ファイブスター物語14巻(その1):ツラック隊細腕繁盛記

先日の日曜日は伊豆に行っておりましてブログをお休みして失礼しました。この冬は寒いので、春の到来を告げる河津桜を見てこようと思ったのですが…まだまだ一分咲きといったところで寂しいものでした(画像は期待していた咲きぶりです)。伊豆といえば椰子の木が生えていたりして、関東近辺ではことのほか暖かい土地だと思っていたのですが、さしもの伊豆もこの冬は寒かったようです。

本日からしばらく、この前買った「ファイブスター物語」の14巻(略してFSS14)の話をしたいと思います。東京オリンピックの後あたりかと勝手に思っていたので、13巻刊行後2年半程度での新刊はうれしい誤算でした。13巻から永野センセ制作のアニメ映画「花の詩女 ゴティックメード」の設定が大挙して導入され、一見全く違う作品になっていますが、センセは一貫して「嫌なら読むな」スタンスなので、読みたければどんなに設定が変更されても受容しなければなりませんが…フジは敗北したのだぞ(byデギン公王)。

14巻は、13巻終盤から始まった第6話「時の詩女」アクト3ステージ5「ツラック隊」の続きです。というかほぼ全編「ツラック隊」で、エピソードが終了しています。12巻でやってた第6話は「マジェスティックスタンド」だったんですが、第6話のタイトル自体が変わってしまいました。「嫌なら読むな」という精神波が聞こえてきそうなのでもはや何も言うまい。おとぎ話だし。

レディオス・ソープ久々に登場。8巻以来ですね。しかし6~8巻に登場していたソープは逃避行ばかりだったので、GTMスライダー(旧設定ではMHマイスター)としての登場はなんと3巻以来。「魔導大戦」(マジェスティック・スタンド)の舞台である旧ハスハ連合共和国の辺境ベラ国に嫁のラキシス(偽名ファナ)とともにやってきます。元々はハスハの臨時首都となっているスバース市に向かうつもりだったようですが、ベラ国を守って孤軍奮闘するツラック隊とナルミ支隊長に興味を持った様子。

このツラック隊、ハスハ連合共和国の国家代表騎士団であるAP騎士団12支隊の一つですが、規模は最も小さくて、補給も補充も受けられないままにどんどん疲弊していっています。ベラ国自体が辺境にあることから主戦場ではないので、バッハトマ魔法帝国をはじめとするハスハに攻め込んだ枢軸国の主力がやってくることはありませんが、二軍クラスが頻繁に攻め込んできて、ツラック隊が壊滅したら占領したろうという姿勢のようです。

ツラック隊のGTM24騎中稼働騎はたった6騎という実情を知ったソープは、ナルミ支隊長に後退と再編を提案しますが、ナルミ支隊長はそうしたらベラ国に戻れなくなると拒否。もともと一枚岩ではなく、魔導大戦により事実上四分裂したハスハをこれ以上バラバラにしたくないと、身を捨ててでもベラ国を死守する構えです。これに感動した(ふりの)ソープ、ツラック隊の再建に手を貸します。

一夜にして6騎のGTMを修理するなど、一気にツラック隊の惨状をV字回復させたソープ。「伝説のGTMスライダー」たる異名の面目躍如です。今回はラキシスも手伝っているので以前よりさらに効率アップした模様。加えてベラ国の内情を内外に宣伝するという「禁じ手」まで提案します。スバース市では大騒ぎになって軍法会議だ罷免だと議員たちがわめきますが、救援も送らずに「盾」として酷使し続けている負い目があるギラ総司令やバルンガ総参謀長は、これには裏があるとして静観を決め込みます。

意気上がるツラック隊に、ファティマ・ガーランドであるミース・シルバー・バランシェの使者としてやってきたのはエルディアイ・ツバンツヒ。4000年以上生きているという化け物にして本作でソープ(=アマテラス)より年上という希有のキャラです。そしてそのままツラック隊に傭兵として加わり、デビュー戦で3騎撃破2騎中大破という鮮やかな戦果を示して実力を見せつけます。

実力をさることながら、料金もふっかけていたツバンツヒですが、ラキシスは「使うだけ使ってばっくれる」作戦を提案。戦死するかもさせるかもと結構怖いことを言っています。13巻でアマテラスに恋していると告白していたツバンツヒですから、嫁のラキシスとしては本能的に危険を嗅ぎ取った様子。


辺鄙なベラ国での戦いがクローズアップされることで面白くないのがバッハトマのエースである銀月騎士団長ジョ-・ジィッド・マトリア。剣聖ダグラス・カイエンのGTMデムザンバラ(旧名シュペルター)を継承し、今や黒騎士・デコース・ワイズメルに次ぐ実力者となっています。今や準主役という位置にありながら、チンピラのような風貌・言動が妙に目立つ人物です。

パートナーのニナリスは四大ガーランドの一角であるスティール・クープ作のファティマで超優秀なんですが、実はニナリスが剣聖仕様であまりにもピーキーなデムザンバラを故意かつ一存でデチューンしてジイッドにも扱えるようにしていることがデコースの指摘で判明しました。

しかしデコースは「一流の機械とはそういうものだ」と黙認し、自分のパートナーであるエストにも「自分の使う道具を手入れしない奴はバカ者だ」と言ってペンダントトップをプレゼント。デコースはどんどんいい人になってるなあ。1巻では両刀遣い(実際二刀流だけど、ここでは性的な意味で)の変態騎士という扱いだったのに。「狂乱の貴公子」はどこに行った。地位が人を変えるということなんでしょうかね。エストも懐きまくっています。やっぱおじいちゃんよりは若い騎士の方がいろんな意味でいいんですかね…(笑)。

おまけ:1巻の話が出たところで、永野センセの作品世界への意識がまだ深化していなかった頃の突っ込みどころをいくつか(あ、リブート版で修正があったらご容赦を。読んでないもんで)。
その1・ボード・ビュラードの差別発言:デコースを甥だと紹介したユーバー大公に関し「あいつの家系に騎士の血など流れているものか」…後に騎士の血は星団中の人々の中に薄まりつつ拡散していることが判明しているので、普通の両親から騎士が生まれてくる場合も当然あります。だからあいつの家系から騎士なんか生まれないなんて断言はできないはずでは。ま、確かにユーバー大公はデコースを金で雇っていたみたいなんで洞察は正しかったんですが、ボード・ビュラードの正体であるミッション・ルースが、やはり後に純血の騎士の家系であることが判明してからは、なんか自分の血統を誇っているかのようにも聞こえます。ま、確かにユーバー大公はデコースを金で雇っていたみたいなんで洞察は正しかったんですが、
その2・ならず者の一般人に気絶させられるクローソー:はぐれファティマは遺失物扱いで人権もなく、悲惨な目に遭うことは6巻とか10巻で明らかになっていますが、それは人間に逆らえないというだけで、身体能力自体は騎士の70%位あるらしい。だから捕まるのはいいのですが、パンチ一発で気を失うというのはいくらなんでもひ弱すぎ。実はソープやコーラスⅢがその辺りにいることを覚知しており、あえて演技してたんですかね。見てくれはか細い少女なので説得力は抜群。
その3・スパッドを投げるソープ:スパッドは騎士が持つ、スターウォーズのライトサーベルに似た光剣ですが、ソープは刃を発生させたスパッドを投げてならず者を刺し殺しています。しかしスパッドは、7巻で光線銃のようにビームを飛ばすことが可能なことが判明。じゃあ投げるよりビームを撃った方がどう考えても早いじゃん。
その4・とんでもないコーラスⅢ世:なお、この時コーラスⅢ世は騎士のくせに一般人を公然と殺害しています。いくらならず者相手とはいえこれは大問題ではなかろうか。10巻で同級生を殺したクリスティンは最大限情状酌量されたとしても筋肉を薬で破壊され一生ベッドの上で過ごすことになりそうになっていました。しかもコーラスⅢ世の場合、自国だったら王様なんだからもみ消すことも可能そうですが、他国でやらかしているという悪質さ。普通外交問題になるぞこれは。3巻で彼が死ぬのは、実はいろいろやらかしていてあの辺りで死んでもらわないとコーラス王朝がもたないところまで来ていたとかね。コーラスと戦争していたハグーダを実は大国がこぞって支援していたのも、これまでのコーラスⅢ世の悪行に我慢の限界だったとか。なにしろ超天然だから。
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