2018年春季アニメの感想(その4):刀使ノ巫女/グランクレスト戦記

声優の今村彩夏が6月一杯での引退を発表しました。デビュー5年目でまだ24歳と若いのですが、2017年から体調不良に悩まされていたそうで、改善が見られなかったということです。近年若い声優さんの健康トラブルが相次いでいる感じがします。松来未祐は悪性リンパ腫で若くして亡くなりましたし、種田梨沙も病気療養でほぼ1年活動を休止していたし。種ちゃんは復帰後も仕事をセーブしているようで、本復したのかまだ心配です。

今村さんの役で印象に残っているのは、「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」の美少女JK鴻上百合子。

そして今年の冬アニメだった「たくのみ。」の主人公天月みちる。元気に番宣番組に出演していたのに…。まあ人前に出てくるときは無理してたんでしょうね。療養に努めて元気になられることを祈念いたします。

本日は引き続き2018年春季アニメの感想を。まずは冬から2クール連続で放映していた「刀使ノ巫女」。1クール目が胎動編、2クール目が波瀾編で、この間に4ヶ月くらい時間が経過しています。異形の怪物・荒魂が各地で暴れ回る世界で、これを倒せるのは希少金属・珠鋼から作られた御刀を振るえる刀使と呼ばれる巫女だけ。


刀使は文字通り女性ばかりで、警察組織に属する特別祭祀機動隊で国家公務員なのですが、若いほど御刀との相性が良いということで、大半が中高生で全国5カ所の専門の学校(伍箇伝)に通っています。「写シ」という特殊な技を使うことで、斬撃や刺突などの肉体へのダメージを回避することができ、これによって真剣同士で本気で戦っても死傷者が出ないという便利な設定になっています。

20年前に起きた大荒魂による災厄の際、討伐隊に参加した刀使達は、今では伍箇伝の校長に出世しており、隊長だった折神紫は警視庁刀剣類管理局長になっています。ところが討伐隊で最も功績があったはずの主人公衛藤可奈美と十条姫和の母達には何の栄誉もなく、若くして亡くなっています。二人は全国剣術大会の決勝でぶつかりますが、姫和の真の目的は、紫に化けて潜伏している大荒魂を倒すことでした。これは失敗に終わり、なぜか姫和を助けて行動を共にした可奈美と共に逃避行することに。

中坊二人で何ができるんだと思いきや、どういう訳か二人を支援する影の勢力が。実は紫がおかしいことは以前から一部で知られており、紫の妹・折神朱音を中心に舞草(もくさ)という秘密組織が結成されていました。舞草が動く直前に姫和が“暴発”したというのが真相だったようで、その後は紫とその親衛隊対舞草という構図になり、可奈美と姫和は舞草に属して戦います。一旦は紫を倒して勝利したかに見えた舞草ですが、紫から分離した大荒魂は三女神に分かれ、互いに他者を取り込もうと争うことに。

最終的に勝利した人間への怒りを原動力とするタギツヒメが、隠世(かくりよ)で現世を飲み込もうとしますが、舞草、特に隠世深くにまで到達した可奈美と姫和によって阻止されます。原作のないオリジナル作品で、2クール連続した大作でした。総集編は1回だけで、それも第1クール「胎動編」の総集編だったので、当初から予定されたものと思われます。制作スケジュールがきっちりしていたところは好感が持てます。


2クール目に入ってしばらくはちょっとだれた感がありました。1クール目が逃亡→反撃とめまぐるしい展開で、しかも次から次へと舞草の支援者達が登場してきていたので、そのスピード感との落差ゆえかも知れません。

またタギツヒメが結局何をしたかったのかよくわかりません。珠鋼を精製する際に砂鉄から出る不純物がノロと呼ばれ、これがこれがたくさん集まり結合することで荒魂が生まれるということで、荒魂は出現時に神性たる珠鋼を奪われた恨みを抱いているのだそうですが、人間を滅亡させても抜本的問題は解決しないような。御刀と一緒になると神になれる(戻れる)といった設定でもあれば…


また伍箇伝の学長達は波爛編でタギツヒメ派と舞草とで二手に分かれて相争う形になりましたが、タギツヒメ派の行動原理がよくわかりませんでした。かねて紫に強い忠誠心を抱いていたということで、紫が健在だった時には特に不思議はないのですが、紫が倒され(死んではいない)た後に、紫から分離した大荒魂であるタギツヒメに忠誠を尽くすというのは??です。油断していたところをタギツヒメに洗脳されたとかならまだわかるんですが、鎌府女学院の学長なんか積極的に自分から接近していっていますからね。終盤不要とされてショックを受けていますが、傍目にはそりゃそうだろうと思えます。


まあ若手の刀使達には若手声優が起用されている反面、かつての刀使である伍箇伝の学長達には中原麻衣、ゆきのさつき、ゆかな、朴璐美、小清水亜美、川澄綾子といった錚々たる顔ぶれが揃っていて、作品に重みを加えていたなという感はありますが。


可奈美と姫和の母達が早世したのは、魂の一部が分離して隠世に残ったせいですが、そのおかげで可奈美は若き日のママン(美奈都)と夢の中で毎晩のように稽古しては強くなっていました。なぜ姫和にはそれがなかったんでしょうか?姫和も隠世に向かったさいに若き日のママン(篝)と遭遇しますが、個人的には篝役の種田梨沙の声にちょっとほろっとしました。復帰後の演技を初めて見られたもので。なんかまだ本調子じゃない感じがするんですが…気のせい?

余談ですが、主人公可奈美は本渡楓、姫和は大西沙織が演じていました。今季、本渡楓は「こみっくがーるず」の小夢、「ヒナまつり」の瞳と大活躍でしたが、大西沙織も「こみっくがーるず」で琉姫として共演していました。杉田智和が「アニゲラ!」で語っていたところによると(冗談でしょうが)、本渡楓は最近様子がおかしくて、大西沙織を女として見ているとか、やたら接触を図っているとか。「こみっくがーるず」の最終回番宣で、泣きそうになった大西沙織が隣の本渡楓を抱き寄せていたのは、えーでちゃん的にはたまらないシチュだったに違いありません。

お気に入りのキャラは柳瀬舞衣。作中一番かわいいんじゃないかと思います。しかも大企業・柳瀬グループの代表の娘だし。可奈美とは親友でクラスメイトですが、剣術バカで最強刀使の可奈美がそばにいたせいで埋没しがち。彼女も実は結構強かったはずなんですが。コミュ障の糸見沙耶香を仲間に出来たのは舞衣あってのこと。


料理上手で13歳にしてはご立派なものをお持ちで。妹が二人いてお姉さん気質なので、世話焼きと焼いたクッキーで沙耶香を堕としたと。

CVは和氣あず未。2015年頃から活動していてそこそこメインキャラクターも務めていますが、私は本作で初めて遭遇しました。「あず未」は本名で、長野県の安曇野から取られた名前だそうですが、出身は東京都。ファンから友達感覚でいてもらえるような親しみやすい声優を目指しているとのことですが、人気が出るといろいろと…

続いて「グランクレスト戦記」。こちらも冬季から連続2クール放映でした。こちらも総集編は第1クールの総集編だったので当初から予定の編成だったと思われます。作画崩壊的な時もあったけどNE!世界に混沌(カオス)が満ち、秩序(コスモス)≒物理法則を乱してあり得ない事象が起きる中、全ての混沌を鎮めることができるという皇帝聖印(グランクレスト)を作り上げようとする若き君主テオ・コルネーロと天才魔法師シルーカの出会いから物語が始まります。

君主といっても最初の頃のテオは魔法師と契約もできない最下級の従騎士でしたが、シルーカが呼び出した怪物オルトロスと戦って勝利したことで騎士となりました。この世界における君主とは聖印(クレスト)を持つ者を指し、混沌を浄化したり、所有者から譲り受ける(殺してでも奪い取る、もあり)ことで収集が可能となっています。集めた聖印が大きくなれば階級も上がっていきますが、部下を従属君主とするためには聖印を分配する必要があり、これまで皇帝の一歩手前の大公まではいましたが皇帝はいませんでした。

全10巻の原作は2クール使っても足りなかったらしく、全編になんとはなしにダイジェスト感が漂っていました。そんな中、二大勢力の一方の指導者である大工房同盟盟主マリーネ・クライシュが、従属君主を持たないが故に圧倒的な武力を持つダルタニア太子ミルザーを幻想詩連合から寝返らせる際、交換条件として純潔を奪われるという展開が衝撃的でした。


ミルザーは甘さを捨ててもらうためとか言ってましたが、この時前半ではテオとシルーカの相思相愛の純愛っぷりが強調されており、マリーネにはアレクシスという相思相愛の相手がいるので、そのとんでもないNTRっぷりのコントラストが際立っていました。マリーネ役は茅野愛衣で、いつもの彼女のキャラに比べるとシリアスかつ低音の演技が多かったのですが、この展開は本人も結構ショックだったそうです。

その後様々な人生の荒波の果て、アレクシスがミルザーに貞操を奪われてもなおマリーネを愛していることを皆に宣言したことで、ついにマリーネと結ばれることになりましたが、18禁NTR展開的にはたった一度の“過ち”でマリーネがミルザーの子を身籠もってしまうとか、なんだかんだ言って嫉妬に狂ったアレクシスが夜な夜なマリーネを緊縛とか鞭とか蝋燭とかで責めまくるといった展開もカモンなんですが、別にそういうことはなかったぜ!(残念)


なお君主の持つ聖印とか、魔法師の使う魔法とかは全て混沌に起因するものなので、混沌を消滅させると魔物なども出現しなくなる代わりに魔法とか聖印も存在しない世界(つまり我々の世界同様)になる訳ですが、本当のところそうなっては困ると考えていたのがほぼ全ての魔法師が所属する魔法師協会で、真にして最後の敵は魔法師協会でした。

魔法師協会の最高幹部しか知らなかった魔法師協会の真の役割と目的は、栄華を極めた古代文明を滅ぼした大戦の再来を防ぐことにありました。混沌の時代が去って秩序の時代となれば魔法を失った魔法師協会は無力化し、大戦の再勃発を防げないということで、混沌災害を故意かつ定期的に発生させて群雄割拠の時代を継続していくことが、魔法師協会の創立の理念でした。

無論、混沌が強大化し過ぎると人間の生存そのものが脅かされてしまうので、その辺のバランス調整にも腐心していたようですが、結局の所魔法師協会というのは、同じ原作者(水野良)の「ロードス島戦記」に登場する「灰色の魔女」カーラが担っていた、光と闇のバランス調整を組織的に行っていたということになるようです。悲劇を回避する為に均衡を保つ事が、より多くの悲劇を生むという矛盾に気づかないあたりもよく似ています。

ところでテオ一行のマスコット的存在だった戦闘侍女・人狼族のエマとルナは、混沌が消滅した後どうなったんでしょうか。魔法が消えたことで魔女や吸血鬼はただの人間になったようですが、人狼もやはりただの人間に?案外各地に出向いてリアル「汝は人狼なりや?」をやってたりして。

登場人物が非常に多いので、声優陣は超豪華で、正直キャラの名前を覚えきれませんでしたが、個人的なお気に入りは脇役も脇役のエレット・ハルカスです。名前があべのハルカスに似ているから…ではなく、主要登場人物の一人だったアルトゥーク伯ヴィラール・コンスタンスの異母弟セルジュ・コンスタンスの契約魔法師で、萌え袖(キョンシーとも言われてました)でおっとりとして物腰と言動に反し、極めて現実的な思考を持っています。


この世界の魔法師は往々にして軍師的側面を持っていますが、エレットは特に軍師的性格が強い人で、戦略戦術的に常に的確なアドバイスをしていましたが、セルジュが言うことを聞かずに大敗したので愛想を尽かしかけていました。その後セルジュが改心したので、「逃亡泊」という恥ずかしいあだ名を付けられたセルジュに対し、逃亡が戦術的に有効だとして、最初から逃亡を前提とした作戦を立てるようになっています。いつもセルジュの馬の背にちょこんと横座りで乗っている姿もとってもキュート。絶対尻に敷かれますが、もう嫁にするしかないと思います。

CVは松井暁波。ママンは声優の鷹森淑乃ということで二世声優ですね。ママンの代表作は何と言っても「不思議の海のナディア」のナディアでしょうが、個人的には「サクラ大戦3」の北大路花火もお気に入りです。2015年頃から活動していますが、メインは映画やドラマの吹き替えのようで、アニメではまだメインキャラに恵まれていないようです。

本作は一応大団円で終了していますが、はるかな未来で文明を繁栄させて人類は、再び大量破壊兵器を用いた大戦を引き起こしてしまい、草場の陰で魔法師協会の幹部達が「ほらみろー」とか言ってたりすると面白いですね。

あと後期のED。前に進んで行く君主達や主要キャラ後ろ姿を描くという構図の連続で面白かったですが、ひとりぼっちで砂漠を歩いているプリシラが何となく可哀想で。重要キャラで何度も他人の命を救っているのに、死んでしまうし。



スポンサーサイト