ダンジョン飯:アニメ化必至の異色迷宮グルメ作品

居座る寒気に日本海側は大雪。雪になれているはずの信越線が15時間も立ち往生したそうですが、冬型の気圧配置になると晴れるのが太平洋側。札幌在住経験で雪の辛さは知っているだけに申し訳ないなあという気になりますが、多少寒くてもい雪がないのは本当に楽です。

本日は先日読んだ九井諒子の「ダンジョン飯」を紹介しましょう。連載中でまだ終わっていませんが、5巻まで読みました。

九井諒子は同人作家出身で、2011年頃から商業誌でも作品の発表を開始しました。2013年に「ひきだしにテラリウム」で第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しています。2014年に自身初の長編連載として「ダンジョン飯」を開始し、「2015年度 コミックナタリー大賞」、「2016年度このマンガがすごい!」、「THE BEST MANGA このマンガを読め!2016 」、「全国書店員が選んだおすすめコミック 2016」で1位を獲得しています。

「ダンジョン飯」はKADOKAWA エンターブレインBCの漫画誌「ハルタ」で連載されており、基本設定は古典的ファンタジー作品です。とある島の地下墓地の下に巨大な空洞が発見され、5層のダンジョンがあることが判明します。千年前に「狂乱の魔術師」によって、地下深くに囚われ滅んだ「黄金の国」とされ、様々なモンスターが跋扈しているほか、各地から集まった冒険者が宝探しやダンジョン制覇やラスボスとされる「狂乱の魔術師」打倒を目指しています。

ダンジョン内には、魂を肉体に縛り付ける強力な不死の術がかけられており、亜人を含む人は内部で死亡しても、肉体の損傷さえ回復させれば蘇生できるとされています。これはドラクエとかでの蘇生魔法の一つの解釈として面白いですね。ただし損傷の程度によっては蘇生の難易度が変わり、損傷の激しい者は相応の術士でないと蘇生させられないようです。

ダンジョン攻略に挑んでいたライオス一行は、深層でレッドドラゴンに挑んだものの壊滅状態になり、ライオスの妹ファリンがドラゴンに食われながらも脱出魔法を使ったことで辛くも逃れることができました。上記のとおりドラゴンに喰われても遺体さえ確保できれば蘇生は可能なので、すぐにファリン救出に向かおうとするライオスでしたが、金銭的余裕が無く、離脱するメンバーも出たため、ライオスほか、エルフのマルシルとハーフフット(≒ホビット)のチルチャックの3人で新パーティを結成しました。ライオスは探索費用の節約のため、食料の現地調達、つまりダンジョン内のモンスターを食材とすると言う、とんでもないアイディアを披露するのでした。

ライオスは重度の魔物マニアで、以前から魔物食に興味を抱いていたようですが、適切な調理法を知らなかったので難儀します。そこに通りがかって手助けを申し出たドワーフのセンシは、かねてダンジョン内で自給自足をしていたベテランで、見事な手際で調理した料理を振る舞います。その意外な美味に驚くライオスたち。魔物食に一家言を持つセンシは一行の目的を聞き、レッドドラゴンが料理できる可能性に惹かれ、仲間となるのでした。

5巻まででレッドドラゴン討伐とファリン救出に成功しており、人気があまりなかったらそこで完結したかも知れませんが、評判を得て連載続行となったらしく、レッドドラゴンを配下にしていた「狂乱の魔術師」が出現し、ファリンを奪われた上に追い出されてしまいます。仲間たちの説得受け入れ、一旦地上に戻ることを決意したライオスですが、途中で昔の仲間に出会って再びファリン救出に向かおうとするというところでto be continued.となっています。


女性漫画家だと絵柄が絢爛豪華だったりするのかと思いきや、少年漫画風に極めてシンプルです。せめてエルフのマルシルくらいは可愛く描いて欲しいのですが、それほどでもない(笑)。ロードス島戦記ならヒロインなのに、本作では人間と大差ありません。ただ、途中で頻繁に髪型を変えているところはやはり女性漫画家だなあと思ったり。


魔物食を既に実践していたセンシ、そもそも興味を持っていたライオスはともかく、チルチャックも亜人以外ならさほど抵抗を示さない中、当初から強い拒絶を示していたのがマルシルで、ダンジョン内の生物を食することに対しては絶対反対の立場でした。しかし空腹には抗えず、渋々魔物食を口にするたび、その意外な美味に複雑な心境をのぞかせていきます。

スライムは胃液で体表を覆っているとか、動く鎧は鎧の様な殻をもった貝の様な生き物の群れだとか、ミミックは大型のヤドカリ風だったりとか、奇想天外な設定を次々と繰り出し、その上でやたら説得力のある調理法を用いて美味しい食事へと変えていきます。調理はもっぱらセンシの独擅場ですが。


そのセンシ、ドワーフのくせに鉱石や鍛冶に全く興味がなく、武器の大斧もボロボロです。が、調理用のナベは希少素材のアダマント製、包丁はミスリル製と凝りまくっていてダンジョン各所にあるトイレの屎尿を回収して肥料にしてゴーレム起動して畑に利用するなど無茶苦茶をしていますが、結果的にダンジョン内の整美に貢献しており、冒険者達に快適さを提供しているという。

大抵のモンスターは、センシの調理で美味しく頂けるのですが、巨大イカのような姿のクラーケンだけは不味いと大不評でした。これはダイオウイカが不味いという話とリンクしているのかも。ちなみにダイオウイカが不味いのは、浮力を得るための塩化アンモニウムが大量に含まれているせいだそうです。

ただ、クラーケンの巨大な寄生虫は、ウナギのように捌かれた後、蒲焼きと白焼きにして供されましたが、とっても美味でした。きっとウナギかアナゴのような生き物だったんでしょう。ただ、さらにこれに寄生しているアニサキスのような寄生虫がおり、生食は厳禁だとか。注意される前に生食してしまったライオスは、胃を抉られて一晩中うなされる羽目になりました。ケアはマルシルが時々かける回復魔法のみ。痛みを抑える魔法はないんかい。

これはファリン救出まででアニメ1クールいけそうな気がするんですけどね。2期制作の見通しが不明ならファリン蘇生でバンザーイで終了、2期の目処が立っていたら狂乱の魔術師出現でリセットという感じで。

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