記憶に残る一言(その101):薬痴寺先輩のセリフ(嗚呼!!花の応援団)

あっという間に3月が来ました。日差しも力強さを増してきました。早春の2月は春とは言いがたい雰囲気がありましたが、仲春の3月ともなればこれはどうあがいても春。花粉さえ飛ばなければいい季節なんですが…

本日はせっかく大阪に住んでいるので、大阪らしいネタをということで、「嗚呼!!花の応援団」から記憶に残る一言を紹介したいと思います。「嗚呼!!花の応援団」はどおくまんのギャグ漫画で、1975年から79年にかけて「週刊漫画アクション」で連載されました。

どおくまんはCLAMPのように集団のペンネームかと思っていましたが、実は一人で本名は鈴木和明。「孤独な漫画家」の意の「独漫」が由来となっています。その後1人での漫画製作は厳しいということで弟など仲間に声をかけて4人組となった際に「独漫」に「お」を足して「どおくまん」とし、4人組の名前を「独立大阪漫人集団」の略から「どおくまんプロ」としたそうです。


同時期に「月刊少年チャンピオン」で連載されていた「暴力大将」とか、「嗚呼!!花の応援団」の連載終了後に「週刊少年チャンピオン」で連載された「熱笑!!花沢高校」とかは読んだ記憶があるんですが、「嗚呼!!花の応援団」は青年誌連載ということもあって直接読んだ記憶はほとんどありません。が、過激な暴力や下ネタのほか、「クェックェックェッ」「ちょんわちょんわ」などの独特のセリフが人気を博していたのは知っています。

連載当時映画も3本制作され、1作目の「嗚呼!!花の応援団」(1976年8月公開)は配給収入6億4千万円で同年の邦画配給収入ランキングの8位に入りました。なんとそれから20年経って1996年にも平成版が制作されています。

大阪南部の架空の大学・南河内大学の応援団が舞台となっており、主人公は3回生(近畿の大学では1年生2年生と言わずに1回生2回生と言うようです)の南河内大学応援団親衛隊長(応援団の親衛隊って何がなんだかという感じですが)の青田赤道。「ちょんわちょんわ」 「クェックェックェッ」 「シビアー」など、作中の名(迷)セリフの大半はこの人が放っています。

応援団幹部には理不尽なしごきやパワハラ、合宿費用のピンハネなど団内で横暴を振るっている4回生の3人組がいて、後輩の肩を持つことが多い青田のことを目の敵にしていますが、喧嘩の腕前と悪知恵で勝る青田には頭が上がりません。また、団のOBにはゴマをすりまくっています。

その団のOBの一人が薬痴寺先輩。薬師寺ではなく薬痴寺です。河童のような禿頭がトレードマークで、現役団員時代には「団始まって以来のしごきの鬼」と呼ばれていました。

この薬痴寺先輩の口癖が今回の記憶に残る一言です。しごきに音を上げた団員に対し「(バテたりする等の)演技が上手い」という意味が込められています。OBになってからも時折練習に姿を見せては、「役者やのう」と言いながら拷問に近いしごきを行っています。応援団幹部の4回生3人も例外ではないため、団員からは非常に恐れられています。

2作目の映画のタイトルはそのものズバリ「嗚呼!!花の応援団 役者やのォ-」でした。演じたのはなぎら健壱で、それまではフォークシンガーだったなぎらが役者として注目を浴びる契機となりました。

「そうか、お前、お腹痛いんか。役者やのォ~!」と言いながら後輩の腹にキツい蹴りを入れたり、「おぉ~こりゃあ、久しぶりに横綱級の役者やのォ~!!だが、これは受けきれまい!」と青田赤道をヘッドロックして膝蹴りを連発したり。しかし青田は「クェクェッ。こちょばい、こちょばい!」「こんなの屁の河童のちゃんちゃこりんよ」と受け流した上、「……わし、最近、妙な病気にかかっとりますねん。手が、自分の意志に逆ろうて、勝手に動きよりますねん」と言いつつ鉄拳を炸裂させ、返り討ちにしてしまいました。


なおなぎら健壱は原作を愛読していたそうで、「薬痴寺役に似合うのがいるらしい」ことを聞きつけて監督がなぎらのコンサートに来た際に、たまたま洒落で「役者やのう」と言っているたのを見て「あんなに苦労して探すことなかった、薬痴寺はここにいるじゃねえか。これで映画が撮れる」ってことになったとか。なぎらも出演を快諾し、メイクや衣装をみずから考案発注して薬痴寺役に入れ込んだそうです。

1970年代頃(つまり昭和真っ盛りの頃)の大学応援団の本質を忠実に表現しているという評価もあるという本作ですが、ここまでお下品な大学応援団はそうそうないだろうと思われるのですが。南河内大学のモデルについては諸説があって、連載当時に応援団の活動が盛んでバンカラなイメージが定着していた近畿大学、あるいは「大阪南部の田舎」という立地条件が符合する阪南大学、さらにはどおくまんの出身大学である大阪芸術大学といった説があるそうです。また、応援団による不祥事が絶えなかった大阪経済法科大学ではないかという説も囁かれているとか。さすがにこの作風だとどこも「ウチです」とは言いかねるか(笑)。

ちなみに歌もありました。なんだこれは…たまげたなぁ。歌っているのは「異邦人」。久保田早紀の歌ではなく、バンド名です。
BOKETEにあった「役者やのぉ」。その1「キャプ翼」編。

確かにサッカーの試合では多いですね、「役者やのぉ」と言いたくなる場面。審判にスルーされるとすぐに立ち上がったりして。しかし敵チームの選手に言うならともかく、味方選手に言うな石崎(笑)。

その2「ドラえもん」編。自分が出した「ひみつ道具」の効果なのにお前は何を言っているんだ。

その3「まどマギ」編。迫真の演技に感心するマミとほむら。しかしこの人は誰?
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