コミック版「私の奴隷になりなさい」:5年前の漫画が壇蜜さんで「お色直し」して再登場

突然風雨が吹き付けたり、とても不安定な一日でした。皆さん被害などありませんか?昨夜は何となく寝苦しかったせいで、ほとんど一睡もできませんでした。おかげで一日中眠いのなんのって。今日は早く寝よう。明日は冷え込むらしいので皆さん暖かくして寝ましょう。
さて、アクセス解析のおかげでだいぶ前から判明していたことなのですが、このブログにご新規でたどり着いた方が、何を検索していたか。それはまあいろいろな検索語でいらっしゃっているのですが、ここんとこ断然多いのが「私の奴隷になりなさい」です。昨日のシェアは15.6%、一昨日は20.4%、三日前は13.3%、四日前は20.6%……まああんまり遡っても仕方ないですが、多くの方が「私の奴隷になりなさい」を検索してここに来ているということは、6月29日の記事にぶち当たったということなのでしょう。
そうやっておそらく映画版「私の奴隷になりなさい」関連情報を期待して来たであろう方々には大変申し訳ないのですが、ここで扱っているのは原作版のみでして。主演女優の壇蜜さんで検索している方も結構居ますが、6月24日と25日で取り扱っているし、8月21日や8月27日にも関連記事を書いているのでまだましかなと思います。画像はちょいちょい出てますしね。
ずっと「いつもすまないねえ~」とザ・ピーナッツにおかゆを運んで貰うハナ肇のような気持ちでいたのですが、だったら少しでも出来ることをやったらどうだと私のゴーストが囁いたので、今日はコミック版「私の奴隷になりなさい」について取り上げたいと思います。

コミック版は原作サタミシュウ、脚色松本ひなつ(元ストリッパーだそうです)、作画花小路ゆみというトリオによる作品で、角川書店が刊行していた隔週青年漫画雑誌の「コミックチャージ」に2007年に8回に亘って連載されたものです。連載中のタイトルは「スモールワールド」でした。原作の「私の奴隷になりなさい」も2007年12月に角川文庫に入る際に改名されたもので、それまでは「スモールワールド」という題名でした。

コミックチャージは2007年から2009年までの2年弱で廃刊になってしまっていますが、コミック版は比較的早期の連載でしたので当然完結しています。30代から50代の男性をターゲットとしてたそうですが…すいません、創刊も廃刊も全然知りませんでした(笑)。
私の購入したのは、表紙が壇蜜さんになっていて、「私の奴隷になりなさい」と改題されたもので、奥付を見ると本年9月29日初版発行となっています。おそらく映画が話題になっていることに当て込んだものでしょう。付属のコシマキでは「映画化決定!!」とか「サタミシュウの傑作SM青春小説・大好評発売中!」なんて文字が躍っているほか、壇蜜さんの写真集「濃蜜」とかメイキングDVD「壇蜜と僕たち」の宣伝もしています。あざといなあ、角川。まあ乗せられて買っちゃったのですが。

で、内容なんですが、基本的には原作を踏襲しています。ただ、当然ながら映画前の作品なので、キャラクターは映画のキャストとは似ていません。決定的に違うのはご主人様です。ハゲデブチビと三拍子揃ってますから、板尾創路とは大違いです。しかし、原作に準拠する限り、コミック版のご主人様の方が自然なんであって、板尾創路は原作イメージを大きく逸脱しているといえます。巻末の初期設定資料によると、ご主人様は「伊東四朗タイプ(むしろ石原慎太郎に似ていますが)」「みのもんたタイプ」などを作成したものの、女性編集者の「キモイ」の一言で没となり、残った「人柄の良さが人を魅了するタイプ」を改良(改悪?)して作り上げたもののようです。私が原作イメージで俳優を選ぶなら、10才位老けた出川哲朗とかかな~なんて。そんなブサイク男に壇蜜さん演じる香奈が調教の限りを尽くされるというところが、観る者のNTR感も誘って最高なんじゃないでしょうか。
「僕」は原作通りリア充イケメン24才です。とっとと死ねばいいのに。原作通りのむかつく野郎なので、作中どんなに苦悩しても泣いても全然シンパシーを感じません。まさに「シンクロ率ゼロ。セカンド・チルドレンたる、資格なし」です。「秒速5センチメートル」の遠野貴樹ならシンクロ率400%で「男の戦い」なのになあ。

香奈は美人です。が、壇蜜さんに似ているかというと……まあ絵を見て貰ってそれぞれの判断に委ねましょう。ただ、前半の香奈と比較すると、終盤「スモールワールド」(ご主人様と奴隷専用のバー兼ラブホテル?)での奴隷・香奈の方が圧倒的に美しくて魅力的で、壇蜜さんに似ている感じがします。絵はないので、ご自身で買ってご覧下さい。
不満があるとすると、原作の中盤で「僕」が香奈のマンションで見るビデオテープの内容でしょうか。冒頭にもちらっと調教シーンはあるのですが、それを合わせても原作のあの調教シーンがとっても薄味になってしまっています。ここはこれでもかというハードな調教シーンを濃厚に描かないと、「僕」の受けた衝撃が描写できないのではないかと。そのためか、彼女がいっぱいいるのに「僕」がどうして香奈に執着するのかが今ひとつピンときません。
ですから映画版にあるこういうシーンがありません。




え?もっと見せろですか?ここはアダルトブログではないもので……ねえ、久我さん。

そういうことで、どうかご了承願います。あと終盤、「ご主人様」は「僕」にどや顔で「奴隷とご主人様道」を語るのですが、こちらも原作同様浅薄で説得力がないです。おそらく「ご主人様」も相手が若造で頭も良くない「僕」ということで舐めてかかっているのでしょうし、「僕」はそれですっかり参っているようなので、問題ないといえば問題ないのですが。
例の「奴隷というものは自由を奪われるということではない。隷属というものは他のものに対して寛容になることだ」という台詞、これなんか浅はかさの極地でしょう。せめて「SMの世界における」とか「私たちの世界では」といった前振りが欲しいところです。実際に歴史の中で数多いた本当の奴隷の前で言えるのかお前?また、隷属が寛容になるなんて言ってますが、神に隷属してしもべとなった人々が、異教の人々に寛容であったかどうか、世界史を紐解いてみたこともないのかい?そう、「ご主人様」の言辞は、広く一般に敷衍できないロジックばかりなんですよ。まさしく彼らの「スモールワールド」でしか通用しないのです。
また「ご主人様」は「私のしていることはSMではない(嘘つけ!)。私が他人より異常なことがあるとするなら、それは調教癖というものだろう。私が施す治療によってもっとも忌むべき人間のつまらない部分が直る」とほざいています。まああれですね、狂人は自分自身を狂人とは主な賄というやつです。だいたい自分に出会う前の香奈を「美しくインテリでプライドの高い、しかし男性経験が見た目よりも極端に少ない20代後半の女」だとした上で「きれいで頭も良いのに間違ったプライドと不感症を抱えたまま30才を過ぎてしまったら取り返しがつかなくなる」から、治療を施すのだと言っていますが、香奈は既に結婚している人妻ですよ。おためごかしに何を言おうが、夫が知ったなら許すと本気で思ってます?いいことをしたのだから感謝しろと?江戸時代なら二つに重ねて四つにぶった斬られても不思議はないですよ。
せめて「治療」した結果いい女になっていい相手と巡り会って結婚して幸せになったというのならまだわかりますが。そもそも香奈の夫は、「ご主人様」が唾棄すべき状態だった切り捨てている状態の香奈を好きになったのだし、お互いそれで良くて結婚したのではないのですか?夫が本当に調教後の香奈が良くなったと思っているのか、本当に確信できるのですか?「香奈変わっちゃったな。前の方が好きだったのに」なんて単身赴任先で思っている可能性がほんのちょっとでもありはしないのですかね?

西村寿行の「黄金の犬」に出てくる田沼良一(映画では地井武男が演じてました)という悪漢は人妻にしか興味がなく、人の妻を奪って自分の奴隷にすることが快絶なのだそうですが、行為は認められないにし、外道には違いないですが、「私のしていることはSMではない」なんて嘯いている奴よりも、主張自体は素直でよろしいと思います。
あと、「僕」と香奈の勤めている会社ですが、何かというと女子社員に色目を使う連中ばかりいるのですが、大丈夫かこの会社?それとも出版社ってそういうところなんですかね?ご存知の方、教えて下さい。
で、ラストシーン。香奈は「僕」に対して「私の奴隷になりなさい」と原稿用紙一枚分のアップで言うのです。このシーンの香奈は大変美しく魅力的です。ぜひ購入して見ていただきたいです。「僕」は当然がくがくとうなずいたことでしょう。しかし他者に隷属することができない私はそれでもこう言うことでしょう。



レナ…君はちょっとキレ過ぎですが(笑)。
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