2018年秋季アニメの感想(その2):バキ/ゴールデンカムイ/色づく世界の明日から

今更ですが新年明けましておめでとうございます。年末年始はいろいろとイベントがあるもので、三週間近く間が開いてしまいました。もうすっかり正月気分も抜けて通常モードという感じなんですが、ここで三連休というのは実にありがたいものですね。

昨年の仕事は年内に終わらせたかったのですが、なかなかそうも行かないのが世の定め。ということで昨年のし残し、秋アニメの感想を終わらせましょう。まずは「バキ」。第一期は2001年にほぼ一年間かけて放映されて、幼年編、地下闘技場編、最大トーナメント編までが描かれましたが、今回の第二期は二クールかけて最凶死刑囚編が描かれました。

現実世界では第一期から17年経過しているのですが、作品の中ではせいぜい数ヶ月程度しか経過していないという。それにしては範馬勇次郎の変わりっぷりが凄まじいのですが、そこはやはり現実世界の時間の経過が大きく影響を(笑)。

バキで世間にあまり知られていない知識を得て、ドヤ顔で周囲に披露して恥ずかしい目に遭ったという“自分自身の若さ故の過ち”エピソードを持っている人は結構いるかも知れませんが、いきなり出てくるのがシンクロニシティ。乃木坂46の歌…ではなく、心理学者のユングが提唱した概念で「意味のある偶然の一致」を指し、複数の出来事が意味的関連を呈しながら非因果的に同時に起きることとされています。例えば花瓶が突然割れ、居合わせた人々が不吉に思っていたところ、花瓶の作者である肉親がちょうどその時亡くなっていたというようなケースですね。もちろん花瓶が割れたことと肉親が亡くなったことには因果関係がない必要があります(花瓶が高いところから落ちてそれが肉親の頭にぶつかって死んだという場合、花瓶が割れたと同時に肉親が死んでますけどこれは因果関係がはっきりしているのでシンクロニシティとは言いません)。

バキ世界では、刃牙が最大トーナメントで優勝した直後、世界各地の死刑囚5人が続々と脱獄して東京に集結したことをシンクロニシティと呼んでいますが、どうなんだろうこれは。“強者”の出現をなんとはなしに察知した強者にして凶者である死刑囚達が刃牙と戦うために東京にやってきたということか。しかし、結果的に全員が全員刃牙と戦った訳ではないしなあ。強者が集った最大トーナメントの開催自体が死刑囚を呼び寄せることになったんでしょうかね。

ともあれ、最大トーナメントに出場した刃牙以下の地下闘技場戦士と、世界各地から集まった5人の死刑囚たちが、武器の使用やステージや人数など戦い方も限定しない完全ノールールで戦います。死刑囚側に共通したキーワードは「敗北を知りたい」。つまり死刑囚達はまだ敗北したことがないということなんですが、ではなぜに監獄に捕らわれていたし。逮捕されて死刑判決を受けたことは敗北じゃないんでしょうか。単にどれだけ負けても「負けてない」と主張すれば気持ちの上でだけは負けていないというただの負けず嫌いのような気がしてきます。

まあ最初の頃は良かったんですよ。最大トーナメント戦士をボコボコにして強さよ見せつける死刑囚達とか、花山対スペックの壮絶な名勝負とか、刃牙&渋川の最強タッグを相手に完勝してみせた柳とか、神心会という世界最大の空手団体を向こうに回して互角以上に戦ったドリアンとか、見せ場たっぷり。

しかし、そのドリアンが独歩との勝負では完敗し、泣きじゃくりながら敗北を認めておきながら、実はそれは演技で、運ばれた病院から脱走して愚地邸を襲撃して帰宅した独歩を爆弾で吹き飛ばしたあたりからおかしなことに。どんなにぼろ負けしても、後から「あれは演技だ」と言えば敗北じゃないということが認められるのなら、もう殺すことでしか決着はつかんのじゃなかろうか。実際ドリアンは烈海王に本当の意味で勝ったことは一度もないと指摘されて、事実上言葉責めで負けて精神崩壊してしまいます。


後はなんというか…ドイルは武器を使用した烈に惨敗するわ、シコルスキーは柳と最凶タッグを組んだのにも関わらず“大人になった(笑)”バキに一蹴され、さらにジャック・ハンマーとガイアにも惨敗して心の底から敗北を認め崩れ落ちるわ。これも後から「あれは演技だ」と言えば覆るんかい。

そして最強かと目された柳も、最大トーナメント一回戦負けの本部以蔵にまさかの惨敗。渋川>本部、柳>渋川という図式が成立していたところに本部>柳の図式が出来てしまったことで三すくみ状態に。お前らはじゃんけんか。この本部さんも、本来は愚地独歩と並ぶ「生きる伝説」であり、打倒範馬勇次郎の最右翼的なキャラだったんですが、作中一度も勝利したことがなく、反面他者の戦いの解説には定評があったことから「本部流解説術」「史上最高の解説者」と呼ばれていたんですが、まさかの復活。

日本刀や鎖分銅などの武器を駆使して柳を圧倒した上に、「磨いた五体以外の何ものかに頼みを置く……そんな性根が技を腐らせる」とドヤ顔で指摘。お前が使っているのは五体以外の何ものかに他ならないじゃねーかという視聴者の総ツッコミもガン無視して事実上完勝します。ちなみに連載中のこの場面後の作者のコメントは「本部が強くて何が悪い」でした。その後の本部の躍進ぶりは恐ろしいほどなんですが、まあそれはアニメ外での話。

いろいろ文句を言っているようですが、筋を全部知っているにもかかわらず楽しく視聴しました。「SAGA」はもっともっと濃厚にやって、雨宮天を大いに泣かせて欲しかったとかはありますけど、まあ無理か。


ラストは柳の毒手が遅まきながら効いてきて死を待つばかりの状態となった刃牙が、中国で開催される「大擂台賽」に出場するというところで終了。つまり第三期は中国大擂台賽編と神の子激突編辺りを描くのでしょう。

それにしても死刑囚達、本当に「敗北を知りたい」のなら、どうして地上最強の生物・範馬勇次郎のところに行かなかったのかが最大の不思議です。きっと5人がかりでも敗北を教えてくれただろうに。

続いてゴールデンカムイ(第二期)。北海道を舞台としたアイヌの金塊を巡るサバイバルバトルの続編です。北鎮部隊と恐れられる第七師団(の一部)や土方を中心とする新撰組残党と、時に協力して時に争う杉元とアシリパ一行の物語が展開されます。


第七師団の鶴見中尉は日露戦争で活躍しながら報われなかった師団員のため北海道征服を目論み、土方はかつて夢見た蝦夷共和国の再興を目指していますが、杉元の動機は幼馴染の梅子の眼病の治療費を得るためということで、かなりスケールに違いが。しかしパートナーのアシリパの、金塊を巡って殺されたはずの父が実は金塊強奪犯なのではないかという疑惑を解明したいという動機が切実なので、ほぼそのために動いているような状態になっています。


メインストーリーはシリアスなんですが、絶対に笑いを忘れないのが本作の良いところで、土方以外のメインキャラはほぼギャグをぶちかましています。ヤバイ剥製を作りまくっている江渡貝くんのエピソードとか、アイヌの伝承では煮える匂いが欲情を刺激するというラッコ鍋を作って、全員が「ウホッ」「アッー」な世界に嵌まってしまうエピソードとかはもう最高。


序盤は土方勢と杉元一行が協力して第七師団と対峙する構図でしたが、杉元一行にいたキロランケが、実はロシアからの分離独立を企図している(?)勢力ということが判明し、ドタバタ騒ぎの中で今や四勢力となっている金塊探索勢です。一連の騒動の中で杉元と引き離されたアシリパがキロランケと行動を共にする中、杉元は第七師団と手を組んでそれを追う形となっていますが、今後も各勢力の離合集散・合従連衡が続くことになりそうです。


不死身の異名をとる杉元ですが、今回は頭を銃撃されて脳の一部を失うはめになっています。それで同じ脳欠損仲間として鶴見中尉からは親近感を持たれたようですが、協力関係といっても互いに利用し合っているのが実態なので、再び敵として相まみえることもあることでしょう。土方一味は永倉新八もいて接近戦最強ですが、ついでに斉藤一も呼び寄せたらどうなんでしょうか。牙突…いやいや(笑)。

最後に「色づく世界の明日から」。良作を世に出し続けるP.A.WORKS制作…なのですが、かつて「グラスリップ」という屈指の怪作を世に問うた会社でもあるので、楽しみ半分、怖さ半分で見ていました。魔法が普通にある世界で、祖母の大魔法により60年前(=現代)に飛ばされたJKの物語です。

結果的には「グラスリップ化」はなく良作として終了したと思います。主人公の月白瞳美が美人なのにかなり鬱陶しい性格なのを、物語が面白くなくなる要素ではないかと危惧していたのですが、なぜこうなったのかが次第に明かされていくのと同時に、周囲と良好な関係を築いていったのは何よりでした。

その大きな助けになったのが祖母であり過去の世界では同級生となる琥珀。当然未来の祖母はこの頃のエピソードを記憶している訳なんですが、それにしては瞳美を過去に飛ばすまでは、知っていたはずなのに彼女の苦しみ・悲しみを事実上放置していた訳ですが…この世界は「シュタインズ・ゲート」のような過去改変はできない構造なんでしょうかね。だとすれば大魔法使いといえども"So it goes."とつぶやくしかないのでしょうか。

60年前の世界でそれまで知らなかった恋や友情を経験し、色が見えないという色覚異常も克服することになる瞳美。60年後というと、琥珀がおばあちゃんとして健在なのと同様、恋の相手である葵唯翔や、その他の写真美術部の仲間達も健在である可能性が高いと思われますが、今はどうなっているのでしょうか。再会することが必ずしも幸せとは限らないと思いますが、瞳美としては生きているなら会いたいと思うような気がします。


最終盤、過去から戻って墓参りして泣いている瞳美が気になります。もしや唯翔は既に…?まあ生きていたとして恋愛対象になるのは無理でしょうけど。「なないろのペンギン」という絵本を残して彼は去ってしまったのか

この世界の魔法は、開運とかアロマ的なものが主のようですが、人を絵の中に入れたり時間遡行を起こしたりと種類も効果もまちまちで、系統立てがよくわかりません。魔法を使える人が一定数いるということを最初から計算に入れている世界だと、「幼女戦記」とか「終末のイゼッタ」のように兵器として使われるようになるのがオチという気がするのですが、この世界はあくまで平和。攻撃的な魔法が存在しないのでしょうか?でも応用次第で兵器として使えそうなものはありそうですが…

母子家庭出身である唯翔にも抱えているものを魔法で知り、それに触れて瞳美が怒られる場面がありましたが、その後それがどうなったかは明かされなかったのは残念。回収し損ねた伏線だったのかも。誰もが持つモノだと言えばそうなのかも知れませんが。

瞳美役は石原夏織。ショタとか元気な女の子役という印象がありましたが、こういう感情表現が苦手な美少女役というのもなかなかオツなものでした。本人も美人だからかなあ。そして琥珀役は今や引っ張りだこの人気若手声優本渡楓。若いのに達者だから起用されるのも無理はないのですが、ちょっと出過ぎな感も。倒れたりしなきゃいいですけどね。OPとEDもなかなかに良く、絵も綺麗なので、こういう作品こそぜひ円盤が売れて欲しいのですが…
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