デジタル・デビル物語 女神転生Ⅱ:RPGの衝撃的パラダイムシフト

今日は天気が安定しなくて困ります。晴れたり降ったり。冬が最後の抵抗を試みているのでしょうか。しかし時の移ろいを止めることは叶わないでしょう。ソメイヨシノの開花予想、大阪では3月24日ということで、あと一週間です。東京は21日ということで、大阪の方がやや遅いんですね。

かつてプレイしたゲームを紹介する日曜日。本日は1990年4月6日にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)から発売された「デジタル・デビル物語 女神転生Ⅱ」を紹介しましょう。この年は2月にドラクエⅣが出て、一週間後の4月20日にはファイアーエムブレム、そして2週間後の4月27日にはファイナルファンタジーⅢと立て続けに大作がリリースされています。ウハウハですがその後はぱっとしなくなるので、この4本で1年間を凌いでいたのでしょうかね。

後に「旧約・女神転生」(1995年)のタイトルでⅠと合わせてスーパーファミコン用ソフトとしてリメイクされました。なんで「旧約」なのかと言うと、スーファミ用に「真・女神転生」シリーズがリリースされていたからですが、「電脳悪魔絵師」金子一馬のデビュー作であり、その後のメガテンシリーズの流れを決めたという意味で画期的な作品でした。「Ⅰ」にも悪魔合体という背徳的な要素はあったんですが、個人的には「Ⅱ」で生まれて初めてアレと戦うという稀有な体験をしたことが未だに忘れられません。しかしアレを登場させたことに、どこからもクレームが来なかったんでしょうかね。

199X年、世界は核の炎に包まれた…という「北斗の拳」のような展開の後、2036年の荒廃しきった東京が舞台です。街は廃墟も同然で、さらに新型爆弾により生じた次元の裂け目から悪魔達が出現してきます。そんな現実に背を向けるように、とある地下シェルターで体感RPG「デビルバスター」(「メガテンⅠ」そっくり)に興じていた主人公とその親友は、ゲーム内に封印されていた「神の使い」パズスにより、「この世界の救世主」に選ばれることになりますが…



もうね、かつて「エクソシスト」に登場し、週刊少年ジャンプで連載されていた「ゴッドサイダー」で猛威を振るった“古代バビロニアの食人魔王”パズスですよ。こんなのが「神の使者」を名乗ってもキュゥべえ以上に胡散臭いことこの上ありません。パズスが言うには東京を支配する魔王バエルによってPC内に閉じ込められていたそうで、「悪魔召喚プログラム」を授けてくれますが、その後東京各地を移動していくことになります。


東京タワーには魔女がいますが、ゲーム開始時の名前設定で「ヒロイン」にした名前で登場。つまり魔女がヒロイン。彼女が言うには「パズスは敵対している魔王バエルを倒す為に主人公たちを利用しているに過ぎず、パズスとは手を切るべきだ」と。言われんでもパズスなんか信用できない訳ですが、なぜか親友はパズスを信じ、魔女が自分たちを騙そうとしていると主張します。魔女を信じた主人公に失望した親友は去って行ってしまい、以後は魔女がパートナーになります。

東京各地を旅する中で、悪魔を倒したり仲魔にしたり、さらには主人公は腕を引きちぎられて義腕になったりと波瀾万丈。中ボスと化していたパズスも倒します。その後私が当時住んでいた場所に近い西新井大師も登場(核戦争に耐えるとは)し、試練を受けたりして。


最終目的地は魔王バエルの城。なんと夢の島にあります。決戦直前、親友が登場し、自分が間違っていたことを認め、単身でバエルに立ち向かって行ってしまいます。バエルの下に向かってみると親友は既に瀕死の状態。このバエルを倒すとカエルに変身します(ダジャレかよ!)。このカエルについて「殺すor連れて行く」の二択が出てくるのですが、どちらを選んだかでエンディングが大きく変化します。まあ無力なカエルでも後で利用価値があるかもなと取っておいたのですが、これが大正解。

爆心地から魔界に突入することになりますが、魔界だけあって魔王がゴロゴロ。「Ⅰ」で大いに関わりがあったイザナミとイザナギがさらわれてたり、魔女がされわれてしまったり。アスモダイ、ベリアル、モロク、エキドナ、アスタロートといった名だたる魔王達を撃破しつつようやく辿り着くのが魔王ベルゼブブの待つ「ハエ穴」です。


ベルゼブブとの会見で大きな分岐が発生します。バエルのカエルを殺していた場合は、ベルゼブブ、ルシファー、そしてサタンと倒していき、唯一神から労いの言葉を受けて「千年王国」へと迎えられることになります。「悪意のはびこる世界は消え去った…ぼくたちは神になるのか…」

カエルを持っていると、ベルゼブブは言います。元はバアルという神であったのを、唯一神によって「バエル」と「ベルゼブブ」という悪魔に引き裂かれたと。合体を承認すると魔神バアルが出現し、仲魔になります。一緒にルシファーの下に向かうことに。


ルシファーは「かつて人間はさらなる知恵を求め、神よりも私を崇めた。それに怒った神は人間を滅ぼそうとした。私は最後まで闘ったが、ついには魔界へと堕とされた…。私とともに神を倒してくれるか?人の子よ…」と衝撃的な発言をします。ここまで来て拒否はないので承諾するとなんと「Ⅰ」のラスボス・ルシファーが仲間に。

途中邪神アシュラを魔神アフラマズダとして仲魔に加えつつサタンの下に向かいます。「おや、誰かと思えばルシファー陛下!人間の奴隷とは、堕ちるところまで堕ちましたな!もう、あんたでは俺に恐怖を与えることはできない…」なんて言って仲魔になる気配はないのでやっつけます。サタンとルシファーは同一説と別人説がありますが、本作では別人になっています。

そして真のラスボスY・H・V・Hと対峙する主人公。「呪われよ!地獄にて、世界の終わりまで!永遠の業火に焼かれるのだ!」と言われますが…おい!Y・H・V・Hって…!!ユダヤ教における唯一神の名を現すヘブライ語「יהוה」の4文字を、「י(ユッド)」をY、「ה(ヘイ)」をH、「ו(ワーウ)」をVとしてラテンアルファベットに転訳したものがY・H・V・Hです。子音ばかりなので本来の読み方は不明なのですが、通常ヤハウェとかエホバと呼ばれるあの唯一神ですね。最近の研究では古代ヘブライ語ではVよりWに近い発音をされていたとされ、YHWHと記載される場合の方が多いようですが。

え?戦っちゃっていいの?とドキドキしましたが、旧約聖書においては言っていることが前後で矛盾していたり、苛烈な思想・言動もあったりして、宗教学的には唯一神となる以前はかなり性質の異なる別系統の神々だったものが混同されるようなったのではないかとされています。以後女神転生シリーズでは「法の神」と呼ばれ「LAWの根本原理」として扱われます。メガテンで神や天使などもまとめて悪魔呼ばわりしているのは、法の神にあらず、人間にあらざる者を全て「悪魔」と呼称しているからで、ここでの「悪」とは「悪い」という意味よりは「強い」という意味合いが強く、「魔」も「唯一神ならず人間ならざる者」というニュアンスが強いと思われます。

Y.H.V.H.を倒したときのエンディングは「人の運命は人自身が決める。困難は多いがあきらめずに力を合わせればきっと…」という前向きで希望に満ちたものになっており、まさに真のエンディングと言える内容です。「神が必ずしも正しいとは限らない」という提示や、「神の代行者になるか、己の意思を示すか」という流れはそれまでの光(善)と闇(悪)という縦軸に、LAW(秩序)とCHAOS(混沌)という横軸を足すことなり、どちらでもないNEUTRAL(中立)とともに、「真・女神転生」シリーズ以降に大きな影響を与えています。

マッピングが辛くて攻略本必携であること(なしでクリアできたら本当に偉いと思います)、ゲームバランスの悪さ、使える仲魔とそうでない仲魔の激しい格差、COMP(ゲーム中で使用するコンピューター)の性能の悪さなど、欠点も多いのでマゾ向けとか言われもしましたが、マニアックかつストイックとも言え、ドラクエやFFとの差別化に成功したとも言えます。

「剣攻撃を跳ね返す」属性を持つ悪魔(鬼女ボルボ、タマモノマエ、ランダ、幽鬼ギリメカラ)が登場し、オート戦闘しているとあっという間に全滅することも。これがトラウマとなって以後の作品でこいつら(特にギリメカラ)が出てくると「うわぁ!」と思うようになりました。大っ嫌いだ一つ目のゾウ。「ギリメカラ=物理反射」はもはやメガテンプレイヤーの常識。ま、魔法攻撃であっさり倒せるんですが。
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