この素晴らしい世界に祝福を!:クズばかりの抱腹絶倒の異世界

一年で一番好きな11月があっという間に過ぎ去ってしまい、今日から12月です。師走、極月といった異名もありますが、もう一年のどん詰まりなんですね。実に早いものですが、振り返って思い起こせば大雪に寒い冬、転勤、大地震、台風と実にいろいろあったことですよ。……なんかしみじみと思い返すとやたら疲れそうなので、「あっという間だったな-」と流しておくのが吉のような。

一日経ったらいきなり秋から冬になるというのは唐突の感を拭えませんが、さすがに12月は冬と呼ばざるを得ませんね。まだまだ紅葉も残っているんで、もうちょっとだけ京都奈良を攻めたいですが。それはともあれ、本日の話題は先日見た爆笑アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」です。

原作は暁なつめの同名ライトノベルで、元はウェブサイト「小説家になろう」で連載されていたオンライン小説でした。いわゆる「なろう系」というヤツですね。略称は「このすば」。角川スニーカー文庫から刊行される書籍版は、Web小説のリメイクという位置付けで、2018年3月の時点でシリーズ累計発行部数は650万部と大ヒットしています。

アニメは2016年1月から3月まで全10話+OVAで放映されました。2年以上前の作品を今更見て、おもしろ~いおもしろ~いと言いまくるのが筑波嶺クオリティなのですが、今ではありふれまくっている異世界もので、しかも玉石混淆甚だしい「なろう系」の作品としてはこれは当たりでした。クズとか変人ばかり登場してきてとにかく笑えるので。

高校生、しかしその実態はひきニートの佐藤和真は、珍しく外出した際にトラックに轢かれそうになったJKを助けようとして命を落とし、天界で女神アクアに出会い、異世界への転移を持ちかけられます。天国行きもありなんですが、アクアによれば「そんなにいいもんじゃない」と。

しかし和真の死の実態は、JKに迫っていたのはトラックではなく低速走行のトラクターで轢かれる恐れは全くなく、ただJKを突き飛ばして無用の怪我を追わせただけ。自分も当然トラックに轢かれた訳ではなく、トラックに轢かれたと勘違いして恐怖のあまり失禁しながらショック死をしたという極めて情けないものでした。病院でも葬儀でも失笑と嘲笑に満ちていたという。

その当たりをアクアにディスられまくった和真は、異世界転移にあたって望むものを1つだけ持っていけるという特典を、「アクアを持って行く」ことに行使。これが認められてアクアと共に魔王が世界征服を企む異世界に降り立ちます。目的は魔王を倒すことですが、和真にとっては安楽に暮らせるならどうでもいいことである反面、アクアは天界に帰るためには必須条件となっています。

何のスキルもなく、際だったステータスもない和真は基本職の「冒険者」に。これは剣士とか盗賊とか魔法使いとか僧侶といったクラスを含む、一般に言うところの冒険者の中の一ジャンルとしての冒険者で、「初期職業」とか「最弱職」とか言われています。ファイナルファンタジーでいうところのたまねぎ剣士か。

一方ぱっと見は麗しい女神のアクアは、不遜且つ高圧的な性格で、女神であることを鼻にかけたり他人を見下したりしまくるわりに、ちょっとしたことですぐに泣きだす豆腐メンタルで、馬小屋で同衾する日々を送った割になにも起こらないというヒロインから思いっきり外されたキャラです。

OVAでは、実は和真もアクアをヒロインとして見ようとして、髪の匂いをかいだりしていたことが判明しますが、和真曰く「ヒロインとして見ようと頑張ってみたが無理だった」そうです。そんな駄女神アクアですが、さすがに本物の神だけあって、多数のパラメータが平均を大幅に上回っていました。但し知力は平均以下で、運の良さは最低レベル、さらに神だけにレベルアップしてもステータスはカントス状態。つまり伸びしろは全くありませんでした。


アクアはいきなりプリースト(僧侶)の上級職のアークプリーストとなり、全てのスキルと魔法と聖属性の近接攻撃(ゴッドブロー、ゴッドレクイエム)を取得、さらには意味不明の宴会スキルまで習得します。アークプリーストはなり手の少ないレア職とされ、あらゆる回復魔法と支援魔法を使いこなし、前衛に出ても問題ない程の強さを誇る万能職ということで、一見頼りがいがあるのですが、ゴッドブローとかゴッドレクイエムはクラスのスキルではなく女神としてのスキルのような。



当初は金がなくて装備を買えず、肉体労働にいそしんだ二人ですが、当初は働いて飲んで食って歌って寝てというサイクルが板につきまくっていて笑いました(アクアだけ「吐いて」を追加)。さすがに和真がある日気付いて「違うだろ!」と叫び、クエストを開始することに。

しかし二人が降り立ったアクセルの街は、魔王軍の脅威から最も離れた場所に位置し、周囲の魔物は討伐済みのせいでお使いや素材収集といった初心者に適当なクエストがあまりなく、請け負ったジャイアントトード討伐で犬神家状態になって死にかける有様でした(しかも収入は肉体労働時と変わらず)。そこで仲間を募集しますが、アクアが見栄を張って上級職限定としてしまいます。


それでもやってきたのがアークウィザードのめぐみん。人類最強の攻撃魔法「爆裂魔法(エクスプロージョン)」を駆使する恐るべき魔法使いですが、その実態は爆裂魔法しか使えず、しかも一日一回使うと体力も失って倒れ伏すありさま。そのせいで他のパーティーからは追い出されてすがるようにやってきたのでした。爆裂魔法はドラクエでいえばイオナズン…いや、全魔力を消費するのでマダンテといったところですかね。ドラクエならMPがゼロになってもHPは変わらないので物理攻撃は可能ですが、それもできなくなるのはかなり痛い。爆発系魔法だけでもイオ、イオラと使い分けられれば魔法使いとして悪くはないのですが、一日一発最大火力は使い勝手が悪すぎます。


なおめぐみんは人間ですが紅魔族という生まれつき高い知力と魔力を持った一族の出身で、紅い目が特徴。ばんばんアークウィザードを輩出していますが、言動が中二病的で、へんてこな名前が多いようです。めぐみんもアレですが、友達(?)は「ゆんゆん」、ママンは「ゆいゆい」、パパンは「ひょいざぶろー」というそうです。ひょいざぶろーって…

強引に加入してしまっためぐみんい続いてやってきたのがクルセイダーのダクネス。クルセイダーはナイトの上級職で、聖騎士になるそうです。ドラクエでいうところのパラディンですね。重装備ができ、全職業中最高の防御力を誇り、プリーストほどではないが神聖な力も使えるということで、前衛で盾役をして貰うには最適なんですが…。


実はいつも酷い目に遭ってばかりの和真達を見て志願してきたというだけあって真性のドMで、自ら痛みを受けてその快感を得ることを何よりも好み、魔物などに蹂躙されて辱められるとかいう妄想でも興奮し、口汚く罵られる事をも歓んでしまうというとんでもないキャラでした。CVは声も見た目も癒やし系の茅野愛衣なんですが、なんてことをするんだ!もっとやれ!


前に見た「グランクレスト戦記」では、かやのんは凜々しく男勝りなマリーネ・クライシェという役を演じており、この人、結婚式開催まで行った婚約者がいるのに他の男に処女を奪われるというとんでもないNTR展開になって、我々視聴者を驚かせたわけですが、その驚きの中には「CVかやのんなのに!?」というものがあったはずなんですよ。

しかし、それ以前にこんなとんでもない役を演じていたとは…。読めなかったry)。というか、もしマリーネがダクネスな性格だったらこんなシリアスな展開にならなかったのに。「見られている。むくつけき男が私の肌を見て興奮している。なんという辱め、けがらわしい。たまらん!」とか「ハア、こいつはきっと将軍の地位を利用して私を手篭めにする気だろう。私も抵抗はするが、おそらく力及ばず辱められ…ハァハァ」とか眼前で言われては萎えまくる。というか、そもそもアレクセイと恋仲になれないか(笑)。結婚したいタイプは「見た目冴えない甲斐性なしで自身の借金を妻の体で稼がせようとする男」だそうだし。スーパーダメンズウォーカー・ダクネス。

とりあえずこの4人でパーティーになっています。男は一人だけのいわゆるハーレムパーティーだし、上級職が3人もいるというのは外見上手練れなパーティーな訳ですが、どいつもこいつもすっとこどっこいな。しかしじゃあ主人公の和真がまともかといえば、腹黒い上にスケベで、勝つ為には平然と卑怯な方法を使うし、相手に対する嫌がらせや戦いで優位に立った際は下卑た笑いを浮かべるし、アクセルに住む女性たちにセクハラをしまくるしで、こいつもこいつでゲスの極みなんですよね。

そんな和真を助けてくれた人その1:クリス。ダクネスの友人で、サバサバとした明るい性格の盗賊です。和真に「スティール」のスキルを教えてくれましたが、和真は主に女の子の下着を剥ぐのに使っています。

その正体は、なんと女神エリス。アクアは日本担当でしたが、エリスは異世界担当のようで、異世界で死んだ者を導く役割を担っています。仕事ぶりはアクアより遙かにまともですが、アクアの方が先輩格のため、いろいろ横やりをいれられて苦労しています。なお、異世界ではエリスは非常に衰廃されており、貨幣単位が「エリス」になっているほどです。アクアの信徒(アクシズ教徒)もいるようですが、とんでもない連中ばかりだと恐れられています。まあ崇める対象が対象だけに。

和真を助けてくれた人その2:ウィズ。アクセルの街でマジックアイテム屋を営んでいますが、その正体は魔王軍幹部でアンデッドのリッチ。魔力や生命力を吸い取ったり与えたりできる「ドレインタッチ」を教えてくれました。

リッチというとこういうのを連想するんですが、ウィズはやたら巨乳の美女の姿です。人間の頃は元は高名な魔法使いで、凄腕のアークウィザードとして名を馳せていたそうで、魔王軍の幹部になったのも魔王城に張っている結界の維持を頼まれたからだそうで、人間には危害を加えません。リッチであることは知られていませんが、凄腕の魔法使いとしては冒険者ギルドからも信頼されています。


アクアは、アンデッドであるというだけでウィズを目の敵にしていて、機会がある度に浄化してしまおうとします。リッチはアンデッドの王とも呼ばれ、普通の武器では傷つけることもできず、見ただけ近寄っただけで弱い人間は命を落とすなど、本来はかなり強いのですが、聖属性の女神とは相性が最悪のようでウィズはアクアには全く対抗できません。

和真一行が戦ったのは、ジャイアントトードの他にはデュラハンのベルディア。おそらくアクアが降臨したことを異変とみて調査に来ましたが、拠点としたアクセルの街近くの廃城を、毎日のようにめぐみんが爆裂魔法の標的としたことでぶち切れて襲撃してきました。魔王軍幹部で懸賞金3億エリスと本来とんでもなく強いのですが、アクセルの街にアクアがいたのが大誤算で、和真達とのバトルの末にアクアの浄化魔法で倒されました。

一般人には危害を加えない誇り高い騎士的な性格…のはずですが、ウィズが魔王城にいた頃は、よく彼女の足元に自身の首を転がし、スカートの中を覗こうとしていたそうです。そうか、お前もクズか。懸賞金は3億エリス(=3億円)で、これを聞いた和真は即座に引きこもり宣言をしますが、アクアが勢いで壊したアクセルの街の城壁の修理代が3億4千万エリスだったということで、億り人どころか借金持ちに転落したのでした。

そして冬将軍。冬になると現れる雪精という精霊がいて、一匹倒す毎に春が一日近づくそうですが、この雪精が危機に陥ると出現する鎧武者のようなモンスターです。異世界に転生した日本人の「冬といえば冬将軍」というイメージから具現化したそうですが、戦闘能力が非常に高く、和真は首ちょんぱされて二度目の死を迎えました(が、アクアの蘇生魔法とエリスへの恫喝で生き返ります)。

機動要塞デストロイヤー。た、多脚砲台…。とある国で開発された蜘蛛型の超大型兵器で、稼働直後に暴走し、母国を滅亡させた後、各国に甚大な被害を与え続けています。「デストロイヤーが通った後はアクシズ教徒以外草も残らない」とされています。すごいやアクシズ教徒!対空兵器や強力な魔法抵抗障壁を持っているのでこれまで有効な攻撃手段がなく、終盤アクセルの街目指して出現しますが、アクアの超強力浄化魔法で障壁を破られ、ウィズとめぐみんが放った爆裂魔法によって破壊されました。

この際はアクセルの街の全冒険者がデストロイヤーに立ち向かおうとしましたし、かなりの高レベルの冒険者もいましたが、こんな辺境の駆け出し冒険者の街になぜ高レベルの冒険者がいつまでもいるのかといえば…実はアクセルには「サキュバスの店」があるのです。

路地裏で秘密裏に営業しているサキュバスたちの店は、一見小さな飲食店にしか見えませんが、男性冒険者の欲求不満を解消する事を目的に、魅惑的な夢を見せる代わりに精気を日常生活の支障にならない程度に徴収するという共存共栄のシステムを取っており、客の様々なリクエストにも安価で答えています。どんな要望でも夢なので一切法には触れず、好きな夢を見ている間に、サキュバスが適度に精気を吸ってくれるので、溜まった性欲もスッキリ発散され、それでいて料金は3時間5千エリス(=5千円)と良心的なので、普段女性の仲間が居る事で禁欲生活を余儀なくされている男性冒険者にとっては夢のような店で、いつも大盛況です。

アクアや女性冒険者達には秘匿されているようですが、デストロイヤー襲来の際に男性冒険者達が異様にやる気を見せたのは、アクセルの街ではなくサキュバスの店を守るためだったようです。いいなあ、そういう店。低額かつ夢で済むなら現実世界にもぜひ欲しいですね。VRが進歩したらなんとかなるんでしょうか。

第一期はデストロイヤー戦で終了していますが、第二期も既に制作されているのでこれから見るつもりです。笑いを追究しまくった作品は楽しくていいですね。

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