記憶に残る一言(その91):陸軍代表のセリフ(提督の決断)

昨夜は冷たい雨が降りましたが、本日初氷を視認しました。筑波嶺ではもっと早く初氷が観測されているかも知れませんが、私が目撃したのは今日が初めてです。札幌では最高気温が氷点下ともはや真冬で、それに比べれば大したことないとも言えますが、関東の薄ら寒さは札幌にはないものです。猛暑を前提にしている関東の家は、厳冬を前提にしている北海道の家より冬が寒いんですよね。

本日は記憶に残る一言です。今日は懐かしの光栄のゲーム「提督の決断」から有名なセリフを紹介しましょう。

「提督の決断」は1989年に光栄(現・コーエーテクモゲームス)から発売された海戦シミュレーションゲームです。後にシリーズ化され「Ⅳ」まで発売されました。このゲームでは、プレイヤーは艦隊などの各種部隊を指揮して連合軍の部隊と戦うほか、陸軍など他の部署の代表と会議を行い、月毎の作戦方針や予算・物資の配分などを決定しなくてはなりません。

このゲームにおいての陸軍は、ことあるごとに海軍の提案に反対したり、予算・物資・徴兵の議論の際に国力の維持を度外視した極端な提案を推してきたりして、戦争を敗北へと導こうとする厄介者という役回りとなっています。まあ海軍が主役のゲームなので、陸軍の扱いが悪くなるのはある程度は致し方ないといえばそうなんですが。

その陸軍のゲーム内におけるクズっぷりを象徴するのがこのセリフです。黙って言うことを聞きやがれとキレかけてしまうところですが、敵と戦う前に足を引っ張る味方に手を焼くというのは頭が痛いです。

どこの国でも陸軍と海軍は仲が良くないようです。縄張り争いに加えて軍事費という予算を取り合う関係である以上、ある程度仕方がないのでしょうが、旧帝国の陸海軍の仲の悪さは特筆するものがあったようです。何しろ「陸海軍相争い、余力をもって米英と戦う」と言われたほどですから。一丸になったとしても勝てない相手にこれじゃあ…。その仲の悪さの一例としてはこのようなものがあります。

・ 別々に軍用機や新兵器を開発するので開発が全く進行しない。また協調する気が全くないため、同じエンジンの呼び名が違っていたり、飛行機では上昇降下の操縦桿の動きが逆だったりした

・ ドイツ兵器の生産権を、陸海軍で別々に買い付けてライセンス生産(ドイツから共同で買えばと提案されても意地を張り合い呆れさせる)


・ 陸軍が空母(あきつ丸)や潜水艦(まるゆ)を独自開発
※ちなみに「艦これ」には両方登場しますが、陸軍出身といいながら海軍であるプレイヤーの鎮守府に所属します。どちらもCV能登麻美子


・ 海軍が自走砲や大型爆撃機を独自開発
・ 陸海軍双方で独自に航空部隊を編成・強化し、最後まで陸海別個に航空戦力の強化を行い、空軍が編成されるころはなかった

明治維新後の近代国家への道程の中、軍においては当初は陸上戦力が優先され、日清戦争までは海軍は陸軍の傘下にありました。このため海軍の最大の目標は「陸軍と同等の地位の獲得」であり、日露戦争直前に、「陸海並列」の悲願が達成されたのですが…。「戦時においても海軍軍令部は陸軍参謀本部に独立する」という改訂により、陸戦の軍令と海戦の軍令の不統合という重大な欠点が生まれてしまったのでした。

それでも日露戦争時には両軍のトップの協調や他の元老による調整、そして何より「この戦争に負ければ日本は消滅する」という強い危機感が国民の間にも広く共有されていたため、戦争指導自体はさしたる問題も無く進められました。しかし明治の元勲達の死により調整役を失った陸海軍は、軍令面においてもその対立が表面化し、陸海統合下の計画立案・戦争指導は不可能となってしまいました。

そうした対立状況を如実に示すのが今回のセリフといえますが、史実では、人員・政治力に勝る陸軍がまず提議し、それに対して「合理的」を自負する海軍が「非合理的」な陸軍の提案を「修正」するという形で政府に要求を出すのが通例であったそうなので、ホントのところは「海軍としては陸軍の提案に反対である」という場合が多かった模様です。

まあ主敵であったアメリカの陸海軍の仲の悪さもただ事ではないレベルだったようで、結構バカやってるんですが、単純に国力が圧倒的だったから勝てたんでしょうね。ちなみに「提督の決断」ではアメリカ軍でのプレイも可能ですが、当然海軍作戦部長であるプレイヤーの提案を陸軍参謀総長がことごとく反対してくるそうです。そういえばアメリカも第二次大戦までは空軍がなかったっけ。
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