オーバーロード(Ⅰ~Ⅲ):魔王が主人公のダークファンタジー

立冬を過ぎて晩秋真っ盛り。立冬を過ぎたら初冬だろうと突っ込まれそうですが、誰が何と言おうと11月中は晩秋。それにしても今週は暖かかったですね。小春日和というには気温が高すぎるような気がします。楽といえば楽なんですが、札幌ではまだ初雪が降らないとか。10月下旬には降っていた記憶があるんですが。そして11月下旬には大雪が降って、いよいよ本格的な冬が来ると新参者を慌てさせる訳です。12月に入って大雪が降ったらもう根雪一直線。

そんな懐かしい北海道の記憶はさておき、本日は先日まで一気見していた「オーバーロード」を紹介したいと思います。原作は丸山くがねの小説で、当初は小説投稿サイト「Arcadia」や「小説家になろう」に掲載され、後にウェブ版を下敷きに新たな設定を加えた書籍版が刊行されました。シリーズ累計発行部数は本年7月現在で760万部を突破しており、「このライトノベルがすごい!」2017年版で単行本・ノベルズ部門第1位を獲得しています。

「剣と魔法」の王道ともいえるファンタジー世界が舞台となっていますが、主人公や手下達が通常敵サイドに登場するアンデッドや魔物であるというところが異色です。老舗のRPG「ウィザードリィ」シリーズにも、悪の魔術師ワードナを主人公にした作品がありましたが、オーバーロードはそれに「なろう系」にありがちな異世界テイストが加味されています。

近未来で今より科学技術が進歩した世界で行われていたVRMMORPG(仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインRPG)「ユグドラシル」は長らく続いてプレイヤーを楽しませていましたが、遂に終焉の日を迎えてサービス終了となりました。ゲーム内で栄光を誇ったギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のギルドマスターであったモモンガは、全ての仲間が去ってしまったギルド本拠地「ナザリック大墳墓」で一人、最後の瞬間を待っていました。しかし、サービス終了の時刻になっても強制ログアウトは起こらず、なぜかNPCたちが勝手に動き出します。

どういう訳かナザリック大墳墓は、「ユグドラシル」とは似て非なる異世界に転移しており、モモンガもゲーム内アバターのまま存在し続けることになったようです。モモンガは現実世界では鈴木悟という平凡なサラリーマンでしたが、この世界でアンデッド種族の最高峰であるオーバーロード(死の支配者)。そして自分や仲間達が創造したNPC達も強大な能力を持ったまま、自分の意志を持って活動を始めますが、全てのNPCは産みの親であるギルドメンバーを神のごとく崇めており、今や唯一残ったモモンガだけが忠誠の対象となっています。

探索したところ、異世界にあってはナザリック地下墳墓の一党は、きわめて強力であることが判明しますが、モモンガはまだ見ぬ強者や未知の技術の可能性を疑い、何より自分以外のプレイヤーの存在を予想し、極めて慎重な姿勢を保持したまま、異世界への介入を行っていきます。この過程でモモンガは名乗りをギルド名「アインズ・ウール・ゴウン」(通称アインズ)に改めます。これは一人でギルドを背負うという意味と、「アインズ・ウール・ゴウン」の名を広めることで、異世界に転移しているかもしれない「ユグドラシル」のプレイヤーを探し出す事を意図してのことです。「アインズ・ウール・ゴウン」は「ユグドラシル」のプレイヤーなら知らない人がいないくらい有名だったようです。

「アインズ・ウール・ゴウン」は入団条件が社会人かつ異形種であることでした。そのため彼が産み出したNPCもほとんどが異形種で、属性も悪側が多数を占めています。NPC達は自陣営に強い帰属意識を持つ反面、相対的に高い能力を持つこともあって外部及び人間種・亜人種への蔑視感情が色濃くなっています。モモンガ改めアインズも、普段は温厚な性格で無益な殺生は好みませんが、アンデッド化したことで人間であった頃の精神をほとんど消失しており、身内以外への感情の断絶が起こっており、交流のある者以外に行った殺人は蚊を潰した程度の感覚となっています。

アインズの主要戦力は、ナザリック地下墳墓の階層守護者達と「プレアデス」という名の戦闘メイド達。アインズも含めて異世界においては圧倒的に強いのですが、基本これまでは拠点守備しか行っておらず外征経験がないこと、異世界の住人を侮りまくっていることなどでしばしば失敗をします。アインズとしては彼らの教育も行っていかなければなりません。

異世界にあっても別に征服戦争を行う必然性はないのですが、階層守護者達は畏敬の意識が強すぎるが故にアインズを常に過大評価しており、彼の言葉を深読みし過ぎる傾向があります。特に最高峰の頭脳を持つ第7階層の守護者デミウルゴスは、アインズが不用意に口にした「世界征服」という戯言を本気にしてしまい、そのための大方針を定めてしまいました。彼は明らかにアインズより頭がいいのですが、アインズが自分達を凌駕する鬼謀の持ち主であると信じ込んでおり、アインズが立てた計画(実際はデミウルゴスの策を追認しているだけ)を、アインズの言動や計画遂行中に起きたハプニングなどを捉えてさらに深読みしていくことで、何もかもアインズの神算鬼謀から生じていると確信し、他の守護者達にも信じ込ませるので、アインズの虚像はさらに膨らんでいきます。

一見していかにも裏切りそうなキャラデザインですが、アインズへの忠誠心は守護者の中で一、二を争う程の強いものがあります。ナザリック至上主義を掲げており、ナザリックに所属する者には非常に優しく、人間に対しても他の守護者に比べれば比較的好意的なのですが、実際には有用な家畜程度にしか見ておらず、捕らえた人間達に対しておぞましい所業を行っているようです。人の皮から魔法のスクロールが作れるために大量に「牧場」で飼育していたり、人間と亜人の交配実権を行っていたり。言い方がぼやかされているのでアインズは気付いていませんが、真実を知ったとしても、精神までアンデッド化したアインズは反対しないかも。

自称「正妻」のアルベド。ナザリック地下大墳墓に存在する全NPCの頂点に立つ守護者統括です。サキュバスっぽい姿で、フローラルないい匂いがするそうです。サービス終了間際に、作成者による長大な設定の末尾に「ちなみにビッチである」という一文があったのを、「モモンガを愛している」に改変したところ、異変後は彼の事を深く愛するようになりました。

絶世の美女といってよい姿といい、内政面において極めて高い能力を持ち、戦闘でも高い防御能力を持っていることといい、更には掃除、裁縫等の特技も持ち合わせることといい、まさに「正妻」にふさわしい存在なのですが、愛が深すぎる故か恋敵と凄まじい修羅場を演じたり、興奮のあまり奇声を発したり、奇行に走ったりすることがあるので、アインズや周囲からは若干生暖かい目で見られています。本人はアインズの子を産みたいらしいのですが、アンデッドって生殖能力があるんでしょうかね。

このアルベドの演技がとても素晴らしいので、CV原由実をぜひ取り上げたいと思っています。「あんハピ♪」の小平先生役でも普段は優しいのに裏ではとても恐ろしい姿に注目していたのですが、なにぶん脇役すぎて。「ラーメン大好き小泉さん」の高橋潤、「魔法少女サイト」の雨谷小雨と知っているキャラも増えてきたので近日「好きな声優さん」で紹介しましょう。

階層守護者を全部紹介していると日が暮れるのでもう一人だけ。アルベドと常に正妻の座を争い、「Ⅰ」ではアインズとタイマンを張ったシャルティア・ブラッドフォールン(CV上坂すみれ)。第1~第3階層の守護者で真祖の吸血鬼。一件可憐な少女の姿をしていますが、真の姿は「ヤツメウナギ」に例えられています。一見巨乳のように見えて、実はパットを何枚も重ねた貧乳。真っ平らすぎて激しく動くとパットがブラジャーごとどっかに行くとか。

創造主からエロゲーに有りがちな設定をてんこ盛りにされおり、様々な性癖を持ち合わせています。またその一方で戦闘力はガチ設定されたため、総合力では守護者最強と目されており、単体で物理攻撃、魔法攻撃、補助、治癒、回避が可能で、ステータスではアルベドやアインズすら上回っています。が、血を浴びるとスキル「血の狂乱」が発動することで判断能力を失い、殺戮衝動に捕らわれてしまいます。任務中に「血の狂乱」が発動して無差別攻撃状態となった際、謎のワールドアイテムで精神支配をされてしまい、ナザリックから離反。討伐に向かったアインズと激しく戦います。

この戦いが一期のクライマックスでしたが、アインズにとって、シャルティアは天敵と言える存在で、シャルティアはアンデッドに効果的な信仰系魔法を幾つも持っているほか、肉弾戦にも長けるため、本質的に後衛であるアインズにとっては非常に分が悪く、アインズ自身「勝算は七対三」と発言していました。それでも戦ったのは、シャルティアの離反はアインズが自らの浅慮が原因と考えたからなのと、自分や仲間達が産み出したナザリックのNPCを我が子のように思っていて、子供達同士で殺し合わせたくなかったからでした。そして勝利したのは、周到な事前準備と相手を侮りがちなシャルティアの性格、そして課金アイテムの集中投入によるものでした。

実は「Ⅱ」「Ⅲ」になると面白さがちょっと薄れます。ナザリックと敵対することになる勢力を詳しく描写するのはまあいいのですが、結局はいざ戦闘となると圧倒的な戦力差によりあっけなく殲滅されてしまうのを繰り返すので。特に「Ⅱ」のリザードマンの部族連合は、攻撃目的自体が「人間より強いリザードマンの死体からアンデッドをこしらえたらもっと強くなるのでは?」というかなりしょうもないものでしたから。そんな実験、何匹か拉致してくれば簡単に出来るだろうに。最終的にはNPCの教育の場となり、殲滅から統治に切り替えられましたが、リザードマンの勇者は善戦したとはいえナザリックの戦力となるほどではなく、その後はほぼ空気。

「Ⅲ」終盤ではアインズが怪物を召喚して大虐殺を行って少しはナザリックらしさを発揮していましたが、せっかくの悪属性なんだから、あまり慎重にならずに4つの王国と4年に亘って戦ったダークシュナイダーばりに大征服戦争を行って欲しい…ってアインズの真意は征服じゃないから仕方がないか。

基本モモンと名乗って冒険者をやっている時の方が面白いです。戦闘メイド「プレアデス」の三女であるナーベラル・ガンマだけを「ナーベ」として連れて歩いています。人間と交わる以上人間の外見を持っていなければなりませんが、それだけならプレアデスは全員美女の外見をしているので誰でも良かった気がしないでもないですが、モモンになっている間は魔法が使えないので、プレアデス一の魔法詠唱者である彼女を選びました。



割とポンコツであることが判明してからは、「パートナーは(次女の)ルプスレギナの方が良かったかもしれない」とモモンは心中で後悔していましたが、ルプスレギナもナーベラルに次ぐ魔法詠唱者だし、人懐っこく明るい感じで応対できるのでそうだったかも。ちなみにナーベラルの属性は邪悪、ルプスレギナの属性は凶悪。この世界の設定では邪悪>凶悪だそうです。演技力ではソリュシャンが一番いいのですが、魔法が使えないからなあ。

あとエンリ・エモット。カルネ村の一介の村娘になぜにM・A・Oを当てるのかと思いきや、「Ⅲ」で大活躍でした。村が襲撃され両親が殺され、自身もあわやという時にアインズが救いの手を差し伸べました。助ける必然性はなかったのですが、かつて「ユグドラシク」で異形種狩りに遭っていた時に見返りも求めずに助けてくれた「たっち・みー」(後に仲間)の恩に報いるのと、自身の戦闘力が異世界で通用するのかを確認するための救援でした。後にカルネ村はアインズの属領状態となり、アインズから貰った「小鬼将軍の角笛」を真の力を発揮する形で使用したことでおよそ5,000の屈強なゴブリン軍団を支配下に持つようになり、エンリ将軍と呼ばれるように。「覇王炎莉」は作者公認の呼び名だとか。


なおアインズによれば「小鬼将軍の角笛」はユグドラシルではゴミアーティファクト扱いだったそうで、3つの条件を満たすと真の効果が発揮されるのですが、ユグドラシルプレイヤーは誰一人として真の能力を知ることはなかったそうです。ゴブリン5000匹といっても、非常に精強で装備も良く、様々な兵科で構成されているので、世界でも指折りの大勢力の1つに数えられるようになっているとか。なおこの世界のゴブリンは「ゴブリン・スレイヤー」のゴブリンと違ってコミュニケーションも共存も可能です。エンリの周囲からの持ち上げられぶりは、まるでアインズのようで面白かったです。

4期制作必至なんですが、放映はいつになるやら。第1期の放映が2015年7月~9月、第2期が2018年1月~4月、第3期が発表され、同年7月~10月だったので、早ければ来年春季あたりですか?

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