は吹っ切れた演技をしていてそれはそれで楽しそうでしたが、彼女が演じた「ハルチカ」の穂村千夏が大好きな私としては、千夏ちゃんが悪墜ちしたみたいな感じがして非常に複雑な心境でした。

21話で国王(といっても女王不在時の代理)が“クズ”、マルティが“ビッチ”“アバズレ”と改名させられて溜飲が下がりましたが、どうして英明な女王からこういうのが生まれてくるのか。トンビが鷹を生むなんて言いますが、鷹がバカを生むとは。

バカといえば尚文以外の3勇者もバカばっか。とにかく人の話を聞かない。こういう、主人公の有能っぷりを際立たせるために他のキャラを殊の外バカとして描くのも「なろう」系の特色なのかも知れませんが、本当にバカです。元の世界では高校生なり大学生なりだったので人生経験そのものが足りないということもあるでしょうが、きっと元の世界でもろくなもんじゃなかったんだろうなと。まあ異世界転生する主人公にはそういう傾向ありますよね。「このすば」とか「」リゼロ」とか。



一方仲間は使える人ばかり。尚文が奴隷商人から買った幼女亜人のラフタリアは、亜人にはレベル上昇に合わせて急成長するという(実に都合の良い)特徴があるのでたちまち18歳くらいの美少女に育ち、しかも剣も魔法を使える優秀な前衛に育つという。ご都合主義の極地でさすが「なろう」系と言いたくなりますが、本編中ではなにしろ尚文がいわれなく迫害されているのであまり目立ちませんでした。しかも女性不信になった尚文からは異性として見られることもない(せいぜい娘扱い)という。


ガチャで当てた鳥の魔物フィーロも上位種のフィロリアル・クイーンになるという。もっともこっちはご都合主義というよりは、勇者が育てたから必然的にそうなったそうですが。巨大鳥モードと金髪幼女(天使?)モードを任意に使い分け、戦闘力も魔力も高くてこちらも大当たり。


中盤に登場して圧倒的な力を見せつけたさらに別の異世界の勇者グラスは、終盤登場した気さくな兄ちゃんラルクやテリスと同じ世界の住人だったようで、やはり「波」の脅威にさらされており、自分たちの世界を救うためにこっちの世界を犠牲にしようとしているようでした。詳細が判る前に終了してしまったので、全貌が判るのは二期以降と言うことになるでしょう。

番宣Webラジオ「普通にラジオをお届けしたいラフタリアとフィーロ」が、瀬戸麻沙美と日高里菜の掛け合いが素晴らしく面白くて毎回楽しみにしていましたが、こちらももう終了してしまいますね。ラジオ再開のためにも二期制作をして貰わねば。二人とも早見沙織ファンなので、はやみんが演じたテリスの登場は嬉しかったに違いない。

最後に「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」。NHK放送版ではなく、OVA版全6話を見ました。だからテレビ未放映部分も全部見た上での感想になりますので、未見の方は気をつけて下さい。ファーストガンダムで描かれた一年戦争の前夜(ジオン・ズム・ダイクン死亡前後から)と冒頭部分(一週間戦争およびルウム戦役)が描かれましたが、OVAの原作になる安彦良和の漫画版は一年戦争全てを描ききっているので、ファーストガンダムの補完作品というよりはリメイクという方が正解でしょう。


なのでファーストガンダムとは整合性がとれていない部分もありますが、それはそれ。私もファーストガンダムをリアルに視聴した世代なんで「ファースト信者」の一員なのかも知れませんが、狂信者でも原理主義者でもないので「私は一向に構わんッ!」と思います。でもまあファーストを前提に突っ込んでしまうのは仕方がありません。

まず本作で感じるのはシャアの悪辣さ。悪辣は言い過ぎかも知れませんが、目的のためには手段を選ばないという。そこはファーストでもガルマ謀殺シーンなどに表れていましたが、あの時突然ああなったのではなく、ずっと前からそうだったということが判明しました。それにしても…やはり悪辣(笑)。


悪辣その1:本物のシャア・アズナブルをほぼ謀殺(実際に手を下したのはキシリア配下だけど、そうなるとを判っててやってるので「未必の故意」と言わざるを得ない)して本人に成りすましす。北朝鮮工作員かお前は。シャア・アズナブルの名は自分で考えた訳ではなく、実在の人物の名を奪ったものだったとは。なお本物のシャアは見かけはキャスバルそっくりでしたが、性格的には軽薄で思慮が足りない感じでした。

悪辣その2:本物のシャア・アズナブルのハイスクール時代の友人のリノ・フェルナンデスも謀殺。リノは士官学校で性格・能力が急変したシャアを怪しんでその正体を探り当てます。しかしリノはザビ家独裁に不満を抱き、キャスバルを救国の英雄として協力を申し出ていました。しかしキシリアに何度も殺されかけたキャスバルは、同士を得るよりも秘密漏洩を恐れ、連邦軍との乱戦の中で謀殺します。自ら殺害した訳ではありませんが、ほぼガルマ謀殺のプロトタイプはここにありました。

悪辣その3:ララァ、ゲットだぜ!に至る経緯。なぜかジャブロー建設工事に従事していたシャア。ギャンブラー二雇われ、ニュータイプとしての能力でルーレットの出目を予想していたララァを救い出したのはいいのですが、その過程で人を殺しまくり。いくらギャング団だとは言っても、戦場という訳でもないのに…。「ギャングを殺して平気なの?」とか言いたくなります。それにしてもジャブローって、一年戦争直前まで工事中だったのね(笑)。


続いてザビ家の人達への印象の変化。シャアが悪の一族と断じたとしてもまあそれは理解できるのですが、客観的に見たザビ家評も大きく変わりました。


デギン公王:ガルマ溺愛ぶりは変わりませんが、一貫した非戦主義者でした。ルウム戦役で捕虜としたレビル将軍と密かに会見し、和平への道を模索して連邦の「レビル奪還」に一役買ったかに見えましたが、それは実はキシリアら戦争継続派の手の内で、レビルの「ジオンに兵無し」演説を見て「裏切り」と感じて激怒していました。ファーストガンダムではジオン暗殺の首謀者として描かれていましたが、こちらでは誰が殺したのか不明のままでした。ただし、ジオン公国の要職を一族で固めているあたり、やはり独裁者と断じられても仕方ないかなと。

ギレン総帥:相変わらずの銀河万丈の演技にしびれます。それはいいんですが、。IQ240の天才という設定はどこに行ったのかと思う杜撰さが目立ちました。キシリアが弟サロスを暗殺したのを判っていながら放置したいたり、ジオンの遺児(要するにシャアとセイラ)など眼中になかったり。おそらく一介のコロニー群に過ぎないジオン公国に、曲がりなりにも連邦と戦争するだけの軍備を整えたりすることに全力を傾注していたのでしょう。実はジオンがやりたくてやれなかったことを代わって実行しているようなところがあり、デギンは「あれは鬼になった。ダイクンの無念が悪魔に変じて憑いた」と言っています。ジオンの後継者はシャアではなくギレンだったのか。

ドズル:見かけ通り脳みそ筋肉的な猪突猛進型の武将のようだったファーストに比べ、はるかにまともな武人として描かれています。ザビ家の対抗勢力であったラル家出身のランバ・ラルさえもドズルだけは評価していました。またモビルスーツ開発計画もドズルが主導して行われており、ルウム戦役ではレビル・ティアンムを手玉に取って大勝利を挙げるなど、この人がいなかったらジオンはまともに戦争できたか疑問なほどの大活躍を見せています。



なお、ルウム戦役ではムサイ(かなり改造していますが)に乗っていますが、ゲームなど過去に描かれたものではグワジン級戦艦に乗っていました。本作ではルウム時点でグワジン級は公王専用のグレート・デギンしかなかったことになっているのでグワジン級は座乗は無理としても、それにしてもせめてチベ級に乗れよと思います。が、どうやらチベ級は一年戦争時に新造された艦ということに設定変更されたようですが、ファーストではアニメ誌がデザイン的にムサイより古い艦であろうと考察し、それが公式設定化されていました。またシャアのファルメル(昔は「シャア専用ムサイ」と呼ばれていました)についても、ドズルないしキシリアの乗艦をシャアに与えた(戦果への褒美ないし手なづけるため)のではないかという考察がありましたが、本作ではドズルが完全新造艦を褒美として与えています。

キシリア:様々な陰謀に手を染めるザビ家の雌狐。ギレンに取って代わる野心は早くから持っていたらしく、デギンの信頼を得ていたのも本当にパパンが好きだったからではなく目的のための手段だったようです。ギレンを暗殺する以前にサスロを謀殺しており、むしろそういう前例があったのにキシリアの危険性を認識していなかったギレンが滑稽に映ってしまいます。

シャア(キャスバル)を過度に危険視し、何度も謀殺を図りますが、詰めが甘くて逃してしまいます。あそこまでやっておいて後にシャアを部下として使うというのがいろんな意味で凄いです。シャアに頭を吹き飛ばされるのもむべなるかな。ファーストでは謀略好きの反面、モビルスーツの有用性をいち早く理解したりと慧眼の持ち主とされていましたが、本作ではこの人が政治的策略を好き過ぎたことがジオン公国の命運を左右したように映ります。


ガルマ:まさに「坊やだからさ」を体現してしまいました。ファーストでも坊やなところはありましたが、本作ではそれ以上に坊や。シャアとの関係は親友という感じからライバルという感じに変わっており、シャアに徹底的に利用されていることに気づかず、シャアの活躍に嫉妬していたりします。これじゃあイセリナさんが惚れないんじゃなかろうか。


その他の人々ですが、ランバ・ラルは万年大尉かと思いきや実は一度は中佐になっていました。高価すぎて採用を見送られたグフそっくりさんのブグに搭乗し、シャアや黒い三連星と共に「スミス海の戦い」で、一年戦争前に量産されていたガンキャノン部隊を壊滅させていますが、この時点でジオンの超エース達に結集されたらガンダムだって勝てなかったことでしょう。この戦いの指揮官として中佐に昇進したのに、ブリティッシュ作戦を拒否して大尉に逆戻り。

なおランバ・ラル隊の主要メンバーは皆戦争前から旧知の仲だったということになりました。特にハモンさんは峰不二子ばりに大活躍を見せていたので、早々にMSに乗せて出撃させたらホワイトベース隊を破れたかも知れません。

黒い三連星はランバ・ラルに言わせれば「兵隊ヤクザ」で弟分的存在でした。レビルを捕虜にする武勲を立てたのになぜかシャアほど昇進できなかったのは見た目と素行のせいではないかと(笑)。あ、ガイアはまともでしたけどNE。


まあ言い出すとキリがないので後は目に付いた部分を箇条書きで。

① ゲームなどでは無能の象徴とされるゴップが有能な将官に大変身。これは妥当な設定変更だと思います。

② マ・クベが大佐から中将に昇進して地球方面軍総司令官に。これも妥当ですが、キシリアより上官になったのでキシリアにおもねることはなくなりました。

③ ファーストと同じ声優(古川登志夫)が演じる数少ないキャラであるカイ・シデンがなんとアムロの同級生。ガンダム開発を行っている開発区に侵入するなど、何か意図があるのかと思わせる行動をしますが、単に不良らしい暴走だった模様。

④ ルナツー司令ワッケインが少佐から少将に昇進。ファーストの頃からいくらなんでも少佐はないだろうと突っ込まれていたので妥当な変更かと。少将になっても「お偉方が集まれば私などあっという間に下っ端だ」状態は同じだろうと思います。というか少佐では下っ端すぐる。

⑤ ドズルの嫁でミネバのママンであるゼナはシャア、ガルマと士官学校の同級生。小説版などではハマーン・カーンはパパンが高官であっただけでなく、姉がドズルの側室で、ザビ家との関わりの深さからミネバの摂政のような立場になってアクシズを掌握するという設定がありますが、本作のドズルの性格では愛人とか側室はなさそうな気がします。逆にジオン士官になっていてもおかしくなかったゼナはファーストのような蒲柳の質とは思えず、もしアクシズに脱出したらミネバの母としてアクシズを掌握しそう。ハマーンを顎で使ったりして。

OVAは南極条約締結までで終わっていますが、これは地球侵攻作戦からア・バオア・クー戦までリメイクするしかないと思います。既に原作の漫画版は完結しているから円盤の売り上げさえあれば可能かと。あんまりにも安彦絵の顔つきになるのがナニですが。
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