蒼き狼と白き牝鹿 ジンギスカン:「オルド」で有名な“光栄歴史三部作”第三弾

今日は2月とは思えない暖かさだったので、日差しに誘われて大阪城公園の梅林まで行ってきました。しかし、梅の方は満開にはまだちょっと早かったようです。

西日本随一の規模を誇る梅林で、その数は約100種1,270本にも及びます。人出は結構あったんですが、花の方が…。記事一本稼ぐには足りませんでした。来週あたりいい感じかも知れません。

これだけは盛大に咲いていた枝垂れ梅。ただし梅林の外、市民の森にありました。

ということで本日は昔のゲーム語り。今回は「蒼き狼と白き牝鹿 ジンギスカン」(略称「ジンギスカン」)です。ジンギスカンは1987年に光栄(現・コーエーテクモゲームス)からPC-8801、PC-9801向けに発売された歴史シミュレーションゲームで、ファミコン版は1989年4月20日に発売されました。やっと昭和に別れを告げ、平成に突入です。実は1985年に「蒼き狼と白き牝鹿」というタイトルでカセットテープ版で発売されたいるので、本作は2作目ということになるのですが、いつの間にか第1作のような扱いを受けるようになりました。

当時の光栄は「信長の野望」「三國志」とともにジンギスカンを「歴史三部作」として大々的に打ち出しており、私もこの順にプレーしていった訳ですが、スケールが大きくなるに従ってコマンドがどんどんおおざっぱになっていったなあという印象があります。まあユーラシア大陸相手に「信長の野望」と同じようにちまちま命令していては過労死で死んでしまうでしょうが。

「蒼き狼」とは、モンゴル人の祖とされる伝説上の獣で、本作ではジンギスカンを指しています。中世モンゴルの歴史書である「元朝秘史」の「上天より命ありて生まれたる蒼き狼ありき」のくだりに由来しています。井上靖の「蒼き狼」など、ジンギスカンを扱った作品のタイトルにしばしば用いられています。

シナリオは「モンゴル編」と「世界編」の二つで、ジンギスカンは「モンゴル編」ではテムジンとして登場します。誰だバーチャロンとか言ったのは。 ジンギスカンの旧名ですよ。モンゴル編は1175年春から開始され、1205年冬までにクリアすると、金・食料・住民・特産品総数の10分の1と将軍候補5人、子供5人、全ての后を持ち越して世界編をプレイすることができるようになります。この場合はもちろんジンギスカンとしてプレイ続行となります。

1205年冬スタートの世界編をはじめから選択することも可能で、この場合はジンギスカン(モンゴル帝国)の他、源頼朝(日本)、アレクシオス(ビザンツ帝国)、リチャード1世(イングランド)の4人から選択することになります。史実では、1205年の段階で源頼朝とリチャード1世はすでに死亡しており、アレクシオスは存命であるものビザンツ帝国は第四回十字軍にコンスタンチノープルを攻略されて滅亡しており、亡命政権となっています。しかもこのアレクシオス(3世)、無能にして暗愚な暴君というとんでもない人物で、英雄ジンギスカンはもとより、初の武家政権を開始した頼朝や獅子心王(Lionheart)と呼ばれて勇猛さを称えられたリチャード1世と並べるのはいかがなものかと…

本作では、1年は春夏秋冬の4ターンです。ね、おおざっぱでしょ。しかも本拠地では3回のコマンドを連続で実行できますが、直轄地に指定している国では1回しかコマンドを実行できません。コマンドを実行するたびに統率力・判断力・説得力・企画力・体力・武力といった、国王の各能力値を消費することになるので、配下の将軍に国を委任統治させる必要が出てきますが…

舞台が世界で、配下の将軍もインターナショナルに。それはいいのですが、血縁がない将軍は必ず裏切る可能性を持っているという極悪設定になっています。お前ら全員呂布か!いやあ世界は世知辛い。一方、王子・兄弟・婿は決して裏切りません。ということで、いかに血縁者を増やしていくかが重要になってくるのです。

ジンギスカンの最大の特徴は「オルド」システム。要するに后との子作りです。オルドとは本来「宮殿」程度の意味でしたが、本作によってオルド=後宮ないしハーレム、果てはエッチという誤解が生まれることとなりました。 オルドに4回成功すると次の春に后は出産します。男の子が生まれたら将軍に、女の子が生まれたら将軍の嫁にすることで血縁者将軍を増やすことが出来ます。

一国を攻略すると后候補の女性が送られてきます。例えば日本を攻略すると北条政子がやって来ます。この人達を口説いて同衾し、子を儲けることになりますが、これがなかなかに難しい。なにしろオルドコマンドを4回成功させなければならないので。もう恋愛の段階じゃないっちゅーのに、覇王を目前にして拒否とかどういうことやねん。「愛を語る」「強引に口説く」「金で歓心を買う」などのコマンドがあるものの、コマンドを実行するだけでほぼOKの人物がいる反面、必ず何らかの交渉が必要な者や、果ては絶対NGのキャラまで存在するというトンデモ仕様になっています。おい高麗のヨンスン!お前のことだぞ!オルドに入って絶対NGってどういうことやねん。

なお、なにしろ世界を相手の長期戦なので、覇道の途中で主人公が逝ってしまうこともあります。この場合、将軍候補にしていない王子はプレイヤー国王の後継者にすることができるので、そういう意味でも血縁者は大事です。が、将軍候補にしてしまうともう王子でも後継者には出来ません。王子は10歳で将軍候補にでき、姫は8歳で将軍候補と結婚できるのですが、こういうゲームをやっていると子供達の自由意志なんか微塵も認められなくなってしまいます。なにぃ!芸術家になりたいだとぅ!お前は将軍になるんだぁー!なあにぃ!好きな男がいるぅ!?お前は××の嫁になることが生まれる前から決まっているのじゃあああ!みたいに。あな恐ろしや。

なお、王子と姫、どっちが欲しいかといえば断然姫です。王子は本人が将軍になりますが、ステータスが(涙)。仮にもジンギスカンの息子なんだからしっかりしろと言いたいのですが、史実になり架空の王子はどうにも駄目です。他方、優秀な器量を持った人材は世界にはゴロゴロしているので、こちらを婿にした方が手っ取り早いです。なので嫁に送り出せる姫は貴重。ルックスがどうといかいう話はゲーム中には一切出てきませんが、あの姫じゃ嫌だとかいう話は一切出てこないのでまあそんなに悪くはないんじゃないでしょうか。しかし親としての情愛はどこかに放り出して、子供のモノのようにしか見れなくなるという恐ろしいゲームですな。権力者はこういう心境になっているのでしょうか。

なお、三国志では武将に統治を委任した国は内政に専念してくれますが、ジンギスカンでは統治委任国が独断で敵国に攻め込むことがあり、これを事前に防ぐことは出来ません。ま、勝ってくれればいいのですが、往々にして負けるんですよね。事前に立てていた戦略が狂うので困ってしまいますが、それもスケールが大きいせいなのか。

後に文化・気候の概念の導入や兵種の細分化、オルドの強化がなされた「蒼き狼と白き牝鹿 元朝秘史」(1992年)、箱庭内政が取り入れられた「チンギス・ハーン・蒼き狼と白き牝鹿IV」(1998年)が発売されていますが、10以上のシリーズが出た「信長の野望」や「三国志」ほどの展開がなかったことは、スケールが壮大すぎたためなのか、はたまた日本人が信長や劉備に比べてジンギスカンにそれほど親近感を持っていなかったせいなのか。

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